SONY PS-4750
DIRECT DRIVE PLAYER SYSTEM ¥53,800
1974年に,ソニーが発売したプレーヤーシステム。ソニーは,テープレコーダー,テープデッキなどの先駆者的存
在で,回転系技術にすぐれたものをもち,それを生かして,1966年にいち早くDCサーボモーターを搭載したベル
トドライブのターンテーブルを発売するなど,アナログプレーヤーにおいても独自の存在感を示していました。そして
1970年には,いち早くD.D.(ダイレクト・ドライブ)方式のターンテーブルTTS-4000を発売し,技術力を示していま
した。そんなソニーが発売した当時の中級機の主力モデルがPS-4750でした。
オーディオコンポーネントしての単体のアナログプレーヤーシステムは,1966年頃から登場し始め,パイオニアの
PL-41のように,当初,ウッドキャビネット(木製の箱)にアルミ等のターンテーブルを主体としたターンテーブルシス
テムをセットしたものが多く見られ,その後,中級機以上には,ビクターのJL-B77のように積層型のウッドキャビ
ネットが採用されるものが増えていきました。そうした中,ソニーは,樹脂系の素材を中心にしたキャビネットを開発
し,外観上も未来的なメカニックなイメージを持ち,個性ともなっていました。PS-4750もそうした1台でした。
PS-4750のキャビネットに採用されたのは,ソニー独自の樹脂系素材SBMCでした。SBMCは,ポリエステル樹
脂をベースとして炭酸カルシウム,グラスファイバーを配合した熱硬化強化樹脂で,収縮率が2~3/10000とほぼ
0に近く,成形後の狂いが生じにくく,高精度の成形が可能な素材でした。さらに,比重も自由に調節でき,アルミ等
の金属に比べ,振動を内部に吸収してしまう率(内部損失)も大きいので,大変共振しにくく,ハウリング,S/Nにつ
いてもすぐれた特性を得ていました。そのため,キャビネットとして,一体成形で剛性にすぐれた最適な形状と比重
を実現していました。
ターンテーブルも,新素材のSBMC製で,直径34cmで,重量1kgのものが搭載されていました。SBMCの低共
振鋭度(Q),最適な比重への調整可能などの特徴を生かし,最適な重量,効果的なハウリング防止対策などを備
えた精密なターンテーブルとなっていました。
SBMCの成形の自由度を生かし,外周全体にストロボ孔を設けていました。直接,孔を通して光を見ることができ
る明瞭度の高い直視型ストロボスコープとなっていました。331/3,45rpm各々に独立したピッチコントロールが
装備され,ストロボスコープと合わせて精密な速度調整が可能となっていました。
ターンテーブルの駆動はダイレクトドライブ方式で,低速回転の低振動DCサーボモーターが搭載されていました。サー
ボ方式には,新開発の高精度のマグネディスクサーボが装備されていました。データレコーダーなどの精密計測機器
の専門メーカー・ソニーマグネスケールの精密計測機に駆使される技術を投入して完成された新方式で,ターンテーブ
ルの外周という広い面積に,速度検出信号を高密度に記録し,これをマルチギャップヘッドで検出する8ヶ所平均検出
方式がとられ,きわめて高精度で,安定したサーボ方式となっていました。
PS-4750の外観上の大きな特徴が独自のターンテーブルマットでした。通常の平面的なゴム製のマットにレコード盤
を載せた場合,どこかが浮き上がった場合,不要な縦振動で共振を起こし音質に悪影響が生じてしまいます。こうした
共振を抑えるために,レコードがターンテーブルに密着する独自のインシュレーション・マットを開発・搭載していました。
このマットは,中央部に小さな穴があり,この穴を通る空気の粘性抵抗が縦方向の不要な振動を抑え共振をダンピン
グする仕組みになっていました。つまり,吸盤の仕組みで吸着する一種の吸着マットとなっていました。
しかし,こうしたマットはその柔軟性により,レコードのふらつきが起きやすく,こうした点の音への影響もあり,その後
主流とはならなかったようでした。
トーンアームは,有効長237mm,スタティックバランス型のS字形ユニバーサル・トーンアームで,本体にインサイド・
フォース・キャンセラー,カートリッジ傾き調整機構が組み込まれた高精度なトーンアームでした。また,オーバーハン
グチェッカーも装備されていました。UP/DOWN両方にダンパーがきいたアーム・リフターが装備され,レコードや針
の痛みを防いでいました。また,このアームリフターは,パワースイッチと連動した形になっていました。
