Technics SB-7A
HONYCOM DISC SPEAKER SYSTEM ¥59,800
1982年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したスピーカーシステム。テクニクスは,スピーカーの位相の
問題に早くから取り組み,「リニアフェイズ」の名称で商品化し,そうした流れの中で,平面振動板搭載のシス
テムを早くから開発・商品化していきました。SB-7Aは,1979年に発売された,同社の平面振動板搭載ス
ピーカーの原器・SB-10の弟機SB-7の後継機として発売されたモデルですが,ユニット構成をはじめデザ
イン等完全に刷新されたニューモデルといったスピーカーシステムになっていました。

SB-7では,ウーファーとミッドレンジが平面振動板で,トゥイーターはリーフトゥイーター(リボン型ユニット)と
いう3ウェイ構成がとられていましたが,SB-7Aでは,ウーファーからトゥイーターまでオール平面振動板によ
る3ウェイ構成となっていました。



SB-7Aに搭載された平面振動板は,テクニクス自慢の「ハニカムディスクスピーカー」と称され,ハニカム構
造体をアルミスキン材でサンドイッチした構造を持つ振動板で,紙コーンの1,000倍~1,500倍,アルミ単
板と比較しても約700倍の強度を持ち,平面という形により,周波数特性の平坦性も確保したものでした。さ
らに,中心から放射状にハニカム構造が広がり,中心に近づくほど密度が高くなるという「軸対称ハニカム」と
いう独自の構造をとることで,分割振動を抑え,正確なピストンモーションを実現していました。
このすぐれた特性を持つ「ハニカムディスク振動板」を「節ドライブ」により,効率的に駆動するようになってい
ました。「節ドライブ」方式は,平面振動板の特性を利用したもので,平面振動板を中心駆動した際に,特定の
周波数で示す独特の振動モードをコンピュータで解析し,振動板上に生じる動かない部分「節」を正確にとらえ
その「節」をドライブすることで,ピストンモーション領域を拡大できるというものでした。テクニクスの円形平面
振動板・円形軸対称ハニカムコアの場合「節」は真円状に生じ,円形のボイスコイル1個で駆動できるというメ
リットがありました。



ウーファーは,33cm口径のハニカム平面振動板ユニットで,上級機のSB-M1,SB-M2の38cm口径に
次ぐ大口径のユニットでした。軽量で剛性の高いハニカム平面振動板は,節ドライブにより,33cmという大
口径ながら3kHzまでのピストニックモーションを可能としていました。このウーファーには,新たにテクニクス
独自の「リニアダンパー」が搭載されていました。この特殊構造のダンパーは,ボイスコイルの直線運動を支
持する力が通常のダンパーの10倍以上もあり,ローリングの発生を大きく抑え,大入力時にもリニアリティを
飛躍的に向上させ通常のダンパーの約3倍のリニアリティを実現していました。さらに,直径160mm,重量
1.6kgという大型のマグネットにより93dB/Wという高能率を実現していました。そして,ポリイミド系樹脂積
層フィルム採用のボイスコイルボビンにより,250℃の高温にも耐える高耐入力設計としていました。この高
性能・ワイドレンジのウーファーユニットを,十分余裕のある1kHzでロスオーバーして使用していました。

ミッドレンジは,8cm口径のハニカム平面振動板ユニットで,独自の節ドライブにより,10kHzまでの広帯域
ピストンモーションが可能となっていました。ボイスコイルボビンにはポリイミドフィルムを採用して高耐入力を
実現していました。さらに,エッジはダウンロールエッジを採用し,エッジカバーとエッジ間の隙間の空気のコン
プライアンス,振動板とエッジカバーの隙間の空気質量の両者をコントロールし,振動板の2次共振による特
性のピークを解消していました。こうしたミッドレンジユニットを余裕十分の4kHzでクロスオーバーさせて使用
していました。

