PRO1000の写真
AKAI PRO1000
OPEN REEL DECK ¥398,000

1977年にアカイが発売したオープンリールデッキ。アカイのデッキ史上の中でもコンシュー
マー用としては最高級機ともいえる1台で,2トラ38の余裕と,高性能はすばらしいものでし
た。

走行系は,2組のピンチローラーとキャプスタンでテープを挟んで走行させるクローズドループ
ダブルキャプスタン方式で,安定したテープテンションにより,優れたヘッドタッチと変調ノイズ
の低減,フラッター成分の大幅な減少を実現していました。
キャプスタンドライブ用には,なめらかで安定した回転のCPG(クロック発振器)内蔵のACサー
ボモーター,左右のリールドライブ用には振動の少ない6極エディカレントモーターという高精度
な3モーター構成となっていました。モーターの軸受け部には,アカイ独自の循環式無給油機構
が組み込まれ,半永久的に給油の心配なくスムーズな回転が確保されていました。
これらの高度な走行メカニズム全体で,テープ速度偏差±0.5%,ワウ・フラッター0.025%
(38cm/秒)という高精度なテープ走行と,0.8秒という定常走行までの立ち上がり速度を実
現していました。
テープ速度は,38cm/秒,19cm/秒,9.5cm/秒の3スピードで,2トラック録音・再生と4トラ
ック再生に対応し,最大26形(10号)リールまで装着できるようになっており,高音質録音・再
生から長時間録音・再生まで対応した仕様でした。

テープ走行の操作ボタンは,フェザータッチで,任意のモードに直接入れるダイレクトファンクシ
ョンチェンジ機構が採用されていました。ホールIC(磁気センサであるホール素子と増. 幅,判別
などの信号処理回路をワンチップ化したIC)の停止検出機構によりFF,RWDからPLAYに移行
する際のタイムラグも極少に抑えられ,素早く確実な操作が可能となっていました。
テープを保護するために,テープにテンションがかかったときだけ,その方向にエアダンパーが
はたらき,テープに急激なテンションがかかったときでもテープの切断,巻き込みを防ぐワンウェ
イ・エアダンプト・テンションアームが搭載されていました。また,リールサイズに合わせて最適な
テープテンションを保つリールサイズセレクター,さらに,テープ立ち上がりの一定時間リールモ
ーターに高電圧を加え,素早くテープを巻き取り,プレイスタート時のテープたるみを防止する機
構が搭載され,リールサイズに合わせて,最適のクイックテンションが設定されるようになってい
ました。

ヘッドは,2トラック録音ヘッド,2トラック再生ヘッド,4トラック再生ヘッド,フルトラック消去ヘッド
の4ヘッド構成で,録音ヘッド,再生ヘッドはいずれもアカイ自慢のフェライトヘッドであるGXヘッ
ドが搭載されていました。再生ヘッドは,従来のものよりコンターエフェクト(低周波数体域での特
性のうねり)が抑えられていました。

テープトランスポート部とアンプ部は持ち運びを考えたセパレート型になっており,アンプ部は,ミ
キサー機能等も含め,5枚のプラグイン式プリント基板にまとめられていました。マイクアンプは
ダイナミックレンジ60dBとそれまでのテープデッキのレベルを超えた余裕度と優れたSN比を確
保していました。

アンプ部の内部

バイアスは,±40%の範囲で連続可変が可能で,録音イコライザーも各テープに合わせて
連続可変ができるようになっていました。PRO1000のバイアス基準値はSCOTCH#206
に調整されていたそうです。
レベルメーターは,PEAK,VU切替できるようになっており,メーター切換スイッチをBIAS 
CHECKの位置にすると,バイアス量を表示して,バイアス調整機構によるバイアス値の設定
時に使えるようになっていました。

