ＹＡＭＡＨＡ ＰＸ-１
ＳＴＥＲＥＯ ＲＥＣＯＲＤ ＰＬＡＹＥＲ ￥４８０，０００（カートリッジレス）
１９７７年にヤマハが発売したフルオートプレーヤーシステム。同社のリニアトラッキング方式の１号機
で，しっかりと物量が投入された本格派の重量級のプレーヤーで，同社の最高級機でした。このＰＸ-１
の後，ＰＸ-２，ＰＸ-３とリニアトラッキング方式の高級プレーヤーをヤマハは送り出していきました。
ＰＸ-１の最大の特徴は，ヤマハ初のリニアトラッキング方式トーンアームの搭載にありました。ＰＸ-１の
リニアトラッキングアームは，「シンメトリカルリニアアーム」と称され，左右対称設計で，アーム前後の
バランスをとるためにダイナミックバランス型になっていました。リニアトラッキング方式に採用に加え，
左右，前後のバランスをとった設計により，ラテラルバランスもとれ，等価質量も小さくなっていました。
アームの実効長は１９０mmとショートアームで，矩形で横長のバランスウェイトやシェルコネクタをアー
ム支点に近づけた設計により，慣性質量が通常のオフセットアームに比べて４０％少なくなり，ここでも
等価質量が大きく低減されていました。以上のような設計により，トレーシング性能が高く，クロストーク
歪，混変調歪が大きく抑えられていました。
アーム送り機構は，２本の精密に研磨されたガイドレールの上を６つのデルリン製ベアリング入りローラ
ー付のアームベースが移動するものでした。アームベースの精密で正確な移動のために，非接触式の
光電式アーム角度検出機構機構で，アームの角度検出を行い，その信号をレコードの偏芯などによる
誤動作を抑えた高安定・高精度サーボ回路によりコントロールされたコンピュータ用コアレスモーターを
使用したアーム駆動機構に送り込んで制御していました。アーム駆動機構は，精密研磨仕上げのドライ
ブスクリューでアームベースを低摩擦駆動する仕組みがとられていました。また，駆動用のモーターは
回転音と駆動音を遮断するためにゴムで密閉し，真鍮のケースに封入され，さらにインシュレーターを介
して固定されていました。また，ドライブスクリューにはゴムベルトを介してトルクを伝える仕組みになって
いて，ドライブスクリューに振動が伝わりにくいようになっていました。
ターンテーブルは，超ジュラルミンをムクから削り出した重量５．６ｋｇ，慣性質量７６０ｋｇ・ｃｍ２のものが
搭載され，ドライブするモーターには，起動トルク２ｋｇ・ｃｍのスロットレスＤＣモーターが搭載されていま
した。このモーターは，２０極１５ワインディングで円滑な回転が得られる構造を持ち，全周平均プッシュ
プル電磁式の回転数検出ＦＧによる，電子ブレーキ付両方向サーボ・クォーツＰＬＬダイレクトドライブ方式
となっていました。ＰＬＬをＯＦＦにすれば，ピッチを±６％で可変することができるようになっていました。
プレーヤーベースは，５mm厚アルミダイキャストの頑丈なものでシステムの総重量は２７ｋｇにも達して
いました。インシュレーターは，スプリングとオイルダンパを組み合わせた大型のものが搭載されていま
した。アクリル製のダストカバーは，５mm厚のもので，閉じたままでの操作も可能な形状を持ち，面積を
抑えた構造により，さらに高剛性になっていました。
信号ケーブルには，ネグレックス銀クラッドローインピーダンスケーブルが使用され，リード線には無酸素
銅線が使用されていました。また，振動そのたの干渉を防ぐために，電源部は別筐体となっていました。
操作系は，専用のロジックＩＣを搭載した純電子式フルオートシステムで，オートリードイン，オートカット，
オートリターン，オートリピートを軽いタッチのボタン操作一つでできるようになっていました。また，アーム
送りツマミによるアーム送りのマニュアル操作も可能となっていました。
以上のように，ＰＸ-１は，ヤマハ初のリニアトラッキング式プレーヤーとして，贅を尽くした内容を持ち技術
的にも高い完成度を誇っていました。ヤマハの頂点に君臨する超弩級プレーヤーの一つとして記憶に残っ
ている１台です。
以下に，当時のカタログの一部をご紹介しましょう。
