RT-W7の写真
OPTONICA RT-W7
STEREO CASSETTE DECK ¥89,800

1980年にオプトニカ(シャープ)が発売したカセットデッキ。ダブルデッキの走りとも言える1台でしたが,
当時ダブルデッキは著作権の関係で各メーカーとも出しにくい部分があり,メジャーなオーディオブランド
からは出されていない状況でした。(最も早かったのはカーオーディオで有名なクラリオンだったと思いま
す。)そのため,このRT-W7もテープtoテープのダビングができることよりも,音質を向上させる手段とし
てもダブルデッキを位置づけ,ダブルデッキとしては音質重視型の高性能な1台となっていました。

RT-W7の最大の特徴はダブルデッキであることですが,録音専用デッキと再生専用デッキを搭載し,録
音系と再生系をメカニズムからヘッド,アンプに至るまで完全に独立させ,それぞれの性能を最大限に発
揮させようという設計になっていました。

録音専用ヘッドと再生専用ヘッド

録音専用デッキには,ワイドギャップ録音専用SSヘッドが搭載されていました。SS(センダスト&センダ
スト)ヘッドはオールセンダストによるヘッドで,コアー部はセンダスト3層ラミネートコアとして高域周波数
特性を確保し,ギャップ面,ガード部にもセンダストを採用することにより,耐摩耗性,耐触性に対処し,さ
らにヘッド面はハイパボリック(双曲)形状とし,テープタッチの向上と,コンターエフェクト(低域のうねり)
の防止を図っていました。録音専用に3μmというワイドなギャップ幅に設定され,磁気飽和を起こしにくい
特性を実現していました。

RT-W7のSSヘッド

再生専用デッキには,ナローギャップ再生専用SSヘッドが搭載されていました。0.8μmというナローギ
ャップに設定され,ギャップ損失が少なくなり,優れた高域特性を実現していました。
消去ヘッドには,メタルテープにも対応した,消去効率の高いダブルギャップフェライトヘッドが採用されて
いました。

優れた録音・再生性能を確保するために,録音ヘッド,再生ヘッドそれぞれに専用アンプが搭載されてい
ました。録音アンプには,NPN-PNP2段直結アンプが採用され,高い飽和点,リニアリティにより広ダイ
ナミックレンジの録音特性を実現していました。また,テープの特性に応じてバイアス値を調整できる,バ
イアス・アジャスト機構も装備されていました。再生ヘッドアンプには,FET3段直結ICLアンプが採用され
通常再生ヘッドとヘッドアンプ間に挿入されるカップリングコンデンサーを排除したDC構成となっていまし
た。

RT-W7のメカニズム

テープ走行用には,録音デッキ,再生デッキとも,FGサーボDCモーターが搭載され,安定したテープ走行
を実現していました。さらに,通常の2ヘッドデッキと同じシンプルなテープパス系をもつことと,録音用,再
生用ともにハイパボリック形状の専用ヘッドを搭載したことにより,優れたヘッドタッチを確保していました。
また,再生専用メカには消去ヘッドが搭載されていませんが,テープパス条件がかわらないように,自己磁
化作用のない素材によるシッターヘッドが搭載され,適度のバックテンションを与えることにより,再生ヘッド
への安定したテープタッチが確保されていました。
メカニズムの操作系は,フライホイールの回転力を利用してメカニズムの動作切換を行うソフトタッチコントロ
ールメカニズムが採用され,ソフトでスムーズな操作系となっていました。

ダブルデッキという構成を生かし,再生専用デッキから録音専用デッキへの直結ダビング方式がとられ,余
分な回路を経由しないことで,優れたダビング特性を実現していました。ダビングは,ダビングON/OFFスイ
ッチでワンタッチでダビング可能な状態になり,録音側ポーズを解除すると再生側メカも同時にスタートする
ワンタッチ同時スタート機構が搭載されていました。また,録音レベル調整つまみにダビングスケールが設
けられ,PEAKメーターで読み取った再生レベルと録音するテープに合わせて適正なレベルに設定しやすく
なっていました。

