ＳＯＮＹ ＰＳ-８７５０
ＤＩＲＥＣＴ ＤＲＩＶＥ ＰＬＡＹＥＲ ＳＹＳＴＥＭ ￥１６８，０００
１９７５年に，ソニーが発売したプレーヤーシステム。当時のソニーのプレーヤーシステムの最高級機で，
精密でメカニックなデザインと理詰めの設計をもつ，ソニーらしい高性能プレーヤーでした。
ターンテーブルは直径３２ｃｍアルミダイカスト製で，裏面にデッドニング処理が施され，共振を抑えてい
ました。モーターには，滑らかな回転を誇るＡＣサーボモーターを搭載し，ソニー自慢の「マグネディスクサ
ーボ」＋「クリスタルロック方式」により高い回転精度を誇りました。「マグネディスクサーボ」は，精密計測
器の技術を導入したもので，ターンテーブル外周に，５１２波の検出信号を着磁し，８歯のマルチギャップ
ヘッドで平均値検出してサーボをかけるもので，サーボ効果の向上と，すぐれた負荷特性，ワウ・フラッタ
ー特性を実現していました。さらに，「マグネディスクサーボ」の速度制御回路に水晶発振の位相制御回
路を加えた「クリスタルロック方式」をとることで，より安定した高精度な回転を実現していました。ターンテ
ーブル周囲のストロボパターンのためのストロボの光源もクリスタルロックされ，高精度な回転数確認がで
きるようになっていました。ターンテーブルのストップ動作，及び回転数変更時には，無接触の電子ブレー
キが素早くはたらくようになっていました。また，ピッチコントロール（±４％，３３1/3ｒｐｍ，４５ｒｐｍ独立）も
装備されていました。
ターンテーブルシートには，共振を抑える特殊な構造のものを採用していました。柔らかなゴムの中に，
粘性抵抗の高い特殊な液体を封入したシートで，「オイルダンプ式インシュレーションマット」と称していま
した。
アームは，スタティックバランス型で，アーム支点部には，宝石を使用した２ポイント式解放軸受けで，高
感度を実現し，ダイナミックバランスの崩れのないラテラルバランサーや，インサイドフォースキャンセラー
などにより，安定したトレースが確保されていました。アームパイプ，ヘッドシェルには，軽く，強く，共振し
にくい炭素繊維を使用し，剛性が得られるように炭素繊維に方向性を持たせてアニールしたカーボンパイ
プアーム，アルミ材に炭素繊維を積層したカーボンクラッドヘッドシェルが採用されていました。
また，アームには，ルミナスセンサー（無接触光電素子エンド検出）方式によるオートリターン機構が装備
され，演奏終了時には，自動的にアームが戻る，トーンアームに悪影響のないオート機構となっていまし
た。また，演奏途中でのオートカット機構も装備されていました。
キャビネットには，ソニーが開発した音響素材ＳＢＭＣが採用されていました。ＳＢＭＣは内部損失が大き
く共振しにくく，さらに高剛性で収縮率が小さいため成形精度が高いなど優れた特徴を持つ樹脂素材で
厚さ，構造などを総合的に検討して，要所に補強を施した一体成型キャビネットに仕上げられ，ハウリング
に強く，高いＳＮ比を誇るキャビネットとしていました。
インシュレーターは，振動吸収率が高い特殊インシュレーターが装備され，高さ調整機構もついていました。
また，ダストカバーには静電気帯電防止用のパターンがつけられていました。
以上のように，ＰＳ-８７５０は，各部に新素材，新技術を取り入れた，ソニーらしい先進的な内容をもつ１台
でした。回転制御に水晶制御を取り入れたのも，最も早い方であったと思います。オーソドックスながら，バ
ランスのとれた使いやすいプレーヤーシステムでした。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。
