DENON PMA-700
INTEGRATED AMPLIFIER ¥125,000
1973年に,デンオン(現デノン)が発売したプリメインアンプ。1963年に日本コロムビアが,放送局用送り出し
機器の分野で実績を持っていた日本電気音響株式会社を吸収合併し,放送局用の業務用機器にDENONブ
ランドを称するようになり,さらに,1971年より特にオーディオファン向けの民生用オーディオ機器にもDENON
ブランドがつけられるようになりました。1972年に,DENONブランドで本格的プリメインアンプPMA-500を発
売し,高い評価を受け,翌年の1973年に上級機PMA-700を発売しました。これは,当時の同社のプリメイン
アンプの最上級機でした。
イコライザーアンプは,厳選された精度の高いパーツの使用と,接続回路の影響を受けにくいエミッタフォロワ終
段からの素直なフィードバックにより,RIAA偏差30Hz〜15kHz±0.3dB以内,全高調波歪率が最大許容入
力時でも0.05%というすぐれた精度が確保されていました。
PHONO入力は2系統装備され,PHONO-2入力にはMCカートリッジ対応のグランデッドベース形ローノイズ
プリアンプが搭載され,昇圧トランスなしに,フロントパネルのスイッチ1つで,MC型,MM型の切り換え使用が
可能となっていました。
その他の入力は,TUNER,AUX×2,TAPE×2が装備されていました。AUX-1とTAPE-1の入力回路には
特にリアパネルにボリュームが設けられ,接続機器によりレベル調整ができるようになっていました。TAPEは
相互ダビングもスイッチの切換え一つでできるようになっていました。
トーンコントロール回路は,初段をエミッタフォロワとし,2段目にローノイズFETを使用し,うねりの少ないコント
ロール特性が,3段目コレクタ接地増幅出力から2段目へ戻される新考案のトーンコントロールNF回路の採用
によってつくられていました。BASS,TREBLEは,それぞれ11接点ロータリースイッチ採用で,正確に2dBス
テップの調節ができるようになっていました。そして,DEFEATにすると,トーンアンプを飛び越して初段エミッタ
フォロワ出力が直接次のフィルタースイッチに入るようになっており,トーンアンプ自体に基本利得なしで設計さ
れているため,DEFEATでもレベル変化は起きないようになっていました。
フィルター回路は,ランブル(ゴロゴロ音)用のロー・フィルターと,スクラッチノイズ用のハイ・フィルターが搭載さ
れ,双方とも18dB/octのバターワース型が採用されていました。
また,レベル設定が特徴的な仕様になっていました。従来の−20dBのミューティングスイッチに加えて,ゲイン
切換えスイッチで,アッテネーターとブースターアンプをまじえた独自のレベル設定ができるようになっていました。
ゲイン切換えスイッチは,+10dB,0dB,−10dBの3ポジションがあり,+10dBのときは,利得10dBのブース
ターアンプが入り,−10dBのときは,10dBのアッテネーターが入るようになっていました。ミューティングイスイッ
チは,ゲインが0dBのときの音量を基準として20dB抑えることができるようになっていました。
その他,機能的には,カートリッジの出力レベルまで左右のセンターバランスがスイッチ一つでとれるナル(NULL)
バランススイッチ,小音量時に対応したラウドネススイッチが装備されていました。

