PIONEER S-99TWIN
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥98,600
1988年に,パイオニアが発売したスピーカーシステム。S-55TWINに始まった「バーチカル・ツイン方式」の スピーカー
システムで,S-33TWIN(2台1組・¥45,600),S-55TWIN(2台1組・¥72,000),S-77TWIN(¥54,800)と
いった「バーチカル・ツイン方式」の「S-2桁TWIN」の型番のシリーズの最上級機でした。
S-99TWINの最大の特徴は,トゥイーターを中心に2つのウーファーを上下に配置し,仮想同軸効果を得る「バーチカル・
ツイン方式」の採用でした。このようなユニット配置にすると,まず2つのウーファーの音響エネルギーが中央に集中し,トゥ
イーター軸に一致します。このため,低音域から高音域まで,文字どおりすべての音がトゥイーターを中心に再生されること
になります。この結果,音場感,定位感が向上し,すぐれた指向性,位相特性を実現していました。さらに,軽くて口径の小
さいウーファーを使用することで,レスポンスが速く,締まりのいい低音再生を実現しつつ,ダブルドライブすることにより,大
口径ウーファーに匹敵する振動板面積を確保し,スケール感豊かな低音の再生を可能にしていました。
トゥイーターは,3cm口径のドーム型で,振動板には,カーボン純度99.9%という高純度の新素材セラミックカーボンが
採用されていました。駆動系の磁気回路には,強力なアルニコマグネットが使用されていました。
ウーファーは,20cm口径のコーン型で,TADユニットにも用いられているパルプコーンに高分子フィルムをラミネートした
振動板が採用されていました。駆動系には,アルニコマグネットによる大型の磁気回路が採用され,磁気回路外径を小さ
くし,振動板背面の音響負荷を軽減して抜けのよいレスポンスにすぐれた低音再生を実現していました。
エンクロージャーは,小口径のウーファー2個とトゥイーターを縦に一列に並べた形の「バーチカルツイン方式」により,トー
ルボーイ・フロア型が可能となり,フロントバッフルの幅が狭い分,内容積は奥行きで確保され,低音の量感を実現してい
ました。さらに,フロントバッフルは,大きな弧を描く楕円曲線ラウンドバッフルが採用され,幅の狭いバッフルと相まって,
バッフル面の音の不要な反射が一段と低減され,音場感,音像定位が向上していました。
また,フロントバッフル面にユニットの取り付けねじが見えませんが,バッフルにユニットの振動を伝えないために,各ユ
ニットをエンクロージャー内に設けたインナーバッフルに固定した,ミッドシップ・マウントが採用されていました。フロントバッ
フルには,50mm厚の高密度パーティクルボードが採用され,ミッドシップマウントと相まってバッフルの振動モードを低減
させていました。さらに,天板を分割してエンクロージャーからフローティングさせ,さらに制動材を介することで,不要振動
を大幅に低減したフローティングトップが採用されるなど,無共振化の設計が徹底されていました。
ネットワークは,各ユニットに専用回路を構成し,相互干渉を防止して伝送ロスを低減していました。さらに,チョークコイル
などはOFC(無酸素銅)ワイヤーを採用し,コンデンサーも厳選して採用していました。
入力端子は,低域用コードと高域用コードを分離給電するバイワイヤリング接続に対応した端子が搭載されていました。
以上のように,S-99TWINは,「バーチカルツイン方式」のスピーカーシステムとして,S-55TWINで開発された技術やノ
ウハウをさらにブラッシュアップし,各部にしっかりと物量を投入した1台でした。独特の音場感としっかりとした低音,すっ
きりとした中高域など魅力ある音を持つスピーカーでした。そして,1990年には,後継機S-99TWIN X(¥118,000)
へとモデルチェンジされることになりました。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
音楽を空間で表現する。
バーチカルツイン・システム。軽い振動板を強力なアルニコ磁気回路でドライブ。
◎広大な音場が目前に広がる。
新しいユニット配置のバーチカルツイン。
◎素直な音場再生を実現しました。
楕円曲線ラウンドバッフルを採用。
◎アルニコ・マグネット採用。
純度99.9%のセラミックカーボン・トゥイーター。
◎アルニコ・マグネット採用。レスポンスの速い
小口径20cmコーン・ウーファー。
◎フルミッドシップマウント採用。
トータルに無共振化をはかりました。
●素材を吟味した高品位ネットワーク。
●高い剛性を実現。50mm厚のバッフル。
●バイワイヤリングが可能な大型の入力端子。
●S-99TWINの仕様●
型式 | 位相反転式トールボーイ・フロア型 |
スピーカー | ウーファー:20cmコーン型×2
トゥイーター:3cmドーム型 |
インピーダンス | 6Ω |
再生周波数帯域 | 30~40,000Hz |
出力音圧レベル | 91dB/W(1m) |
最大入力 | 180W(EIAJ) |
クロスオーバー周波数 | 2,000Hz |
外形寸法 | 268W×960H×377Dmm |
重量 | 35.5kg |
※本ページに掲載したS-99TWINの写真,仕様表等は1989年6月
のPIONEERのカタログより抜粋したもので,パイオニア株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
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