DENON PMA-S10
STEREO INTEGRATED AMPLIFIER ¥220,000
1995年に,デンオン(現デノン)が発売したプリメインアンプ。1992年より,デンオンは「Sensitive」を頭文字と
し「S1」を型番に入れた「S1シリーズ」を次々と展開していました。セパレートアンプ,CDプレーヤー,カートリッジ
,昇圧トランス等次々と高級機を発売し,1994年にプリメインアンプのプレステージモデルとして,PMA-S1を発
売しました。その弟機として発売されたのがPMA-S10でした。

PMA-S10では,同じ「S1シリーズ」のプリメインアンプ・PMA-S1と同じく,大電流型増幅素子UHC(Ultra High
Current)-MOSを採用していました。UHC-MOSは,もともとオーディオ用の素子ではなく,大電流スイッング用
の素子で,耐圧はあまり高くはありませんが,ON抵抗が非常に低く,大電流が取り出せる特性を活かしてオーディ
オアンプ用に改良されたものでした。電流供給能力がバイポーラトランジスターと同等以上に改善され,MOS-FET
の音質的なメリットも合わせもつのがUHC-MOSでした。PMA-S10に搭載されたUHC-MOSは,実際,通常の
MOS-FETの35個分,バイポーラトランジスターの3個分という電流リニアリティが確保された素子でした。



アンプの増幅素子としてはバイポーラトランジスターとMOS-FETの2種類があり,バイポーラトランジスターは一般
にドライブ能力にすぐれ,力強いクリアな音という傾向があり,MOS-FETは,奇数次歪の少ない滑らかで繊細な音
という傾向があるといわれています。しかし,逆に言うと,バイポーラトランジスターは繊細な滑らかな音においては
MOS-FETに対しては一歩譲るものがあり,MOS-FETは内部抵抗が高いため,強力な電源部を要し,力強さに
おいては,バイポーラトランジスターに一歩譲るということが一般的で,”繊細さ”と”力強さ”を両立する素子はなか
なか難しいといわれています。
また,多くのアンプでは,電力増幅段において,電流供給能力を向上させるために,増幅素子を多数並列接続する
マルチパラレルプッシュプル回路となっており,素子動作のバラツキ,信号経路の複雑化等により音のにじみ等が
生じ,精妙なニュアンスが描き切れていない傾向もあるといわれています。
PMA-S10の出力回路は,大電流が取り出せるUHC-MOSを生かし,素子のバラツキの問題を解消できるシン
グルプッシュプル構成が採用され,カスコードブートストラップ方式によって,電力増幅段への理想的な負荷を実現
し,シンプル&ストレートな構成が実現されていました。同時の音質を汚す原因であったソース抵抗もUHC-MOS
の安定性を生かして,排除されていました。



電源部は,大型の電源トランスと大賀の高音質ブロックコンデンサーにより構成された強力なものが搭載され,
UHC-MOSによるリニアで強力な出力を支えていました。
ラジエーター,トランスなどの内部振動,また外部からの振動の悪影響を抑えるために,剛性の高い鋼板シャー
シをベースに,シールド特性にすぐれた銅メッキが施され,焼結合金インシュレーターをこのシャーシに直接固定
した構造で,しっかりした防振,シールドが図られていました。



入力端子は,PHONO,CD,TUNER,AUX,TAPE-1,TAPE-2の6系統が装備されていました。フォノイコラ
イザー回路は,初段にローノイズFETを使用したディスクリート構成で,MM/MCの両タイプに対応する高S/N比
ワイドレンジを実現したイコライザーアンプが搭載されていました。出力端子は,REC OUTはTAPE-1,TAPE-2
2系統が搭載され,REC OUTセレクターにより,REC OUTの切り離し,TAPE-1,2相互のダビングも可能となっ
ていました。
PMA-S10は,PMA-S1ほどではなかったですが,信号経路のシンプル&ストレート化が図られ,フィルター,ラウ
ドネス,ミューティング,プリアウト,メインインは装備されておらず,シンプルスピーカー端子は1系統のみで,フロ
ントパネルもシンプルなPMA-S1のイメージを継承するものとなっていました。BASS,TREBLEのトーンコントロー
ルは装備されていましたが,トーンディフィートスイッチにより,トーン回路を信号経路から完全に切り離して信号経
路のシンプル化が可能となっていました。また,ヘッドホン端子は装備されていました。

