DENON PRA-1100
STEREO PRE-AMPLIFIER ¥120,000
1986年に,デンオン(現デノン)が発売したプリアンプ。デンオンは,セパレートアンプの分野では,1979年
に,プリアンプPRA-2000,パワーアンプPOA-3000というロングセラーの名機を生み出しました。さらに,
1982年には,高級プリアンプPRA-6000,パワーアンプPOA-8000を発売し,これも高い評価を得ること
となりました。1983年,これらの高級セパレートアンプの技術を受け継ぐ弟機として,エントリーモデルとなる
プリアンプPRA-1000,パワーアンプPOA-1500を発売しました。その後継機として発売されたのが,プリ
アンプPRA-1100とパワーアンプPOA-2200でした。

プリアンプPRA-1100は,CDがスタートして4年後だけあり,デジタルオーディオやビジュアル機器がオーディ
オへ入ってくることへの対応を考慮した設計が見られることが特徴でした。微小な信号をパワーアンプへ伝送
するプリアンプの出力側のインターフェースを重視し,高域の劣化やデジタル機器などの高周波雑音の影響を
受けにくくするために,PRA-1100の最終出力段は,単なるバッファーアンプではなく,Pch,Nch FETを使
用したFETフルコンプリメンタリープッシュプル回路付UGI(Utility Gain Interface)アンプを搭載し,10Ωとい
う極低インピーダンスで信号を送り出すことを可能とし,常に歪率0.003%以下のクオリティーでの信号送り
出しを実現していました。

ソースの多様化に対応して,入力は,PHONO,TUNER,AUX-1,AUX-2,CD-DIRECT,TAPE-1/DAT
TAPE-2の合計8系統が装備されていました。時代に合わせ,PHONOは1系統のみになっていたものの,新
たに設けられたCD-DIRECT端子は,CDソースに最適なインターフェース特性でパワーアンプへストレートに
送り込むシンプルな構成とするために,フラットアンプ出力側とUGIアンプとの間に金クラック端子型高信頼性
トランスファーリレーを使用し,CDソースを直接2ndボリュームに入力し,UGIアンプを通しただけで出力する
という信号経路としていました。

イコライザーアンプは,CR型とNF型両者のイコライザー特性を組み合わせたデンオン独自の広帯域タイプの
スーパーイコライザーアンプが搭載されていました。極低雑音Hi-gm FET4石を各チャンネルの初段に採用し
た2パラレル差動アンプ構成として,高SN比,低歪率,ワイドレンジを実現していました。

フラットアンプは,高Gm型FET差動アンプにカスコードブートストラップ回路を付加した高速オペ・アンプで構成
し,CDのダイナミックレンジに対応していました。さらに,フラットアンプの前段と後段にボリュームを設定した4
連ボリューム構成とし,前・後段のボリュームのインピーダンス減衰量をシビアにマッチングさせて,ボリューム
を絞ったときのSN比を大きく改善していました。



トーンコントロールは,トーン素子をフラットアンプのダイレクトサーボ回路内に組み込むというリアルタイム・トー
ンコントロールが搭載されていました。このトーンコントロール回路は,ワイドレンジで,低音域から高音域まで動
作がきわめて安定し,動特性への影響も抑えられたものでした。
ラウドネスは,100Hzで0~+8dB,10kHzで0~+4dBを自由に調節できるバリアブル・ラウドネスコントロー
ルが搭載されていました。
トーンコントロール,ラウドネス,バランス,PHONOセレクターなどは下部のシーリングパネル内に収められ,閉
じた状態ではすっきりしたデザインとなっていました。



電源部は,レギュレーションとS/Nを重視し,大容量の大型のトロイダルトランスと大型のブロックコンデンサー
を中心に構成されていました。さらに,FETによる定電流回路とトラッキング方式の定電圧電源回路を搭載し,
リップル除去率を大幅に改善し,同時に電源変動の影響を排除していました。
内部レイアウトは,理想的なインタフェース特性を実現するために,電子スイッチと組み合わせた合理的なレ
イアウトとしていました。各入力端子は,背面パネルに固定されたプリント基板に設置され,微小な入力信号
はアンプ基板の入力回路に直結され,内部での引き回しを避けていました。

