Technics SB-6
HONEYCOM DISC SPEAKER SYSTEM ¥45,000
1980年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したスピーカーシステム。テクニクスは,スピーカーの位相の
問題に早くから取り組み,「リニアフェイズ」の名称で商品化し,そうした流れの中で,平面振動板搭載のシス
テムを早くから開発・商品化していきました。そうした中,SB-10SB-7に続いて,比較的手頃な価格で発
売した平面振動板スピーカーがSB-6でした。
当時,平面振動板は,通常のコーン型にはない特性やメリットをもつため,各社が開発・発売していくことにな
りました。平面振動板をもつスピーカーユニットには大きく2つの方式があり,振動板自体を平面に成型してい
るものと,コーン型ユニットのくぼみに樹脂等を充填したものがありました。そして,テクニクスの平面振動板は
前者のタイプで,「ハニカムディスクスピーカー」と称されるものでした。スピーカーの振動板が通常コーン型で
あるのは重量を増やさずに振動板としての強度を高めるためという面もありました。振動板自体を平面にした場
合,均一に駆動できるだけの強度を持たせるために,振動板そのものが高い強度を持つ必要が出てきます。さ
らに,軽量である必要があります。そのためのハニカムディスクという構造でした。軽量で高い強度を持つハニ
カム構造体をアルミスキン材でサンドイッチした構造を持つ振動板で,紙コーンの1,000倍〜1,500倍,アル
ミ単板と比較しても約700倍の強度を持つものとなっていました。さらに,中心から放射状にハニカム構造が広
がり,中心に近づくほど密度が高くなるという「軸対称ハニカム」という独自の構造をとることで,分割振動を抑え
ていました。
こうしたすぐれた特性を持つ「ハニカムディスク振動板」を「ダイレクト節ドライブ」により,効率的に駆動するよう
になっていました。「ダイレクト節ドライブ」方式は,平面振動板の特性を利用したもので,平面振動板を中心駆
動した際に,特定の周波数で示す独特の振動モードをコンピュータで解析し,振動板上に生じる動かない部分
「節」を正確にとらえ,その「節」をドライブすることで,ピストンモーション領域を拡大できるというものでした。円
形をした平面振動板の場合「節」は真円状に生じ,円形のボイスコイル1個で駆動できるというメリットもあると
いうことでした。
ウーファーは,25cm口径のハニカム平面型で,直径145mm,重量1kgという大型のマグネットを採用してい
ました。これは,同社比で,従来の35cmクラスに匹敵するサイズで,システムとして93dBの高能率を実現して
いました。ボイスコイルボビンには高温時にも変形がきわめて少ないポリイミド系樹脂積層フィルムを採用し,
ボイスコイルも高耐熱仕様として,250℃という高温にも耐える高耐入力を実現していました。さらに,エッジに
は,ローリング(ふらつき)にも強いモルトプレンエッジを採用し,大入力時のリニアリティを高めていました。
ミッドレンジは,8cm口径のハニカム平面型で,ボイスコイルとヨーク及び,ポールピースとのエアギャップを極限
まで狭め,能率を大きく向上させていました。ボイスコイルボビンには,ウーファーと同様にポリイミド系樹脂フィル
ムを採用して,高耐入力を確保していました。エッジには,軽くて強いクロスエッジが採用され,このエッジとエッジ
カバーで構成されるキャビティで,より滑らかな周波数特性が実現されていました。
トゥイーターは,2.8cm口径のハニカム平面型で,磁気回路は,大型のマグネット,円錐形にして磁気飽和を防
いだポールピースなど独自の工夫が凝らされ,17,500ガウスもの高磁束密度が確保されていました。さらに,
トゥイーター前面には,特殊形状のイコライザが装備され,周波数特性はよりフラットに,併せて能率アップが実現
されていました。また,ボイスコイルとポールピース,ヨークの隙間(磁気ギャップ)に磁性流体が充填され,ボイス
コイルで発生した熱をより熱容量の大きなポールピースやヨークなどに逃がし,放熱効果を大幅に高めることによ
り,高耐入力が確保されていました。また,磁性流体は不要低域を抑えるダンパーとしても働き,トゥイーターの低
域共振を従来の1/3〜1/4に抑制し,滑らかな周波数特性の実現にもつながっていました。
ネットワークは,大型のチョークコイルが使用されたものでした。ウーファー直列のチョークコイルには,大型フェライ
トコアに,直流抵抗の小さい線径1mmの自己融着線を使用し,大入力時の歪率の改善が図られていました。また,
トゥイーター回路には,高域特性にすぐれたメタライズドポリエステルフィルムコンデンサーを使用し,高域特性の劣
化を抑えていました。トゥイーターとミッドレンジには,連続可変できるアッテネーターが搭載されていました。
トゥイーターには,過大入力や異常信号によるユニット破壊を未然に防ぐ,サーマルリレー保護回路が装備されてい
ました。また,スピーカーのリアパネルに装備されたリセットボタンを押せば,ワンタッチで復帰できるようになってい
ました。
エンクロージャーは,高密度パーチクルボードによるバスレフ型で,有限要素法(Finite Element Metho=FEM 構
造解析分野で良く用いられる解析法)による振動解析により十分な補強が施され,経年変化に強い三方Z止め方
式の精度の高い木工技術で仕上げられていました。
バスレフポートには,一体成型で,有害なエンクロージャー内の定在波を表に出さない特殊形状のものが搭載され
ていました。
以上のように,SB-6は,中級機のエントリーモデルながら,テクニクスが開発したハニカムディスクの平面振動板を
初めとした高度な技術を各部に投入したコストパフォーマンスにすぐれたスピーカーシステムでした。3ウェイのユニッ
トをすべてハニカム平面振動板で統一し,しっかりした力のある低音から中高音までのクリアな音を実現させた,バラ
ンスのとれた音を持つ1台でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



