Victor QL-A70
QUARTZ LOCK
AUTO LIFT UP TURNTABLE ¥69,8001983年にビクターが発売したマニュアルプレーヤーシステム。比較的手ごろな価格のプレーヤーながら,
オーソドックスに性能を追究した手堅い作りのプレーヤーで,価格から考えられないほどしっかりした内容
を持ったプレーヤーでした。QL-A70の最大の特徴は,直径35cm,重量2.9kgもの大型で重量級のターンテーブルを搭載していた
ことでした。直径を通常の30cmよりも大きく取ることで,重さや形状の等しい30cmターンテーブルに比べ
て慣性質量が30%も大きくなり,滑らかで静かな回転を実現していました。
35cmの大型のターンテーブルは,新開発されたハイトルク・コアレス・ダイレクト・ドライブ・モーターにより駆
動されていました。さらに,軸受け荷重を従来の10分の1に低減するというマグネティックサポート方式を採
用し,0.005%(回転部FG法測定)という低ワウ・フラッターを実現していました。
「マグネティックサポート」はモーター自身の磁力を利用して,回転子(ローター)に上向きの吸引力を生じさ
せて軸受け摩擦を低減させ,滑らかな回転を得るというものでした。ターンテーブルを取り付けない状態では
下側にある回転子(ローター)が約2.5kgの力で固定子(ステーター)に引きつけられており,レコードを加え
て3kgをオーバーする重量級ターンテーブルを取り付けると,この吸引力2.5kgを差し引いた残りの重さだ
けが軸受けにかかることになり,軽くスムーズな回転が実現されていました。
モーターの回転速度を制御するクォーツロックは,水晶発振子からの正確な信号パルスを位相比較回路と周
波数→電圧変換回路の2箇所に送り込むダブル・サーボ・クォーツ方式をとり,位相比較回路だけにパルスを
送る方式に比べ,約30倍の安定性を持つというものでした。さらに,回転の遅れだけでなく進みにも対応した
±両方向サーボ方式を採用していました。トーンアームは,S字パイプのユニバーサル型で,軸受け部にはビクター自慢のニュー・ジンバル・サポート方
式を採用していました。上下左右の回転軸位置が正確に保たれように,同一金属ブロックにベアリングを取り
付けた合理的な構造となっており,堅牢で高い精度をもっていました。一点支持に近い鋭い動作感度と一点
支持以上の高い安定性を持つ高感度・高安定を誇るアームとなっていました。アームのアップダウンがキャビ
ネットの手前でできるボタン式キューイングを採用し,リニアモーターにより静かでスムーズなアーム操作を可
能にしていました。また,レコードの内周リード溝に入ると,自動的にアームをリフトして,ターンテーブルの回
転を止めるオート・リフト・アップ機構は,アームに側圧をかけない無接触速度検出方式を採用していました。キャビネットは,ビクター自慢の木工技術を生かした美しいミラー仕上げローズウッド調キャビネットで,振動減
衰特性の優れた木材を使用し,モーター取り付け部のカット面積を最小限に抑えた,これまでのプレーヤーづく
りのノウハウを生かしたものとなっていました。インシュレーター・フットは大型のもので,高さ調整も可能となっ
ていました。以上のように,QL-A70は,プレーヤー作りに伝統と定評のあったビクターが技術と物量,ノウハウ等を投入し
て作り上げた力作で,地味ながら価格を超えた実力を持った名機だったと思います。今作れば,とうていこの価
格(¥69,800)では作れないことでしょう。
QL-A70には,同じターンテーブルに電子制御アーム・EDサーボアームを搭載したフルオートモデルQL-Y66F
もあり,優れた操作性と性能を誇りました。
QL-Y66F
ELECTRO SERVO
FULL AUTO PLAYER SYSTEM ¥85,000
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
重量級35cmターンテーブルで
今こそアナログ・ディスク。
マグネティック・サポート・モーターが
マニュアル・プレーヤーの音を
さらに深く透き通らせる。
◎滑らかな静粛回転の極致を求めて
ターンテーブルは直径35cm/重量2.9kg。
◎軸受け荷重を10分の1に低減する
マグネティック・サポートD・Dモーターで
ワウ・フラッターはわずか0.005%(回転部FG法)。
◎高安定ダブルサーボ・クォーツロックと
±両方向サーボ回路。
◎トーンアームには高感度・高安定
ニュー・ジンバルサポート方式,
手前で昇降操作ができる
電子サーボ・キューイング付き。
◎無共振・無振動のノウハウで固めた
オールウッドキャビネットは
美しいミラー仕上げのローズウッド調。
◎針先を傷めない無接触速度検出方式の
オート・リフト・アップ機構。
駆動方式 | FG検出クォーツロック・コアレスDC・ダイレクト・ドライブ |
回転数 | 331/3,45rpm |
ワウ・フラッター | 0.005%(回転数FG法),0.018%(WRMS) |
SN比 | 80dB(DIN-B) |
起動特性 | 1/2回転以内 |
起動トルク | 1.4kg-cm(最大) |
慣性質量 | 560kg-cm2 |
回転数偏差 | 0.002% |
ターンテーブル | 直径35cmアルミダイキャスト,重量2.9kg(シート込み) |
トーンアーム型式 | スタティック・バランス・ニュージンバル・サポート・S字ユニバーサル・タイプ |
有効長 | 254mm |
針圧調整範囲 | 0〜3.0g |
取付けカートリッジ重量 | 12.5〜21g/サブウェイト使用時20〜28g(シェルを含む) |
アーム高さ可変範囲 | 基準値+4.5mm,−3.5mm |
キャビネット仕上げ | ローズウッド調ミラー仕上げ |
定格消費電力 | 17.5W(電気用品取締法基準) |
寸法 | 495W×187H×405Dmm |
重量 | 12.3kg |
その他 | オート・リフト・アップ機構付き,ダストカバー付属 |
●QL-Y66F仕様●
駆動方式 | FG検出クォーツロック・コアレスDC・ダイレクト・ドライブ |
回転数 | 331/3,45rpm |
ワウ・フラッター | 0.005%(回転数FG法),0.015%(WRMS) |
SN比 | 80dB(DIN-B) |
起動特性 | 1/2回転以内 |
起動トルク | 1.4kg-cm(最大) |
慣性質量 | 560kg-cm2 |
回転数偏差 | 0.002% |
ターンテーブル | 直径35cmアルミダイキャスト,重量2.9kg(シート込み) |
トーンアーム型式 | エレクトロ・ダイナミック・サーボTH方式ストレート・S字パイプ交換型 |
有効長 | 254mm |
針圧調整範囲 | 0〜3.0g |
取付けカートリッジ重量 | ストレートアーム:4.5〜10.5g/サブウェイト使用時11.5〜17.5g
S字アーム:8〜14g/サブウェイト使用時15〜21g(シェルを含む) |
アーム高さ可変範囲 | 基準値+5mm,−2mm |
キャビネット仕上げ | ローズウッド調ミラー仕上げ |
定格消費電力 | 12.5W(電気用品取締法基準) |
寸法 | 495W×187H×405Dmm |
重量 | 12.3kg |
その他 | フルオート機構付き,ダストカバー付属 |
※本ページに掲載したQL-A70,QL-Y66Fの写真・仕様表等は1983年11月
のVictorのカタログより抜粋したもので,日本ビクター株式会社に著作権があり
ます。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁
じられていますので,ご注意ください。
★メニューにもどる
★アナログプレーヤーPART2のページにもどる
現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。↓ k-nisi@niji.or.jp