POA-3000の写真
DENON POA-3000
STEREO POWER AMPLIFIER ¥350,000

1979年に,デンオン(現デノン)が発売したパワーアンプ。1980年代の主力モデルとして発売されたもので
ステレオプリアンプPRA-2000とのペアを想定し,しっかりと技術と物量を投入した力作で,デンオンのパワー
アンプの中核機として,改良を受けながらロングセラーモデルとなっていきました。

POA-3000の最大の特徴は,「DENON classA方式」を採用したパワーステージの搭載にありました。当時
ノンスイッチングとか可変バイアス方式とか高効率A級等と呼ばれ主流となりつつあった回路方式で,オリジナ
ルはアメリカのスレッショルド社が発売したパワーアンプ800Aに採用されていた「ダイナミックバイアス・クラス
A」という方式にあるといわれています。通常のプッシュプル方式のアンプでは,交流波形のプラス側とマイナス
側を独立して別の出力トランジスターで増幅し,波形を合成するようになっています。その際,常にプラス側から
マイナス側という風に切り替えのスイッチングが行われているため,合わせ目で歪みが発生していました。スレッ
ショルドの方式は,バイアスを少し可変とすることでコントロールし,常に電流が両波形のトランジスターに流れる
ようにしてスイッチングをなくしたものでした。そして,国産アンプにおいても各社それぞれに改良を加えながら独
自の名称を付けて搭載していきました。そうした中で,「DENON classA方式」は固定バイアスのいわゆる「純
A級」をベースに設計され,最も純A級に近い動作をしていたといわれ,その発熱量も多い方でした。

「DENON classA方式」の中核を成していたのが「リアルバイアス回路」でした。通常のノンカットオフ動作を行う
可変バイアス方式は,トランジスタがカットオフを起こさないように,バイアス動作点をコントロールして無信号時に
も常にバイアス電流が流れるように働く仕組みでした。また,いわゆる純A級動作のアンプでは,1個のトランジス
タの直線動作領域で信号波形全体を増幅するため出力のピーク値の1/2のバイアス電流が必要であり,特性
は優れていますが,消費電力に対して効率的にはきわめて低いものとなります。
「リアルバイアス回路」では,さらに入力信号を高速で検波して,FET差動のバイアス平衡ドライブ回路でパワート
ランジスタが純粋なA級動作(1個のトランジスタで波形全体を増幅する)を維持するのに必要なバイアス量(その
時点のピーク出力の1/2)を,信号の立ち上がりに一歩先んじて立ち上がり,完全に供給するというものでした。
バイアス電流の巧妙な制御により従来の可変バイアス方式よりA級動作に近づけるというもので,純A級方式に
比較して約1/5の消費電力ですみ,優れた特性も実現していました。
パワー段の出力トランジスターには,特に高域特性にすぐれた新開発の高速パワートランジスター(fT:100MHz
Pc:120W)を採用し,片チャンネルあたり5ペアのパラレルプッシュプル接続として,180W+180W(8Ω・定格)
の高出力と0.003%以下(20Hz〜20kHz)という低歪率,1Hz〜350kHz+0,−3dBの広帯域特性を実現し
ていました。
パワーステージの出力段をドライブするドライバー回路は,fTが高く,高リニアリティ特性の小信号トランジスター
(fT:400MHz,Pc:400mW)を片チャンネルあたり4ペア・パラレルプッシュプル接続したカスコードエミッター
フォロワードライバーで構成されていました。このドライバー回路により,パワー段を広帯域・低インピーダンスで
ドライブすることで,高域特性の劣化を抑えていました。また,パワー段とは独立した高安定の電源回路から低
インピーダンスの電力が供給されることにより安定した動作が可能となっていました。

パワーステージの前に置かれるドライバーステージの初段には,ローノイズFET差動アンプを2つ並列動作させ,
PRA-2000と同様に,DCダイレクトサーボ方式が採用されていました。ダイレクトDCサーボ方式は,カップリン
グコンデンサーを排除するためのDCサーボをさらに見直し,新開発された回路でした。一般的なDCサーボアン
プと異なり,別系統のサーボアンプを持たず,初段で発生し終段まで影響するドリフトは初段で解決するというもの
でした。初段FET差動アンプのパラレル構成と,サーボ専用アンプに代わるサーボ帰還回路によって,本来のサー
ボ動作に加え,歪みは1/2に,S/Nは3dBの改善が行われサーボ動作により基本性能を犠牲にせずむしろ向
上させるというすぐれた効果を実現していました。
初段に続くプリドライバー段では,ツイン・コンプリメンタリー差動回路によってプリドライバーを平衡ドライブし,カ
スコードプリドライバーによってパワーステージをプッシュプルドライブするようになっていました。使用トランジスター
はドライバー段と同様のfT400MHzの高速トランジスターが採用され,強力なドライブ回路が構成されていまし
た。

