SONY PS-X6
DIRECT DRIVE STEREO TURNTABLE SYSTEM ¥59,800
1977年に,ソニーが発売したアナログプレーヤー。ソニーは,1970年台に入り,PS-4700といった4桁の型番
をもつアナログプレーヤーを数多く発売していましたが,1977年,超弩級機PS-X9を発売し,新たにPS-X1桁
の型番を持つシリーズを発売,展開していきました。その中の,中級機,普及機クラスの主力機がPS-X6でした。
ターンテーブルは直径32cmのアルミダイキャスト製で,当時,多くのターンテーブルに見られた外周部にストロボ
用のパターンが刻まれた形状でした。ストロボ照射プリズムからは,水晶発振器から独自に作られた120個の正
確なパルスが送り出され,静止して見えるほどシャープなストロボパターンが見えるようになっていました。ターン
テーブルシートは不要な振動を抑えるように,厚手の特殊ゴムシートが採用されていました。
ターンテーブル駆動はモーターが直接ターンテーブルを回すDD方式で,モーターには,新開発のリニア・スロットレス
モーターが搭載されていました。このモーターは,原理的にトルクムラの極めて少ないリニア・ドライブ方式が採用され
ているため,滑らかで静かな回転が実現されていました。さらに,扁平型の空芯コイルと強磁力のマグネットリングを
使用し,コイルとマグネットがより接近するため,効率よく大きなトルクが得られるようになっていました。構造もシンプ
ルとなっており,信頼性も高められていました。
サーボシステムは,ソニー独自のマグネディスク回転数検出方式が採用されていました。これは,ソニーマグネスケー
ルの精密計測機の技術を導入したもので,ターンテーブルの外周部に広範囲にわたって512波の速度検出信号を着
磁し,これを8歯のマルチギャップヘッドで平均値検出する方式でした。高精度で広帯域な検出方式によって,立ち上
がり特性が大幅に改善され,外乱にも影響されない高精度で安定した回転が実現されていました。さらに,速度サー
ボ回路に水晶発振の位相制御回路を加えたクリスタルロックが搭載され,温度変化や電源電圧の変化,針圧負荷な
どの影響が検知限界の領域まで抑えられていました。
アームは,S字型のユニバーサルタイプで,軸受部には精密なピボットベアリングを用いて高感度化され,各接合部は
ダンパーでサポートし,アーム支持部はがっちりした亜鉛ダイキャストアームベースに固定するなど無共振化が図られ
ていました。ヘッドシェルも高剛性なアルミダイキャスト製とされていました。また,付属カートリッジとして単品としてしっ
かりした性能を持つMM型のXL-15が標準装備されていました。
PS-X6はフルオートプレーヤーとして,フルオート動作の操作性,安全性,信頼性とアームとしての基本性能を両立さ
せる設計が追求されていました。特に,針先の動作状態を検出し,リターンさせるエンド検出には,アームの位置検出
をランプが発した光を光電素子が受けて(間にあるシャッターを利用して),その光の量と変化を検出し,アームをスムー
ズにリターンさせる無接触のルミナスセンサー方式が採用され,アームに加わる側圧ゼロを実現していました。
演奏スタート時のオートリードイン,演奏ストップ時のオートリターンの動作,リピート動作は,キャビネット前面に設けら
れた電子タッチスイッチとLED表示による軽快な操作が可能となっていました。前面スイッチであるため,ダストカバー
を閉めての操作も可能となっていました。ディスク途中でのアームの上げ下げはスムーズなオイルダンプ式のアームリ
フターでできるようになっていました。また,アームのオート機構に対して,アームリミッター機構が採用され,動作中の
トーンアームを手で止めたりした際の不慮の事故にも耐える安全性が確保されていました。
キャビネットには,ソニーが開発した音響素材SBMCが採用されていました。SBMCは内部損失が大きく共振しにくく
さらに高剛性で収縮率が小さいため成形精度が高いなど優れた特徴を持つ樹脂素材で,厚さ構造などを総合的に検
討して,要所に補強を施し,部分共振を低減した一体成形キャビネットが実現されていました。さらに,固体でも液体で
もないゲル状高粘弾性物質をゴムカップに充填し,振動のダンピング効果を高めた大型のインシュレーターを採用し,
耐振性を高めていました。このインシュレーターは,低重心で,高さ調整も可能となっていました。
また,キャビネット上面には,カートリッジを装着したヘッドシェルを立てておける交換用シェルスタンドが2個装備されて
いました。ダストカバーは着脱自在のアクリルダストカバーが付属していました。
以上のように,PS-X6は,比較的手頃な価格の中級機ながら,各部にソニーらしく高い技術が投入され,デザイン的
にもバランスのとれたプレーヤーシステムとなっていました。また,弟機として,フルオート機構が外されたマニュアルタ
イプのPS-X3が発売され,基本性能が同一のコストパフォーマンスのすぐれた1台となっていました。