いま,スピーカーの流れは
ハニカムディスクスピーカーシステムへ

◎理想の振動板を求めて
 ハニカムディスクが開発された
◎前室効果を解消した平面振動板
 なめらかな周波数特性を実現
◎軸対称・円形ハニカムディスク
 広帯域ピストニックモーションの音
◎コンピュータ解析を導入し
 よりすぐれたシステム開発へ




●SB-6主な定格●

型式 3ウェイ3スピーカバスレフ型
使用スピーカ 25cmハニカム平面ウーハ
8cmハニカム平面ミッドレンジ
2.8cmハニカム平面ツィータ
インピーダンス 8Ω
許容入力 120W(MUSIC),75W(DIN)
出力音圧レベル 93dB/W(1.0m)
クロスオーバ周波数 800Hz,4kHz
再生周波数範囲 38Hz〜35kHz(−10dB)
外形寸法 350W×606H×318Dmm
重量 16.0kg(1本)


Technics SB-6A
HONEYCOM DISC SPEAKER SYSTEM ¥45,000
1982年に,SB-6はSB-6Aへとモデルチェンジされました。基本的にはマイナーチェンジモデルともいえ,ほぼ
内容は継承されていましたが,いくつかの部分で改良・変更が行われていました。
最大の変更点は,ウーファーのダンパーの強化でした。ウーファーには新たにテクニクス独自の「リニアダンパー」
が搭載されていました。この特殊構造のダンパーは,ボイスコイルの直線運動を支持する力が通常のダンパーの
10倍以上もあり,ローリングの発生を大きく抑え,大入力時にもリニアリティを飛躍的に向上させ,通常のダンパー
の約3倍のリニアリティを実現していました。
その他,トゥイーターの,過大入力や異常信号によるユニット破壊を未然に防ぐサーマルリレー保護回路が継承され
ていましたが,リセットボタンがフロントに移され,サーマルリレー作動時に点灯するインジケーターが新たに搭載さ
れました。また,ネットワークの改良も行われ,トゥイーター,ミッドレンジのアッテネーターのツマミも上級機のSB-8
のようなより大型のものに変更されていました。
以上のように,SB-6Aは,独自の平面振動板を生かし,本質的な部分にコストをしっかりかけた,よりコストパフォー
マンスにすぐれた1台となっていました。低音もしっかり出ながらクセのないクリアな音はサイズ以上の音を感じるもの
でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



理想的な全帯域ピストンモーション。
スピーカはいま,ハニカム平面へ。

◎前室効果による周波数特性の
 乱れを解消した平面振動板
◎ハニカムの利点を生かし,さらに
 帯域を拡大する節駆動と円形・軸対称
◎ウーハのパワーリニアリティを
 飛躍的に改善するリニアダンパー
◎ツィータのパワーリニアリティを
 大きく改善する磁性流体の採用

Aの解像力。Aの重低音。
進化=Advancedの頭文字”A”を冠する
ハニカム平面スピーカ。
それは壮絶なテクノロジーに裏づけられて,在る。

◎リニアダンパー採用。優れたパワーリニ
 アリティを誇るオールハニカム平面3ウェイ
 25cmハニカム平面ウーハ
 8cmハニカム平面ミッドレンジ
 2.8cmハニカム平面ツィータ
◎大型チョークコイルを使用した,
 低歪ネットワークを採用。
◎エンクロージャー内の定在波を表に出さない
 一体成型バスレフポートを採用。
◎ツィータに,過大入力や異常信号によるユニット
 破壊を未然に防ぐ,サーマルリレー保護回路を装備。
◎ツィータ,ミッドレンジそれぞれに独立した
 アッテネータを装備しています。




●SB-6Aの定格●

型式 3ウェイ3スピーカバスレフ型
使用スピーカ 外径25cmハニカム平面ウーハ
8cmハニカム平面ミッドレンジ
2.8cmハニカム平面ツィータ
インピーダンス 6Ω
許容入力 160W(MUSIC),80W(DIN)
出力音圧レベル 93dB/W(1.0m)
クロスオーバ周波数 900Hz,3.5kHz
再生周波数範囲 33Hz〜35kHz(−16dB)
43Hz〜35kHz(−10dB)
外形寸法 350W×606H×323Dmm
重量 16.0kg(1本)
※ 本ページに掲載したSB-6,SB-6Aの写真・仕様表等は,
 1981年9月,1982年9月のTechnicsのカタログより抜粋
 したもので,パナソニック株式会社に著作権があります。した
 がって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは
 法律で禁じられていますので ご注意ください。

★メニューにもどる        
 

★スピーカーのページ8にもどる
 
 

現在もご使用中の方,また,かつて使っていた方。あるいは,思い出や印象のある方
そのほか,ご意見ご感想などをお寄せください。


メールはこちらへk-nisi@niji.or.jp
inserted by FC2 system