独立したアンプ部を持つだけあって,PRO1000は,録音機として多機能を実現していました。
入力は,MIC,LINEとも4系統備えられ,入力4ch,出力2chというミキサー機能を備えてい
ました。1〜4の入力は,MIC,LINEの選択がそれぞれ可能で,INPUT2,3には,MIC入力
LINE入力いずれの場合も音像を左から右へ,その間のどこへでも移動できるパンポット機能
が装備されていました。MIC入力の場合は,ATTポジションがあり,マイクアンプに20dBのア
ッテネーターが挿入できるようになっていました。他のデッキ等にミキシングされた信号を直接
出力できるミキサー出力端子も備えられ,PRO1000をミキサーとして活用することも可能で
した。
録音マスターボリュームにより,4つの入力を同時にレベルコントロールすることが可能で,初
めにセットしたポイントからは急にフリクションの増すフリクション型のプリセット機構付きで,全
体の録音レベルの設定やフェードイン,フェードアウトができるようになっていました。
4系統の入力ごとのレベルコントロールツマミも,録音マスターボリュームと同様にフリクション型
のプリセット機構付きで,個別のレベル調整,フェードイン,フェードアウトもしやすくなっていまし
た。
さらに,dbx等の外部のイズリダクションプロセッサーを,簡単に接続してその性能が生かされ
て使えるように,外部ノイズプロセッサー端子も設けられていました。

以上のように,PRO1000は,テープデッキに優れた技術と伝統を持ったアカイの最上級機と
して,性能面でも機能面でも使い易く作られたオープンリールデッキでした。2トラ38ならでは
の余裕あふれる性能は,アナログ録音の1つの醍醐味を感じさせるものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



性能的にも機能的にも考えうる
2トラ38の可能性をフル装備。
オープンリールデッキの新しい頂点。

信頼のメカ部と魅力のアンプ部。
新しいテープステレオの世界を
ひらくにふさわしいセパレートデッキ。


まず基本性能のたしかさに
ご注目下さい。

◎3モーター・ダブルキャプスタン方式に
  よるすぐれたテープ走行性能

  ●高精度3モーターメカニズム
  ●AKAIのクローズドループダブルキャプスタン方式

◎信頼のGXヘッドと高性能アンプによる
  高度の録音・再生特性

  ●f特50〜20,000Hz,±1dB(0VU録音,38cm/秒)
   は本機の実力の一端を物語ります。
  ●ますます磨きのかかった信頼のGXヘッド
  ●ダイナミックレンジが広く,余裕あるアンプ設計


レコーディングテクニックが
駆使できる豊富な機能。

◎オープンリールの良さをフルに生かす
  基本構成

  ●38cm/秒,19cm/秒,9.5cm/秒の3スピード
  ●2トラック録音・再生プラス4トラック再生
  ●最大26形(10号)リール装着可能

◎ピーク,VUともに各規格に準拠の切替
  式レベルメーター
  ●大形レベルメーターはPEAK,VU,BIAS
   CHECKに切替可能
  ●ピークはDIN規格に,VUはBTS規格に準拠

◎入力4系統のミキサー内蔵,中央
  2系統はパンポット可能
  ●入力4系統,出力2CHのミキサー機能
  ●INPUT2,3はパンポット可能
  ●20dBのマイクアッテネーターの組込まれた
   インプットセレクタースイッチ
  ●他のデッキ等にミキシングされた信号を直接
   送り出し可能な独立のミキサー出力端子
  ●フェードイン,フェードアウトが自在に楽しめ
   るプリセット機構つき録音マスターボリューム
  ●機能と形状に使いやすさを追求したプリセット
   機構つき録音入力レベルコントロールつまみ
  ●左右独立,0VUクリックつきのアウトプット
   ボリューム
  ●ヘッドホン感度に合せて最適モニターレベル
   の設定が容易なヘッドホン出力ボリューム(MAX
   で出力50mV/8Ω)。モニター機能重視のあら
   われです。
  ●4マイクインプット,4ラインインプット
  ●2組のライン出力端子

◎あらゆるテープの特性をフルに引き出す
  バイアス・イコライザー連続可変調整機構

 (各テープに対する最適値は取扱説明書記載)
  ●バイアスは基準値を中心に±40%可変
  ●各テープに対する最適の録音イコライザー特
   性が連続可変で選択可能

