DENON POA-2200
STEREO POWER AMPLIFIER ¥160,000
1986年に,デンオン(現デノン)が発売したパワーアンプ。当時のデンオンのセパレートアンプのパワーアンプの
エントリーモデルで,プリアンプPRA-1100とのペアを想定されたパワーアンプでした。そして,1983年発売の
POA-1500の後継機でもありました。
POA-2200は,完全DC構成,ノンスイッチング方式などが投入され,心臓部には,オーバーオールのNFB(負
帰還)ループをもたない無帰還方式・「デュアル・スーパー無帰還回路」が採用されていました。
「デュアル・スーパー無帰還回路」は,パワー段のNチャンネルとPチャンネルの各トランジスターで相互に歪みを
打ち消しあうディストーション・サーボ回路と,スピーカー出力段に出てくるトータルな歪みを除去するディストーショ
ンサーボ回路,そしてDCサーボ回路の3つのサーボ・アンプによって構成され,無帰還方式として完成度が高め
られていました。音楽信号は,フィードバックされることなくスピーカー端子へハイスピード伝送され,NFB回路が
ないため,スピーカーからの逆起電力の影響も受けないというものでした。
「デュアル・スーパー無帰還回路」による信号系のハイスピード化は,さらにfT150MHzの高速トランジスターを使
用したプリドライバー段,ダイレクトDCサーボ回路採用の全信号経路完全コンデンサーレス(完全DC構成)など
によりさらに強化され,入力端子→出力端子間のスルーレイトは,±500V/secが達成されていました。
最終出力段は,Pc130Wの大容量・高速パワートランジスターが4パラレルプッシュプルで構成され,250W+
250W(6Ω),200W+200W(8Ω)のハイパワーを実現していました。また,デンオン・オリジナルのバイアス
回路を採用したノンスイッチング方式により,スイッチング歪みの発生を抑え,クロスオーバー歪みを低減してい
ました。
電圧増幅段は,低雑音・低帰還容量FETを初段に用いた3段差動増幅に加え,ファイナルにPc25W大容量トラ
ンジスターを設置し,ハイスピード化,広ダイナミックレンジ化を図った回路構成となっていました。
この電圧増幅段とパワー段とのインターフェース特性を重視し,UCI(Unity Current Interface)回路が採用され
ていました。UCI回路は,電圧増幅段の負荷がパワー段の動作に無関係に,常に一定になる方式で,パワー段
を電圧だけで駆動し,よりハイスピード,低歪みでストレートな伝送を実現していました。
電源部は,タンデルタの異なる2種類の電解コンデンサーを2基ずつ搭載した2-2構成で,電源ノイズを遮断す
る仕組みになっている「ピュアダイナミック電源方式」が採用され,電源部で発生するリップル電流と入力信号が
干渉しあって発生するダイナミックIM歪み(相互変調歪み)を低減していました。
800VAの大型のトロイダルトランス,大容量ブロックコンデンサー(10,000μF×8本)による強力な電源部と
高出力パワートランジスターに支えられ,スピーカーのインピーダンス2Ωに対しても600Wまでしっかりドライブ
ようになっていました。そして,電源トランスの二次巻線以降を完全なモノラル構成にし,二次側から左右別々に
取り出された後,独立した大容量平滑回路と整流回路を通り2系統の高純度・高安定な直流を得て,プリドライ
バー段,パワー段に供給されるようになっていました。電源ケーブルは,極性表示付きのφ0.26mm×37本
の極太のものが装備されていました。
全体のコンストラクションにおいても,モノラル・パワーアンプ2台をシャーシ上に対称に配置したツイン・モノラル
コンストラクションが採用されていました。内部レイアウトは,電源トランスを中心に左右チャンネルを完全対称と
し,プリドライバー段/パワー段をはじめ,ブロックコンデンサー群,整流回路,ボリューム,入・出力端子にいたる
まで左右対称となっており,小信号ラインと大電流ライン間の相互妨害,左右チャンネル間の相互妨害を抑え,
また,特性の不均一も解消していました。
入力端子は,ボリュームを介して電圧増幅段につながる「ノーマル」とボリュームをジャンプして直結される「ダイレ
クト」が装備され,用途に応じ使い分けられるようになっていました。
フロントパネルには,パワーメーターは設けられず,電源スイッチ,スピーカー出力切替スイッチのみというシンプ
ルなものとなっていましたが,中心にアクセントとなるバーライン・マルチディスプレイが装備されていました。この
バーラインは,電源ONとともに正常動作になるまでの数秒間点滅したあと点灯し,正常動作していることと示すよ
うになっていました。また,4分割されたバーのいずれかが点滅することで,過負荷検出,L・RのDC検出,温度検
出回路の各異常動作を表示するようになっていました。
リアパネルのスピーカー端子は,芯線直径6mm接続可能な大型の端子が装備され,L・R独立のボリュームもリア
に装備されていました。
以上のように,POA-2200は,エントリーモデル的なパワーアンプながら,しっかりと物量と技術が投入された本
格的な内容をもっていました。前モデルのPOA-1500の低域のしっかりとしたバランスのとれた音を継承しつつ
より現代的な音になっていました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
ダイナミックパワー600W/2Ωが
再現するピュアーCDサウンド。
◎理想を追求して,
ツイン・モノラル・コンストラクション
◎CDサウンドが鮮烈に立ち上がる,
ハイスピード無帰還パワーアンプ
●デュアルスーパー無帰還アンプ
●±500V/μsの脅威的ハイスル-レイト
●4パラレルプッシュプルのパワー段
◎無帰還パワー段と電圧増幅段との
インターフェイスを重視,UCI回路搭載
◎ダイナミックパワー600W/2Ωを達成。
ツイン・ピュアーダイナミック電源
◎クオリティをフルに引き出す
オーディオ・2入力端子
◎バーライン・マルチディスプレイと
強力なプロテクション回路
◎超大形スピーカー端子/極太電源コード
●POA-2200の主な仕様●
定格出力(20Hz~20kHz) | 250W+250W(6Ω) 200W+200W(8Ω) |
入力感度/インピーダンス | NORMAL:1V/25kΩ,DIRECT:1V/50kΩ |
全高調波ひずみ率(20Hz~20kHz) | 0.002%(出力100W・8Ω) |
混変調ひずみ率(60Hz/7kHz:4/1) | 0.002%(出力200W・8Ω) |
ダイナミックパワー | 600W+600W(2Ω),450W+450W(4Ω) |
TIMひずみ率 | 測定限界以下 |
スルーレイト | ±500V/μs以上 |
出力帯域幅 | 5Hz~80kHz(出力100W・THD0.03% 8Ω) |
ライン入力周波数特性 | 1Hz~300kHz+0,-3dB(出力1W・8Ω) |
出力インピーダンス | 0.1Ω以下 |
SN比 | 124dB |
出力端子 | AorB(6~16Ω),A+B(12~16Ω) |
自己診断機能 | ディスプレイにより異常温度上昇を診断・バーライン表示 |
電源 | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 340W(電気用品取締法による) |
寸法 | W466(内,側板16×2)×H186×D420mm(つまみ類,足の高さを含む) |
重量 | 19.8kg |
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