パーツの面では,上級機S1シリーズで採用された高品質のパーツが積極的に採用されていました。40型の高音
質4連ボリューム,大型削り出し金メッキピンジャック,OFC内部配線材,不活性ガス封入型リレー,高音質コンデ
ンサー,着脱タイプの極太ACコードなど,厳選して使用されていました。

以上のように,PMA-S10は,高級プリメインPMA-S1の弟機として,高音質をめざしたシンプルな設計と高品質
なパーツ,コンストラクションの投入で,PMA-2000をはじめとする中級機とはグレードの違ったプリメインとなって
いました。音の面でもPMA-S1に通じる品位の高さを持っていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



大電流型増幅素子,UHC-MOS採用。
”繊細さ”と”力強さ”,
その両極に位置する表現力を統合。
音の新世紀は,ここでリアルに創造される。

◎”繊細さ”と”力強さ”を表現する,
 UHCシングルプッシュプル回路搭載
◎大電流型増幅素子UHC-MOSの採用
◎UHCシングルプッシュプル回路の表現力を
 バックアップする強力電源回路
◎シンプルな増幅段構成とソース抵抗の画期的追放
◎振動抑止特性,シールド特性に優れた
 銅メッキ鋼板シャーシ採用
◎MM/MCの両タイプに対応するPHONOイコライザー
◎幅広い音楽ソースに対応する6系統の入力端子
◎シンプル&ストレートな高音質を再生する
 トーンディフィートスイッチ装備




●PMA-S10の主な仕様●

[パワーアンプ部]

定格出力 50W+50W(20Hz~20kHz:8Ω)
100W+100W(4Ω)
全高調波歪率 0.07%(1kHz,8Ω)
スピーカー負荷インピーダンス 4~16Ω



[プリアンプ部]

入力感度・インピーダンス PHONO MM:2.5mV,47kΩ
      MC:200μV,100Ω
LINE:150mV,25kΩ
イコライザーアンプ出力(REC OUT) 定格出力150mV
RIAA偏差 20Hz~20kHz ±0.3dB以内



[総合・その他]

SN比 PHONO MM:91dB
      MC:76dB
LINE:102dB
電源・消費電力 AC100V 50/60Hz,160W
外形寸法(足,ツマミ,端子を含む) 434W×137H×365Dmm
重量 15.2kg



DENON PMA-S10Ⅱ-N
INTEGRATED AMPLIFIER ¥230,000
1997年に,PMA-S10はモデルチェンジされ,PMA-S10Ⅱが登場しました。UHC-MOSによるシングル
プッシュプル方式が継承されていましたが,パネル高が大幅に高くなり,重量も約2倍と大幅に増えたことから
も分かるように,内部は物量投入で大幅に強化されていました。



UHC-MOSシングルプッシュプルによる出力段は,より強化され,出力も100W+100W(8Ω),200W+
200W(4Ω)へとアップしていました。それだけ電流リニアリティが高められていました。
この強化された出力段を支える電源部が大幅に強化されていました。電源トランスを2基並列して搭載したツ
イントランス並列接続方式で,大型磁気回路を低い磁束密度で使用することにより,磁気飽和領域に対して
広いダイナミックレンジを持つ音楽信号への追従性にすぐれた設計となっていました。また,2つのトランスが
磁気などの影響を互いにキャンセルし合うLC(Leacage Cancelling)マウントとすることで,アンプ内のノイ
ズ源であるリーケージフラックス(磁束漏れ)を大幅に低減していました。さらに,電圧増幅段やフォノイコライ
ザーの電源の巻線を独立させ,信号リレー等を制御するコントロール回路電源のトランスも独立させることに
より,各回路間の相互干渉を抑えていました。