プリメインアンプの構成は,イコライザアンプ等の前段部,トーンコントロール回路等からなる中間コントロール部
パワーアンプ等の終段部が一体化したものですが,PMA-700では,トーンコントロールをDEFEATに,2つの
フィルタースイッチをOFFにすると,イコライザアンプその他の入力からの信号は,中間コントロール部をパスして
エミッタフォロワ段と必要に応じて10dBのブースターアンプ,リアクタンスをもたないアッテネーターを経由するだ
けでパワーアンプ部に接続され,いわゆるダイレクトカップル方式が可能となっていました。
また,プリアウトとメインイン端子も装備され,各々を独立して使用することも可能となっていました。
PMA-700のパネル面は,PMA-500と共通点が多く,上下に半分ずつに分かれてわずかに段差が付けられ
ており,ツマミやスイッチが整然と機能的に配置された形になっていました。プリメインアンプとして,オーソドック
スに使いやすくレイアウトされ,業務用機器の流れをくむデンオンらしさが出ていた部分だと思います。淡いゴー
ルドのフロントパネルに,黒色のスイッチと黒色のゴムリング付きのツマミが配置されたデザインが特徴的でした。
パワーアンプ部は,差動2段・ダーリントン純コンプリメンタリー全段直結・2電源OCL回路という構成になってい
ました。ドライバー段に差動アンプを2組用いて直流に対する制御能力をより大きくし,全段直結・OCL回路,コ
ンプリメンタリー回路に必要な十分な直流安定度が確保されていました。さらに,全段直結OCLが低域の特性を
大きく改善し,特に出力インピーダンスは,超低域から10kHzまで0.16Ω以下の純抵抗と見なすことができる
ほどになっていました。終段構成のダーリントンの石は,ディスクリートして最終段に余裕を与え,部品を厳選し
コンプリメンタリー段の相対性の確保に努め,スイッチング歪やクロスオーバー歪を抑え,広帯域にわたってTHD
0.05%以下,80mW正弦波相当振幅出力時混変調歪率0.05%以下,周波数特性8Hz〜150kHz±0.5dB
以内という特性を実現していました。
電源部は,効率の良い電源トランスと大容量の無誘導ハイ・リップル形のコンデンサーを使用した強力な電源回
路が搭載されていました。激しく変わる大電流にも崩れずに,8Hz〜30kHz THD0.1%以下の出力帯域幅が
保証されていました。また,終段トランジスター保護回路には,スピーカー保護回路が加えられていました。
以上のように,PMA-700は,当時のデンオンのプリメインアンプの最上級機として,技術面でしっかり検討され
た内容をもち,性能的にも機能的にも当時の水準を超えようとした意欲作でした。表情豊かなダイナミックな音は
当時,高い評価を受け,この後,モデルチェンジをしながらロングセラーモデルとなっていきました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



優秀なイコライザアンプと充実したファン
クションを備える前段部

◎最大録音レベルの調査から得た合理的設計,
 MCカートリッジアンプをもつ偏差±0.3dB以内
 のイコライザアンプ
◎高級機らしい充実した入出力端子

最も特長のある新しい考え方に立脚した
中間コントロールアンプ部

◎2dBステップ,2ポイントターンオーバー,2段
 がまえのディフィートができる本格的トーンコン
 トロール回路
◎切れの良いフィルター回路
◎ユニークなレベル設定を採用

威力ある終段部

◎差動2段・ダーリントン純コンプリメンタリ
 全段直結・2電源OCL回路
◎バイタリティに富んだ電源回路とスピーカ
 プロテクタ

その他

◎バランスチェックに便利なナル・バランススイッチ
◎REV,STEREO,L+R,L,Rと選べるモードスイッチ
◎A
(R),A(L),A,OFF,B,A+Bと使い分けできる
 スピーカ・セレクタスイッチ
◎2台のテープデッキを使用するのに便利なダビング
 スイッチとモニタスイッチ。テープ ツウ テープのダビ
 ング中にテープ以外のソースの演奏も可能です。
◎一人静かに聴くとき,生き生きとした音楽が楽しめる
 ラウドネス・コントロール
◎幅広くアンプを活用できるプリ・アウトとメイン・イン端子