SONY PS-X3

DIRECT DRIVE STEREO TURNTABLE SYSTEM ¥45,800


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



スロットレスモーターと高精度検出方式が支える
D.Dクリスタルロック機。しかも電子式フルオートです。

◎滑らかに,静かに。新開発
 高トルクなリニア・スロットレスモーター採用
◎優れた回転精度と安定性を実現。
 ソニー独自のマグネディスク回転数検出方式。
◎回転数のずれを測定検知限まで追い込んだ
 クリスタルロック
◎音響素材SBMC一体成形キャビネットと
 高粘弾性大型インシュレーター
◎新設計の高感度,高精密トーンアームに,
 好評のカートリッジXL-15を装備
◎基本性能を損なわずに,わずらわしい操作から解放
 しました。ルミナスセンサー方式のフルオート機構
◎オートリードイン,オートリターン,オートカット,
 リピートプレイも思いのまま。




●主な仕様●

  PS-X6 PS-X3
形式 フルオート マニュアル
ターンテーブル部
ターンテーブル 32cmアルミダイキャスト 32cmアルミダイキャスト
モーター リニア・スロットレスモーター リニア・スロットレスモーター
駆動方式 ダイレクト・ドライブ ダイレクト・ドライブ
サーボ方式 クリスタルロックマグネディスク回転数検出方式 クリスタルロックマグネディスク回転数検出方式
回転数 331/3,45rpm 331/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.025%wrms 0.025%wrms
SN比 73dB(DIN-B) 73dB(DIN-B)
トーンアーム部
形式 スタティック・バランスS字型 スタティック・バランスS字型
有効長(全長) 216.5mm(300mm) 216.5mm(300mm)
オーバーハング 16.5mm 16.5mm
針圧調節範囲 0〜3g 0〜3g
シェル自重 10.7g(SH-145) 10.7g(SH-145)
使用可能カートリッジ自重
(付属シェル使用時)
2.5〜9.5g
8〜14.5g(補助ウェイト使用)
2.4〜9.4g
8〜14.8g(補助ウェイト使用)
カートリッジ部
カートリッジタイプ MM型(XL-15) MM型(XL-15)
周波数特性 10Hz〜30,000Hz 10Hz〜30,000Hz
出力電圧 4mV(1kHz,5cm/s) 4mV(1kHz,5cm/s)
最適負荷インピーダンス 50kΩ〜100kΩ 50kΩ〜100kΩ
針圧(最適針圧) 1.2〜2.5g(1.7g) 1.2〜2.5g(1.7g)
0.6milダイヤ針 0.6milダイヤ針
自重 5.2g 5.2g
電源部・その他
電源 AC100V,50/60Hz AC100V,50/60Hz
消費電力 4W 6W
大きさ 445W×150H×365Dmm 445W×150H×365Dmm
重量 11.0kg 10.5kg
付属品 45回転アダプター,トラッキングエラー確認ゲージ
補助ウェイト,カートリッジスペーサー
45回転アダプター,トラッキングエラー確認ゲージ
補助ウェイト,カートリッジスペーサー
別売アクセサリー ヘッドシェルSH-135
カートリッジXL-25,XL-35,XL-45E
交換針ND-15G
ヘッドシェルSH-135
カートリッジXL-25,XL-35,XL-45E
交換針ND-15G
※ 本ページに掲載したPS-X6,PS-X3の写真・仕様表等は1977年
 12月のSONYのカタログより抜粋したもので,ソニー株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等を
 することは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
★メニューにもどる
  
   
★アナログプレーヤーPART6のページにもどる

 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。

メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system