Panasonic RS-B965
STEREO CASSETTE DECK ¥69,500
1990年に,パナソニックが発売したカセットデッキ。松下電器(現パナソニック)は,1965年に,オーディオ
ブランドとしてテクニクスを立ち上げ,オーディオ機器にテクニクスのブランド名をつけて展開し,高い技術力
と幅広い商品構成で高い評価を受けていました。1989年に高級機はテクニクスブランド,中級機,普及機
にはパナソニックブランドと使い分ける方向に変わり,そんな中,RS-B965はパナソニックブランドのカセッ
トデッキの最上級機として登場しました。

走行系は,ヘッドを中心に2組のキャプスタンとピンチローラーで構成されたクローズド・ループ・デュアル・
キャプスタン方式が採用されていました。キャプスタンはDD方式で駆動され,キャプスタンモーターは,従来
の3倍のトルクを得られるように設計されたデジタルサーボDDモーターが搭載されていました。モーター回
路によって発生するFGパルスとクォーツ発振による基準クロックを直接デジタル比較し,基準クロックに同
期させることで,極めて安定した高精度なモーターの回転が確保されていました。



DDモーターのフライホイールには,亜鉛ダイキャストを使用し,1個ごとに調整して,ダイナミックバランス
を0.1g/cm以下と高精度に加工し,トルクリップルを抑えていました。また,着磁中心ずれ10μm以下
の超精密多極着磁のFGマグネットにより,磁性体とコイルから発生するFGパルス自体そのものを極めて
高い精度に保ち,速度・位相の安定が実現されていました。

走行系メカをマウントするフレームには,亜鉛ダイキャストとアルミダイキャストの軟・硬2種の異素材を効
果的に併用して外部からの振動の抑え込みを実現していました。また,シャーシには,同社のCDプレー
ヤー,アナログプレーヤーなどに使用されている,振動エネルギーを熱エネルギーに変換することで制振
効果を持つTNRC(テクニクスノンレゾナンズ・コンパウンド)のベースを採用するなど,高い耐振性を確保
していました。

高剛性のガラス繊維入りカセットホルダーは,専用のモーターとカムでドライブされるパワー・アシスト・カ
セットローディングが搭載され,メカニズムの定位置にがっちりホールドされ,かつカセットハーフスタビラ
イザによりハーフを上から押さえ,テープ走行によって発生するハーフ自体の振動を抑える構造となってい
ました。

ヘッドは,録/再ヘッドにアモルファス・コンビネーションヘッド,消去ヘッドにセンダストガード付フェライト消
去ヘッドを搭載した3ヘッド構成でが採用されていました。そして,「リニアマグネフィールドクラスAA録音ア
ンプ」により,すぐれた録音特性を実現していました。この録音アンプは,同社自慢のVC4構成の技術を
採用したもので,電圧制御アンプが帰還回路にイコライザ素子を持ち,録音イコライザ特性をもった電圧
を出力し,電流供給アンプは,この電圧出力を電流に変換し,電圧に比例した電流をヘッドに供給するよ
うに動作するものでした。これにより,ヘッドで発生する信号磁界は,ゲイン,位相とも,電圧制御アンプの
出力信号そのままとなり,負荷に影響を受けることのない録音が可能となっていました。さらに,録音バイ
アスには,200kHz以上の高い発振周波数でバイアスを駆動するBSバイアスを搭載し,干渉によるビート
ノイズを抑えていました。そして,録音アンプは,ピークマージン+20dBの余裕をもっており,ダイナミック
レンジの広いソースにも対応できるものとなっていました。
入力は,通常の録音入力に加え,CDダイレクトライン入力が設けられ,CDの入力に対して,最適なゲイ
ン設定がなされ,SN比のよい録音ができるようになっていました。

ノイズリダクションは,ドルビーB,Cに加えdbxが搭載されていました。ドルビーNRをより正確に動作させ
るために,調整用発振器が搭載され,バイアス,録音感度のマニュアル調整機能が搭載されていました。
レベルメーターは,レンジ切換が可能なFL方式のメーターで,1dBステップの表示にすることも可能になっ
ていました。さらに,レベル設定が容易になるAPRS(アドバンスト・プリサイス・レックレベル・システム)が
搭載されていました。APRSは,録音ポーズ状態で信号を入力し,APRSボタンをONにすると,それ以降
に入力される信号レベルの最大値がホールドされメーターに表示されるもので,後は,REC LEVELツマ
ミを動かすだけで,メーター上のホールド表示がそれにあわせて移動し,適正な録音レベルを知ることが
できるという機能でした。
テープカウンターは電子式の4桁のリニアカウンターで,カウンターを利用したメモリーストップ,メモリーリ
ピート機能も搭載されていました。

