MICRO RX-2000
TURNTABLE UNIT ¥130,000
(本体¥60,000 ターンテーブルRT-2000G¥70,000)
1980年に,マイクロが発売したターンテーブルユニット。外観上はアームレスのプレーヤーシステムのように見
えますが,キャビネットとターンテーブルのみで,ターンテーブルを駆動するモーターを搭載しておらず,プレーヤー
システムというより,ターンテーブルユニットという形で,RX-5000/RY-5500RX-3000/RY-3300の弟
機で,マイクロならではの,使いこなしがいのある,高性能なマニアライクなターンテーブルでした。
1970年代に登場したダイレクト・ドライブ方式が,この時期主流となり,ベルトドライブ方式のプレーヤーは少数
派となりつつありました。マイクロも,1970年代半ばには,ダイレクト・ドライブ方式のプレーヤーを数々発売して
いました。ダイレクト・ドライブ方式のプレーヤーは,クォーツロックをはじめとする高精度な電子制御技術ともあい
まって,特性上,限界的とも言える正確な回転が実現されていきました。しかし,駆動モーターとターンテーブルが
離れているベルトドライブ方式ならではの音質上の利点も再認識され,ベルトドライブ方式にも根強いファンがい
ました。(現在は,生産に高度な技術と設備を要するダイレクトドライブ方式が少なくなり,かえってベルトドライブ
方式が主流になっていることは皮肉ですが・・。)そうした中,マイクロは,重量級のベルトドライブ方式(あるいは
糸ドライブ方式)のアナログプレーヤーを出し続けていました。RX-2000は,そうした中でも最もマニアックなター
ンテーブルユニットとしては末弟ともいえる機種でしたが,他社比で見ると,物量を投入した重量級の1台となって
いました。
ターンテーブルは,直径31cmの砲金(銅85%,錫他15%の合金,衝撃に強く粘り強く,耐摩耗性や耐腐食性
に優れ,大砲の砲身に使われていたのでこの名がある。ガンメタルとも呼ばれる。)製で,重量8kg,慣性質量
1,300kg・cm2のRT-2000Gが搭載されていました。ターンテーブルは,高精度な機械加工が行われ,構造
的にレコードをダイレクトに置くようになっていました。ゴムシートなどを介在させず,レコードとターンテーブルの
一体化,レコードのスティフネス(ターンテーブルからの動きにくさ)の効果を確保して,音溝に対する針先の応答
性が改善されていました。
ターンテーブルを支えるシャフトアセンブリー,キャビネットは,基本的に,ベルトドライブプレーヤーシステムBL-91
(¥110,000)と同一のものが使用されていました。
ターンテーブルを支えるシャフトには,ステンレス鋼製の16mm径の大型シャフトが採用されていました。軸受けは
特殊合金によるベアリングと独自のスラストメタルを組み合わせ,大型シャフトハウジングに収納した構造となって
いました。シャフトとベアリングは,一対一のラッピングを行い,鏡面仕上げとなっており,シャフトの真円度は,0.4μ
以内の高精度加工が行われていました。シャフトに対する側面の軸受けメタルは,特殊合金が採用され,鉛を粒化
し金属素地の結晶粒内に析出させるようになっていました。回転にともなうシャフトとの摩擦面には,これにより常に
鉛とオイルによる薄膜が形成され,油膜切れのない円滑な回転が得られるようになっていました。さらに,軸受けの
スラストも含めて独自のオイルバス方式が採用され,温度変化,経年変化にも影響の少ない特性が維持される構
造となっていました。
ベースとなるキャビネットは,黒檀仕上げのソリッドベースが採用され,十分な質量によりターンテーブル部を支える
ようになっていました。部品取り付けのためのホールカットをできるだけ小さくし,ソリッドベースの剛性を有効に活用
した設計となっており,ターンテーブルの回転の共振を受けにくくなっていました。
アームマウントには,A-1200シリーズ(A-1201〜A-1206・別売¥10,000)を搭載するようになっており,ロン
グアームを除く一般の各種のトーンアームが搭載できるようになっていました。このアームマウントは真鍮製で自重
が1.5kgあるしっかりしたもので,共振を抑える効果も確保されていました。
RX-2000は,ターンテーブルユニットであるため,本体には駆動機構が搭載されておらず,RY-5500RY-3300
RY-2200等のモーターユニットや他のプレーヤーシステムと組み合わせての駆動を行うようになっており,これは他
のマイクロ製弩級プレーヤーに共通する特徴でした。駆動部とターンテーブルを完全に独立させた糸ドライブによるリ
モートドライブによりミクロの領域での静粛な等速回転が実現されていました。

MICRO RY-2200
MOTOR UNIT ¥28,000
モーターユニットRY-2200は,同社のモーターユニットの中では,最も低価格のものでしたが,オーソドックスにしっか
り作られたモーターユニットでした。型番からも分かるように,RX-2000とのペアを想定したものとも考えられました。
モーターは4極シンクロナス型モーターが搭載され,プーリー軸は,31cm径のターンテーブルを駆動したときに331/3
45rpmが得られる形状になっていました。重量もユニット単体で5.5kgに達するものでした。 