●PMA-700 仕様●

形式 オールシリコントランジスタ・インテグレーテッド・アンプリファイヤ
パワーアンプ部
回路方式 ピュアコンプリメンタリ全段直結2電源OCL回路
定格出力 片チャンネル駆動時:100W/100W(負荷4Ω・T.H.D.0.05%)
             :80W/80W(負荷8Ω・T.H.D.0.05%)
両チャンネル駆動時:85W/85W(負荷4Ω・T.H.D.0.05%)
             :70W+70W(負荷8Ω・T.H.D.0.05%)
全調波歪率 0.05%以下(正弦波定格出力時60Hz〜10kHzにて)
混変調歪率(60Hz/7kHz=4/1) 0.1%以下(正弦波定格出力相当振幅出力時)
0.05%以下(正弦波80mW相当振幅出力時)
出力帯域幅 8Hz〜35kHz(T.H.D.0.1%)
周波数特性 8Hz〜150kHz(±0.5dB)
入力インピーダンス 80kΩ±20%(20Hz〜20kHz)
入力感度 1Vrms
残留雑音 0.5mV以下
出力インピーダンス 0.16Ω以下(10kHz以下純抵抗)
プリアンプ部コントロールアンプ部
定格出力 1Vrms(10kHz T.H.D.0.05%以下)
最大出力 14.2Vpeak以上
全調波歪率 0.05%以下(1kHz・10VPeak時)
RIAA偏差 ±0.3dB以内(30Hz〜15kHz)
入力感度/入力インピーダンス PHONO-1:3.2mVrms/60kΩ±10%
PHONO-2:(MM)3.2mVrms/30kΩ±10%
        :(MC)0.32mVrms/150Ω以上  
AUX-1   :(LEVEL ADJ.MAX.)320mVrms/50kΩ以上
AUX-2,TUNER :320mVrms/100kΩ以上
TAPE-1  :(LEVEL ADJ.MAX.)320mVrms/50kΩ以上
TAPE-2  :320mVrms/100kΩ以上
REC/PB(入力)-1,2:500mVrms/50kΩ±10%
最大許容入力 PHONO-1:100mVrms以上(1kHz)
PHONO-2:(MM)100mVrms以上(1kHz)
         (MC)  10mVrms以上(1kHz)
SN比 PHONO-1:62dB以上(入力端子短絡)
PHONO-2:(MM)62dB以上(入力端子短絡)
        :(MC)52dB以上(入力端子短絡) 
TUNER,AUX,TAPE :76dB以上(入力端子短絡)
トーンコントロール部周波数特性 TONE DEFEAT時:10Hz〜150kHz±0.5dB
TONE FLAT   時:20Hz〜20kHz±0.5dB
トーンコントロール折曲点/可変範囲(2dBステップ) BASS  :320Hz・640Hz/50Hz,100Hz±10dB
TREBLE:1.6kHz・3.2kHz/10kHz,20kHz±10dB
フィルター特性 低域:40Hz 18dB/oct バター・ワース形
高域:9kHz 18dB/oct バター・ワース形
ラウドネスコントロール特性 低域:100Hz+6.5dB
高域:10kHz+6dB
ミューティング −20dB(GAIN SW. 0dB時のレベルに対して)
付帯端子類
PRE.AMP.OUTPUT 1Vrms/HI-IMP
MAIN AMP.INPUT 1Vrms/E・F・OUT
ヘッドホーンジャック 8Ω ステレオヘッドホンに適合
AC OUTLET SWITCHED 2ヶ250W
UN SWITCHED 1ヶ150W
電源 AC100V,50Hz/60Hz
消費電力 170W(電気用品取締法による)
寸法 430W×140H×350Dmm
重量 12.5kg


DENON PMA-700Z
INTEGRATED AMPLIFIER ¥145,000
1974年,わずか1年ほどでPMA-700は2代目のPMA-700Zへとモデルチェンジされました。回路構成等内容的
にはほぼ継承されたマイナーチェンジモデルともいえるものでした。最大の改良点は,内部構造上の変更で,各パー
ト間の接続がコネクター化されていました。その他,細かな音づくりのチューニングが行われていました。
そして,このマイナーチェンジの裏事情とも言われているのが,初代PMA-700は,内容に比して価格が抑えられて
いたきらいがあり,実際,売ると赤字であったということです。そのため,わずか1年ほどで,価格もアップされて登場し
たとも考えられます。
音の面では,初代PMA-700が力強さ,厚みが前面に出た音の傾向がありましたが,PMA-700Zでは,力強さはそ
のままに,よりバランスがとられた中域のクリアさが出た音に変わっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



優秀なイコライザアンプと充実したファン
クションを備える前段部

◎最大録音レベルの調査から得た合理的設計,
 MCカートリッジアンプをもつ偏差±0.3dB以内
 のイコライザアンプ
◎高級機らしい充実した入出力端子

最も特長のある新しい考え方に立脚した
中間コントロール・アンプ部

◎中間コントロールアンプ部を他から完全に切
 り離すことができる”ダイレクト・カップル方式”
◎新考案のトーンコントロールN・F回路,ロータ
 リスイッチ採用の本格的トーンコントロール回路
◎ターンオーバースイッチとトーンディフィート
 スイッチで2段がまえのディフィートが可能
◎切れの良いフィルター回路
◎ユニークなレベル設定を採用