ダビングスケール

再生デッキ側には,編集がしやすいように自動頭出し機構APSSが装備され,録音デッキ側にはエディター
コントロールが装備されていました。ドルビーNRも再生側,録音側それぞれに独立して装備され,別々にON
OFFが可能となっていました。また,ドルビーの録音側と再生側のマッチングをよくするために,同じ素子を搭
載していました。さらに,録音側ドルビー回路にはMPXフィルターが設けられていました。
録音デッキ側には,モニター用に再生機能も装備され,録音されたテープの確認は,再生デッキ側にかけ直
さなくてもできるようになっていました。

以上のように,RT-W7は,ダブルデッキとして,ダビングができる機能性の部分だけでなく,音質面のメリット
をも追求した設計がなされた非常に珍しいデッキでした。ダブルデッキの著作権への配慮から生まれたという
部分もありますが,優れた性能を持っていた隠れた名機的な1台でした。
 

 
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


厳しく音質を追求するとダブルになった
録音・再生=専用ヘッド,独立メカニズム

原音への硬度の忠実性を求めて
いまデッキの常識を破る。
《録音》と《再生》の独立デッキで,
テープオーディオの新時代を告げる。

カセットデッキの理想の形をめざす録・再独立Wメカニズム
CLEAR SEPARATION
 ◎録・再独立SSヘッドシステム
  ●ワイドギャップ録音専用SSヘッド
  ●ウルトラナローギャップ再生専用SSヘッド
 ◎忠実の録・再独立アンプシステム
 ◎信頼の録・再独立メカニズム
  ●軽やかな操作感覚ソフトタッチコントロール
  ●信頼のテープパス系
  ●安定したテープ走行にFGサーボモーター

Wメカニズムが実現した新しい機能性
DIRECT DUBBING
  ●理想のダビング特性を追求した直結ダビング方式
  ●ダビングスイッチとダビングスケール付レベル調整機能

ハイクオリティな録音・再生を志向した多彩な機能
OTHER FEATURES
  ●ダブルドルビーシステム
  ●録音専用デッキにモニタリング再生機能採用
 
 

●仕様●


 
トラック方式 4トラック2チャンネルステレオ
録音方式 交流バイアス(105kHz)
消去方式 交流消去(105kHz)
ヘッド 再生デッキ:ナローギャップSS再生専用ヘッド,テープシッターヘッド
録音デッキ:ワイドギャップSS録音専用ヘッド,Wギャップフェライト消去ヘッド
モーター FGサーボDCモーター(再生デッキ)
FGサーボDCモーター(録音デッキ)
テープ速度 4.75cm/sec(録音デッキ,再生デッキ共)
早送り時間 100秒(C-60録音デッキ,再生デッキ共)
巻戻し時間 100秒(C-60録音デッキ,再生デッキ共)
ワウ・フラッター 0.045%(WRMS・JIS・録音デッキ,再生デッキ共)
周波数特性 20〜22,000Hz(メタル)
20〜20,000Hz(Fe-Cr)
20〜19,000Hz(クローム)
20〜17,000Hz(ノーマル)
SN比 70dB(5kHz以上,ドルビーON)
60dB(クロームタイプ,ドルビーOFF)
歪率 1%以下
入力端子 ライン:最小入力レベル310mV/50kΩ(−10dB)
出力端子 ライン:1000mV/50kΩ(0dB)
ヘッドホン:125mV/8Ω(0dB)
録音・再生DIN端子 規定入力:0.1mV/10kΩ
規定出力:1,000mV/50kΩ
使用半導体 IC:7個,トランジスタ:49石,ダイオード:43個
LED:15個
電源電圧 AC100V 50/60Hz
消費電力 15W
外形寸法 430W×320D×110Hmm
重量 7.4kg
※本ページに掲載したRT-W7の写真,仕様表等は1980年10月
 のOPTONICAのカタログより抜粋したもので,シャープ株式会社
 に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載・
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。
   
 
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