SB-MX7の写真
Technics SB-MX7
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥59,800

1987年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したスピーカーシステム。1985年頃まで平面型ユニットを
搭載したスピーカーを主力に据えていたテクニクスが,1986年頃よりオーソドックスなタイプのスピーカーに
戻り始め,自社開発のコーン型ユニット,ドーム型ユニットを搭載したスピーカーシステムSB-MXシリーズを
発売していきました。そうした中,1985年頃より始まったいわゆる598戦争の中にテクニクスが投入したの
がSB-MX7でした。

SB-MX7の大きな特徴は,3ウェイのすべてのスピーカーユニットの振動板にマイカを使用していたことでし
た。マイカは,天然に産するケイ酸塩鉱物のグループ名でいわゆる雲母のことで,軽量でアルミの約3倍の
曲げ剛性を持ち,しかも高い内部損失をもつなど,振動板素材として優れた特性をもっており,この当時,テ
クニクスは積極的に導入,活用を図っていました。SB-MX7では,ミッドレンジを250Hzという低い周波数で
クロスさせて使用し,さらにすべての振動板素材をマイカで統一することにより,低音域から高音域までのス
ムーズな音のつながりを実現していました。

もう一つの大きな特徴は,ウーファーとミッドレンジに採用された,新開発のTMD(テクニクス・モノコック・ダ
イヤフラム)でした。TMDは,NASAで開発されたコンピューター振動解析を新たに導入して,何百回ものシ
ミュレーションと試作を繰り返した結果開発された振動板の構造と形状の総称で,優れた剛性や振動特性を
もつというものでした。従来のコーン型では別ピースであったコーン部とセンターキャップ部を一体構造化し,
シミュレーションの結果選びぬかれた独自の形状を採用することで,剛性を飛躍的に高めていました。独自
の形状は,センターキャップの大きいコーンとドームの複合ともいえる形状で,従来のコーン型の2倍にも及
ぶピストンモーション域の拡大を実現していました。

SB-MX7のウーファー断面図

ウーファーは,32cm口径のTMDユニットで,振動板には複合マイカが使用されていました。この複合マイ
カ振動板は,天然マイカを主成分に,天然パルプ,自己融着性ノボラック(熱可塑性樹脂の1つ)繊維を混
抄し,熱硬化性樹脂を含ませた後,精密金型で加熱加圧成型したものでした。これらTMDと複合マイカ振
動板採用により,2.5kHzものピストンモーション領域を実現していました。磁気回路にはクラス最大級の
マグネットとポリアミド系融着線による4層巻ロングボイスコイルが使用され,すぐれたパワーリニアリティと
低域再生能力が確保されていました。ユニットのフレーム部には,高剛性のアルミダイカストが使用され,
不要振動が抑えられていました。

SB-MX7のユニット

ミッドレンジは,10cm口径のTMDユニットで,振動板にはピュアマイカが使用されていました。このピュア
マイカ振動板は,良質の天然マイカを,直径200μmに細分化し,少量のバインダーと共に加熱硬化させ
たもので,チタンよりも大きな比弾性率,内部損失を実現し,幅広いピストンモーション帯域と歪みの少ない
再生音が可能となったすぐれた振動板でした。この10cm口径振動板を直径45mmのボイスコイルでダイ
レクト駆動することで,ピストンモーション帯域10kHzが実現されていました。磁気回路には,外径90mm
厚さ15mmの大型マグネットが搭載され,ボイスコイルには放熱性の良いアルミボビンと高耐熱ポリアミド系
融着線が組み合わされ,高耐入力化が図られていました。フレームには,ウーファーと同様に高剛性のアル
ミダイカストフレームが採用されていました。
トゥイーターは,2.5cm口径のドーム型で,ミッドレンジ同様にピュアマイカが使用され,45kHzという高域
再生帯域が実現されていました。さらに,ドーム振動板前面のイコライザは廃して,より抜けの良い高域再
生が確保されていました。

SB-MX7のエンクロージャーSB-MX7専用スタンド

エンクロージャーは,不要な振動を抑えるために,スピーカー内中央部に仕切り板状の補強板が組み込ま
れた「クロス・ブリッジド・エンクロージャー」という構造が採用されていました。これにより不必要に重量を増
やすことなく,板厚40mmに相当する強度が確保され,エンクロージャー壁の振動による不要放射音を抑え
るとともに,発生した振動も自然な減衰特性を持たせることができるいうものでした。30mm厚のフロントバッ
フルは,音波の回析による悪影響を抑えるラウンドバッフル形状が採用されていました。
SB-MX7には別売で専用の台が発売されていました。サイズ,デザインともぴったり合わされ,ボックス型
で内部には砂などの吸音・増重量材を充填できるようになっていました。

ネットワークは,パーツ等の面で厳選されていました。コンデンサには高域特性の優れたメタライズド・ポリエ
ステルコンデンサと超大型音響用電解コンデンサが採用され,チョークコイルにはオーディオ専用に開発さ
れたフェライトコアが採用されていました。内部配線材には無酸素銅が使用され,さらにネットワーク素子は
直接結線方式が採用されていました。

以上のように,SB-MX7は,テクニクスがユニット,エンクロージャー等に正攻法で技術と物量を投入した
598クラスのモデルで,同クラスの中ではバランスのとれたクセの少ない音を持っていました。他社の598
クラスのモデルの陰に隠れたためかちょっと目立たない存在になっていましたが,実力派の使いやすい1台
でした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



”高純度・音楽再生”のために,
マイカ&TMD振動板,
クロス・ブリッジド・エンクロージャ
採用3ウェイ


◎トータルバランスを考えて,
 オールマイカ&TMD振動板
◎軽量・高剛性・高内部損失を実現した
 理想の振動板素材,マイカ
◎高剛性に磨きをかける,
 独自の振動板構造−TMD
◎迫力の重低音,
 複合マイカ採用32cmTMDウーハ
◎女性ボーカルをナチュラルに再現
 ピュアマイカ採用10cmミッドレンジ
◎2.5cmドーム型ツィータ
◎徹底防振設計の
 クロス・ブリッジド・エンクロージャ
◎素材を厳選した,
 高品位ネットワーク




●SB-MX7の主な定格●

形式
3ウェイ3スピーカーシステム(密閉型)
使用スピーカー
ウーハ:32cmTMD形
ミッドレンジ:10cmTMD形
ツィータ:2.5cmドーム形
インピーダンス
6Ω
出力音圧レベル
91dB/W(1.0m)
許容入力
240W(MUSIC),120W(DIN)
クロスオーバー周波数
250Hz,2.5kHz
再生周波数帯域
30Hz〜45kHz(−16dB)
外形寸法
380W×670H×353Dmm
重量
28kg(1本)

※本ページに掲載したSB-MX7の写真,仕様表等は1988年1月
 のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社
 に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引
 用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

                        
 

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