電源トランスから出力された交流電源を直流電源に変換してアンプ回路に供給する整流回路には,すぐれた
大電流供給能力に加え,動作速度と電圧のロスを大幅に改善した,大電流ファースト・リカバリー・ダイオード
を並列接続で搭載されていました。さらに,低インピーダンス電極箔を使用した大容量高音質の電解コンデン
サーと周波数特性の異なる高音質フィルムコンデンサーの組み合わせにより,パワフルでレスポンスのよい
特性と,再生周波数の全帯域での安定した電流供給能力を実現していました。また,電源トランス出力から
パワーアンプ出力段までの配線は,極太のOFC配線材を使用して,エネルギー損失を最少限に抑えていま
した。




回路間の相互干渉やノイズの流入等を防ぎ,すぐれたステレオイメージを得るために,新たにパワーアンプ
ブロックをL・R独立させたツインモノラル構成が採用されていました。さらに,信号レベルの異なる回路も分
離し遮蔽を徹底した6ブロック構造が採用され,各回路間の干渉が排除されていました。また,高い剛性を
確保し振動によるノイズの発生を抑えるため,同社のセパレートアンプと同グレードの厚さ1.6mmの鋼板
に黒色塗装を施して使用し,高い剛性の確保とシャーシ内の温度の均一化が図られていました。シャーシ
全体は,振動を熱に変換し,伝播を抑制する焼結合金を使用したインシュレーターで支えられ,インシュレー
ターには,吸振性の高い新素材を貼り,振動の伝播をさらに抑止していました。また,電源トランス取り付け
部に振動減衰特性にすぐれた異なった素材を組み合わせた積層構造を採用し,電源トランスから発生する
振動を抑えこむ高い剛性と耐振性を確保し,周辺回路への伝播を抑えていました。



スピーカーターミナルは,黄銅削り出しパーツに金メッキを施したものが継承されていましたが,クランプ部
の穴径を6mmと大型にし,極太スピーカーケーブルの接続にも対応していました。さらに,スピーカーターミ
ナルが2系統に増やされ,バイワイヤリングにも対応するようになっていました。
また,機能的には,トーンディフィートをさらに推し進め,バランス回路とトーンコントロール回路をバイパス
しするソースダイレクトスイッチが新たに装備されていました。

以上のように,PMA-S10Ⅱは,PMA-S10を大幅に強化した内容を持ち,大きくにコストパフォーマンス
が高められていました。力強さがより増し,繊細さも併せ持つ音は,完成度を高めていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



UHCシングルプッシュプル&200W+200W。
より繊細に,より力強く。
音の表現力がさらに広がる。
ノイズを抑えこみ高いポテンシャルを活かした
新しい音の表情と出会うステージへ。

◎200W+200W。パワーアップで,さらに表現力を増した
 UHCシングルプッシュプル回路。
◎広いダイナミックレンジ&低ノイズを実現した,
 L.C.(Leakage Cancelling)マウント・ツイントランス。
◎共振や回路の相互干渉によるノイズの発生を抑止する
 高剛性・6ブロック・セパレーテッド・シャーシ。
◎バイワイヤリング対応・大型金メッキ・スピーカーターミナル
◎高速・大電流に対応した整流回路
◎高性能フォノイコライザーを搭載
◎高音質パーツを厳選して使用




●PMA-S10Ⅱ-Nの主な仕様●

[パワーアンプ部]

