Technics SB-M1000
4WAY 7SPEAKER D.D.D.SPEAKER SYSTEM 
                             ¥200,000
1996年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したスピーカーシステム。1995年に,テク
ニクスの歴代スピーカーの中でも最大級で最高級機ともいえる超ド級のスピーカーシステム
SB-M10000を発売し,すぐれた特性と音質で高い評価を得ました。そんなテクニクスが,
より一般向けの弟機として発売したのがSB-M1000でした。

SB-M1000は,トールボーイ形のエンクロージャーに,4ウェイ7スピーカー(パッシブラジ
エーターもユニットと考えるとユニットそのもの数では11となる)を収めた,高さ1mを超える
大型のスピーカーシステムで,パッシブラジエター付ケルトン型ウーファーとドーム型スーパー
グラファイトトゥイーターの採用により,25Hz~80kHz(-16dB)という広帯域再生を実現し
ていました。基本的には,14cmウーファーをもつ3ウェイの上下に,スーパーウーファーを
組み合わせたような形のスピーカーシステムでした。

スピーカーの低域再生においては,代表的な方式として密閉型とバスレフ型がありますが,基
本的な特性としてそれぞれに一長一短の部分があります。密閉型は低域まで周波数特性を
伸ばせるものの,早くからレスポンスが低下してしまいまうのに対し,バスレフ型は十分な低
域レスポンスが得られる反面急激はカットオフに見舞われるという特性があります。これらの
2つの方式の良い点を組み合わせた特性を持たせる方式として,ケルトン方式を採用してい
ました。ケルトン方式は,キャビネットを2つの部屋に仕切り,内側の仕切り板にドライブスピー
カーユニット,外側のバッフル板にパッシブラジエターを配し,ドライブスピーカーユニットの前
の空気とパッシブラジエターとの共鳴効果により低音域の拡大と量感の向上を図るものでした。
さらに,ケルトン方式による低域再生のクオリティを上げるために,低域部に採用されたのが
「D.D.D.(デュアル・ダイナミック・ドライブ)方式」でした。



スピーカーの振動板が振動して音を発生する際に同時に磁気回路に対して反作用を与え,こ
れがフレームを介してキャビネットに伝わり,音質に悪影響を及ぼす振動反作用力を打ち消す
ために,精密なコンピュータシミュレーションにより開発したのが「デュアルダイナミックドライブ
(D.D.D.)方式」で,2組のパッシブラジエーター付ケルトン型のウーファー部を前後逆向きに配
し,一体化させて同相でドライブすることで,キャビネット自体の不要音や床への振動伝達が抑
えられ,低音再生のクオリティを向上させていました。そのためスーパーウーファー部の背面か
ら見てもパッシブラジエーターが付いていました。SB-M1000では,14cm口径のコーン型ド
ライブユニット2個と18cm角型パッシブラジエーター2個で構成された90Hz以下を受け持つ
スーパーウーファー部が,上下に搭載され,等価的に36cmウーファーに匹敵する低域再生
を実現していました。



ミッドローには,14cmコーン型ユニット,ミッドハイには8cmコーン型ユニットが搭載されてい
ました。振動板には,パルプとマイカを混抄したコンポジットマイカコーンを採用していました。
大きな比弾性率と高内部損失を兼ね備えた,理想的な天然素材マイカを混抄することで,素
材の固有共振を抑えつつすぐれた解像度と透明感,スピード感を実現していました。
さらに,ミッドローユニットには,独自の「ダイナミック・リニア・サスペンション」を採用していまし
た。ダンパーのコルゲーションの高さを,内周部と外周部で変えることにより,全体の変位を均
一化し,強度を増すとともに,リニアリティを大幅に高めたダンパーでした。

トゥイーターは,2.5cm口径のドーム型で,グラファイト構造を大面積で実現したスーパーグラ
ファイトを,ドーム状に成形した振動板を採用していました。スーパーグラファイトは,ポリイミド
フィルムを不活性ガス中で3000度近い高温で焼成するという特殊製法で生まれる素材で,ダ
イヤモンドをはるかに凌ぐ比弾性率,高音速,そして,マイカに匹敵する軽量,高内部損失をも
ち,可聴域を超える帯域まで低歪みを実現するとともに,透明感が高く,繊細で密度感のある
広帯域の高音再生を可能にしていました。

エンクロージャーは,バッフル面を最小化し,剛性を高めたトールボーイ型となっており,中高
域用バッフルと低域用エンクロージャーを構造的に分離して,相互干渉の発生を抑えていまし
た。また,バッフル板と胴板には,鳴きの少ないMDF(ミディアム・デンシティ・ファイバー)を採
用し,エンクロージャー自体の共振や付帯音による特性の乱れを徹底的に低減し,音像定位
と音場再生力を高めていました。
背面の入力端子は,極太および4mmプラグも接続可能な金メッキ入力端子が装備され,バイ
ワイヤリング対応の端子となっていました。

以上のように,SB-M1000は,一見シンプルなトールボーイ型の外観の中に,7つものスピー
カーを搭載した複雑な構造のスピーカーシステムで,これだけのシステムをまとめ上げたテクニ
クスの技術力の高さが感じられる1台でした。ワイドレンジで歪み感のない非常に整った再生音
は,一聴するとつまらない音に聞こえてしまうこともあり,使いこなしは簡単ではありませんでした
が,大きな可能性のあるスピーカーシステムでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



感動のすべてを伝える
広帯域・低歪再生,D.D.D.

25Hz~80kHz(-16dB)の広帯域再生を実現



◎キャビネット振動を抑えて超低域再生。
 デュアル・ダイナミック・ドライブ
◎可聴域を超えて低歪再生する
 スーパー・グラファイト・ドームツイーター
◎高パワーリニアリティを獲得した
 ダイナミック・リニア・サスペンション
◎不要振動を抑え,定位感を高める
 高剛性木目キャビネット

●極太コード及び4mmプラグも接続
 可能な金メッキ入力端子委
●空洞共振や反射による付帯音を低減
 する凸型ピンタイプのネットキャッチ
●ブラウン管の映像に悪影響を及ぼさ
 ない防磁対応設計



●SB-M1000の主な定格●

形式  4ウェイ7スピーカーD.D.D.(デュアル・ダイナミック・ドライブ)型 
使用スピーカー  18cmパッシブラジエター×4
14cmドライブスピーカーユニット×4
14cmコーン型ミッドロー
8cmコーン型ミッドハイ
2.5cmスーパーグラファイトドーム型ツイーター 
再生周波数帯域 25Hz~80kHz(-16dB) 
クロスオーバー周波数  90Hz,900Hz,3.5kHz, 
出力音圧レベル  86dB 
最大許容入力  100W(DIN),200W(MUSIC) 
インピーダンス  6Ω 
外形寸法  284W×1190H×447Dmm(ネット付) 
重量  42.0kg 
※本ページに掲載したSB-M1000の写真,仕様表等は
1996年10月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,
パナソニック株式会社に 著作権があります。したがって,
これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
で禁じられていますのでご注意ください。

                        
 

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