PX-5Fの写真
ONKYO  PX-5F
DIRECT DRIVE FULLY AUTOMATIC  TURNTABLE ¥59,800

1980年に,オンキョーが発売したプレーヤーシステム。前年の1979年に発売されたフルオートプレーヤー
PX-8Fの弟機にあたるモデルで,機 能的にすっきりとまとめられたデザインが印象的ですが,しっかりとした
中級機でした。

ターンテーブルは,直径31cm,重量1.4kgのアルミダイキャスト製で,レコード面の高い水平度をめざして
ターンテーブル表面全面に,ダイヤモンドによる平面研磨加工が施され,平面水平度が精密工作機械と同レ
ベルにまで向上していました。また,ターンテーブル上は写真では,金属面が見えるため,一見シートがない
かのように見えますが,通常多く用いられるゴム製のものではなく,透明なアモルファス・ポリオレフィンのもの
が装着されていました。このターンテーブルシートは,アモルファス・ポリオレフィンをセンターゲート射出成型
で仕上げ,均質で厚み精度の非常に高いもので,平面度の高いターンテーブルと組み合わせることで,平面
度と不要共振の抑制を高いレベルで両立させ,解像度の高いディスク再生を実現していました。

ターンテーブルを駆動するモーターには,20極30スロットのハイトルク・ダイレクトドライブモーターが搭載さ
れていました。このモーターは,モーター軸に取り付けられたFG(周波数発電機)により回転数を検出し,そ
の検出信号を5.5296MHzの水晶発振器から分周して得られた基準信号を比較することで,正確な回転
数制御を行うPLLサーボクォーツロック方式により制御されていました。周波数発電機は全周積分型が採用
され,円周上のわずかな誤差もキャンセルできるようになっていました。こうした設計により,ワウ・フラッター
0.023%以下(WRMS)という高精度な回転が実現されていました。

トーンアームは,従来の同社のS字型アームに比べて実効質量を約半分(15g)にしたストレートアームが搭
載されていました。アームの素材として硬質アルミニウムが採用され,直線構造によって高い剛性を確保して
いました。 ストレートアームでは,シェル一体型のものが多く見られますが,PX-5Fでは,内側にオフセットされ
た形状のシェルをネジ止めする方式で,ADC方式と称していました。(ADCのアームLFM-2に付属したネジ
止め式のオフセット角付きヘッドシェルがルーツとされるため,このように称していたと考えられます。)この方
式により,軽量化(ローマス化)では不利となるものの,カートリッジの交換がしやすいというメリットがありまし
た。ヘッドシェルは,軽質量・高剛性のカーボンファイバーヘッドシェルが採用されていました。トーンアームの
サポート部には,高熱焼き入れが施された高精度加工のミニチュアベアリングが使用され,垂直方向,水平
方向ともフェザーサポート方式で軽い動きを実現し,中央部の初動感度7mgを実現していました。
PX-5Fには,レコーディング・カッターヘッドと相似型のデュアルマグネット構造を持つVM型カートリッジであ
るOC-201Vが標準装備されていました。

PX-5Fは,フルオートプレーヤーとして,アームに触れずにワンタッチキーにより,オートリードイン,オートリ
ターン,リジェクト,オートリピートのフルオート動作が可能となっていました。さらに,アームの内・外周への移
動・サーチドライブ,サーチ後のトーンアーム昇降操作キューダウン/リフトアップ,任意のポジションからエンド
溝までのリピート動作・メモリーリピートといった動作も装備されていました。アームの動作には,マイコンが搭
載され,中央演算装置の指令と,光電検出素子による無側圧オートリターン検出機構,アームドライブ専用の
パルスモーターにより,フェザータッチボタンの操作により,正確でクイックレスポンスのアーム動作が実現され
ていました。

PX-5Fの断面図

キャビネットは,物性の異なる素材を巧みに組み合わせて小型化と無共振化をめざした4層重合組み合わせ
キャビネットが採用されていました。上層には金属板,中層には合成ゴム系粘弾性特殊樹脂,下層に耐衝撃
樹脂を3kg/cm2もの圧力で3 層圧着し,ターンテーブル・ボードの振動伝達を徹底的に低減する構造となって
いました。加えて,底板部に,本体キャビネットと比重の異なる音楽的にも配慮された防振樹脂を使用し,共振
の重畳やハウリングの影響を抑えた4層構造としていました。
そして,プレーヤー全体を支えるインシュレーターには,低域に有効なスパイラルコイルスプリングと,中高域で
防振効果の大きい特殊形状防振ゴムを組み合わせた複合構造のインシュレーターが搭載されていました。プレ
ーヤーの総重量とコイルスプリングのコンプライアンスで形成される共振周波数は約10Hzになっており,これ
以上の可聴周波数帯域でしっかりと防振効果を発揮するようになっていました。