威力ある終段部

◎差動2段・ダーリントン純コンプリメンタリ
 全段直結・2電源OCL回路
◎バイタリティに富んだ電源回路とスピーカ
 プロテクタ

その他

◎バランスチェックに便利なナル・バランススイッチ
◎REV,STEREO,L+R,L,Rと選べるモードスイッチ
◎A
(R),A(L),A,OFF,B,A+Bと使い分けできる
 スピーカ・セレクタスイッチ
◎2台のテープデッキを使用するのに便利なダビング
 スイッチとモニタスイッチ。テープ ツウ テープのダビ
 ング中にテープ以外のソースの演奏も可能です。
◎一人静かに聴くとき,生き生きとした音楽が楽しめる
 ラウドネス・コントロール
◎幅広くアンプを活用できるプリ・アウトとメイン・イン端子




●PMA-700Z 仕様●

形式 オールシリコントランジスタ・ステレオ・・プリメイン・アンプリファイヤ
パワーアンプ部
回路方式 ピュアコンプリメンタリ全段直結2電源OCL回路
定格出力 片チャンネル駆動時:100W/100W(負荷4Ω・T.H.D.0.05%)
             :80W/80W(負荷8Ω・T.H.D.0.05%)
両チャンネル駆動時:85W/85W(負荷4Ω・T.H.D.0.05%)
             :70W+70W(負荷8Ω・T.H.D.0.05%)
全調波歪率 0.05%以下(正弦波定格出力時60Hz〜10kHzにて)
混変調歪率(60Hz/7kHz=4/1) 0.1%以下(正弦波定格出力相当振幅出力時)
0.05%以下(正弦波80mW相当振幅出力時)
出力帯域幅 8Hz〜35kHz(T.H.D.0.1%)
周波数特性 8Hz〜150kHz(±0.5dB)
入力インピーダンス 80kΩ±20%(20Hz〜20kHz)
入力感度 1Vrms
残留雑音 0.5mV以下
出力インピーダンス 0.16Ω以下(10kHz以下純抵抗)
プリアンプ部コントロールアンプ部
定格出力 1Vrms(10kHz T.H.D.0.05%以下)
最大出力 14.2Vpeak以上
全調波歪率 0.05%以下(1kHz・10VPeak時)
入力感度/入力インピーダンス PHONO-1:3.2mVrms/60kΩ±10%
PHONO-2:(MM)3.2mVrms/30kΩ±10%
        :(MC)0.32mVrms/150Ω以上  
AUX-1   :(LEVEL ADJ.MAX.)320mVrms/50kΩ以上
AUX-2,TUNER :320mVrms/100kΩ以上
TAPE-1  :(LEVEL ADJ.MAX.)320mVrms/50kΩ以上
TAPE-2  :320mVrms/100kΩ以上
REC/PB(入力)-1,2:500mVrms/50kΩ±10%
最大許容入力 PHONO-1:100mVrms以上(1kHz)
PHONO-2:(MM)100mVrms以上(1kHz)
         (MC)  10mVrms以上(1kHz)
トーンコントロール部周波数特性 TONE DEFEAT時:10Hz〜150kHz±0.5dB
TONE FLAT   時:20Hz〜20kHz±0.5dB
トーンコントロール折曲点/可変範囲(2dBステップ) BASS  :320Hz・640Hz/50Hz,100Hz±10dB
TREBLE:1.6kHz・3.2kHz/10kHz,20kHz±10dB
フィルター特性 低域:40Hz 18dB/oct バター・ワース形
高域:9kHz 18dB/oct バター・ワース形
ラウドネスコントロール特性 低域:100Hz+6.5dB
高域:10kHz+6dB
ミューティング −20dB(GAIN SW. 0dB時のレベルに対して)
総合
SN比 PHONO-1:62dB以上(入力端子短絡)
PHONO-2:(MM)62dB以上(入力端子短絡)
        :(MC)52dB以上(入力端子短絡) 
TUNER,AUX,TAPE :76dB以上(入力端子短絡)
RIAA偏差 ±0.3dB以内(30Hz〜15kHz)
チャンネル・セパレーション
(PHONO→SPEAKER)
40dB以上(20kHz)
70dB以上(300Hz以下)
付帯端子類
PRE.AMP.OUTPUT 1Vrms/HI-IMP
MAIN AMP.INPUT 1Vrms/E・F・OUT
ヘッドホーンジャック 8Ω ステレオヘッドホンに適合
AC OUTLET SWITCHED 2ヶ250W
UN SWITCHED 1ヶ150W
電源 AC100V,50Hz/60Hz
消費電力 185W(電気用品取締法による)
寸法 430W×140H×350Dmm
重量 12.5kg