そして,このトーンアームには,小型円形マグネットをV字形に置いたMM型カートリッジが付属していました。
以上のように,PS-4750は,当時のソニーの中級機として,新素材を各部に生かすなど新技術を投入しつつ,オーソ
ドックスに性能を高めた1台でした。当時のソニーのステレオシステムにもよく組み込まれるなど,主力機として扱われて
いました。独自のターンテーブルマットなど,挑戦的な部分は評価が分かれるところもありますが,総合的な技術をもつ
ソニーらしく,合理的で洗練された作りで,使いやすいプレーヤーとなっていました。
SONY PS-4350
BELT DRIVE PLAYER SYSTEM ¥47,800
また,PS-4750の弟機として,PS-4350が発売されていました。キャビネット,ターンテーブル,アーム等同一の内
容をもっており,ターンテーブルの駆動がDCサーボモーターによるベルトドライブに置き換えられたベルトドライブ機
でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
一貫した総合設計が育てた新鋭機
◎レコード盤の不要な縦振動を吸収,高S/Nを
得たインシュレーション・マット
◎音響特性の優れた新素材SBMC
◎ダイレクトドライブの本領発揮。
新開発超高精度マグネディスクサーボ
を採用しての登場。
◎計算し尽くされた新素材SBMC製の
ターンテーブル
◎高感度ユニバーサル型トーンアーム採用。
◎見やすい直視型ストロボ・スコープを採用。
◎大型インシュレーターを採用。
■ターンテーブル部■
PS-4750 | PS-4350 | |
ターンテーブル | 34cm SBMC 1kg | 34cm SBMC 1kg |
モーター | DCサーボモーター | DCサーボモーター |
駆動方式 | ダイレクト・ドライブ | ベルト・ドライブ |
回転数 | 331/3,45rpm | 331/3,45rpm |
ワウ・フラッター | 0.03%wrms以下 | 0.06%wrms以下 |
SN比 | 68dB以上(DIN-B) | 65dB以上(DIN-B) |
■トーンアーム部■
型式 | スタティック・バランス型ユニバーサル・トーンアーム | スタティック・バランス型ユニバーサル・トーンアーム |
全長(有効長) | 314mm(237mm) | 314mm(237mm) |
オーバーハング | 15mm | 15mm |
トラッキングエラー | +2°30′,-1°20′ | +2°30′,-1°20′ |
オフセット角 | 21°30′ | 21°30′ |
針圧調節範囲 | 0~3g | 0~3g |
シェル重量 | 14.5g | 14.5g |
使用可能カートリッジ重量
(付属シェル使用時) |
4~14g | 4~14g |
カートリッジ傾き調節範囲 | ±12° | ±12° |
■カートリッジ部■
カートリッジ | MM型 | MM型 |
周波数特性 | 20Hz~20kHz | 20Hz~20kHz |
セパレーション | 18dB(1kHz) | 18dB(1kHz) |
出力電圧 | 2.5mV(1kHz,5cm/s) | 2.5mV(1kHz,5cm/s) |
最適負荷インピーダンス | 50kΩ | 50kΩ |
コンプライアンス | 10×10-6cm/dyne(垂直,水平) | 10×10-6cm/dyne(垂直,水平) |
針圧(最適針圧) | 1.5~2.5g(2g) | 1.5~2.5g(2g) |
針 | 0.5milダイヤ針 | 0.5milダイヤ針 |
重量 | 5.5g | 5.5g±0.5 |
■電源部・その他■
使用半導体 | IC1,トランジスタ6,ダイオード5 | IC1,トランジスタ6,ダイオード4 |
電源 | AC100V,50/60Hz | AC100V,50/60Hz |
消費電力 | 5W | 6W |
大きさ | 477(幅)×175(高さ)×420(奥行)mm | 477(幅)×175(高さ)×420(奥行)mm |
重さ | 8.5kg | 8.2kg |
※本ページに掲載したPS-4750,PS-4350の写真・仕様表等は
1974年10月のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式
会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転
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