ONKYO PX-55F
QUARTZ DD FULL AUTO PLAYER SYSTEM ¥59,800

1983年に,オンキョーが発売したプレーヤーシステム。1981年に発売されたフルオートプレーヤーPX-5Fの後継
機で,デザインもブラックの精悍なものに変わるとともに,内容的にも各部が強化されたものになっていました。

ターンテーブルは,直径33cm,重さ1.5kgのアルミダイキャスト製で,最適質量分布と充分なフライホイール効果を
考慮して設計されたもので,一品ごとにダイナミックバランスをチェックして超精密で仕上げられ,大きな慣性質量によ
り回転精度が高められていました。
ターンテーブルを駆動するモーターは,20極30スロットのハイトルク・ダイレクトドライブモーターが搭載されていました。
このモーターは,モーター軸に取り付けられたFG(周波数発電機)により回転数を検出し,その検出信号を5.5296
MHzの水晶発振器から分周して得られた基準信号を比較することで,正確な回転数制御を行うPLLサーボクォーツ
ロック方式により制御されていました。周波数発電機は全周積分型が採用され,円周上のわずかな誤差もキャンセル
できるようになっていました。こうした設計により,ワウ・フラッター0.023%以下(WRMS),0.012%以下(FG)と
いう高精度な回転が実現されていました。

トーンアームは,軽質量で感度の高いストレートアームが搭載され,トラッカビリティを大幅に向上させ,アーム自体の
固有振動周波数を最適値に設定し,レコードのソリ等による音質への悪影響を排除していました。ストレートアームで
は,シェル一体型のものが多く見られますが,PX-55Fでは,PX-5F同様に,内側にオフセットされた形状のシェルを
ネジ止めする方式で,ADCタイプと称されていました。(ADCのアームLFM-2に付属したネジ止め式のオフセット角付
きヘッドシェルがルーツとされるため,このように称していたと考えられます。)軽量化(ローマス化)では不利となるもの
の,カートリッジの交換がしやすいというメリットがありました。ヘッドシェルは,高剛性のカーボンファイバー製のものが
採用されていました。アーム素材には,音響的に効果の高い表面加工処理で仕上げられた高剛性アルミニウムが使
用されていました。トーンアームサポート部には,高熱焼入れ仕上げを施したミニチュアベアリングが用いられ,上下方
向,軸回転方向に動きのスムーズなジンバルサポート方式が採用されていました。
また,PX-55Fには,付属カートリッジとして,オルトフォン・VMSカートリッジFF-15EO/MKUが標準装備されていま
した。

PX-55Fは,フルオートプレーヤーとして,サーチ機構,オートリピートを含め,トーンアームの全動作を前面操操作キー
でコントロールできるフルオート機構が採用されていました。アームのトレース能力,感度を損なわないように,レコー
ドエンドの検出は,光電検出素子による完全無側圧方式が採用されていました。

PX-55Fの最大の特徴としてあげられるのは,キャビネットを中心とした筐体や構造面での振動対策の大幅な強化で
した。新たに開発された「ダブル・サスペンションシステム」では,フロートベースに取り付けた信号系(トーンアーム等)
をキャビネットに対してサスペンド(伝達遮断)し,さらにキャビネットを床面に対してサスペンド(インシュレート)するとい
う,2重の振動伝達遮断機構を通じて,防振能力を従来の2倍に強化していました。

トーンアームとモーターを保持するフロートベースは,高剛性・高比重の亜鉛ダイキャストを必要最少面積で成型し,物
性的,面積的にも直接音圧から受ける影響を極少に抑えたものでした。また,このベースにより,アームとモーターは強
固に連結された形になり,相対的に位置変位がゼロに近くなり,トレースの理想に近づく構造ともなっていました。
さらに,キャビネットには,内部ロスと音質への影響をバランスさせた高比重レジン・コンクリート材が使用され,水平・垂
直方向振動に極めて強い80mm径の大型インシュレーターで支えられ,駆動系・信号系が安定的に支えられた構造と
なっていました。

以上のように,PX-55Fは,前モデルPX-5Fを大幅に強化した内容を持ち,フルオートプレーヤーながら,しっかりした作
りにより,すぐれた性能と高いコストパフォーマンスを実現していました。アナログプレーヤーではブランド的に強くないオン
キョーゆえか,広く話題となるモデルではありませんでしたが,実力派の1台でした。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




絶対の安定性。
オンキョーは,振動を2重に遮断します。
ダブル・サスペンション・プレーヤーシステム。

ディスクを回す満足感を限りなく高めたコンピューター・フルオート。
クォーツDDモーター,軽質量ストレート・トーンアーム
オルトフォン・カートリッジなど,最高水準の精緻なメカを
ダブル・サスペンション方式が,音楽性ゆたかに支えます。

◎徹底的な音楽クリアネスを実現した
 ダブル・サスペンション・重量級キャビネット
◎ハイトルク・クォーツロックDDモーター
 大型・重量級33cmターンテーブル
◎理想のトランスデューサー機能を求めた
 高感度ストレートライン・ローマス・トーンアーム
◎完全無側圧の光電検出フルオート機構
◎オルトフォン社VMSカートリッジ標準装備




●主な仕様●

●ターンテーブル 330mmアルミダイキャスト,重量1.9kg(シート含む)
 駆動方式 クォーツPLL・ダイレクトドライブ
 ワウ・フラッタ 0.012%以下(FG),0.023%以下(W.R.M.S.)
 S/N 78dB(IEC-Y,DIN-B)
●トーンアーム スタティックバランスストレートアーム
 有効長 224mm
 オーバーハング 13mm
 オフセット角 21°
 トラッキングエラー +3°〜−1°以内
 適合カートリッジ重量範囲 5〜9g(ヘッドシェル含まず)
 針圧調整範囲 0〜3g
 付属機構 着脱式ヘッドシェル(SH-21E)
ダイヤル式アンチスケーティング
●カートリッジ VMS型(OC-60VMS)オルトフォンFF-15EO/MKU
 周波数特性 20Hz〜20kHz
 出力電圧 5mV(1kHz)
 出力バランス 1.5dB以内(1kHz)
 セパレーション 20dB以上(1kHz)
 コンプライアンス 20×10−6cm/dyne
 カートリッジ重量 5g
 適正針圧 2.0g
 針先 0.7×0.3mil楕円針
 交換針 DN-60STE・オルトフォン名称NF-15EO/MKU
 負荷インピーダンス 47kΩ
●消費電力 9W
●寸法 442W×155H×410Dmm
●重量 8.8kg
※ 本ページに掲載したPX-55Fの写真・ 仕様表等は1981年1月
のONKYOのカタログより抜粋したもので, オンキョー株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引
用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
★メニューにもどる


★アナログプレーヤーPART7のページにもどる


現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。

メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system