POA-3000の内部

大出力を支える電源部は,出力段とその他を分けた別電源トランス方式がとられ,トランスが2基搭載された強力な
構成となっていました。出力段の電源は,L・R別巻きの大型トロイダル電源トランスと,低インピーダンス化を図った
10万μFという大容量コンデンサーで構成されていました。出力段用のトロイダルトランスは,200W+200W・B級
アンプの電源トランスの約2倍強の1000VAの容量を持ち,これを非磁性の2mm厚アルミでフロートして,共振や磁
気歪みを抑えていました。初段からドライバー回路までには,EI型電源トランスが別に設けられ,出力段の負荷変動
の影響をシャットアウトしつつ,定電圧電源回路を備え,電源部の安定化と低インピーダンス化が図られていました。

機能的には,前面パネルに大型のピーク指示の出力レベルメーターが装備され,背面パネルには,L・R独立の出力
レベルボリューム,サブソニックフィルタースイッチが設けられていました。また,POA-3000は大出力のアンプであ
るため,電源スイッチON時に大きなインラッシュ(突入電流)が流れる恐れがあり,電源スイッチの寿命が短くなるこ
とを防ぐインラッシュ防止回路が電源部に設けられていました。

以上のように,POA-3000は,デンオンが本格的ハイパワーアンプとして,また,同社のパワーアンプの中核機とし
て作り上げた意欲作で,しっかりとした作りと物量が支える,豊かでバランスのとれた音が聴ける,使いやすい1台で
した。PRA-2000との組み合わせでもバランス良くまとまるナイスペアでもありました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



’80年代の技術が生んだ
「純粋」A級パワーアンプ
高効率・高出力 180W+180Wの真価


◎DENONが開発した,画期的ともいえる
 高効率・高出力A級アンプ
◎A級動作を最新エレクトロニクス技術で
 飛躍させたリアルバイアス回路>
◎A級出力段を広帯域・低歪率ドライブ
 するカスコードエミッターフォロワー
 ドライバー回路
◎差動3段平衡ドライブによる
 プリドライバー段
◎オーディオアンプ用に開発された
 シンプルで応答速度の速い
 ダイレクトDCサーボ方式
◎クオリティを象徴する内部および外部コン>
 ストラクションと対話のあるデザイン
◎アンプの心臓部には1,000VAの大形
 トロイダル電源トランスと10万μFの
 大容量電解コンデンサーを採用
◎電源スイッチON時の
 インラッシュ電流防止
◎ピーク指示方式の大形出力レベルメーター
◎保護回路の高速動作




●POA-3000 主な仕様●

ミュージック出力(負荷8Ω) 250W+250W
定格出力(正弦波連続20Hz〜20kHz・負荷8Ω) 180W+180W
全高調波ひずみ率
20Hz〜10kHz 0.002%以下
20Hz〜20kHz 0.003%以下
混変調ひずみ率(60Hz:7kHz=4:1,定格出力)180W相当時 0.003%以下
出力帯域幅(IHF 両ch駆動)
5Hz〜100kHz(THD0.02%)
入力感度/入力インピーダンス 1V/50kΩ
出力インピーダンス
0.04Ω(1kHz)
ダンピングファクター
200(8Ω負荷に対し)1kHz
SN比
122dB以上(IHF-A)
伝送特性
1Hz〜350kHz(+0dB,−3dB)
サブソニックフィルター特性
16Hz・6dB/oct
セパレーション
100dB以上(20Hz〜10kHz),85dB以上 (〜20kHz)
スルーレート
±300V/μsec以上
レベルメーター特性
指示方式:ピーク値指示方式出力レベルメーター
指示範囲:−50dB〜+5dB 0dB=200W/8Ω
周波数特性:10Hz〜100kHz±3dB
電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
無信号時 220W
電気用品取締法による有信号時 730W
寸法(つまみ類,足の高さを含む)
495W×188H×459Dmm
重量
34kg


