RD-4600の写真
OTTO RD-4600
STEREO TAPE DECK ¥89,800

1974年に,オットー(三洋電機)が発売したカセットデッキ。三洋電機(パナソニックに吸収され,子会社化してい
ますが)は,1970年代に入り,オーディオブランドとしてOTTO(オットー・Orthophonic Transistorized Technical
 Operation =トランジスタ技術を駆使し,真の音を追求した音響装置の意)を発足させ,力の入ったオーディオ機
器を発売していきました。このころ,総合家電メーカーがオーディオブランドを立ち上げ,資本力にものをいわせ,
大メーカーならではの技術力を投入して力作を発売していきました。この当時の家電ブランドの頑張りは,記憶に
残るものだったと思います。そうした中,オットーブランドで発売したカセットデッキの最上級機がRD-4600でした。

RD-4600の最大の特徴は,DD(ダイレクトドライブ)方式を採用していたことでした。モーターの回転軸がその
まま駆動軸になっているDD方式は,テクニクスが1970年に,レコードプレーヤーSP-10に導入し,さらに翌年
カセットデッキRS-275Uにも導入するなど,テクニクスが先鞭を付けていました。そうした中,テクニクスの親会
社・松下電器(現パナソニック)と関係の深かった三洋電機=オットーが初めてDD方式を採用したカセットデッキ
がこのRD-4600でした。

モーターの回転軸がそのままキャプスタンとなり,テープをダイレクトに走行させるDD方式は,ひとつの理想の形
ではありますが,そのために定速で安定して回転する専用のモーターが必要となります。RD-4600では,新開
発の可飽和磁芯型DCブラシレスモーターが搭載されていました。

可飽和磁芯型DCブラシレスモーターモーター構造図

可飽和磁芯を利用した独自の電圧検出機構によるスイッチングの正確さと,8極24スロットというメカニズムが
毎秒5回転という超低速での安定した回転を実現していました。また,ブラシレス無接点電子整流子モーターと
いう構造により,摩擦,摩耗によるノイズやハムの問題も解消され,すぐれた耐久性も実現していました。
さらに,ワウ・フラッター特性を向上させるために,フライホイールの直径を従来の59φm/mから80φm/m
とすることで,慣性モーメントを約5.7倍とし,キャプスタンシャフトも,ステンレス鋼材420Hからより硬度の高い
ステンレス鋼材440Cとして,仕上がり精度,真円度を大きく高めていました。
また,巻き戻し,早送り用に専用のDCモーターを搭載し,先進的な2モーター構成としていました。

大型フライホイールRD-4600のヘッド

録音・再生ヘッドには,LGFヘッドが搭載されていました。LGFヘッドは,Long life Grain Ferriteヘッドの略
で,名称の通りフェライト系のヘッドでした。S/Nにすぐれた多結晶タイプをベースに,特殊製法による粒子の拡
大によってエッジ部などの剥離や粒子脱落などを解消したものでした。ギャップ廻りなど,より精密でシャープな
加工が施され,S/Nのよさに加え,高域でのリニアリティが大きく改善されていました。耐摩耗性においても,
10万時間→1dB,20万時間→2dBという半永久的ともいえるほどのフェライトならではの硬度が確保されてい
ました。また,消去ヘッドには,同じくフェライト系のダブルギャップフェライトヘッドが搭載されていました。
安定した動作,音質のために電源部は,定電圧電源回路が搭載されていました。

テープセレクターは,ノーマル,ローノイズ,クロームの3段切換で,録再両面特性補償方式がとられ,録音イコ
ライザー,再生イコライザーともテープに合うせたきちんとした特性が確保されていました。
ノイズリダクションとして,ドルビー(Bタイプ)が搭載されていました。ドルビーの効果的な作動のために,左右チ
ャンネル別,テープ別に調整可能な録音キャリブレーション(録音感度調整)が装備されていました。
針式のレベルメーター以外に,過大入力を知らせるLEDによる左右チャンネル別のピークレベルインジケーター
が装備されていました。入力系は,LINE以外に当時のテープデッキらしくMIC端子も前面に装備されていました。
テープ走行の操作系は,自照式のフェザータッチボタンが採用され,オートリワインド,オートリピートなどの機能
も装備されていました。

以上のように,RD-4600は,オットーブランドのカセットデッキの最上級機として,しっかりとした物量と技術が
投入された1台で,ブランド故に注目はされなかったものの,なかなかの実力機でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



すべての技術を結集させたデラックス機

◎OTTO独自開発の可飽和磁芯型DCモーター採用!
 理想のDD(ダイレクト・ドライブ)方式
◎すぐれたS/N,周波数特性,長寿命のLGF(Long
 life Grain Ferrite)ヘッド
◎録音キャリブレーションつきなど・・・・
 徹底的なドルビー対策を万全にしています

●過大入力のあったことを知らせる左右チャンネル別
  ピークレベルインジケーター
●安定した電力供給を行う定電圧電源回路
●ノーマル,ローノイズ,クローム3段テープセレクター
●録音再生両面特性補償方式(録音イコライザーおよび
  再生イコライザー)
●完全自動頭出し録再(オートリワインド,オートリピート
  オートストップ)ができる
●セルフライティングのフェザータッチボタン
●オイルダンパーによるパネルアップ機構




●定格●

録音方式
交流バイアス1/4トラック方式
消去方式
交流消去方式
ヘッド
録音ヘッド/LGF(フェライト)ヘッド
消去ヘッド/ダブルギャップフェライトヘッド
テープ速度
4.8cm/sec
録音時間
往復60分(C-60)
早送・巻戻し時間
90sec(C-60)
ワウ・フラッタ
0.07%WRMS
録音バイアス周波数
100kHz
消去率
70dB以上(1kHz 0VU)
周波数特性
ノーマル 20〜15,000Hz
ローノイズ20〜16,000Hz
クローム 20〜17,000Hz
SN比
DOLBY OFF 50dB/ON 58dB
歪率
1.5%以下(1kHz 0VU)
チャンネルセパレーション
45dB以上(1kHz 0VU)
クロストーク
60dB以上(1kHz 0VU)
入力端子
MIC −70dB 適合マイクロホン200〜10kΩ
AUX −20dB 入力インピーダンス100kΩ
出力端子
LINE OUT 0.775V 出力インピーダンス2kΩ
ヘッドホーン 30mV 8Ω
DINコネクタ
入力 −55dB 入力インピーダンス10kΩ
出力 0.775V 出力インピーダンス2kΩ
使用半導体
モータ駆動部 9TR 7ダイオード
メカ操作部  14TR 28ダイオード 1SCR
アンプ部    33TR 23ダイオード 2FET 
発振部     2TR
電源部     1TR 6ダイオード 1ツェナーダイオード
モーター
キャプスタン用 可飽和磁芯がタブラ子レスモーター×1
リール用    DCモーター×1
電源
AC100V(50,60Hz)
消費電力
20W
寸法
466W×120H×284Dmm
重量
7.5kg


※本ページに掲載したRD-4600の写真,仕様表等は1974年12月
 のOTTOのカタログより抜粋したもので,三洋電機株式会社に著作
 権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載・引用等
 することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
★メニューにもどる         
 
 

★テープデッキPART7にもどる
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system