RT-707の写真
PIONEER RT-707
AUTO REVERSE OPEN REEL TAPE DECK
                          ¥128,000


1977年に,パイオニアが発売したオープンリールデッキ。7号リールまでのオープンリール
デッキでしたが,アンプに近いデザインを採用し,EIA規格のラックにマウントでき,また,他
の機器との積み重ね使用も可能になっているなど,オーディオシステムの中で使いやすい形
になったユニークなオープンリールデッキでした。

テープ走行に重要な役割を持っているキャプスタンの駆動には,ダイレクトドライブ方式が採
用され,駆動モーターには,新開発のFG(周波数制御)方式のACサーボモーターが搭載さ
れていました。さらに,7,600g-cm2の慣性エネルギーを持つダイナミックバランスにすぐ
れた大型フライホイールに直結された精密加工のモーターシャフトがそのままキャプスタンに
なっている構造により,高い回転精度を実現していました。

RT-707のFG方式ACサーボモーター

RT-707に搭載されたFG方式ACサーボは,フライホイールとローター底側部に向かい合う
ように設定された180ピッチのギア型透磁メタル(インダクター)とFGコイルおよびマグネット
の組み合わせによるもので,モーターが回転する際に2つのギア型透磁メタル間に起こるパル
ス信号を周波数として検出し,回転変動の制御を行う方式で,応答速度も速く安定した回転が
得られるようになっていました。
このような,FGサーボACモーターによるダイレクトドライブ方式の採用で,ワウ・フラッターの低
減,耐久性の向上,S/Nの向上などが実現されていました。また,DDモーターに組み込まれた
制御回路により,±6%のピッチコントロールができるようになっていました。

リール駆動用には,6極インナーローター特殊インダクタンスモーターが2個搭載され,高速巻
き上げ時の起動特性および送り出しリールから巻き取りリールへテープが移動する際のテープ
テンションの変化を抑え,安定したテープ走行を実現していました。

RT-707の内部RT-707のヘッド部

ヘッドは,録音ヘッドと再生ヘッドに硬質パーマロイヘッドを採用していました。硬質パーマロイ材
を精密に鏡面研磨した録音ヘッドと再生ヘッドにより経年変化を抑えた安定した性能を確保して
いました。消去ヘッドには,フェライトヘッドが搭載されていました。RT-707には,オートリバース
再生機能が備えられているため,録音ヘッド×1,消去ヘッド×1,再生ヘッドは順方向用とリバー
ス用にそれぞれ専用のヘッドが備えられた,合計4ヘッド構成となっていました。

オートリバース再生機能により,7号ロングテープを使用した場合,最大往復1時間半の長時間
演奏が可能となっていました。オートリバースは,テープの終端にセンシングテープを貼ることで
行えるようになっていました。また,手動での好きな個所でのリバースもボタンで行えるようになっ
ていました。

フロントパネルには,ヘアライン仕上げの厚さ5mmのアルミ材が使用され,ダイカストフレームと
の組み合わせにより,デリケートで重量のあるメカニズムをしっかりと支え,精度と耐久性を高め
ていました。
テープ走行系はシングルキャプスタン方式で,ピンチローラーアーム,テンションアームにも精密
加工のダイカスト材が使用され,耐久性と精度が確保されていました。また,ピンチローラーと同
一デザインのテンションレギュレーターによって,テープ走行経路の条件をヘッド前と後で同一に
し,テープテンションおよびヘッドタッチの安定化が図られていました。
テープ走行の操作は,どのモードからもSTOPを経由せずワンタッチで次のモードに移れるソレノ
イド駆動によるダイレクトチェンジ機構が採用されていました。早送りや巻き戻しからPLAYへ直
接モードを変更しても,テープの回転が完全に停止した後,次の動作に移る安全なシステムとなっ
ていました。さらに,操作ボタンはメカニカルロック式で,タイマー録音のためのプリセットが可能
になっていました。

