PIONEER SA-8800Ⅱ
STEREO AMPLIFIER ¥59,800
1976年に,パイオニアが発売したプリメインアンプ。パイオニアは,1974年にSA4桁型番の
新しいシリーズを発売し,その中の売れ筋価格帯のモデルSA-8800は,同クラスの中でシェ
ア1位となり,ベストセラーとなりました。しかし1975年にトリオが。左右独立電源のKA-7300
を発売すると,一気に人気を奪われることになってしまいました。そうした中パイオニアが,翌年
発売したSA-8800の大幅強化モデルがSA-8800Ⅱでした。

SA-8800Ⅱは,その型番から分かるように,SA-8800の第2世代モデルでしたが,内容も外
観も大幅に強化され,事実上の新機種といってもいいほどの変貌を遂げていました。それだけ
に,もともと高かったコストパフォーマンスがさらに高まっていました。

イコライザー部は,初段差動増幅・3段直結終段純A級動作・純コンプリメンタリーSEPPという
回路構成で,最上級機SA-9900と同じ方式となっていました。初段差動アンプには,ローノイ
ズトランジスターを特に厳選して使用して高いSN比を確保していました。NFB素子には,厳選し
た誤差±1%,温度特性±50ppm/cのニクロム蒸着金属被膜抵抗,誤差±2%のスチロール
コンデンサーなどを使用し,PHONO周波数特性は,20~20,000Hzの全可聴帯域で,偏差
±0.2dBという高精度を実現していました。また,回路には±25Vの高電圧を供給し,最大許
容入力250mV(1kHz・歪率0.05%)というダイナミックレンジを実現していました。
イコライザー部には,カートリッジの特性の違いに対応するために,新たにPHONO1,2ともに,
4種類のカートリッジ負荷容量(100pF,200pF,300pF,400pF)が選べる切換スイッチも
装備されていました。

コントロール部の2段直結フラットアンプは,初段を差動増幅とし,トランジスターのリニア領域に
動作点を選んで,歪の低減を図っていました。トーンコントロールは,BASS,TREBLE独立型
が搭載され,BASSには100Hz,200Hz,400Hz,TREBLEには,2kHz,4kHz,8kHzの
ターンオーバー3段切換が搭載されていました。ツマミは,クリックストップ付きで,また,瞬時に
トーンとフラットにできるON-OFFスイッチも装備されていました。
ボリュームは,32ステップのアッテネーター式のものが搭載されていました。L・Rチャンネル間
のギャングエラーが0.5dB以内に抑えられ,また,パネル面の指示値とも誤差±0.5dB以内
の精度が確保されていました。

パワー部は,±2電源供給・差動2段増幅カレントミラー回路・終段パラレルプッシュプル・純コン
プリメンタリーOCL回路が搭載されていました。初段の差動増幅部には特性の安定したデュアル
トランジスターを使用し,プリドライバー段にはカレントミラー回路とし,十分なNFBをかけて歪を
低減するとともに,プリドライバー以降をプッシュプルドライブすることで偶数次の高調波歪成分
を低減していました。さらに,出力段をパラレルプッシュプルとすることで,余裕のある出力段と
していました。このようなパワー部には,放熱効果のよいチムニー型の放熱器が採用され,安
定性も確保され,全可聴帯域での歪率を0.05%以下に抑え,実効出力60W+60W(20~
20,000Hz,両ch駆動・8Ω・歪率0.05%)を実現していました。



電源部は,L・Rチャンネル独立の2電源トランス方式が採用されていました。電解コンデンサー
も10,000μFのものが4個搭載され,SA-8800より大幅に強化された強力な電源部を構成
していました。こうした構成により電源部でのチャンネル間の相互干渉が排除されていました。
こうした方式には,この当時,トリオのKA-7300以来の独立電源ブームが巻き起こっていたこ
ともあったのでしょう。

入力は,PHONO2系統,TUNER,AUX,そしてTAPE2系統が搭載されていました。TAPE2
系統は相互ダビングも可能となっていました。スピーカー出力はA,B2系統が搭載されていまし
た。機能的には,SA-8800から引き継がれた機能は搭載されており,オーソドックスにまとめ
られていました。フィルターは,ローカット15Hz・6dB/oct,ハイカット8kHz・6dB/octが装備さ
れ,その他,ラウドネスコンター,-20dBのミューティングが装備されていました。

以上のように,SA-8800Ⅱは,前モデルSA-8800を別モデルといえるほどに大幅に強化・充
実したプリメインアンプでした。ライバル機を見据え,電源部をはじめ,出力段,イコライザー部
などより充実した内容を備え,デザイン的にも高級感が高められ,よりコストパフォーマンスが高
められた1台でした。中庸をいくバランスのとれた音は,パイオニアのアンプ作りのうまさを感じ
るものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



