ＰＩＯＮＥＥＲ　ＳＡ-８８００
ＳＴＥＲＥＯ　ＡＭＰＬＩＦＩＥＲ　￥５８，５００

１９７４年に，パイオニアが発売したプリメインアンプ。パイオニアは，当時ＳＡの型番でプリメイン
アンプを発売し，バランスのとれた設計で評価を得ていました。そして，この年，ＳＡ-９９００を頂
点としたＳＡ４桁型番の新しいシリーズを発売し，その中でも，当時の売れ筋価格帯の主力モデ
ルがＳＡ-８８００でした。

イコライザー部は，初段に低雑音トランジスターを使用した±２電源方式の３段直結アンプを採用
していました。初段のゲインが大きく確保され，安定した多量のＮＦＢがかけられ，低歪率，高ＳＮ
比，高安定度を実現していました。また，±２電源方式により，スイッチ切換時などのショックが抑
えられていました。さらに，イコライザーのＮＦ素子やＮＦＢを受ける側の素子を厳選した高精度な
素子を使用し，ＲＩＡＡ偏差±０．３dB以内という正確な特性を実現していました。さらに，イコライ
ザー回路には高電圧が供給されており，フォノ最大許容入力は，感度２．５ｍＶに対して２００ｍＶ
ｒｍｓが確保されていました。

コントロール部のフラットアンプは，初段にＦＥＴが採用され，ボリューム位置によるノイズの変化が
排除され，どのボリューム位置でもノイズが非常に低く抑えられていました。そして，２段直結のフ
ラットアンプには，交流的にも直流的にもＮＦＢがかけられ，歪成分を抑えるとともに，次段のトー
ン回路へ低インピーダンスの送り出しを可能としていました。これらのコントロール回路も±２電源
方式で，スイッチ切換などによるノイズを防いでいました。

トーンコントロールは，ＢＡＳＳ，ＴＲＥＢＬＥ独立型が搭載されていました。さらに，ＢＡＳＳには２００Ｈｚ
と４００Ｈｚ，ＴＲＥＢＬＥには，２．５ｋＨｚと５ｋＨｚのターンオーバー２段切換が搭載されていました。
また，ＯＮ-ＯＦＦスイッチも装備されていました。

パワー部は，初段差動１段の全段直結純コンプリメンタリーＯＣＬ回路が採用されていました。そし
て，特性の揃ったペアのトランジスターや大型放熱器の採用，さらにプリドライバー以前を安定化
電源として微小出力時の過渡的クロスオーバー歪を追放していました。さらに，ＯＣＬ回路による
±２電源の採用と温度変化によって出力にもれる直流成分を常に極小に抑える，バイアス補償回
路により，アンプ動作の安定度が高められていました。こうした構成により，当時のこのクラスの
アンプでは群を抜く４０Ｗ＋４０Ｗ（２０Ｈｚ～２０ｋＨｚ・両ＣＨ駆動・歪率０．３％）というパワーを実現
していました。

入力は，ＰＨＯＮＯ２系統，ＴＵＮＥＲ，ＡＵＸ，そしてＴＡＰＥ２系統が搭載されていました。ＴＡＰＥ２系
統は相互ダビングも可能となっていました。スピーカー出力はＡ，Ｂ２系統が搭載されていました。
機能的には，必要十分な機能は搭載されており，オーソドックスにまとめられていました。フィルター
は，ローカット３０Ｈｚ・６dB/ｏｃｔ，ハイカット８ｋＨｚ・６dB/ｏｃｔが装備され，その他，ラウドネスコンター
－２０dBのミューティングが装備されていました。

以上のように，ＳＡ-８８００は，当時の売れ筋，６万円クラスの中で，最大の出力，十分な機能，力
強い音質，しっかりした作りの筐体など，すぐれたコストパフォーマンスをもったプリメインアンプで
した。パイオニアのアンプ作りのうまさが光る１台だったと思います。実際，当時このクラスのプリ
メインアンプの中で，３０％以上のシェアを誇る人気モデルとなっていました。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

高精度回路が生み出す音質の高さ，
そしてコストパフォーマンスの高い設計。
このクラスを超えた４０Ｗ＋４０Ｗ
の余裕あるパワーです。

◎イコライザー部は多量のＮＦＢがかけられ，
　低歪率，高ＳＮ比，高安定度を実現した，
　±２電源による　３段直結回路。
◎レコードの特性を損なわない，大きなダイ
　ナミックマージンと正確なＲＩＡＡカーブ。
◎初段にＦＥＴの採用で，ノイズ変化の少ない
　２段直結のコントロールアンプ。
◎トーンコントロールの範囲が広がる，ターン
　オーバー２段切換えのトーン回路。
◎このクラスでは群を抜く，４０Ｗ＋４０Ｗ
　（２０Ｈｚ～２０ｋＨｚ・両ｃｈ駆動・８Ω・歪率０．３％）の余裕
　あるパワー。
◎低歪率と高安定度を達成した，差動１段の
　全段直結純コンプリメンタリーＯＣＬ回路に
　よるパワー部。
◎２台のデッキで自由に交互テープ複写が
　できる，便利なテープデュプリケートスイッチ。
◎応答が速く信頼性の高い電子回路とリレー
　を組み合わせた保護回路を内蔵。
◎そのほかの付属回路も十分に整っています。

