SB-820の写真
Aurex  SB-820
STEREO AMPLIFIER ¥135,000

1975年に,オーレックス(東芝)が発売したプリメインアンプ。東芝は,1973年に,オーディオブランドとして
オーレックスを立ち上げ,オーディオ業界に本格参入しました。オーレックスは,家電系メーカーのオーディオ
ブランドとして最後発でしたが,東芝は,オーディオ研究所を立ち上げるなど,力の入れようは凄いものがあり
ました。
そんなオーレックスが1973年,同ブランド第1号のプリメインアンプSB-510(¥75,000)を発売し,翌年,
SB-410(¥69,000)と,SB-210(¥28,000)と,末尾に10番がつくシリーズやSB-350(¥59,000)
を発売し,物理特性がきちんと突き詰められたオーレックスらしい製品群を展開していきました。そして,1975
年,プッシュボタンの多いデザインの10番シリーズから,縦に分割された個性的なデザインの新シリーズとして
SB-820,SB-620(¥85,000),SB-420(¥56,800),SB-320(¥39,800),SB-220(¥28,000)
と末尾に20番がつくシリーズを展開していきました。そんな中の最上級機がSB-820でした。

メインアンプ部は,初段にカスケード接続の差動アンプ2段を採用して動特性の向上と安定化を図った全段直結
ピュアコンプリメンタリーOCL回路となっていました。出力段をドライブするドライバー段では,3段直結ダーリント
ン接続のドライバー段を定電流駆動して微小信号時の歪みを大幅に低減していました。出力段は,高コレクタ損
失の余裕あるトランジスターを使ったシングルプッシュプル駆動で,82W+82W(20〜20,000Hz,8Ω,両ch
0.1%歪)という高出力と出力帯域幅6Hz〜100kHzというワイドレンジを確保していました。
また,大型のカットコアトランスと15,000μF×2の電解コンデンサーによる強力な電源部がしっかりとアンプの
安定動作を支えていました。

プリ部のイコライザー回路は,差動2段のアクティブロードA級動作で,出力はSEPPと,当時の最新の回路が採
用されていました。±70Vという高電圧をかけ,600mV(RMS・1kHz)という高い許容入力を実現していました。
RIAA素子には,高精度の金属皮膜抵抗とプラスチック・フィルムコンデンサーを使用し,偏差±0.2dBという高
い精度が確保されていました。また,全段にわたって低雑音トランジスターを採用してSN比が高められ,さらに,
±2電源定電圧回路を設け,電源トランスの巻き線はプリ用を別巻きにするなど,雑音や不安定動作を排除する
安定したイコライザー回路の動作が確保されていました。

トーンアンプは,FET使用の差動1段を含む差動2段直結アクティブロードのNF型で,SEPP出力とされ,このトー
ンアンプにも安定度の高い±2電源が採用されていました。トーンコントロールは,TREBLE,BASS独立型で,
TREBLEは,ターンオーバー周波数が2.5kHz,5kHz,BASSは400Hz,200Hzの切換式で,トーン回路を
DEFEATもできるようになっていました。
ボリュームは,22接点のアッテネーター式で,相互偏差,ステップ偏差が±0.2dB以内の高精度なものが搭載
されていました。
ミューティングは−20dB,−10dBの2段階が装備され,フィルターもLOWが10Hz,30Hz,HIGHが8kHz,20
kHzとそれぞれ2段階の周波数が選べるものが装備されていました。テープ入出力はフロントのTAPE3も合わせ
て3系統装備され,デュプリケートスイッチの切換で,1→2・3,2→1・3,3→1・2といった形で,2台のデッキに同
時にダビングできるようになっていました。

以上のように,SB-820は,当時のオーレックスのプリメインアンプの最上級機として,セパレートアンプ並の最
新の回路を搭載し,パーツの面でも特性の面でもしっかり突き詰めて作られていました。1台ごとに,入力感度
(PHONO,AUX),連続出力,高調波歪率,SN比,PHONO最大許容入力,周波数対歪率特性,RIAA偏差の
7項目のCADISによる実測データが付けられていたのも,当時のオーレックスのオーディオブランドとしての意欲
を感じさせるものでした。癖のないすっきりした音が特徴でしたが,逆に,当時そのため,今ひとつ高い評価を得
られていないきらいがありました。今見ると,作りがよくしっかりした,オーレックスらしいアンプではないかと思い
ます。


>以 下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



出力82W+82W
(20〜20,000Hz・8Ω2ch駆動・0.1%歪)。
リニアな波形伝送の
ワイドレンジ低歪率プリメイン。

◎ 広大な出力帯域幅(6Hz〜100kHz・8ΩIHF)
 のメイン部
◎差動2段アクティブロードA級動作
 のイコライザー回路

●トーンアンプはFET使用差動1段を含 む
 2段直結アクティブロードのNF形。
●3台のデッキが使えるデュプリケート・スイッチ付。
●電源を投入後,回路が安定するまでスピーカー
 端子を切り離すミューティング回路を内蔵。
●ギャングエラーの少ない高精度アッテネーター式
 ボリュームを使用。
●実測データシート付。




●SB-820の規格●


●プリアンプ部●

入力感度/インピーダンス
PHONO1:2.0mV(50kΩ)
PHONO2:2.0mV(47,100kΩ)
AUX    :150mV(50kΩ)
TUNER  :150mV(50kΩ)
TAPE    :150mV(50kΩ)
録音出力
TAPE REC:150mV
DIN      :30mV
イコライザー
許容入力 MAG600mV(RMS)
RIAA偏差 ±0.2dB
SN比(IHF)
PHONO:73dB
AUX   :90dB
高調波歪率(連続出力時)
0.01%
周波数特性
10〜50,000Hz(−1dB)
BASSコントロール(100Hz)
±10dB(ターンオーバー400Hz,200Hz)
TREBLEコントロール(10kHz)
±10dB(ターンオーバー2.5kHz,5kHz)
ミューティング
−10dB,−20dB
フィルター
LOW 30Hz,10Hz(−12dB/oct)
HIGH 8kHz,20kHz(−12dB/oct)




●メインアンプ部●

連続出力(1kHz・2ch駆動)
90W+90W(8Ω)
110W+110W(4Ω)
20〜20,000Hz出力(2ch駆動)
82W+82W(8Ω)
100W+100W(4Ω)
高調波歪率
連続出力時:0.1%以下
1W出力時:0.05%以下
混変調歪率
連続出力時:0.1%以下
1W出力時:0.05%以下
出力帯域幅(IHF)
6〜100,000Hz(8Ω)
ダンピングファクター
40(8Ω・1kHz)
残留雑音
0.3mV



●電源・その他●

供給電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
215W
外形寸法
450W×148H×375Dmm
重量
16kg


※ 本ページに掲載したSB-820の写真,仕様表等は1976年10月のAurexのカタログ
 より抜粋したもので,東芝株式会社に著作権があります。した がって,これらの写真等を
 無断で転載・引用等することは法律で禁じられていますのでご注 意ください。

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