定格出力/両チャンネル駆動
(CD→SP OUT)
100W+100W(負荷8Ω,20Hz~20kHz,:THD0.07%)
200W+200W(負荷4Ω,1kHz,:THD0.7%)
全高調波歪率 0.01%(定格出力-3dB時,負荷8Ω,1kHz)
出力端子 スピーカーAorB:4~16Ω, A+B:8~16Ω
       バイワイヤリング負荷:4~16Ω



[プリアンプ部]

イコライザーアンプ出力  150mV 
入力感度・インピーダンス LINE:150mV/47kΩ(ソースダイレクトオフ)
    150mV/15kΩ(ソースダイレクトオン)
PHONO MM:2.5mV,47kΩ
      MC:0.2mV,100Ω
RIAA偏差 MM:20Hz~20kHz ±0.3dB
MC:30Hz~20kHz ±0.5dB



[総合・その他]

SN比(Aネットワーク) LINE:110dB(入力端子短絡時)
PHONO MM:91dB(入力端子短絡時,入力信号5mV時)
      MC:76dB(入力端子短絡時,入力信号0.5mV時)
トーンコントロール  BASS(低域):±8dB(100Hz)
TREBLE(高域):±8dB(10kHz)
電源コンセント  SWITCHED(連動):2個,合計容量120W
UNSWITCHED(非連動):1個,合計240W 
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 300W 
外形寸法(足,ツマミ,端子を含む) 434W×181H×485Dmm
重量 30.0kg



DENON PMA-S10Ⅲ-N
INTEGRATED AMPLIFIER ¥250,000
2000年に,PMA-S10ⅡはPMA-S10Ⅲにモデルチェンジされ,デザイン等はほぼ変化はなく,ピーク
電流120Aという通常の3~10倍の電流供給能力をもつ大電流型出力素子UHC-MOSによるシングル
プッシュプルという基本構成はそのままに,内容的にはより物量投入され,強化されていました。

PMA-S10Ⅲでは,特に電源部が強化されていました。電源トランスには新たに大型磁気回路をもつトロ
イダル・トランスが採用されていました。また,振動の発生しやすいトロイダルトランスに対応して,アルミ砂
型鋳物ケースを使用したS.B.(Stable Based)方式の固定法が採用されていました。さらに,電圧増幅段
やフォノイコライザーの電源の巻線を独立させ,信号リレー等を制御するコントロール回路電源のトランス
も独立させることにより,各回路間の相互干渉を抑えていました。
交流電源を直流電源に変換してアンプ回路に供給する整流回路には,新たに,量産モデルのパワーアン
プ電源としてはじめて,高周波整流用に開発されたショットキー・バリア・ダイオードを並列接続で搭載し,高
速動作による低ノイズ特性とすぐれた大電流特性により,電源回路の低ノイズ・低損失・高速化を実現して
いました。



そして,SACD,DVDオーディオなどの次世代のソースに対応して,ボリューム回路,トーン回路,パワーア
ンプ回路の各々の見直しが行われ,実使用時の周波数特性の上限が100kHzに改善されていました。さら
に,ボリューム回路を改善することで,実使用時にアンプ内で発生するノイズを抑え,分解能を高めていまし
た。
その他,信号基準点となるグランド回路に対し改良が行われ,定電流回路などのノイズ電流の流入を低減
する「PRECISION SIGUNAL GROUND回路」が搭載され,動作基準の明確化が行われていました。
また,パーツ,コンストラクション等の面でも強化・改良が行われていました。コンストラクションにおいては,
振動の影響を受けやすいパワーアンプ回路/パワーラジエーターの取り付け方法が改善され,電源トランス
の振動系と分離されていました。さらに,トップカバーの天面が6点留めとされ,外部からの振動を低減する
ための筐体の強化が行われていました。パーツの面では,整流回路のショットキー・バリア・ダイオード採用
の他,シルミックⅡ電解コンデンサーなど厳選された高音質パーツが新たに採用されていました。

