SHARP/OPTONICA RT-6
STEREO CASSETTE DECK ¥59,800
1979年に,シャープがオプトニカブランドで発売したカセットデッキ。当時,新しい高性能テープとしてメタル
テープが登場し,各社が対応デッキを開発,発売していきました。そうした中,オプトニカブランドで発売した
メタルテープ対応の主力モデルがRT-6でした。

1962年に登場したカセットテープ(コンパクトカセット)は,当初,その性能から会話録音程度の使い方が想
定されていましたが,音楽録音用としての用途が次第に拡大し,テープも,1970年代後半までに,ノーマル
LH(ローノイズ・ハイアウトプット),クローム,フェリクロームなど,新しい磁性体の開発や工夫により,次第に
高性能なテープが登場していきました。そうした中,1978年に,アメリカの3M社からメタルテープが登場しま
した。それまでのカセットテープは磁性体として基本的に酸化鉄を利用していたのに対して,メタルテープは酸
化していない鉄(実際にはそのままでは酸化するため,鉄を含む合金)を使用することで,それまでのテープ
に比べ,最大磁束密度,MOL等,2倍近い記録能力を実現していました。それだけに,ヘッドや発振回路ア
ンプ系などの性能が要求されるテープでもあり,デッキ側の高性能化が図られていきました。その流れは,当
時の売れ筋価格帯,いわゆる598(当時なぜか¥59,800という価格帯に各社の売れ筋カセットデッキが集
中していた)クラスにも及び,コストパフォーマンスが高められていった時代でした。そうした中に,オプトニカブ
ランドで投入されたのがRT-6でした。

RT-6は,シングルウェイ2ヘッド構成のオーソドックスなデッキで,録音再生ヘッドは,パーマロイ系の新開発
のSH(Super Hi-density)ヘッドで,従来のヘッドに比べ,最大出力レベル,温度変化に対する安定性,最
大磁束密度,抗磁力などの点で性能が高められ,メタルテープに対応していました。
消去ヘッドは,ダブルギャップ構造としたフェライトヘッドで,最大磁束密度が高く,強磁界を得ることで,メタル
テープの消去に十分な82dB(1kHz)の消去率を実現していました。

走行系は,1ウェイシングルキャプスタンのオーソドックスなもので,定速用の電子制御DCモーターと高速用
のハイトルクDCモーターという2モーター構成がとられ,ワウ・フラッター0.04%(WRMS)の安定したテー
プ走行を実現していました。さらに,メカニズム制御には,当時最新のマイコンを使用したロジックコントロール
回路が搭載され,ストップボタンを介さずにどのポジションからも次の操作に,軽いタッチの操作でダイレクト
に移れる軽快な操作系を実現していました。

RT-6には,マイコン制御を利用した「APSS-XL」という頭出し機構が搭載されていました。シャープは1973
年に,国産初(世界初?)のカセットテープレコーダーの頭出し機構を開発したブランドで,1975年に,いち早
くラジオカセットGF-123MTに,テープの無音部を検知して頭出しを行う「APSS(Auto Program search
System)」を搭載して発売しました。このAPSSの技術を発展させたAPSS-XLは,前後とも9曲目までの頭
出しができるようになっており,このクラスのカセットデッキには珍しい機能でした。また,この機能に対応して
録音中,押している間無信号部分を作りポーズ状態で止まるオートスペースポーズ機構が搭載されていました。

テープセレクターは,バイアス/イコライザー独立で,ON/OFFの組み合わせでNORMAL,CrO2,Fe-Crに
対応し,さらに独立してMETAL専用ボタンがあり,このボタン1つで優先的にメタルテープポジションになりま
した。ノイズリダクションとしては,ドルビー(Bタイプ)が搭載されていました。
入力は,ライン入力に加え,前面パネルにマイク入力が装備され,スイッチで切り換えられるようになっていま
した。

レベルメーターは,当時最新のFL表示のピークレベルメーターが搭載されていました。このメーターにはピー
クホールド機能も搭載されていました。後に液晶で名を知られることになるシャープは,当時から表示関係に
すぐれた技術を持っており,FL表示においても高い技術を持っていました。当時の他社の高級デッキの中に
もシャープ製のFL表示をつかっていたものがいくつもありました。(オンキョーTA-9X,ナカミチ682ZXなど)

以上のように,RT-6は,シャープが激戦区の598クラスに投入したカセットデッキで,2モーター構成の走行
系,フェザータッチの操作系,FLレベルメーター,頭出し選曲機構など,しっかりした基本性能の上に充実し
た機能も搭載した意欲作でした。テープデッキの分野でのブランドの弱さもあり,あまり注目されることのなか
ったカセットデッキでしたが,同クラスの中でも実力派の1台であったと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



マイクロコンピュータ,
新開発SHヘッド装備の充実機

◎メタルテープの特性を存分にいかす
 新開発SH(Super Hi-density)ヘッド
◎消去能力に優れたダブルギャップフェライトヘッド
◎マイクロコンピュータのフルロジックコントロール

●ピークホールドができるFLレベルメーター。
●希望の曲へ直行,一発飛び越し選曲APSS-XL。
●安定したテープ走行のための2モーター方式。
 しかもワウ・フラッター0.04%(WRMS)の精密メカ。
●無信号部分がつくれるオートスペースポース機構。
●留守録音,目覚まし再生にタイマースタンバイ機構。
●再生中,テープを止めずにそのまま録音に移れる
 ”後追い”録音可能。




●仕様●


トラック方式 4トラック2チャンネルステレオ
録音方式 交流バイアス(105kHz)
消去方式 交流消去(105kHz)
ヘッド 録音・再生ヘッド(新開発SHヘッド)
消去ヘッド(ダブルギャップフェライト)
モーター 電子制御DCモーター(定速)
ハイトルクDCモーター(高速)
テープ速度 4.8cm/sec
早送り時間 120秒(C-60)
巻戻し時間 120秒(C-60)
ワウ・フラッター 0.04%(WRMS・JIS)
周波数特性 20~19,000Hz(メタル)
20~18,000Hz(Fe-Cr)
20~18,000Hz(クローム)
20~17,000Hz(ノーマル)
SN比 68dB(ドルビーON・Fe-Cr)5kHz以上
58dB(ドルビーOFF・Fe-Cr)
歪率 1.0%
入力端子 マイク:最小入力レベル0.28mV/10kΩ
ライン:最小入力レベル63mV/50kΩ
出力端子 ライン:出力レベル710mV/50kΩ(0dB)
ヘッドホン:出力レベル89mV/8Ω(0dB)
使用半導体 IC:13個,トランジスタ:74石,ダイオード:43個
LED:13個,LSI:1個
電源電圧 AC100V 50/60Hz
消費電力 36W
外形寸法 430W×260D×144Hmm
重量 7.5kg
※本ページに掲載したRT-6の写真,仕様表等は1979年9月
 OPTONICAのカタログより抜粋したもので,シャープ株式会社

 に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・
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