以上のように,RS-B965は,中級機としてしっかりと技術,物量が投入された正攻法の作りのカセット
デッキでした。走行系の安定度とアンプ系のしっかりした作り故か,すっきりとした繊細さをもった録再音
をもち,機能的にも使いやすい1台となっていました。そして,このモデルをベースに,1991年には,サ
イドウッド,ゴールドのパネルデザインなどを加え,テクニクスブランドの「Gシリーズ」のカセットデッキとし
てRS-B900が登場することになりました。逆にいうと,高級機RS-B900とほぼ同一の内容と性能を持
つRS-B965は,コストパフォーマンスにすぐれた1台だったといえるかもしれません。


Technics RS-B900
STEREO CASSETTE DECK ¥100,000(受注限定品)



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



クローズド・ループ・デュアル・キャプスタンメカ
採用でソースを忠実に録音・再生。

テープの微振動をおさえ,徹底した
安定走行を追求する走行系メカニズム

●クローズド・ループ・デュアル・キャプスタン方式。
●デジタルサーボDDモーター採用。
●超精密多極着磁FGマグネット採用。
●2種の異素材採用のメカベース。
ハーフ自体の振動を防ぐパワー
アシスト・カセットローディング
録音アンプの理想形,
リニアマグネフィールドクラスAA
デジタルソースの録音が
余裕を持って,正確にできるAPRS
緻密な録音レベル設定を可能にする
レンジ切換え方式レベルメータ
●ヘッドにはアモルファスを採用した
 3ヘッドシステムを採用。
●ドルビーB,C & dbx搭載。
●リニア電子カウンタ。メモリーストップ
 やメモリーリピートも可能。
●消去ヘッドにはセンダスト・ガード付
 フェライト消去ヘッドを搭載しています。
●ドルビーNRを最大限生かすため
 に,調整用発振器を内蔵。
●200kHz以上の高い発振周波数で
 バイアスを駆動するBSバイアスを搭載。
 ビートノイズを徹底して抑圧しています。
●CDダイレクトライン入力端子装備。
 CDの入力に対し,最適ゲイン設定
 でSN比を向上させています。




●主な定格●

  RS-B965  RS-B900
ヘッド  録音・再生:アモルファス・コンビネーションヘッド×1
消去:センダストガード付フェライトヘッド×1 
録音・再生:アモルファス・コンビネーションヘッド×1
消去:センダストガード付フェライトヘッド×1
ワウ・フラッター ±0.05%(W peak,EIAJ)
0.03%(W.R.M.S.) 
±0.05%(W peak,EIAJ)
0.03%(W.R.M.S.) 
周波数特性 ノーマル:20~18,000Hz(±3dB,EIAJ)
CrO  :20~20,000Hz(±3dB,EIAJ) 
メタル  :20~21,000Hz(±3dB,EIAJ)
ノーマル:20~18,000Hz(±3dB,EIAJ)
CrO  :20~20,000Hz(±3dB,EIAJ) 
メタル  :20~21,000Hz(±3dB,EIAJ)
SN比 NR off:57dB(クロムテープ,WTD,1kHz,3% 3次歪率) 
ドルビーB NR:66dB(CCIR)
ドルビーC NR:74dB(CCIR)
dbx ON:92dB
NR off:57dB(クロムテープ,WTD,1kHz,3% 3次歪率) 
ドルビーB NR:66dB(CCIR)
ドルビーC NR:74dB(CCIR)
dbx ON:92dB
電源 AC100V 50/60Hz  AC100V 50/60Hz
消費電力 23W  23W
外形寸法 430W×135H×290Dmm  483W×141H×290Dmm
重量 6.4kg  7.5kg 
※本ページに掲載したRS-B965,RS-B900の写真,仕様表等は
 1988年5月のPanasonic/Technicsのカタログより抜粋したもの
 で,パナソニック株式会社に著作権があります。したがって,これら
 の写真等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられています
 のでご注意ください。

   
 
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