ヘッドアンプには,高耐入力,低雑音の新開発ICを使用したイコライザーアンプを採用し,基準レ
ベルから上に30dB以上のダイナミックレンジが確保され,音の解像力が高く,高SN比を実現し
ていました。また,マイクアンプも装備され,マイクを使用してのライブレコーディングも可能となっ
ていました。600Ωのローインピーダンス型マイクもそのまま使用できる高感度設計のものが搭
載されていました。
テープセレクターは,バイアス,イコライザー独立式で,それぞれSTD,LHが選べるようになって
おり,使用するテープによって組み合わせて選べるようになっていました。また,かわった機能と
して,4TR-2ch使用のテープデッキながら,L・R独立で録音モードスイッチが備えられており,
LトラックまたはRトラックのみのモノラル録音が可能で,したがって録音するソースに応じて,テ
ープを通常の2倍有効に使うことができ,リアパネルの入出力端子を入れ替えることにより,音
に音を重ねるSOS録音(いわゆる多重録音)など特殊なテクニックも可能となっていました。

RT-707を組み込んだオーディオシステム

以上のように,RT-707は,オープンリールデッキとしての高い性能を維持しながら,通常のア
ンプなどに近いデザインとすることで,ステレオシステムとして組み合わせて使いやすい新しい
オープンリールデッキの形を提案していました。これは,当時大きく台頭して,テープデッキの主
流となってきたカセットデッキに対抗した形であったのかもしれません。そして,オープンリール
デッキならではの余裕ある録音・再生の性能や安定性はやはり魅力あるものでした。

RT-701の写真
PIONEER RT-701/701S
AUTO REVERSE OPEN REEL TAPE DECK
                          ¥109,800


RT-707に弟機RT-701も発売されていました。RT-707のオートリバース再生機能と,L・R
独立の録音モード切換が省かれたのみで,基本性能は同一のものとなっていました。また,
RT-701には,積み重ね使用を前提としたラックマウントタイプになっていないRT-701Sも発
売されていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



好きな音楽に長時間浸れる
オートリバース再生機。
EIA規格ラックマウント可能。
回転メカは信頼を高めた
D.D.キャプスタンモーターです。


◎長時間演奏が楽しめるオートリバース再生
 機構を採用。(手動切換も可能)
◎エンドレス演奏ができる
 カウンターリピート機構。
◎EIA規格ラックにマウント可能。オープン
 デッキの常識を超えたユニークなスタイルです。
◎回転精度の高いFG方式ACサーボモーター
 を採用したダイレクトドライブキャプスタン方式。
◎ACサーボD.D.方式キャプスタンモーターの利点

  ●ワウフラッターの低減とスピード精度の向上。
  ●経時変化が少なく耐久性にすぐれています。
  ●S/Nの向上。
  ●ピッチコントロールが可能。

◎テープの侵入・脱出を同じ条件にしたテープ
  トランスポート。堅牢な5mm厚のフロントパネ
  ルにマウントし,信頼性を高めています。
◎立ち上がりの早いポーズ機構。
◎録音・再生ヘッドに硬質パーマロイヘッドを
  採用した4ヘッド方式。ダイナミックレンジの
  大きなヘッドアンプとの組み合わせで録音
  特性を向上。

◎BIAS2段,EQ2段,独立切換式テープ
  セレクター。
◎経済的なテープの使い分けができるL・R
  独立方式の録音モードスイッチ。
◎テープ保護システムが組込まれたダイレクト
  チェンジ方式の操作ボタン。タイマーとの組
  合せで留守録音も可能。
◎再生時にテープ走行スピードが可変できる
  ピッチコントロールを採用。

  ●ラインとマイクがミキシングできるレベルコントロール。
  ●新型軽量メタルリール(PR-85)を標準装備。
  ●大型レベルメーター。立上がり特性が良く,
   監視のしやすい縦型のL・R対称タイプ。
  ●ワンタッチでリールを保持できるリールクランパー。
  ●出力ボリューム付。(リアパネル)
  ●ACアウトレット(300W)を1系統装備。





