RS-M85の写真
Technics RS-M85
STEREO CASSETTE DECK ¥138,000

1978年にテクニクスが発売したカセットデッキ。薄型のスマートな筐体に先進的な技術を投入した1台で,
テクニクスの高い技術を示した高級カセットデッキでした。

RS-M85の最大の特徴は,カセットデッキでは,国内初(世界初?)のクォーツロックDD方式の走行系を
搭載していたことでした。その結果,ワウ・フラッター0.03%(WRMS)の高精度なテープ走行とパネル高
わずか88mmという薄型デッキを実現していました。

RS-M85のテープホルダー部付近

DD方式の要となるキャプスタンモーターには,新開発の平面対向型DDモーターが搭載されていました。
このモーターは,ブラシレス,コアレス,スロットレス方式のモーターで,構造的には,ローター(マグネット)
がステーター(コイル)に対して平面的に対向しているという特徴を持っていました。フライホイールと一体
化された永久磁石の回転子が,ステーターコイル側に吸引された状態で回転するため,スラスト方向のガタ
が抑えられ,垂直にテープをホールドするモーターとして有利な方式となっていました。しかも,回転を極端に
遅くできるというDDモーターとして優れた性能のモーターでした。
サーボ系は,FG(周波数発電機)によって速度と位相を合わせるFGサーボ方式を採用し,制御の基準にな
る周波数を水晶発振器から得るクォーツロック方式により,低ワウ・フラッターの安定したテープ走行と,速度
偏差,変動を極小に抑えた優れた性能が実現されていました。

平面対向DDモーター

リール駆動用には,コアレスモーターを搭載した2モーター構成で,キャプスタン駆動も高い安定性を確保
していました。リール台に対する伝達を機械的なフリクション機構を使わず,アイドラ直結で行う構成とし,
すぐれた信頼性と走行性能を実現していました。

次の特徴として,レベルメーターに,当時まだ少なかったFL(フローレッセント=蛍光管)ディスプレイを装備
していました。当時,テクニクスは,蛍光管の表示装置としてのメリットを,輝度が高く鮮明,寿命が長い約
10万時間,応答速度が速い(5μs),低電圧で駆動できるなどを標榜し,液晶表示に対するメリットを強調
していました。これも当時ソニーが液晶表示をデッキに搭載していたことへのライバル意識もあったのかもし
れません。
さらに,RS-M85に搭載されたFLディスプレイは,−20dB〜+8dBの表示範囲を持ちながら,0VUに対し
て±0.1dBの正確な指示制度,両波形整流回路により非対称波形も正確に表示,ピーク,VU表示切換
表示輝度調整可能などの特徴も備えていました。

操作系には,ICロジックによる純電子式のメカニズムコントロールを採用していました。制御回路には,新開
発のIC(IL IC AN6251)を使用し,フェザータッチのキーボードによる軽快な操作が実現されていました。

録・再ヘッドには,ラミネート方式のSXセンダストヘッドを採用し,優れた周波数特性,歪み特性と高い耐久
性を実現していました。消去ヘッドには,ダブルギャップフェライトヘッドが搭載されていました。

オーディオ回路には,チャンネルあたり19石のトランジスタを使用したディスクリート構成となっていました。
初段には,パルス性のノイズを追放するためにローノイズトランジスタ(2SA-721)を採用し,次段にはリニ
アリティを確保するために高利得のトランジスタ(2SC-1327)を配していました。さらに,結合コンデンサに
は,特に洩れ電流が少ないタンタル型を配し,抵抗には熱雑音の少ないタイプを使用していました。
また,マイクアンプとしてリニアリティを向上させるために,20Vの電源電圧を供給し,これによりマイク端子
の耐入力は,基本入力に対して45dBを確保していました。

テープセレクターは,バイアス/イコライザ独立で,CrO2,EX,Normalの3段切換で,±15%のバイアス微
調整ツマミも装備されていました。また,ノイズリダクションとして,ドルビー(Bタイプ)NRが装備されていま
した。

以上のように,RS-M85は,薄型の筐体に高度な技術を投入した,テクニクスらしいカセットデッキでした。
中低音のしっかりしたオーソドックスで使いやすいデッキでした。また,クォーツロック以外すべて同じ内容を
搭載した弟機RS-M75(¥118,000)も発売されていました。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




またも進歩はテクニクスから始まります。
クォーツD.Dデッキ
(しかも88mmの薄さで・・・)

M85/M75・・・これは
D.D技術をはじめ,
貯えられた膨大なノウハウに
最新のデジタル技術を結晶させた
テクニクスの結論です。

ワウ・フラッタ0.03%(WRMS)を実現した
クォーツロックのダイレクトドライブ方式

◎コンポデッキのD.D化を可能にした
 新開発の平面対向型D.Dモータ
◎クォーツロックコントロールによる
 ワウ・フラッタ0.03%(WRMS)の高性能
デジタル技術が実現したM85/M75・・・
その高性能と数々のすぐれた操作性。
◎専用のコアレスモータを
 リール駆動に採用した2モータ方式
◎新時代のレベル表示
 デジタルFLディスプレイ
◎デジタル技術を駆使した
 ICロジックのメカニズムコントロール
◎音質の飛躍的向上を目指した
 SXセンダストヘッド
◎低雑音,高耐入力を追求した
 すぐれたアンプ部
◎市販の各種テープに適合できる
 3段切換えのテープセレクタ
◎テープの特性をさらに生かせる
 バイアス調整ツマミ
◎メカに負担がかからない
 フルオートストップ機構
◎テープを好みの位置まで巻き戻し
 便利なメモリーリワインド
◎MPXフィルタを内蔵した
 ドルビーNRシステム
◎録音中に内容の部分カット可能
 RECミュート機構
◎暗いところでも読み取り可能
 照明つきテープカウンタ
◎別売オーディオタイマーと組合わせて
 留守録音可能なタイマースタンバイ機構
◎別売リモコンを使って
 離れた場所で操作可能
 
●RS-M85/M75の定格●
トラック型式 4トラック2チャンネル方式
ヘッド 録再ヘッド(SXセンダスト)・・・1
消去ヘッド(ダブルギャップフェライト)・・・1
モータ M85・・・クォーツロック電子整流子方式DDモータ,コアレスモータ
M75・・・FGサーボ電子整流子方式DDモータ,コアレスモータ
録音バイアス方式 交流バイアス
消去方式 交流消去方式
テープ速度 4.8cm/sec
周波数特性 Normal:20〜16,000Hz XA:20〜18,000Hz
SN比 58dB(XAテープ,ピークレベルにて)
ワウ・フラッタ M85:0.03%(WRMS)
M75:0.035%(WRMS)
入力 MIC:最大入力感度0.25mV(−72dB)
(適合マイクロホンインピーダンス400Ω〜20kΩ)
LINE IN:最大入力感度60mV(−24dB)
出力 LINE OUT:基準出力レベル420mV(−7.5dB)
負荷インピーダンス22kΩ以上
HEAD PHONES:8Ω/80mV(可変)
電源/消費電力 AC100V(50/60Hz)/約33W
使用半導体 トランジスタ:123石(M85),122石(M75)
FET:2石
IC:11石(M85),10石(M75)
ダイオード:54石
ツェナー:9石
整流器:8石
重量 10.5kg
外形寸法 450W×97H×423Dmm
※本ページに掲載したRS-M85の写真,仕様表等は1978年2月
 のTechnicsのカタログより抜粋したもので,松下電器産業株式
 会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で
  転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
   
 
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