以上のように,PX-5Fは,比較的手頃な価格のフルオート型プレーヤーながら,基本部分がしっかりと作り上げ
られた,使いやすいプレーヤーとして仕上げられていました。アナログプレーヤーではブランドイメージの強くない
オンキョー発であったためか,あまり注目されるモデルではありませんでしたが,今から見ると,非常にコストパ
フォーマンスの高い1台であったと思います。

また,PX-5Fには同時に弟機PX-3Fが発売されました。PX-5Fとほぼ同一ながら,ターンテーブルがやや軽量
(1.2kg)となり,モーターがクォーツロック方式でなく,ブラシレスDCサーボモーターが搭載されていました。

PX-3Fの写真
ONKYO PX-3F
DIRECT DRIVE FULLY AUTOMATIC  TURNTABLE ¥49,800



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




時代を予見する精緻さのフォルム,
凝縮のコンピュータプレーヤー。


◎コンピュータ内蔵。クイックレスポンス・フルオート
◎理想のトランスデューサー機能を求めた
 高感度・軽質量ストレート型トーンアーム
◎マニア仕様のVMカートリッジ標準装備
◎抜群の回転特性,ハイトルクDDモーター
◎極致の水平度を実現したダイヤ研磨ターンテーブルと,
 新開発精密加工アモルファス・ポリオレフィンシート
◎無共振に徹した4層重合組合わせキャビネット(特許出願中)
◎ダブル構造のオーディオ・インシュレータ




●主な仕様●

 
PX-5F
PX-3F
●型式
ダイレクトドライブ方式フルオートプレーヤー
オートリードイン・オートリターン・オートリジェクト
オートリピート・メモリーリピートを含む2モータ
マイコン制御フルオート機構
ダイレクトドライブ方式フルオートプレーヤー
オートリードイン・オートリターン・オートリジェクト
オートリピート・メモリーリピートを含む2モータ
マイコン制御フルオート機構
●ターンテーブル
31cmアルミダイキャスト,重量1.4kg(シート含む)
31cmアルミダイキャスト,重量1.2kg(シート含む)
 モータ
クォーツロックDDモータ
ブラシレスDCサーボモータ
 回転数
331/3,45rpm
331/3,45rpm(±3%調整可能)
 ワウ・フラッタ
0.023%以下(W.R.M.S.)
0.025%以下(W.R.M.S.)
 S/N
63dB以上(JIS),75dB以上(DIN-B)
60dB以上(JIS),72dB以上(DIN-B)
●トーンアーム
スタティックバランスストレート型トーンアーム
スタティックバランスストレート型トーンアーム
 有効長
224mm
224mm
 オーバーハング
13mm
13mm
 オフセット角
21°
21°
 トラッキングエラー
+3°,−1°以内
+3°,−1°以内
 カートリッジ重量範囲
8〜12g(ヘッドシェル含む)
8〜12g(ヘッドシェル含む)
 針圧調整範囲
0〜3g
0〜3g
 付属機構
針圧直読付加,ADCタイプ着脱ヘッドシェル(重量3g)
スライド式アンチスケーティング機構
針圧直読付加,ADCタイプ着脱ヘッドシェル(重量3g)
スライド式アンチスケーティング機構
●カートリッジ
VM型
VM型
 周波数特性
18Hz〜25,000Hz
18Hz〜25,000Hz
 出力電圧
4mV(1kHz)
4mV(1kHz)
 出力バランス
2dB以内(1kHz)
2dB以内(1kHz)
 セパレーション
25dB以上(1kHz)
25dB以上(1kHz)
 カートリッジ自重
5.4g
5.4g
 適正針圧
2.0g
2.0g
 針先(交換針)
0.6mil円針(DN-201ST)
0.6mil円針(DN-201ST)
 負荷インピーダンス
47kΩ
47kΩ
●消費電力
11W
12W
●寸法
418W×130H×380Dmm
418W×130H×380Dmm
●重量
6.5kg
5.6kg


※ 本ページに掲載したPX-5F,PX-3Fの写真・ 仕様表等は1981年1月
のONKYOのカタログより抜粋したもので, オンキョー株式会社に著作権
があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすること
は法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
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