●主な仕様●

  
RT-707
RT-701
型式
4トラック2チャンネルステレオテープデッキ
(リバース再生付)
4トラック2チャンネルステレオテープデッキ
ヘッド構成
4トラック2チャンネル/消去ヘッド×1
録音ヘッド×1,再生ヘッド×1,
リバース再生ヘッド×1
4トラック2チャンネル/消去ヘッド×1
録音ヘッド×1,再生ヘッド×1
モーター
キャプスタン用:FG方式ACサーボダイレクトドライブ
         モーター×1
リール用:6極インナーローターインダクション型×2
キャプスタン用:FG方式ACサーボダイレクトドライブ
         モーター×1
リール用:6極インナーローターインダクション型×2
最大リール
7号リール
7号リール
テープ速度
19cm/sec,9.5cm/sec,±0.5%
19cm/sec,9.5cm/sec,±0.5%
巻戻し速度
7号リール(370mテープ)・100秒以内
7号リール(370mテープ)・100秒以内
回転ムラ
19cm/sec:0.05%以下(WRMS)
9.5cm/sec:0.08%以下(WRMS)
19cm/sec:0.05%以下(WRMS)
9.5cm/sec:0.08%以下(WRMS)
S/N
58dB以上
58dB以上
歪率
1%以下:19cm/sec 1%以下:19cm/sec
周波数特性
19cm/sec:20〜28,000Hz
        (30〜24,000Hz±3dB)
9.5cm/sec:20〜20,000Hz
         (30〜16,000Hz±3dB)
19cm/sec:20〜28,000Hz
        (30〜24,000Hz±3dB)
9.5cm/sec:20〜20,000Hz
         (30〜16,000Hz±3dB)
クロストーク
50dB以上
50dB以上
チャンネルセパレーション
50dB以上 50dB以上
消去率
70dB以上
70dB以上
録音バイアス周波数
125kHz
125kHz
イコライザー
NAB規格
NAB規格
操作方式
ソレノイド駆動,ダイレクトチェンジ式
タイマー録音・再生用プリセット可能
ソレノイド駆動,ダイレクトチェンジ式
タイマー録音・再生用プリセット可能
入力
(感度/最大許容入力/インピーダンス)
MIC:0.25mV/125mV/27kΩ
    6mmφジャック
LINE:50mV/25V/100kΩ
    ピンジャック
DIN:16mV/8V/1.3kΩ
    西独規格
MIC:0.25mV/100mV/27kΩ
    6mmφジャック
LINE:50mV/25V/100kΩ
    ピンジャック
出力
(基準レベル/最大出力レベル
       /負荷インピーダンス)
LINE:450mV/700mV/50kΩ
    ピンジャック
DIN:450mV/700mV/50kΩ
    西独規格
PHONE:70mV/8Ω
    6mmφジャック
LINE:450mV/50kΩ
    ピンジャック
PHONE:60mV/8Ω
    6mmφジャック
使用半導体
IC×5,トランジスター×67(内FET×2)
ダイオード×47(内サイリスタ×1,バリスタ×2
ツェナーダイオード×4,発光ダイオード×2)
IC×3,トランジスター×53(内FET×2)
ダイオード×35(内サイリスタ×1,バリスタ×1
ツェナーダイオード×4,発光ダイオード×2)
付属機能
ピッチコントロール
オートリバース再生
(センシングテープ使用/手動リバース可能)
オートリピート(カウンター連動)
録音モードL,R独立
テープセレクター
 BIAS×2(STD,LH),EQ×2(STD,LH)
MIC/LINEミキシング付
出力ボリューム(リアパネル)
ポーズ表示ランプ
ACアウトレット(300W)1個(リアパネル)
ピッチコントロール
MIC/LINEミキシング付
テープセレクター
 BIAS×2(STD,LH),EQ×2(STD,LH)
ポーズ表示ランプ
電源
AC100V 50/60Hz
AC100V 50/60Hz
消費電力
95W
80W
外形寸法
480W×230H×356Dmm
480W×230H×356Dmm
450W×230H×356Dmm(RT-701S)
重量
19.8kg
19.3kg


※本ページに掲載したRT-707,RT-701の写真,仕様表等は
 1977年2月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイ
 オニア株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真
 等を無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますので
 ご注意ください。

   
 
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