以上のように,PMA-S10Ⅲは,PMA-10Ⅱをベースに,より内容を強化され,音の広がり感やクリアさもさ
らにアップしていました。 


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



次世代デジタルオーディオの登場で
さらにその真価が発揮される,
UHC-MOSシングルプッシュプル。
定評の基本回路はそのままに
さらなる物量の投入で,
銘機は新たに進化を遂げる。

◎200W+200W。繊細さと力強さを表現する
 UHCシングルプッシュプル回路搭載
◎アルミ鋳物ケース採用,
 S.B.(Stable Based)トロイダルトランス
◎次世代オーディオに対応したワイドレンジ再生
◎高速・大電流に対応する整流回路
◎共振や回路間の相互干渉を抑える
 高剛性6ブロック・セパレーテッド・シャーシ
◎バイワイヤリング対応・大型金メッキ・
 スピーカーターミナル
◎音の純度を守るPRECISION SIGNAL GROUND
 回路を搭載
◎高性能フォノイコライザーを搭載
◎高音質パーツを厳選して使用




●PMS-S10Ⅲ-Nの主な仕様●

[パワーアンプ部]

定格出力/両チャンネル駆動
(CD→SP OUT)
100W+100W(負荷8Ω,20Hz~20kHz,THD0.07%)
200W+200W(負荷4Ω,1kHz,THD0.7%)
全高調波歪み率 0.01%(定格出力-3dB時,負荷8Ω,1kHz)
出力端子 スピーカーAorB:4~16Ω, A+B:8~16Ω
       バイワイヤリング負荷:4~16Ω



[プリアンプ部]

イコライザーアンプ出力(REC OUT)  150mV 
入力感度/インピーダンス LINE:150mV/47kΩ(ソースダイレクトオフ)
    150mV/15kΩ(ソースダイレクトオン)
PHONO MM:2.5mV,47kΩ
      MC:0.2mV,100Ω
RIAA偏差 MM:20Hz~20kHz ±0.5dB
MC:30Hz~20kHz ±0.5dB



[総合特性部・その他]

周波数特性 5Hz~100kHz(0~-3dB) 
SN比(Aネットワーク) LINE:110dB(入力端子短絡時)
PHONO MM:91dB(入力端子短絡時,入力信号5mV時)
      MC:76dB(入力端子短絡時,入力信号0.5mV時)
トーンコントロール  BASS(低域):100Hz±8dB
TREBLE(高域):10kHz±8dB
電源コンセント  SWITCHED(連動):2個,合計容量120W
UNSWITCHED(非連動):1個,合計240W 
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 300W 
外形寸法(足,ツマミ,端子を含む) 434W×181H×485Dmm
重量 28kg



DENON PMA-S10ⅢL-N
INTEGRATED AMPLIFIER ¥280,000
2001年に,PMA-S10ⅢL-Nが登場しました。デンオンは,1910年創業の日本蓄音器商会(後の日本
コロムビア)が1963年に日本電気音響株式会社(1929年創業)を吸収合併し,登場したブランドですが,
DENON(デンオン)が,海外では”デノン”と呼ばれていたことから,2001年10月に全世界統一ブランド
名としてDENON(デノン)へと変更されました。その新生デノンを契機とするということでLimitedの名が冠
されたのがPMA-S10ⅢL-Nでした。

PMA-S10ⅢL-Nは,前モデルPMA-S10Ⅲ-Nをベースに,細部に改良・強化を施したモデルで,基本的
には回路構成,コンストラクション等,踏襲された内容を持っていました。