高精度イコライザー回路,カートリッジ負荷容量切換えつき。
そして歪率0.05%以下の低ひずみ設計。

実効出力60W+60W,
動特性を高める
2電源トランス採用。

◎イコライザー部は偏差±0.2dB
 (20~20,000Hz),最大許容入力
 250mV(1kHz,歪率0.05%)。
 高忠実度再生を実現するため,高精
 度な回路構成と厳選した素子の採用
 です。
◎カートリッジの負荷容量が4種類選べ
 る容量切換えスイッチ採用。各種カー
 トリッジの性能をより発揮させます。
◎ターンオーバー3段切換えのトーン
 コントロール。幅広い範囲できめ細か
 な音質調整が可能です。
◎ボリウムには32ステップのアッテネー
 ター式を採用。
◎歪率0.05%,実効出力60W+60W
 (20~20,000Hz,両ch駆動・8Ω)。
 パワーアンプ部はパラレルプッシュプル
 のすぐれた回路構成や効率の良い放熱
 器の採用で,低ひずみ率・高出力特性を
 もっています。
◎2電源トランス採用の電源部。動特性を
 高めリアルな臨場感です。
◎万全を期した保護回路をはじめ,プリ・
 パワー分離端子など充実した付属機能
 をそなえています。




●SA-8800Ⅱの規格●

(パワーアンプ部)


回路方式 差動2段全段直結パラレルPP
純コンプリメンタリーOCL
実効出力(両ch駆動) 20Hz~20kHz:60W+60W(8Ω)
           75W+75W(4Ω)
高調波歪率
(20Hz~20kHz)
実効出力時:0.05%
30W出力時,8Ω:0.01%
1W出力時,8Ω:0.01%
混変調歪率
(50Hz:7kHz=4:1)
実効出力時:0.05%
30W出力時,8Ω:0.01%
1W出力時,8Ω:0.01%
出力帯域幅(IHF両ch駆動) 5Hz~40kHz(歪率0.05%)
周波数特性 5Hz~100kHz+0-1dB
入力端子
(感度/入力インピーダンス)
POWER AMP IN:1V/50kΩ
出力端子 SPEAKER:A・B(4~16Ω),A+B(8~16Ω)
HEADPHONE:4~16Ω
ダンピングファクター 30(20Hz~20kHz,8Ω)
S/N
(IHF,Aネットワーク
    ショートサーキット)
110dB

 

(プリアンプ部)


回路方式 イコライザーアンプ部
 初段差動3段直結A級SEPP
トーンコントロール部
 初段差動2段直結フラットアンプ
 ターンオーバー3段切換NFB型トーン
入力端子
(感度/入力インピーダンス)
PHONO 1:2.5mV/50kΩ
PHONO 2:2.5mV/50kΩ
カートリッジ負荷容量:PHONO1,2共
 100pF,200pF,300pF,400pF
TUNER:150mV/50kΩ
AUX:150mV/50kΩ
TAPE PLAY1:150mV/50kΩ
TAPE PLAY2:150mV/50kΩ
PHONO最大許容入力
(高調波歪率0.05%)
PHONO 1,2:250mV(1kHz)
出力端子
(レベル/出力インピーダンス)
TAPE REC 1:150mV
TAPE REC 2:150mV
PRE OUT:1V/2kΩ,6V/2kΩ(MAX)
高調波歪率(20Hz~20kHz) 0.02%(1V出力)
0.1%(6V出力)
周波数特性 PHONO:20Hz~20kHz±0.2dB
TUNER,AUX,TAPE PB:5Hz~50kHz+0-1dB
S/N
(IHF,Aネットワーク
    ショートサーキット ) 
PHONO:75dB
TUNER,AUX,TAPE PB:95dB 
トーンコントロール BASS:±10dB(25Hz/50Hz/100Hz)
     ターンオーバー周波数 
     100Hz/200Hz/400Hz
TREBLE:±10dB(8kHz/16kHz/32kHz))
     ターンオーバー周波数
     2kHz/4kHz/8kHz
フィルター LOW:15Hz(6dB/oct)
HIGH:8kHz(6dB/oct)
ラウドネスコンター
(ボリウム-40dB時)
+6dB(100Hz),+3dB(10kHz) 
ミューティング -20dB

 

(電源部その他)


使用半導体 トランジスター47,ダイオード他27
電源電圧 100V,50/60Hz
定格消費電力 150W
最大消費電力 410W
ACアウトレット 2(電源スイッチ連動)
1(非連動)
外形寸法 420W×150H×376Dmm
重量 13.8kg
※本ページに掲載したSA-8800Ⅱの写真,仕様表等は, 
 1976年
7月のPIONEERのカタログより抜粋したもので,
 パイオニア
株式会社に著作権があります。したがって,こ
 れらの写真等を
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