MICRO RX-2000A
TURNTABLE UNIT ¥70,000
(本体¥60,000 ターンテーブルRT-2000A¥10,000) 
RX-2000シリーズには,BL-91用のターンテーブルをそのまま搭載したRX-2000Aも発売されていました。ターンテー
ブルRT-2000Aは,直径31cmのアルミダイキャスト製で,重量2.9kg(ゴムシートSE-22除く),慣性質量 600kg・cm2
(ゴムシートSE-22含む)というものでした。非常に手頃な価格で入手できるという点で別の魅力をもつものでした。
以上のように,RX-2000/RX-2000Aは,マイクロの重量級糸ドライブターンテーブルシステムのラインナップの中で末弟
にあたる機種ながら,マイクロらしい正攻法で精密な作りにより,魅力的な1台となっていました。静かでクリアな再生音も
マイクロらしさをもっていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



今,なぜ糸ドライブなのか・・・・

RX-2000
砲金製8kgターンテーブル搭載

RX-2000A
アルミ製2.9kgターンテーブル搭載




●主な定格●


■RX-2000■

寸法 532W×440D×175Hmm
重量 21kg(マウントベース含む)
本体13kg,砲金ターンテーブル8kg



■RX-2000A■

寸法 532W×440D×175Hmm
重量 16.5kg(マウントベース含む)
本体13kg,アルミターンテーブル3.5kg
           (但しSE-22シートつき)



■RY-2200■

モーター 4極ヒステリシスシンクロナス型
プーリー 31cmターンテーブルを駆動した時に
331/3,45RPMが得られる形状
寸法 140W×170D×95Hmm
重量 5.5kg
電源 50Hz・60Hz別仕様


MICRO BL-91
ARMLESS BELT DRIVE PLAYER SYSTEM ¥110,000
1980年に,マイクロが発売したアームレス・プレーヤーシステム。当時マイクロが展開していたベルトドライブ
プレーヤー「BLシリーズ」,BL-91,BL-71(¥98,000),BL-51(¥78,000)の中のトップモデルでした。
(後により上位のBL-101・BL-111が発売されますが・・)そして,シリーズ中の最ロングセラーモデルともなり
ました。
そして,BL-91は,キャビネット,ターンテーブルなどがRX-2000Aと共通となっており,RX-2000シリーズに
駆動モーターを内蔵させたともいえる作りになっていました。(逆に言うと,BL-91から駆動機構を外したものが
RX-2000シリーズとも言えそうですが・・・。)また,シャフトアセンブリーも共通であるため,RX-2000に搭載さ
れている砲金製ターンテーブルRT-2000Gも搭載可能となっていました。
モーターは,アウターローター型ブラシレスサーボモーターが搭載され,RX-2000シリーズと同様にベルトにより
ターンテーブルを外周から駆動する外周駆動方式が採用されていました。使用ベルトは,経年変化の少ないカー
ボン材を配合したウレタン材を8mm巾,0.45mm厚に加工,研磨仕上げしたものでした。
モーターに電源を供給するための電源トランスには,従来のEI型のトランスに比べフラックスがきわめて小さいカ
ットコアによるトランスが搭載され,MCカートリッジ使用時のフラックスによる影響の低減,トータルのSN比改善
が図られていました。

MICRO BL-91L
ARMLESS BELT DRIVE PLAYER SYSTEM ¥132,000
BL-91には,ロングアームに対応したBL-91Lも発売されていました。基本的に共通の構成でしたが,ロング
アーム専用として一回り大型で重量のあるキャビネットとなっていました。重量が16kgから22kgにアップした
ことに対応して,キャビネットの4隅いっぱいに大型の脚が搭載されていました。この脚部は,特殊ゴムタイヤの
採用により,アブソーバーとしての効果も高められており,外部振動を吸収する構造となっていました。
また,BL-91はダストカバーが付属していたのに対し,BL-91Lはダストカバーが別売(C-91L¥28,000)
となっていました。
以上のように,BL-91/BL-91Lは,ベルトドライブプレーヤーとして,オーソドックスで正攻法のつくりをもった
マイクロらしい1台で,RX-2000シリーズほど使いこなしが難しくなく,音楽を聴く道具として完成されたものと
なっており,また別の魅力を持つものとなっていました。




●BL-91/BL-91Lの規格●

駆動方式 ベルトドライブ方式
モーター アウターローターブラシレスサーボモーター
消費電力 4W・AC100V
回転数 331/3および45rpm
回転ムラ 0.025%(WRMS)
SN比 60dB(JIS)
回転数可変範囲 ±6%
ターンテーブル アルミダイキャスト31cm・2.8kg(ゴムシートのぞく)
ターンテーブル慣性モーメント 600kg・cm2(ゴムシートのぞく)
寸法・重量 BL-91 :532W×440D×175Hmm/16kg
BL-91L:602W×472D×146Hmm/22kg(ダストカバー除く但しアームマウント1個付き)
別売品 ダストカバーC-91L¥28,000
交換用ベルトB-91¥1,500
※本ページに掲載したRX-2000/RX-2000A,BL-91/BL-91L
 の写真・仕様表等は1981年のMICROのカタログより抜粋したもの
 で,マイクロ精機株式会社に著作権があります。したがって,これら
 の写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていま
 すので,ご注意ください。

 
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