POA-3000Zの写真
DENON POA-3000Z
STEREO POWER AMPLIFIER ¥380,000

1984年,POA-3000は,POA-3000Zにモデルチェンジされました。外観のイメージは継承されていまし
たが,トップパネルがメッシュ状から木目も生かした横桟型になるなど,より落ち着いたイメージになりました。
また,新たにフロントパネルにスピーカーON/OFFスイッチが設けられ,サブソニックフィルターのスイッチが
背面パネルから前面パネルに移されていました。
回路等は,かなり大幅な見直し・改良が行われ,内部レイアウトも大きく変わり,出力もアップするなど内容面
で,かなりの変化がありました。

POA-3000Zの最大の特徴は「デュアルスーパー無帰還回路」を搭載していたことでした。この頃,アンプ技
術において負帰還(NFB)の問題点(動的歪み,応答速度など)が多く語られるようになり,NFBに頼らない歪
低減技術が各社から出てきました。デンオンも,最上級機POA-8000等で無帰還技術を開発し,ペアとなる
プリアンプPRA-2000Zをはじめプリメインアンプでも無帰還技術を応用・発展させ,搭載していきました。そ
のような中,POA-3000Zに搭載されたのが「デュアルスーパー無帰還回路」でした。

デュアルスーパー無帰還回路

「デュアルスーパー無帰還回路」は,パワー段のNチャンネルとPチャンネルの各トランジスターで相互に歪を
除去しあうディストーション・サーボ回路(アンプA2,A3)とスピーカー出力段に出てくるトータルな歪を除去す
るディストーション・サーボ回路(アンプA1)の3つのサーボアンプによって構成されていました。
サーボ・アンプA2,A3は,出力パワーステージを構成する各トランジスターから発生する歪成分を分離して
検出し,入力信号と比較し,歪成分のみを位相反転し,Nチャンネル・トランジスターの歪成分はPチャンネル
に加え,逆にPチャンネル・トランジスターの歪成分はNチャンネルに加え,各チャンネルの出力端で相互に
加算・除去するようになっていました。また,サーボアンプA1は,最終出力段において入力信号と出力信号を
比較してオーバーオールに歪成分を除去するようになっていました。このようにして,高調波歪率0.002%
混変調歪率0.0015%という低歪でありながら,負帰還ループを持たず,主信号がフィードバックされることな
くスピーカー端子へハイスピードで伝送される無帰還回路が実現されていました。
さらに,fT200MHzの高速トランジスターを採用したプリドライバー段をもつ3段ダーリントン接続パワーステー
ジ,ディストーションサーボ回路の高速化,ダイレクトDCサーボ回路採用の全信号経路の完全DC構成などに
より,ハイスルーレイト±500V/μsecを達成していました。
パワーステージの最終出力段には,Pc130Wの大容量高速パワートランジスターを4パラレルプッシュプル
接続で構成し,デンオン独自のバイアス回路により,安定したノンスイッチング方式として,スイッチング歪,
クロスオーバー歪を抑えながら,250W+250W(8Ω),300W+300W(6Ω)の大出力を実現していま
した。

パワーステージの前段に置かれる電圧増幅段は,ローノイズFETによるカスコードブートストラップ付差動入
力を初段に採用した3段増幅を基本回路として,プリドライバー段はfT120MHzの高速トランジスターによる
カレントミラー負荷パラレル差動増幅として構成されていました。ファイナルエミッタフォロワー段は,Pc25W
の大容量トランジスターをダーリントン接続した構成になっていました。
さらに,この電圧増幅段は,電源トランスの2次側から供給される左右独立の160Vの高電圧電源を,スイッ
チング歪みなどを解消するファストリカバリーダイオードなどの高速整流回路によって高低電圧化を行った上
で,L・Rチャンネル独立でドライブするという構成で,広ダイナミックレンジ化と高安定化が図られていました。

