Victor QL-Y33F
FULLY AUTOMATIC PLAYER ¥59,800
1983年に,ビクターが発売したプレーヤーシステム。ビクターは,1979年に,電子制御方式のトーンアーム
「EDサーボ・トーンアーム」を開発し,搭載したQL-Y7を発売し,高い評価を得ていました。その後継機として
1981年にQL-Y77Fを発売し,電子制御アームも完成度を高めていました。その弟機として,ビクターの単
品コンポーネントのアナログプレーヤーのエントリークラスに発売されたのがQL-Y33Fでした。

QL-Y33Fのアームは,上級機のEDサーボ・トーンアームを簡略化したともいえる構造のもので,「エレクトロ
サーボ・トーンアーム」というものでした。ED・サーボ・トーンアームは,水平・垂直軸受けに直結された2組の
コアレス・リニアモーターが搭載されていたのに対し,アームの水平軸のみにリニアモーターを直結した構造と
なっており,垂直方向のリニアモーターが省略されていました。 水平軸のリニアモーターは,アームのフルオー
ト動作と水平方向に発生する超低域共振を抑え込む働きをするようになっていました。



フルオートシステムは,水平方向はリニアモーターを活用し,垂直方向は,通常のアームリフトの仕組みを搭
載し,ギヤやカムなどの摩擦部分がない無接触電子制御となっていました。そのため,アーム駆動のメカノイ
ズはなく,軸受けの感度を損なったり共振を誘発することのないものとなっていました。マイコンで正確に制御
され,レコードサイズの検出,回転数のセレクトもすべて自動で行われるシステムとなっていました。回転数の
手動切換えも可能で,途中から演奏する場合など,アームは自由に手でも動かせるようになっていました。
電子Qダンプ・システムは,水平方向に発生する超低域共振(fo)のピークをマイコン制御で抑え込む働きを
もっており,カートリッジのトレースをいちだんと安定化して有害な混変調歪みなどを防ぐようになっていました。
また,アンチ・スケーティングもリニアモーターによるもので,電子制御化されていました。

ターンテーブルはアルミダイキャスト製で,大型マグネットを採用するとともに,コアレス構造でDCモーター特有
のコッキングを抑えた,ハイトルク・低振動のコアレスD・Dモーターで駆動され,クォーツロックの安定度を従来
の30倍に高めたというダブル・サーボ・クォーツ回路を搭載していました。クォーツロック回路は,徹底的なIC
化で,従来モデルよりコンパクトにまとめられ,信頼性も高められていました。



キャビネットは,このクラスのフルオートプレーヤーでは数少ないウッドキャビネットが採用されていました。ウッド
キャビネットならではの自然な響きの良さと,ローズ調のミラー仕上げの風格ある外観を実現していました。そし
て,幅435mmにまとめられた高密度・コンパクトなサイズは,設置のしやすさだけでなく,外部振動や内部共振
に対する強さなど,音質的にもメリットがありました。

また,QL-Y33Fには,MCカートリッジ・MC-100EBが標準搭載されていました。当時単売されていたMCカー
トリッジ・MC-100E(¥13,500)と同じ内容を持つもので,4個の強力なサマリウム・コバルト・マグネットと高
透磁率セーメンジュールヨークを組み合わせた,ダイレクト・フラックス磁気回路が搭載されていました。シンプル
でオリジナルの構造で,MM型と同様にクランプの抜き差しだけで針交換も可能となった使いやすいMCカート
リッジで,明るいクリアな音をもっていました。



以上のように,QL-Y33Fは,¥59,800という価格ながら,風格ある外観,使いやすいフルオート機構,そして
しっかりした再生能力など,コストパフォーマンスの高さが光る1台でした。今作るとあるいは海外製なら・・と考え
るとその点がよく分かるかと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



ウッド・キャビネットとMCカートリッジと
エレクトロ・サーボ,
クオリティの高さが光る
マイコン制御フル・オート・システムです。

◎無共振・無振動追求ウッド・キャビネット。
◎光センサーでレコードのサイズも自動検出,
 マイコン制御の無接触動作フル・オートシステム。
◎無共振・無振動思想を超低域まで拡大,
 電子Qダンプのエレクトロ・サーボ・アーム。
◎針交換もできるダイレクト・フラックス方式の
 高性能MCカートリッジ。
◎ハイ・トルク低振動のコアレスD・Dモーターと
 高安定ダブルサーボ・クォーツロック回路。




●QL-Y33F型仕様●

駆動方式 FG検出ダブル・サーボ・クォーツ・コアレスDC・ダイレクトドライブ
回転数 331/3,45rpm
ワウ・フラッター 0.015%(WRMS,回転部FG法)
0.025%(WRMS,JIS法)
SN比(DIN-B) 80dB以上
起動特性 1/3回転以内(331/3回転時)
起動トルク 750g-cm
トーンアーム型式 スタティック・バランス型電子Qダンプ・エレクトロ・サーボ(有効長220mm)
針圧可変範囲 0~3.0g(0.1gステップ直読式)
取付けカートリッジ重量 4.5~9.0g
ヘッドシェル重量 4.7g
カートリッジ カートリッジ形式:MC型(MC-100EB型)
周波数特性:20Hz~50,000Hz
出力電圧:0.3mv(1,000Hz)
交換針:DT-100EB(¥6,000)
寸法 435W×161H×376Dmm
重量 9.5kg
※ 本ページに掲載したQL-Y33Fの写真・仕様表等は,1983年6月の
 Victorのカタログより抜粋したもので,JVCケンウッド株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をす
 ることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。

 
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