PIONEER PL-5L
STEREO TURNTABLE SYSTEM ¥69,800
1984年に,パイオニアが発売したプレーヤーシステム。当時,パイオニアのアナログプレーヤーでは,上級機の
PL-70LⅡ50LⅡ,30LⅡが木目の美しい優美なデザインを持ったプレーヤーのシリーズとして仕上げられ,
人気を得ていました。それに対し,これらとは違ったアプローチで作られたプレーヤーとして,振動対策など,機械
的なハードさを前面に押し出したデザインが特徴的な新しいシリーズのプレーヤーとして発売されたのが上級機の
PL-7Lと本機PL-5Lでした。

トーンアームには,振動解析の結果に基づき,適度なバネ特性を持つダンパーとウエイトからなる副共振体を装着
したDRA(Dynamic Resonance Absorber)方式のストレートアームを採用していました。このDRA方式により
アーム自身の共振を効果的に排除することができていました。アームパイプには,超ジュラルミンストレートパイプが
搭載され,軽量で高い強度が得られるストレートパイプの形状で,機械強度が他の形状と比べて一段と高いため,
外力が加えられても内部応力が発生しにくく力学的にも安定しているという特徴があり,クリアーな再生音に貢献し
ていました。さらに,DRA装着の効果を高めるため,高級機に搭載されているワンポイント支持方式の防振構造
ウェイトが採用され,バランスウェイトを支持するウェイト軸とパイプホルダーの接点にあたる部分の共振を一挙に
解消していました。アームベース,支持部にはアルミダイキャストを採用し,ピックアップ部のサポート部の強度を高
めていました。演奏が終わると自動的にアームがリフトアップしてターンテーブルの回転が止まるオートリフトアップ
方式を採用していました。
また,別売で,上級機のPL-7Lと同じ素材のアルミナセラミックスを採用したアームパイプJP-520(¥15,000)
も用意されていました。



ターンテーブルは,直径33cm,慣性質量325kg-cm2の重量級大型ターンテーブルが搭載され,駆動部には,
高い回転精度を求めて,原理的に回転ムラの原因となるコギングの発生しないコアレス構造が採用されたDDモー
ターが搭載されていました。このモーターは,モーター底部にあったローターの支点(ベアリング)をターンテーブル
のすぐ下に移動させたS・H(Stable Hanging)ローター方式とクォーツPLL方式の高精度な制御もあいまって,回
転ムラ0.008%以下(WRMS・FG直読法)というすぐれた回転特性を実現していました。そして,針圧200gの
負荷に対しても回転数変動を起こさない安定した回転が確保されていました。



PL-5Lの大きな特徴として,強力なインシュレーターがありました。「全方向ダブルインシュレーションシステム」と名
付けられたこの方式は,床と本体だけがフローティング構造になっていた従来のインシュレーションシステムに対し,
床とアンダーボード,アンダーボードとキャビネットの間にそれぞれインシュレーションを装着したダブルフローティン
グ構造になっていました。しかも,低重心構造とラテラルダンパーの採用で,あらゆる方向からの振動を効果的に
抑制する構造になっていました。また,キャビネット自体も,高密度なパーティクルボードにより,キーパーツをしっか
り支える構造になっており,黒色木目調仕上げは精悍なイメージを強く醸し出していました。

以上のように,PL-5Lは,手が届きやすい価格の中級機ながら,巧みに上級機のPL-7Lの技術を踏襲し,すぐれた
性能を実現したプレーヤーシステムでした。ハウリング等にも強く,安定した性能をもつ使いやすい1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



すべての愛聴盤に捧げたい
充実のリファレンスプレーヤーシステム。

◎DRAストレートパイプ,防振構造ウェイト装着の
 無共振トーンアーム搭載。レコード波形を忠実に
 トレースします。
◎重量級ターンテーブル,ハイトルクモーターの
 組合わせで,安定した回転を実現。
◎微細な振動をも徹底排除。無共振思想を実現した
 全方向ダブルインシュレーションシステム採用。




●PL-5Lの仕様●

■フォノモーター■


モーター コアレスQuartz PLL DCサーボ・ホールモーター
駆動方式 ダイレクトドライブ
軸受構造 SH・ローター方式
ターンテーブル直径 33cm
ターンテーブル慣性質量 325kg-cm2 (ターンテーブルシートを含む)
回転数 33 1/3・45rpm
回転数切換え タクトスイッチ
回転ムら 0.008%以下(WRMS FG直読法) 
0.023%以下(WRMS/JIS)
SN比 82dB以上(DIN-B)
負荷変動 0%(針圧200g以内)
起動特性 1回転以内
起動トルク 1.2kg-cm
速度検出方式 全周積分方式FG
回転数偏差 0.002%以下
ドリフト 時間ドリフト:0.00008%/h 
温度ドリフト:0.00003%/℃
ブレーキ機構 純電子式

  


■トーンアーム■


形式 スタティックバランス型・パイプ交換方式トーンアーム
実効長 250mm
オーバーハング 12mm
トラッキングエラー +2.697度 -1.376度
針圧調整 ウェイト1回転3g
適合カートリッジ自重 2.4~12.0g
高さ調整範囲 +6mm -4mm


■その他■


使用半導体・その他 水晶×1,IC×6,ホール素子×2,LED×6,トランジスター×9
ダイオード×10
付属機構 クォーツロックインジケーター,クイックストップ,オートリフトアップ(電子式
消費電力 12W
供給電源 AC100V,50/60Hz兼用
外形寸法 490(W)×197(H)×406(D)mm
重量 12kg
※本ページに掲載したPL-5Lの写真・仕様表等は1984年10月の
 PIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引
 用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
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