POA-3000Zの内部

電源部は,大形のトロイダル電源トランスを中心に,新たにオーディオ用に開発された112,000μFの大
容量ブロックコンデンサー,大容量10A級整流器などで構成された強力なものでした。また,トロイダルトラ
ンスの二次側は5巻線で,パワー段のL・R各チャンネル,ドライバー段のL・R各チャンネル,制御回路の5
つのブロックに独立して電力を供給するようになっていました。このように電源部は,プリドライバー段,パワー
段を通して完全にモノラルコンストラクションとなっており,電源を介してのL・Rチャンネルの干渉を解消し,
安定した動作が確保されていました。
内部レイアウト自体も,電源トランスを中心に,L・Rチャンネルを完全対称となっており,電源部から,信号
経路まで,完全にL・R対称の独立構成となっていました。
電源ブロックコンデンサー部のコモンプレートに極ローインピーダンスのブリッジ(橋絡)を加えたフローティン
グ・ロード回路を採用し,電源リップル電流による歪みの発生等を抑えていました。
配線基板のプリント基板には,PRA-2000Z同様,従来の素材に比べて誘電率が約30%低く,絶縁抵抗
が約1000倍という,高周波信号の伝送特性によりすぐれたものを採用していました。

機能的に新たに設けられたものとして,前面パネルのスピーカーON/OFFスイッチ,自己診断機能のつい
たディスプレイがありました。L・Rチャンネルレベルメーターの間に設けられたこのディスプレイは,ヒートシ
ンクの異常温度検出,左右各チャンネルパワー段の動作状態などを自己診断し,その状態を表示するも
ので,POWERスイッチON後,約10秒で正常動作・異常動作をインジケートするようになっていました。
入力系には,新たにCDプレーヤーやビデオなどのデジタル系機器のために,40kHzハイカットフィルター
付きの入力端子が搭載されていました。

以上のように,POA-3000Zは,POA-3000を大幅に改良し,別物ともいえるほどのアンプになっていま
した。出力の大幅アップにも表れているように,より肉厚で力感ある音が実現されていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



洗練・発展の「Z」。
理想のストレート増幅の頂点を進む
PURE DYNAMIC
驚異的ハイスルーレイト(±500V/μsec)を実現。
デュアルスーパー無帰還回路搭載,
鮮烈リファインPOA-3000Z。


◎「ピュア・ダイナミック」パワーアンプを
 実現したデンオン・オリジナル無帰還技術

●安定した動作を実現し,超高域までNFB方式を
 凌ぐ極低ひずみを実現したデュアル・スーパー
 無帰還回路
●±500V/μsecの驚異的ハイスルーレイトが
 デジタルソース粒立ち鮮やかに再現
●極太なパワーで応える4パラレルプッシュプル
 のパワー段

◎ピュア・ダイナミックな無帰還パワー段を
 余裕十分に支える電圧増幅段
◎電流供給能力のすぐれた,プリドライブ/
 パワー段独立の完全モノラル構成の
 高速・大容量電源部

●フローティング・ロード回路の採用で小出力
 時のノイズとひずみを低減
●モノラル・コンストラクションのメリットを生かした
 内部レイアウト/最短のワイヤリング

◎自己診断機能のついたパネル・ディスプレイ
●セット内の動作状態を論理回路で自己診断

●CDプレーヤーやHi-Fiビデオなどデジタル
 オーディオ専用の入力端子付き(40kHzハイ
 カット・フィルター入り)
●信号伝達ロスを極小にした,誘電率約30%>
 絶縁抵抗約1,000倍のハイグレードプリント
 基板を採用




●POA-3000Zの主な仕様●

定格出力
(両Ch駆動・正弦波出力・20Hz〜20kHz)
負荷6Ω時:300W+300W
負荷8Ω時:250W+250W
全高調波ひずみ率
(20Hz〜20kHz,定格出力の−3dB・負荷8Ω)
0.002%以下
混変調ひずみ率
(60Hz:7kHz=4:1,定格出力相当振幅出力・負荷8Ω)
0.0015%以下
TIMひずみ率
測定限界以下
出力帯域幅(両ch駆動・8Ω)
5Hz〜80kHz(THD0.01%)
周波数特性
1Hz〜300kHz+0,−3dB(1W出力時)
入力感度/入力インピーダンス NORMAL IN:1V/18kΩ
HIGH CUT FILTER IN:1.41V/25kΩ
出力インピーダンス
0.08Ω(1kHz)
SN比(Aカーブ・ウェイティング)
123dB
スルーレイト ±500V/μsec以上
HIGH CUT FILTER IN特性
40kHz・6dB/oct
スピーカー負荷
6〜16Ω
サブソニックフィルター特性
16Hz・6dB/oct
レベルメーター特性
指示方式:ピーク値指示出力レベルメーター
指示範囲:−50dB〜+5dB(0dB=200W/8Ω)
周波数特性:10Hz〜100kHz+0,−3dB(1W出力時)
自己診断機能
異常温度上昇,L・R動作状況診断の各表示
電源/消費電力
AC100V 50/60Hz/400W(電気用品取締法による)
寸法(つまみ類,足の高さを含む)/重量 493W×199H×480Dmm/30kg

