Victor QL-A75
QUARTZ LOCK PLAYER SYSTEM ¥95,000
1982年に,ビクターが発売したプレーヤーシステム。ビクターは,1970年代より,アナログプレーヤーの分野では,
すぐれた製品を出しており,バランスのとれた設計は定評がありました。そんなビクターが同年に発売したQL-A95
の弟機として発売したのがQL-A75でした。
ターンテーブルは,重量2.35kgで慣性質量350kg-cm2という重量級で,分厚いアルミダイキャスト製の本体に弾
性リングをリム部内周にはめ込んで共振を抑え込む構造になっていました。シャフト径14mmの大型モーターはコア
レスDCタイプで,1.8kg-cmに達するハイトルクとコッキングのない滑らかな回転を実現し,重いターンテーブルを
1/4回転以内で定速にロックインできるようになっていました。
回転制御は,水晶発振を利用した高精度のクォーツロックとなっており,クォーツロックの安定度を従来の30倍に向
上させたダブル・サーボ・クォーツ方式が採用されていました。回転精度の高い±両方向サーボを利用した,電子ブ
レーキによるクィック・ストップも搭載され,33・1/3rpmと45rpmの切換やストップも迅速に滑らかに行えるようになっ
ていました。
トーンアームは,高剛性・軽質量のパイプ交換式アームが搭載されていました。ねじれやたわみに強いローマス・テー
パード・ストレート・パイプと,チャッキングロック・コネクター等で無共振性を高めたS字ユニバーサル・パイプの2種類
が付属していました。ハイ・コンプライアンス,ローマス・カートリッジにはストレート・パイプ,比較的針圧の重いカート
リッジにはS字ユニバーサル・パイプと様々なカートリッジに対応できるようになっていました。ストレートパイプPH-100
(標準装備,¥7,000)は,上級機のQL-A95のブラック仕上げのもの(PH-200,¥9,000)とは材質が異なり,軽
合金製でしたが,相互に互換性があり,別売でQL-A95のストレートパイプも購入して使用することができました。
アームの回転軸受けは,一点支持方式の感度とジンバルサポート方式をしのぐ安定性を追求したという「ニュー・ジンバ
ルサポート方式」が採用されていました。この「ニュー・ジンバルサポート方式」は,仮想一点支持構造で,4個のベアリン
グが仮想中心点から等距離に配置され,どの回転方向に対しても各ベアリングにかかる力と回転角が等しく,一点支持
と同様な性能が得られるというものでした。
トーン・アームのカウンター・ウェイト内には,複共振系によってアームの共振をキャンセルするダイナミックQダンプ機構
が組み込まれていました。ウェイト・シャフトはゴムなどを介さずに強固に軸受けブロックに固定され全体の共振の位相が
乱れず,ここでも混変調歪が排除されていました。
また,大型アーム・ベースとターンテーブル・ベースをドッキングプレートで強固に一体化して,振動伝搬ループの位相を
整え,有害な混変調歪を排除していました。
QL-A75は,マニュアルタイプのプレーヤーでしたが,針先がレコードの内周リード溝に入ると自動的にアームをリフトし
てターンテーブルの回転を止めるオート・ストップ・アップ機構が装備されていました。アームに側圧をかけない無接触速
度検出方式が採用されており,音質を損なうことなく安全にレコード演奏ができるようになっていました。
キャビネットは,ビクター自慢の木工技術を生かしたソリッド材積層構造の重量級キャビネットが採用されていました。こ
うした積層構造のプレーヤーキャビネットは,ビクターが1972年に,JL-B77に採用したのが最初といわれており,ビク
ターは,積層キャビネットのすぐれた技術があり,高い剛性とともに,美しいローズ調のミラー仕上げの美しいものでした。
インシュレーターは,支点位置を可能な限り高めてキャビネットの安定性を増した低重心構造とし,鉛ベースを介してキャ
ビネットにがっちり取り付けられ,防振性能も高められていました。
以上のように,QL-A75は,各部にビクターの持ち前のすぐれたプレーヤー技術と物量を投入し,オーソドックスにまじめ
に作り上げられたプレーヤーシステムでした。ビクターらしいバランスのとれたデザイン,音質,使いやすさなど,コストパ
フォーマンスにもすぐれていたと思います。上級機QL-A95が吸着機構で目を引いていたのに対し,地味な印象を与え
てしまっていたことや他社からも同クラスに実力派のプレーヤーシステムが発売されていたことなどから,あまり人気を
得ることはできませんでしたが,吸着用の穴がスピンドルやターンテーブルに開けられていないことから,むしろターン
テーブル周りの剛性が高い面もあったなど,その実力は知る人ぞ知るというプレーヤーだったように思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
無共振・無振動化技術の
粋を集めて音質追求,
高度なオーディオ・ファイルに捧げる
マニュアル・プレーヤーです。
◎さまざまなカートリッジに対して
最適マッチングを追求できる
パイプ交換方式高剛性トーンアーム。
◎トーンアームの共振を抑制する
ダイナミックQダンプ機構。
◎ハイ・トルク・コアレスDCサーボ・
モーターと重量級ターンテーブル。
◎高密度積層構造の重量級キャビネット
と低重心インシュレータ-。
◎オート・ストップ・アップ機構。
◎ターンテーブルが定速にロック・インする
と,赤色から緑色に変わるデュアル・カラー・
イルミネート・インジケーター。
駆動方式 | FG検出ダブル・サーボ・クォーツ・コアレスDC・ダイレクトドライブ |
回転数 | 331/3,45rpm |
ワウ・フラッター | 0.008%(WRMS,回転部FG法) |
SN比 | 80dB(DIN-B) |
起動特性 | 0.75sec,1/4回転以内 |
起動トルク | 1.8kg-cm |
ターンテーブル重量 | 2.35kg(マットを含む) |
慣性質量 | 350kg-cm2 |
負荷特性 | 0%(針圧250gまで) |
回転数偏差 | 0.0015% |
トーンアーム型式 | ダイナミックQダンプ,パイプ交換方式 ニュー・ジンバル・サポート(有効長254mm) |
針圧可変範囲 | 0~3.0g |
取付けカートリッジ重量 | サブウェイト使用時4~18g 別売ウェイトSW-A75型使用時34gまで(シェルを含む) |
アーム高さ可変範囲 | ±3mm |
キャビネット仕上げ | ミラー仕上げローズ調 |
寸法 | 495W×209H×419Dmm |
重量 | 14.0kg |
その他 | オート・ストップ・アップ機構付き S字形ユニバーサル・パイプ付属 |
※ 本ページに掲載したQL-A75の写真・仕様表等は1983年6月の
Victorのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
★メニューにもどる ★アナログプレーヤーPART8のページにもどる現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や 印象のある方,そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。
↓