DENON PMA-700MKV
INTEGRATED AMPLIFIER ¥149,000
1977年に,PMA-700Zは,3代目のPMA-700MKVへとモデルチェンジされました。初代PMA-700発売か
ら約4年を経過し,より大幅な改良が施されたモデルでした。
最大の改良点は,PHONO入力部の強化でした。MC対応を中心に改良・変更が施されていました。イコライザー
アンプは,厳選したローノイズトランジスターと精度の高いパーツを使用し,エミッタフォロワー出力になっており,
後続回路からの影響を受けにくいエミッタフォロワー終段からの素直なイコライジング・フィードバックによってRIAA
偏差は20Hz〜20kHzで±0.2dB,全高調波歪率は最大許容入力時で0.01%(1kHz)という優れた特性が
実現されていました。この特性アップには,トランジスター等の素子の改良も大きく寄与していました。
PHONOは,PHONO-1,PHONO-2の2系統であることは同じでしたが,MM,MC双方に対応したPHONO-2
は,新たにMM,MCそれぞれ専用の端子となっており,MC専用端子は接触抵抗を少なくするための金メッキが
施されており,専用のヘッドアンプに直結されていました。
MCカートリッジ用のヘッドアンプも新設計のものとなっていました。PNP,NPNトランジスター各4個を用いたA級
プッシュプル並列接続構成で,MCカートリッジ使用時のSN比も72dBと改善されていました。初代PMA-700の
頃と比較してトランジスターの改良が進みそれ自体で2〜3dBのSN比改善が確保されるとともに,並列接続で雑
音を打ち消す働きで5〜6dBのSN比改善が実現され,この双方により大幅なSN比等の改善が実現されていまし
た。
パワーアンプ部は,新たにDC化され,出力帯域幅は,5Hz〜50kHzと広帯域化していました。出力段はAB級ダー
リントン純コンプリメンタリー・プッシュプルOCL回路で,MAIN INの初段からドライブ段までを,PNP,NPNのA級
プッシュプルの構成として,供給電源は出力段と分離されていました。A級プッシュプル化は,パワーアンプ全体の
温度変化や電源変動に対する安定度をさらに向上させるとともに,約90dBの高利得の裸特性が安定的に確保さ
れ,約62dBの十分安定したNFBをかけることが可能となり,低出力時から定格出力まで高調波歪率0.01%以
下,混変調歪率0.01%以下(1W時)という低歪率が実現されていました。
出力段の保護回路も改善され,従来のリレー式から電子コントロールの保護回路に改められ,音の途切れを最少
限に抑えていました。また,直流電圧がスピーカー端子に現れた場合にはリレーが動作してスピーカーを保護する
ようになっていました。さらに,ポップノイズミューティング回路は,タイマーなど外部スイッチでOFFにしてもノイズが
出ないように改善されていました。
以上のように,PMA-700MKVは,PMA-700,PMA-700Zを継承しつつも,各部に大きく改良が施され,完成
度が高められていました。音の方も,音楽を楽しく聴かせる力強さを継承しつつ,特性の向上が図られていました。
そして,PMA-700シリーズの最終型となりました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



700,700Zの跡を受け継いで誕生・・・・700MKV

優秀なイコライザアンプと充実したファン
クションを備える前段部

◎新設計のローノイズ・ヘッドアンプをもったRIAA
 偏差±0.2dB以内のイコライザアンプ
◎高級機らしい充実した入出力端子

最も得意とする中段・コントロール・アンプ部

◎音質を操作する部分を増幅系から切り離す
 ”ダイレクト・カップル方式”
◎ロータリー・スイッチ採用の2dBステップ形,
 独自考案のトーンコントロールNFB回路
◎ターンオーバースイッチとトーンディフィート
 スイッチで2段がまえのディフィートが可能
◎切れの良いフィルター回路

出力帯域幅を拡げ,さらに威力を増した終段部
DCパワーアンプ

◎DC化で出力帯域幅5Hz〜50kHz,
 ひずみ率が飛躍的に向上
◎改善された出力保護回路とミューティング回路

そのほか

◎独得のパネル・フェイスと部品配置
◎バランスチェックに便利なナル・バランススイッチ
◎REV,STEREO,L+R,L,Rと選べるモードスイッチ
◎A
(R),A(L),A,OFF,B,A+Bと使い分けできる
 スピーカ・セレクタスイッチ
◎2台のテープデッキを使用するのに便利なダビング
 スイッチとモニタスイッチ。テープ ツウ テープのダビ
 ング中にテープ以外のソースの演奏も可能です。
◎一人静かに聴くとき,生き生きとした音楽が楽しめる
 ラウドネス・コントロール
◎幅広くアンプを活用できるプリ・アウトとメイン・イン端子