POA-3000ZRの写真
DENON POA-3000ZR
STEREO POWER AMPLIFIER ¥380,000

1986年に,POA-3000Zは,POA-3000ZRへとモデルチェンジされました。外観,内部の回路等ほぼ
同一ともいえるもので,パーツ等の面でも細かな見直しが行われていました。
主な改良点は,コンデンサー,抵抗類等の見直しと一部変更,筐体の振動対策の細かな改良であったよう
です。これらの結果,スペック等に変化は見られないものの,音的には,持ち前の音の厚みにクリアさが加
わり,ややすっきり系の音に変化していました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



洗練・発展。
理想のストレート増幅の頂点を進む
PURE DYNAMIC
驚異的ハイスルーレイト(±500V/μsec)を実現。
デュアルスーパー無帰還回路搭載,
鮮烈リファインPOA-3000ZR。


◎「ピュア・ダイナミック」パワーアンプを
 実現したデンオン・オリジナル無帰還技術

●安定した動作を実現し,超高域までNFB方式を
 凌ぐ極低ひずみを実現したデュアル・スーパー
 無帰還回路
●±500V/μsecの驚異的ハイスルーレイトが
 デジタルソース粒立ち鮮やかに再現
●極太なパワーで応える4パラレルプッシュプル
 のパワー段

◎ピュア・ダイナミックな無帰還パワー段を
 余裕十分に支える電圧増幅段
◎電流供給能力のすぐれた,プリドライブ/
 パワー段独立の完全モノラル構成の
 高速・大容量電源部

●フローティング・ロード回路の採用で小出力
 時のノイズとひずみを低減
●モノラル・コンストラクションのメリットを生かした
 内部レイアウト/最短のワイヤリング

◎自己診断機能のついたパネル・ディスプレイ
●セット内の動作状態を論理回路で自己診断

●CDプレーヤーやHi-Fiビデオなどデジタル
 オーディオ専用の入力端子付き(40kHzハイ
 カット・フィルター入り)
●信号伝達ロスを極小にした,誘電率約30%
 絶縁抵抗約1,000倍のハイグレードプリント
 基板を採用




●POA-3000ZRの主な仕様●

定格出力
(両Ch駆動・正弦波出力・20Hz〜20kHz)
負荷6Ω時:300W+300W
負荷8Ω時:250W+250W
全高調波ひずみ率
(20Hz〜20kHz,定格出力の−3dB・負荷8Ω)
0.002%以下
混変調ひずみ率
(60Hz:7kHz=4:1,定格出力相当振幅出力・負荷8Ω)
0.0015%以下
TIMひずみ率
測定限界以下
出力帯域幅(両ch駆動・8Ω)
5Hz〜80kHz(THD0.01%)
周波数特性
1Hz〜300kHz+0,−3dB(1W出力時)
入力感度/入力インピーダンス NORMAL IN:1V/18kΩ
HIGH CUT FILTER IN:1.41V/25kΩ
出力インピーダンス
0.08Ω(1kHz)
SN比(Aカーブ・ウェイティング)
123dB
スルーレイト ±500V/μsec以上
HIGH CUT FILTER IN特性
40kHz・6dB/oct
スピーカー負荷
6〜16Ω
サブソニックフィルター特性
16Hz・6dB/oct
レベルメーター特性
指示方式:ピーク値指示出力レベルメーター
指示範囲:−50dB〜+5dB(0dB=200W/8Ω)
周波数特性:10Hz〜100kHz+0,−3dB(1W出力時)
自己診断機能
異常温度上昇,L・R動作状況診断の各表示
電源/消費電力
AC100V 50/60Hz/400W(電気用品取締法による)
寸法(つまみ類,足の高さを含む)/重量 493W×199H×480Dmm/30kg


