Technics
SB-M2(MONITOR2)
3WAY SPEAKER
SYSTEM
SB-M2-S(グレー塗装仕上げ)
¥198,000
SB-M2-M(木目仕上げ)¥220,
000
1982年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したスピーカーシステム。この当時,各社が平面振動板のユニットを
搭載したスピーカーシステムを発売していました。そうした中,テクニクスも,1979年より,同社が提唱していたリニア
フェイズの考え方を押し進めた平面振動板採用のスピーカーシステムを送り出していきました。そして1981年,4ウェ
イの大型システム
SB-M1を
発売し,その高性能ぶりは高い評価を受けました。その弟機として発売されたのが,3ウェ
イ機のSB-M2でした。
SB-M2の最大の特徴は,上述のように,オール平面振動板ユニットによる3ウェイシステムであることでした。テクニ
クスの平面振動板は,「軸対称ハニカムコア」といって,中心に近づくほどコア密度を高くして,同心円状にハニカムコ
アを並べた独自の方式で,他社には見られない構造となっていました。一般に平面振動板を振動させると,ある特定
周波数で全く動かない部分=節が表れます。この節の位置をドライブすれば,共振モードは打ち消され,ピストンモー
ション域が大幅に拡大し,滑らかで低歪みは周波数特性が得られることになります。「軸対称ハニカムコア」では,節の
位置が単純な真円になるため,その部分を1つの円形ボイスコイルでドライブすると,理想的な節ドライブが可能となり
すぐれた特性が実現されるようになっていました。
ウーファーは,SB-M1と同じ38cm口径のハニカム平面ユニットを搭載していました。節ドライブにより,2kHz以上ま
でのピストンモーションが可能でした。上下対称のギャザーを四方に配した特殊形状のリニアダンパーを採用し,傾き
に対する抵抗力が通常のダンパーの10倍以上あるこのダンパーにより,高いパワーリニアリティが実現されていまし
た。マグネットには,直径200mm,重量3.1kg,磁束密度14,800ガウス,総磁束50万マクスウェルという大型の
ものを採用し,ボイスコイルボビンには,ポリイミド系樹脂積層フィルムを採用して,250度の高温に耐える高耐入力
設計になっていました。この高性能な平面ウーファーを750Hzという余裕あるクロスオーバーで使用していました。
ミッドレンジには,8cm口径のハニカム平面ユニットを搭載し,10kHzまでピストンモーション可能なユニットを4kHzで
クロスさせて使用していました。直径140mm,重量1.2kgの大型マグネットと直径50mmの大型ボイスコイルにより,
高能率,高耐入力設計としていました。また,エッジ部とエッジカバーで構成されるキャビティを巧妙にコントロールして
周波数特性のピークやディップを抑制し,フラットな特性を実現していました。
トゥイーターには,2.8cmハニカム平面ユニットを搭載し,38kHzまでのレスポンスを実現していました。振動板のス
キン材には,アルミ材の約3倍という高い曲げ剛性をもち,音速6700m,比重1.9という,20μm厚の積層マイカを
使用し,ハニカムコアには,幅0.9mm,厚さ20μmのアルミ合金リボンを菊の花弁状に精密加工したものを使用して
いました。指向性をさらに高めるトゥイーター独自の形状として,軽量かつ高剛性の高性能なダイアフラムを形成して
いました。このダイアフラムを,重量800gの大型・強力なマグネットでドライブし,高能率化を実現していました。さらに
ボイスコイルとポールピースの間には,磁性流体を充填し,放熱効果を高め,耐入力を大幅に向上させるとともに,ボ
イスコイルの温度上昇を抑え,インピーダンスの安定化も図られ,高いパワーリニアリティを確保していました。
ネットワークは,ウーファー用,ミッドレンジ・トゥイーター用が分離され,それぞれ,エンクロージャー底面,ターミナル裏
に分散して配置され,相互干渉を防いでいました。チョークコイルには,低ロス,低歪率のフェライトコアを採用していま
した。ウーファー用には,線径約1.6mmのチョークコイルを使用し,DC抵抗を低く抑え,トゥイーター回路には,高域
特性にすぐれたメタライズドポリエステルフィルムコンデンサを使用していました。
エンクロージャーは,4ウェイ機のSB-M1より小型化されているとはいえ,内容積115リットルが確保されていました。
素材には,25mm厚の高密度パーティクルボードを使用し,システム全体の重量は50kgに達していました。エンクロー
ジャーの型式はSB-M1と同じくバスレフ型でしたが,ポートの形が,一般的な円筒形のものに変更されていました。
エンクロージャーの仕上げは,グレー塗装仕上げのSB-M2-Sとウォルナット木目仕上げのSB-M2-Mがあり,SB-
M1に比べ,価格差が抑えられていました。
以上のように,SB-M2は,最上級機SB-M1のウーファー,ミッドハイ,トゥイーターのユニットを継承して3ウェイ構成
としたもので,SB-M1の陰にやや隠れた感じで,少し地味な存在となった感はありましたが,音的には,また違った
魅力を持っていました。「歪み検知器」とまで称されたほど,恐ろしくクセの少ない,細かな音まできちんと鳴らし分ける
まさに「モニター」のSB-M1の性格は受け継ぎつつも,一般のユーザーが使いやすい,聴きやすい方向にチューニン
グされていました。とはいえ,ZDF(ドイツ公営放送・第2ドイツテレビ)に,モニタースピーカーとして納入された実績も
持つなど,高い再生能力を持つスピーカーシステムでした。