Technics SB-MX100D
2WAY SPEAKER SYSTEM ¥125,000
1992年に,テクニクスが発売したスピーカーシステム。この頃テクニクスとパナソニックのブランドに分かれたテクニクス
ブランドの製品群は「Gシリーズ」と名付けられ,高品質と高性能をめざしていました。その「Gシリーズ」のスピーカーとして
SB-MX200Dに次ぐ弟機として発売されたのがSB-MX100Dでした。
SB-MX100Dは,コンパクト・スピーカーながら,マイカを素材として用いた高性能なユニットと高品質なエンクロージャー
を投入して,2ウェイという構成を生かし,高解像度と自然な響きの音をめざした設計が特徴でした。
ウーファーは,18cm口径のコーン型で,振動板には,テクニクス自慢のマイカ振動板よりもさらに内部損失を高めたパル
プとアラミド繊維混合・漆コーティングによるマイカ複合振動板を新たに開発,採用していました。この振動板をドライブする
磁気回路には,メイン・マグネットに直径100mm,厚さ15mmのバリウムフェライト・マグネットを,また,キャンセル・マグネ
ットに直径90mm,厚さ15mmのバリウムフェライト・マグネットを採用し,強力な駆動力と低磁気漏洩の両立を実現してい
ました。さらに,ダンパーサスペンションに,フェノール樹脂を混紡したカイノール繊維(=ノボロイド繊維:フェノール樹脂を
繊維化した3次元構造の高性能繊維)を用いた,伸び縮みの直線性にすぐれたカイノールダンパーを採用していました。
トゥイーターは,2.5cm口径のドーム型で,振動板には,曲げ剛性,内部損失ともに大幅に向上させたプラズマCVD法によ
るダイヤモンド・コーティング・マイカを採用していました。プラズマCVD法とは,(Plasma-Enhanced Chemical Vapor
Deposition)の略で,物質の薄膜を形成させる化学蒸着の方法の一種でした。化学反応を活性化させるために,高周波な
どを加えることで原料ガスをプラズマ化させるのが特徴で,半導体素子などの製造に用いられるというものでした。ドームの
形状自体も,断面が楕円状となるオーバルドーム形状を採用して,高域の限界周波数を拡大して,より余裕ある動作を可能
にしていました。磁気回路には,メイン・マグネットに直径80mm,厚さ15mmの,キャンセル・マグネットに直径70mm,厚さ
10mmのバリウムフェライト・マグネットを採用していました。これらにより,高域限界周波数を45kHzまで拡大し,安定した
余裕ある高域再生を可能としていました。
エンクロージャーは,剛性を高めるために30mm厚のパーティクルボードを回折効果を考慮したラウンドバッフルとして仕上げ
ていました。ウーファーの上下には,スリットを設けたセパレートバッフル構造で,付帯音や共振を抑えていました。トゥイーター
の周囲には,音響的な反射にすぐれた制振材を配置し,ウーファー,トゥイーターとも,ユニットのフレーム周囲には,ラバーガ
スケットを配していました。また,エンクロージャー全体の防振対策として,バッフルのスリットに対して垂直に補強材を入れる
クロスブリッジド・コンストラクションを基本に,補強材を巧みに配置した構造となっていました。さらに,サランネット固定用の
ネット・キャッチ構造をゴム製の凹型のものから凸型ピンタイプに変更し,空洞共振や反射による付帯音を低減していました。
バスレフ型のエンクロージャーのポートはリアに配置され,円筒形のポートの両開口にはラウンド状のフランジが設けられて,
空気の入出時の乱流を低減し,風切り音を大幅に低減していました。外観仕上げは,オーク突板光沢塗装仕上げで,5回も
の塗装工程によって高品位な外観と,響きの微妙なコントロールを実現していました。
ディバイディング・ネットワークは,各ユニット間の電気的な相互干渉を極限まで抑制した分割配置されていました。スピーカー
端子は,バイワイヤリング対応の大型金メッキOFCのスピーカー端子が搭載されていました。
また,SB-MX100Dには,専用のスピーカースタンドSH-B100(2本1組¥60,000)が別売で用意されていました。底面
4点支持によって,不要輻射の抑制,スタンド自体の共振の低減などに配慮した設計で,低音感,定位感,奥行き感などの
向上が図れるものでした。
以上のように,SB-MX100Dは,小型かつ高品質・高性能という設計がしっかり突き詰められたスピーカーで,テクニクスな
らではの高い技術力が生かされた1台でした。少し明るめの輝きを感じさせつつ,小型を感じさせない低域までしっかりした音
は,音楽を聴く道具として,美しい外観とともに魅力あるものでした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
アーティストの息遣い,ホールの空気感,
セッションの躍動感・・・・・・。
技術をクラフトマンシップの融合は
コンパクト・スピーカーの存在感まで変えました。
素材としての完成度に磨きをかけた
天然マイカ振動板。
そこから奏でられる研ぎ澄まされた音は
コンパクトスピーカーのイメージをも一新します。
◎理想的な天然素材マイカを全ての
ユニットに用いた2ウェイ
●新開発複合振動板を採用した 18cmウーハー。
●オーバルドームの2.5cmツィータ。
◎制振・防振の両面から振動による
音の濁りを徹底排除
●円筒形ポートの両開口にラウンド
状のフランジを設け,空気の入出時
の乱流を低減,風切り音を大幅低減。
●各ユニット間の電気的な相互干渉
を極限まで抑制した分割配置のディ
バイディング・ネットワーク。
●外観仕上げはオーク突板光沢塗装。
5回もの塗装工程によって,きわだっ
た高品質感を獲得するとともに,響き
を微妙にコントロールしています。
●SB-MX100Dの主な定格●
型式 | 2ウェイスピーカーシステム(バスレフ型) |
使用スピーカー | 18cmコーン型ウーハー 2.5cmドーム型ツィータ |
許容入力 | 200W(MUSIC),100W(DIN) |
出力音圧レベル | 86dB/W(1.0m) |
インピーダンス | 6Ω |
クロスオーバー周波数 | 2.5kHz |
再生周波数帯域 | 35Hz〜45kHz(−16dB) |
外形寸法 | 225W×470H×360Dmm(ネット付) |
重量 | 14.0kg(1本) |
※本ページに掲載したSB-MX100Dの写真,仕様表等は1993年3月
のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等
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