●ＳＡ-８８００の規格●

（パワーアンプ部）

回路方式	差動１段全段直結純コンプリメンタリーＯＣＬ
実効出力（両ｃｈ駆動）	２０Ｈｚ～２０ｋＨｚ：４０Ｗ＋４０Ｗ（８Ω），４５Ｗ＋４５Ｗ（４Ω）１ｋＨｚ：４５Ｗ＋４５Ｗ（８Ω），５０Ｗ＋５０Ｗ（４Ω）
高調波歪率（２０Ｈｚ～２０ｋＨｚ）	実効出力時：０．３％以下２０Ｗ出力時，８Ω：０．０５％以下１Ｗ出力時，８Ω：０．０５％以下
混変調歪率	実効出力時：０．３％以下２０Ｗ出力時，８Ω：０．０５％以下１Ｗ出力時，８Ω：０．０５％以下
出力帯域幅（ＩＨＦ両ｃｈ駆動）	５Ｈｚ～４０ｋＨｚ（歪率０．３％）
周波数特性	１０Ｈｚ～８０ｋＨｚ＋０－１dB
入力端子（感度/入力インピーダンス）	ＰＯＷＥＲ　ＡＭＰ　ＩＮ：１Ｖ/５０ｋΩ
出力端子	ＳＰＥＡＫＥＲ：Ａ・Ｂ（４～１６Ω），Ａ＋Ｂ（８～１６Ω）ＨＥＡＤＰＨＯＮＥ：４～１６Ω
ダンピングファクター	２５以上（２０Ｈｚ～２０ｋＨｚ，８Ω）
Ｓ/Ｎ（ＩＨＦ，Ａネットワーク　　　　ショートサーキット）	１００dB以上

（プリアンプ部）

回路方式	イコライザーアンプ　正負２電源，３段直結コントロールアンプ　正負２電源，初段ＦＥＴ
入力端子（感度/入力インピーダンス）	ＰＨＯＮＯ　１：２．５ｍＶ/５０ｋΩ ＰＨＯＮＯ　２：２．５ｍＶ/５０ｋΩ ＴＵＮＥＲ：１５０ｍＶ/５０ｋΩ ＡＵＸ：１５０ｍＶ/５０ｋΩ ＴＡＰＥ　ＰＢ　１：１５０ｍＶ/５０ｋΩ ＴＡＰＥ　ＰＢ　２：１５０ｍＶ/５０ｋΩ ＴＡＰＥ　ＰＢ　２（ＤＩＮ端子）：１５０ｍＶ/５０ｋΩ
ＰＨＯＮＯ最大許容入力（高調波歪率０．１％）	ＰＨＯＮＯ　１，２：２００ｍＶ（１ｋＨｚ）
出力端子（レベル/出力インピーダンス）	ＴＡＰＥ　ＲＥＣ　１，２：１５０ｍＶＴＡＰＥ　ＲＥＣ　２（ＤＩＮ端子）：３０ｍＶ/８０ｋΩ ＰＲＥ　ＯＵＴ：１Ｖ/１ｋΩ
高調波歪率（２０Ｈｚ～２０ｋＨｚ）	０．０５％以下
周波数特性	ＰＨＯＮＯ（ＲＩＡＡ偏差）：３０Ｈｚ～１５ｋＨｚ±０．３dB ＴＵＮＥＲ，ＡＵＸ，ＴＡＰＥ　ＰＢ：１０Ｈｚ～５０ｋＨｚ＋０－１dB
トーンコントロール	ＢＡＳＳ：±７dB（１００Ｈｚ）/±１１dB（１００Ｈｚ）　　　　　ターンオーバー周波数　２００Ｈｚ/４００ＨｚＴＲＥＢＬＥ：±７dB（１０ｋＨｚ）/±１１dB（１０ｋＨｚ）　　　　　ターンオーバー周波数　５ｋＨｚ/２．５ｋＨｚ
フィルター	ＬＯＷ：３０Ｈｚ（６dB/ｏｃｔ）ＨＩＧＨ：８ｋＨｚ（６dB/ｏｃｔ）
ラウドネスコンター（ボリウム－４０dB時）	＋８．５dB（１００Ｈｚ），＋４dB（１０ｋＨｚ）
Ｓ／Ｎ（ＩＨＦ，Ａネットワーク　　　　ショートサーキット）	ＰＨＯＮＯ：７０dB以上ＴＵＮＥＲ，ＡＵＸ，ＴＡＰＥ　ＰＢ：９０dB以上
ミューティング	－２０dB

（電源部その他）

使用半導体	ＦＥＴ２，トランジスター３５，ダイオード他２１
電源電圧	１００Ｖ，５０/６０Ｈｚ
定格消費電力	１００Ｗ
最大消費電力	２８０Ｗ
ＡＣアウトレット	２（電源スイッチ連動）１（非連動）
外形寸法	４２０Ｗ×１５０Ｈ×３４５Ｄmm
重量	１０．９ｋｇ

※本ページに掲載したＳA-８８００の写真，仕様表等は，１９７４年
　１１月のＰＩＯＮＥＥＲのカタログより抜粋したもので，パイオニア
　株式会社に著作権があります。したがって，これらの写真等を
　無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますので
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