トゥイーターは,2.8cm口径のハニカム平面振動板ユニットで,磁気回路は,大型のマグネット,円錐形にし
て磁気飽和を防いだポールピースなど独自の工夫が凝らされ,17,500ガウスもの高磁束密度が確保され
ていました。さらに,トゥイーター前面には,特殊形状のイコライザが装備され,周波数特性はよりフラットに,
併せて能率アップが実現されていました。また,ボイスコイルとポールピース,ヨークの隙間(磁気ギャップ)に
磁性流体が充填され,ボイスコイルで発生した熱をより熱容量の大きなポールピースやヨークなどに逃がし,
放熱効果を大幅に高めることにより,高耐入力が確保されていました。また,磁性流体は不要低域を抑える
ダンパーとしても働き,トゥイーターの低域共振を従来の1/3~1/4に抑制し,滑らかな周波数特性の実現
にもつながっていました。35kHzもの広帯域レスポンスと,システムとして180W(MUSIC)もの高耐入力を
実現していました。



エンクロージャーは,高密度パーチクルボードによるバスレフ型で,振動解析により十分な補強が施され,経
年変化に強い三方Z止め方式の精度の高い木工技術で仕上げられていました。バスレフポートには,一体成
型で,有害なエンクロージャー内の定在波を表に出さない特殊形状のものが搭載されていました。

ネットワークは,チョークコイルが使用されたものでした。チョークコイルには,低ロス,低歪みのフェライトコア
を使用し,歪率の改善が図られていました。また,トゥイーター回路には,高域特性にすぐれたメタライズドポリ
エステルフィルムコンデンサーを使用し,高域特性の劣化を抑えていました。
トゥイーターとミッドレンジには,連続可変できるアッテネーターが搭載されていました。トゥイーターには,過大
入力や異常信号によるユニット破壊を未然に防ぐ,サーマルリレー保護回路が装備され,作動時にはバッフル
面のインジケーターで分かるようになっていました。また,インジケーター横に装備されたリセットボタンを押せ
ば,ワンタッチで復帰できるようになっていました。

以上のように,SB-7Aは,59,800円という手の届きやすい売れ筋価格帯のモデルながら,ユニット,ネット
ワークなど,音質に関わる本質的な部分にコストをかけて仕上げられており,低音から高音までしっかりとした
すぐれた特性を感じさせる,平面ユニットの良さを発揮した音が特徴でした。現在ではこの価格ではとうてい作
れないスピーカーだと思います。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



理想的な全帯域ピストンモーション。
スピーカはいま,ハニカム平面へ。

◎前室効果による周波数特性の
 乱れを解消した平面振動板
◎ハニカムの利点を生かし,さらに
 帯域を拡大する節駆動と円形・軸対称
◎ウーハのパワーリニアリティを
 飛躍的に改善するリニアダンパー
◎ツィータのパワーリニアリティを
 大きく改善する磁性流体の採用

Aの解像力。Aの重低音。
進化=Advancedの頭文字”A”を冠する
ハニカム平面スピーカ。
それは壮絶なテクノロジーに裏づけられて,在る。

◎高解像度の重低音&パワーリニアリティ
 大口径33cmハニカム平面ウーハを搭載
◎33cmハニカム平面ウーハ
◎8cmハニカム平面ミッドレンジ
◎2.8cmハニカム平面ツィータ

●ハニカム平面ユニットの性能をフルに
 発揮させるネットワーク。
●エンクロージャー内の定在波を表に出さない,
 特殊形状バスレフポートを採用。
●ツィータには,インジケータ付サーマルリレー
 保護回路を装備しています。
●ツィータ・ミッドレンジそれぞれに独立した
 アッテネータを装備しています。
●高密度パーチクルボードを使用した
 エンクロージャ。




●SB-7Aの定格●

型式 3ウェイ3スピーカバスレフ型
使用スピーカ 外径33cmハニカム平面ウーハ
8cmハニカム平面ミッドレンジ
2.8cmハニカム平面ツィータ
インピーダンス 6Ω
許容入力 180W(MUSIC),90W(DIN)
出力音圧レベル 93dB/W(1.0m)
クロスオーバ周波数 900Hz,3.5kHz
再生周波数範囲 30Hz~35kHz(-16dB)
40Hz~33kHz(-10dB)
外形寸法 380W×670H×325Dmm
重量 21.5kg(1本)

※ 本ページに掲載したSB-7Aの写真・仕様表等は,1981年
 9月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック
 株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を
 無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので
  ご注意ください。

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