以上のように,PRA-1100は,デンオンのセパレートアンプのエントリーモデルとして,同社のアンプ技術の
エッセンスを継承し,合理的な設計により,より新しいソースにも対応できるプリアンプとして作り上げられてい
ました。音質面では,上級機よりも軽やかでフレッシュなものとなっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



音と静寂のコントラストが美しい。
優れたインターフェイス。

◎出力インターフェイス特性を重視した
 UGIアンプ搭載
◎多彩なソースに応える8系統の
 オーディオ入力
●さらにピュアーなCDダイレクト端子
◎アナログレコードもワイドで高精度。
 高品質MC/MMスーパーイコライザー
◎CD再生に完全を期す,
 ハイスピード&高S/Nフラットアンプ
◎リアルタイム・トーンコントロールと
 バリアブル・ラウドネスコントロール
◎大容量の大型トロイダルトランスによる
 高速応答・強力電源部
◎電子スイッチの採用と理想的な
 シャーシ内コンストラクション
◎ヘッドホン専用アンプ
 独立ヘッドホン・ボリューム
◎質感に優れたウッドカバーの採用と
 シンプルなトータルデザイン




●PRA-1100の主な仕様●

■MC/MMイコライザーアンプ部(PHONO IN~REC OUT)■

入力感度/インピーダンス
MM:2.5mV/47kΩ
MC:0.2mV/100Ω
最大許容入力電圧(1kHz)
MM:160mV,MC:13mV(共にTHD0.1%)
利得(1kHz) MM:35.6dB,MC:57.5dB 
最大出力電圧/定格出力電圧  10V(1kHz,THD0.1%)/150mV 
全高調波ひずみ率(1kHz)
0.001%以下(共に7V出力時)
イコライザー偏差
MC:20Hz~100kHz±0.3dB
MM:20Hz~20kHz±0.2dB
SN比(入力短絡,ウェイトA) MM:90dB,MC:73dB(0.25mV入力時)
入力換算雑音電圧(入力短絡,ウェイトA) MM:-142dB(V)
MC:-147dB(V)



■フラットアンプ部(CD IN~PRE OUT)■

入力感度/インピーダンス
CD,TUNER,AUX,DAT,TAPE(PB-①②):150mV/50kΩ
CD DIRECT:1V/10kΩ
利得
CDetc:16.5dB,CD DIECT:0dB
PRE OUTの
定格出力電圧/最大出力電圧
1V/10V
PRE OUTの出力インピーダンス  10Ω以下 
全高調波ひずみ率
0.003%以下(CD etc IN~PRE OUT・20Hz~20kHz・出力5V)
ライン入力周波数特性
 1Hz~300kHz+0.2,-1.0dB
10Hz~100kHz±0.2dB
SN比(150mV入力時)
CD etc:105dB
トーンコントロール
TREBLE:10kHz±8dB,BASS:100Hz±8dB
ミューティング PRE OUT OFF MUTING(LED点滅表示)
フィルター特性
イコライザーサブソニックフィルター:16Hz,-12dB/oct
ヘッドホン端子 専用アンプVOL.付,最大出力440mW/8Ω(8Ω~10kΩ適合)



■その他■

ACアウトレット
電源スイッチ非連動:1個(合計250W)
          連動:2個(合計100W)
電源・消費電力 AC100V 50/60Hz・12W(電気用品取締法による)
寸法・重量
466W×136H×302Dmm(つまみ類,足の高さを含む)・6.3kg


※本ページに掲載したPRA-1100の写真,仕様表等は1986年11月の
 DENONのカタログより抜粋したもので,D&Mホールディングスに著作権
 があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・引用等することは
 法律で禁じられていますのでご注意ください。

  
 
 
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