◎dbx等に完全対応の外部ノイズプロセッサー
  専用端子
◎マスターテープ作りが楽しくなる編集機能

  ●早送り,巻戻しで曲のはじめや編集箇所のす
   早い確認が可能なキュー機構
  ●テープがヘッドに密着したまま一時停止する
   ポーズ機構
  ●編集箇所のマーキングやヘッド周辺のメンテ
   ナンスの容易な開閉式ヘッドカバー


操作性とテープ保護を重視した
機能も豊富です。

◎操作性を高め,操作する楽しさをさらに
  拡げる機能

  ●ホールICの使用によるクイックシステムコ
   ントロール
  ●マスターまきテープの自動再生に便利なオー
   トプレイ機構
  ●後追い録音・再生可能
  ●留守録音(別売のアダプターTA-270又はリ
   モコンユニットRC-17使用),リモートコント
   ロール(RC-17)使用可能
  ●テープ装着や編集に便利なヘッド廻りのフラ
   ット設計
  ●持運びに便利なセパレートタイプ

◎メカニズムとエレクトロニクスに両面から
  配慮されたテープ保護機構

  ●ワンウェイ・エアダンプト・テンションアーム
  ●リールサイズに合せて最適なテンションを保
   つリールサイズセレクター
  ●プレイスタート時のテープたるみを防止する
   クィックテンション機構




●規格●

録音トラック方式
2トラック2チャンネルステレオ方式
再生トラック方式
2トラック2チャンネルステレオ方式
4トラック2チャンネルステレオ方式
最大使用リール
26形(10号)
テープ速度
38cm/秒,19cm/秒,9.5cm/秒
テープ速度偏差
±0.5%
ワウ・フラッター
38cm/秒:0.025%WRMS
19cm/秒:0.04%WRMS
9.5cm/秒:0.08%WRMS
テープ立上がり特性
0.8秒,38cm/秒
(起動時よりワウ・フラッターが規格値に入るまでの時間)
周波数特性
38cm/秒,0VU録音:50〜20,000Hz,±1dB
19cm/秒,0VU録音:40〜24,000Hz,±3dB
9.5cm/秒,0VU録音:60〜12,000Hz,±3dB
総合高調波歪率
1%以下,1kHz,0VU
(38cm/秒,19cm/秒,9.5cm/秒)
総合S/N比
60dB
再生補償特性
NAB
消去率
70dB
録音バイアス周波数
150kHz
ヘッド(4)
2トラック録音GXヘッド
2トラック再生GXヘッド
4トラック再生GXヘッド
フルトラック消去ヘッド
モーター(3)
キャプスタンドライブ用CPG内蔵ACサーボ・オイル
循環式無給油型モーター×1
リールドライブ用オイル循環式無給油型
6極エディカレントモーター×2
早送り・巻戻し時間
120秒以内(740mテープ使用時)
入力
マイク(4) 適合インピーダンス:600Ω〜10kΩ
       最少入力レベル:0.3mV/−69dB
ライン(4) 入力インピーダンス:100kΩ
       最少入力レベル:70mV/−21dB
出力
ライン(4) 負荷インピーダンス:10kΩ以上
       出力インピーダンス:100Ω以下
       基準出力:0dBs(0.775V)
ミキサー(2)負荷インピーダンス:20kΩ以上
       出力インピーダンス:1kΩ以下
       出力レベル:300mV) 
レベルメーター
ピーク DIN規格準拠・指示応答時間:0.01秒
     メーター復帰時間:0.8秒
VU   BTS規格準拠
使用半導体
トランジスタ:133,ダイオード:94,FET:6,IC:2
電源
100V AC,50/60Hz
消費電力
116W
外形寸法
メ  カ部:486W×412H×284Dmm
アンプ部:486W×231H×309Dmm
重量
メ  カ部:28.3kg
アンプ部:10.2kg


※本ページに掲載したPRO1000の写真,仕様表等は1977年
 1月のAKAIのカタログより抜粋したもので,赤井電機株式会社
 に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載
 ・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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