DENON POA-3000RG
STEREO/MONAURAL POWER AMPLIFIER ¥450,000

1990年に,POA-3000ZRは,POA-3000RGにモデルチェンジされました。外観のデザインも,
メーター部を中心に,より明るい感じになり,フロントパネル下部にはトラップドアを採用し,サイドウッ
ドにもRがつけられるなど,イメージが大きく変わりました。回路等内部も大幅に改良され,価格,重
量ともアップしていました。

POA-3000RGには,新たに「MOSスーパーオプティカル・クラスA回路」が搭載されていました。可
変バイアスにより(擬似的)A級動作を行わせる可変バイアス方式の基本は,上述のようにパワートラ
ンジスタがA級動作を維持するのに必要なバイアス量を完全に供給し,カットオフを起こさないように
バイアス電流の巧妙な制御を行うことです。そのためのバイアスコントロール回路からの制御信号を
バイアス回路に伝送する手段に光結合を用い,主信号系とバイアス制御回路間の干渉を排除すると
ともに,光素子の使用により,バイアスコントロールの高速化を図るという「オプティカル・クラスA回路」
をベースに,MOS FETによるドライバー段を設けるなど,さらに発展させたものでした。パワーステー
ジの終段をドライブするドライバー段を,MOS FET(Pc:30W)とMOS POWER FET(Pc:100
W)でインバーテッドダーリントン接続構成とすることで,終段のドライブ能力を大きく向上させていまし
た。MOS POWER FETによるインバ−テッドダーリントンドライバー段は,従来比で10倍のバイア
ス電流を流す能力があり,ドライバー段の純A級動作領域を10倍に拡大し,小中出力時の音質の向
上を実現していました。

パワーステージに信号電圧を供給する電圧増幅段には,デンオン独自の厳しい規格で選別された低
ノイズ,低帰還容量のFETを初段差動増幅回路に採用した差動3段増幅回路を搭載していました。プ
リドライバー段は,出力段に大レベルの信号電圧を供給できるよう,カレントミラー方式の差動増幅とし
さらに並列差動回路を採用することで,直線性を改善していました。

POA-3000RGは,このシリーズではじめて,ステレオアンプとしてだけでなく,モノラルアンプとしても
使える機能を備えていました。背面パネルにあるOPERATIONスイッチをステレオからモノラルに切換
えると,左右2チャンネルのアンプを正負極性アンプとしてドライブし,モノラル500W/8Ω,800W/4Ω
という,大出力のモノラルアンプとして使えるようになっていました。

入力端子は,通常のRCAピンジャックに加え,キャノンコネクターのバランス入力も新たに搭載されて
いました。これにより,ペアを想定されるPRA-2000RG等とバランス伝送が可能となっていました。
また,モノラルアンプとして使用する際のアンバランス入力時のバランスへの変換回路には,プリアンプ
PRA-2000RGにも搭載されている「インバーテッドΣバランス回路」が採用され,すぐれた特性が確保
されていました。
スピーカー端子は,新たにバイワイヤリング接続に対応して,並列2系統の大型端子が装備され,極太
のケーブルの接続も可能となっていました。

電源部は,POA-3000ZやPOA-3000ZR同様に,大型のトロイダル電源トランスを中心に,大容量ブ
ロックコンデンサー,大容量1整流器などで構成された強力なものでした。また,パワー段のL・R各チャン
ネル,ドライバー段のL・R各チャンネル,制御回路への電力供給は完全独立で,電源部は,プリドライバー
段,パワー段を通して完全にモノラルコンストラクションとなっており,電源部でののL・Rチャンネルの干
渉を解消していました。内部レイアウト自体も,主信号系と電源部は,大型のヒートシンクを介して完全分
離され,電源トランスを中心に,L・Rチャンネルは完全対称構造となっており,左右回路の特性差を抑え
ていました。

POA-3000RGの内部

筐体全体の共振等を抑える構造もしっかりとられていました。シャーシには,厚板材使用の高剛性シャー
シが採用され,シャーシや筐体全体を支える脚部には,焼結金属ベースの大型・重量級のフットが使用
されていました。プリント基板は,強度,電気的特性にすぐれるエポキシ系ガラス複合基板が新たに採用
されていました。