●PMA-700MKV 仕様●

形式 オールシリコントランジスタ・ステレオ・・プリメイン・アンプリファイヤ
パワーアンプ部
回路方式 全段ピュアコンプリメンタリ,プッシュプル方式DC回路
ダイナミック出力(IHF規格) 300W(150W+150W)(負荷4Ω)
200W(100W+100W)(負荷8Ω)
定格出力
(両チャンネル駆動・正弦波連続出力)
20Hz〜20kHz:85W+85W(負荷4Ω・T.H.D.0.05%)
20Hz〜20kHz:70W+70W(負荷8Ω・T.H.D.0.02%)
全調波ひずみ率 0.01%以下(正弦波定格出力時20Hz〜20kHz・負荷8Ω)
混変調ひずみ率(60Hz/7kHz=1/4) 0.05%以下(正弦波定格出力相当振幅出力時)
0.01%以下(正弦波1W相当振幅出力時)
出力帯域幅 5Hz〜50kHz(T.H.D.0.05%)
周波数特性 DC〜100kHz+0,−1dB(0.5W出力時)
入力インピーダンス 50kΩ
入力感度 1Vrms
出力インピーダンス 0.16Ω以下
SN比 115dB以上(IHF-A)
出力端子 スピーカー:A&B(負荷4〜16Ω),A+B(負荷8〜16Ω)
ヘッドホン:ステレオヘッドホン適合
プリアンプ部
入力感度/入力インピーダンス PHONO(MM)-1&2:3.2mVrms/50kΩ
PHONO(MC)-2:0.32mVrms/カートリッジインピーダンス40Ω時
TUNER,AUX-1&2,TAPE(P・B)-1&2:320mVrms/90kΩ
○イコライザーアンプ(PHONO IN〜REC OUT)
最大許容入力 PHONO(MM)-1&2:100mVrms(1kHz)
PHONO(MC)-2   :10mVrms
最大出力 10Vrms(負荷50kΩ時)
定格出力 320mVrms(負荷50kΩ時)
RIAA偏差 20Hz〜20kHz±0.2dB
○コントロールアンプ(AUX2 IN〜PRE OUT,DEFEAT時)
最大出力 10Vrms(負荷50kΩ時)
定格出力 1Vrms(負荷50kΩ時)
全高調波歪率 0.01%以下(20Hz〜20kHz,定格出力時)
トーンコントロール部周波数特性 TONE DEFEAT時:10Hz〜150kHz±0.5dB以内
TONE FLAT   時:20Hz〜20kHz±0.5dB以内
トーンコントロール折曲点/可変範囲(2dBステップ) BASS  :320Hz・640Hz/50Hz,100Hz±10dB
TREBLE:1.6kHz・3.2kHz/10kHz,20kHz±10dB
フィルター特性 LOW CUT:15Hz 18dB/oct バター・ワース形
HIGH CUT:9kHz 18dB/oct バター・ワース形
ラウドネスコントロール特性 低域:100Hz+6.5dB
高域:10kHz+6dB
ミューティング −20dB
総合
SN比 PHONO(MM)-1&2:78dB以上(入力短絡,IHF-A)
PHONO(MC)-2:72dB以上(入力40Ω,IHF-A)
TUNER,TAPE(P・B),AUX :100dB以上(入力短絡,IHF-A)
チャンネル・セパレーション
(PHONO-2→SPEAKER)
40dB以上(20kHz)
70dB以上(1kHz以下)
電源コンセント SWITCHED 2個250W
UN SWITCHED 1個150W
電源 AC100V,50Hz/60Hz
消費電力 195W(電気用品取締法による)
寸法 430W×140H×350Dmm
重量 12.5kg
※ 本ページに掲載したPMA-700,PMA-700Z,PMA-700MKVの写真,
仕様表等は1974年3月,1974年11月,1977年9月のDENONのカタログ
より抜粋したもので,デノン株式会社に著作権があります。したがって,これら
の写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意
ください。


★メニューにもどる           

 
 

★プリメインアンプPART7のページにもどる



現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp

inserted by FC2 system