特に,振動対策がさらに強化されていました。電源トランスのケースにアルミ砂型鋳物ケースが使用されて
いるだけでなく,新たに電解コンデンサーにもアルミ砂型鋳物製のスタビライザーが採用されていました。
アンプ内部の一番の振動源であるトランスと音質に影響の大きい電源コンデンサーの振動による悪影響
を排除していました。また,剛性の高い構造はそのままに,筐体全体を支えるインシュレーターは新たに
鋳鉄製を採用し,振動吸収性の高い新素材とのハイブリッド構造として,その効果を高めていました。さら
に,様々なパーツを取り付けるネジ1本1本に至るまで見直しが行われ,内外の振動の影響を徹底的に
排除していました。
その他,高音質(40型)4連ボリューム,大型削り出し金メッキピンジャック,OFC内部配線材,不活性ガ
ス封入型リレー,高音質フィルムコンデンサー,高音質電解コンデンサー,着脱タイプ極太電源ケーブル
など,PMA-S10Ⅲで採用されていた高音質パーツの全面的な見直しが行われ,新たに開発された高音
質パーツを厳選して使用していました。


以上のように,PMA-S10ⅢL-Nは,PMA-S10シリーズの最終形として完成された形となり,クリアで
力強い音も,より精度が高められていました。そして,後継機のPMA-SA11へと技術・内容は継承され
ていくことになりました。PMA-SA11の価格が一気に¥378,000に上がっていることからも,そのコス
トパフォーマンスの高さはうかがい知れるかと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



次世代デジタルオーディオの登場で
さらにその真価が発揮される,
UHC-MOSシングルプッシュプル。
パーツのすべてを極限までブラッシュアップ,
DENONがピュアオーディオ・テクノロジーを
フルに投入。

◎200W+200W。繊細さと力強さを表現する
 UHCシングルプッシュプル回路搭載
◎UHC-MOSシングル・プッシュプル回路を
 バックアップする強力電源
◎トランスケースと電源コンデンサー・
 スタビライザーにアルミ砂型鋳物を使用
◎共振や回路間の相互干渉を抑える
 高剛性6ブロック・セパレーテッド・シャーシ
◎次世代オーディオに対応したワイドレンジ再生
◎音の純度を守る
 PRECISION SIGNAL GROUND回路を搭載
◎バイワイヤリング対応・
 大型金メッキ・スピーカーターミナル
◎高性能フォノイコライザーを搭載
◎高音質パーツを厳選して使用




●PMS-S10ⅢL-Nの主な仕様●

[パワーアンプ部]

定格出力/両チャンネル駆動
(CD→SP OUT)
100W+100W(負荷8Ω,20Hz~20kHz,THD0.07%)
200W+200W(負荷4Ω,1kHz,THD0.7%)
全高調波歪み率 0.01%(定格出力-3dB時,負荷8Ω,1kHz)
出力端子 スピーカーAorB:4~16Ω, A+B:8~16Ω



[プリアンプ部]

イコライザーアンプ出力(REC OUT)  150mV 
入力感度/インピーダンス LINE:150mV/47kΩ(ソースダイレクトオフ)
    150mV/15kΩ(ソースダイレクトオン)
PHONO MM:2.5mV,47kΩ
      MC:0.2mV,100Ω
RIAA偏差 20Hz~20kHz ±0.5dB



[総合特性部・その他]

周波数特性 5Hz~100kHz(-3dB) 
SN比(Aネットワーク) LINE:110dB(入力端子短絡時)
PHONO MM:91dB(入力端子短絡時,入力信号5mV時)
      MC:76dB(入力端子短絡時,入力信号0.5mV時)
トーンコントロール  BASS(低域):100Hz±8dB
TREBLE(高域):10kHz±8dB
電源コンセント  SWITCHED(連動):2個,合計容量120W
UNSWITCHED(非連動):1個,合計240W 
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 300W 
外形寸法(足,ツマミ,端子を含む) 434W×181H×485Dmm
重量 29kg

※ 本ページに掲載したPMA-S10,PMA-S10Ⅱ-N,PMA-S10Ⅲ-N
 PMA-S10ⅢL-Nの写真,仕様表等は,1996年10月,1997年3月,
 2000年3月,2002年5月のDENONのカタログより抜粋したもので,
 デノン株式会社に著作権があ ります。したがって,これらの写真等を無
 断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。


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