以上のように,POA-3000RGは,しっかりと物量が投入され,内部の強化が図られ,まごう事なき高性
能・大出力を備えたパワーアンプとなっていました。PRA-2000RG等と組み合わせた音は,よりシャープ
で現代的なものとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



果てしない音楽の ロマンを
壮大にひろげる。
「MOSスーパーオプティカル・クラスA」採用,
パワーアンプPOA-3000RG
〈250W+250W/8Ω(ステレオ),500W/8Ω(モノラル)〉


◎人と音楽の接点にふさわしい,
 あたたかいフィーリング。
◎余裕のパワーで鳴らす400W+400W/4Ω(ステレオ)
 800W/4Ω(モノラル)。
 MOSスーパーオプティカル・クラスAパワーアンプ
◎本機を2台使用して究極の大型システムへ発展。
 ブリッジ(BTL)接続による800W/4Ω(モノラルパワー
 アンプ)

●ステレオ,モノラル共に,バランス入力を含む入力2系統
◎クオリティの頂点を支える巨大電源。
 左右独立電源,モノラルレイアウト構成
◎透明なサウンドを再生する
 ベーシックテクノロジー。
 5点支持高剛性シャーシとエポキシ系ガラス
 複合基板


●ピーク出力レベル表示のアナログ大型メーター。
 メーター照明,メーター動作をON/OFFできる
 メータースイッチ付。
●バイワイヤリング接続対応の並列2系統大型
 スピーカー端子。極太のケーブルの使用が可能。
●低インピーダンススピーカーを安定にドライブ
 する新開発プロテクター回路搭載。
●ステレオ/モノラル独立の前面操作入力レベル
 コントロール。
●音響用抵抗,コンデンサー等の高音質パーツ
 を採用。




●POA-3000RGの仕様●

定格出力
STEREO  :250W+250W(負荷8Ω,T.H.D:0.05%)
         400W+400W(負荷4Ω,T.H.D:0.1%)
MONAURAL:500W(負荷8Ω,T.H.D:0.05%)
          800W(負荷4Ω,T.H.D:0.1%)
ダイナミックパワー
STEREO  :900W+900W(負荷2Ω)
         1,200W+1,200W(負荷1Ω)
MONAURAL:1,500W(負荷2Ω)
          1,600W(負荷1Ω)
全高調波ひずみ率

STEREO  :0.005%(20Hz〜20kHz,負荷8Ω,定格出力−3dB)
MONAURAL:0.008%(20Hz〜20kHz,負荷8Ω,定格出力−3dB)
混変調ひずみ率
0.003%以下(7kHz/60Hz=1/4,負荷8Ω,定格出力相当振幅出力時)
出力帯域幅
STEREO/MONAURAL:5Hz〜50kHz(T.H.D0.05%,負荷8Ω,定格出力−3dB)
周波数特性
STEREO/MONAURAL:1Hz〜100kHz(負荷8Ω,1W出力時)
入力感度 STEREO:NORMAL 1V
       BALANCED 1V
MONAURAL:NORMAL 0.7V
          BALANCED 1.4V
入力インピーダンス STEREO:NORMAL 20kΩ
       BALANCED 10kΩ
MONAURAL:NORMAL 20kΩ
          BALANCED 10kΩ
出力インピーダンス
0.08Ω(1kHz)/STEREO
SN比(Aカーブ・ウェイティング)
STEREO:NORMAL 123dB(1V入力換算時)
       BALANCED 110dB(1V入力換算時)
MONAURAL:NORMAL 110dB(1V入力換算時)
          BALANCED 120dB(1V入力換算時)
レベルメーター特性
指示方式:ピーク値指示出力レベルメーター
指示範囲:−50dB〜+5dB(0dB=200W/8Ω STEREO時)
周波数特性:10Hz〜100kHz+0,−3dB(1W出力時)
電源
AC100V 50/60Hz
消費電力 600W(電気用品取締法による)
寸法 495W×200H×490Dmm(つまみ類,脚の高さ含む)
重量 35.5kg


※本ページに掲載したPOA-3000,POA-3000Z,POA-3000ZR
 POA-3000RGの写真,仕様表等は1982年10月,1984年3月
 1986年10月,1990年2月のDENONのカタログより抜粋したもので
 デノン株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断
 で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
        



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