SANSUI SC-9
STEREO CASSETTE DECK ¥128,000
1978年に,サンスイが発売したカセットデッキ。サンスイは,アンプ,スピーカー等で人気を得ていたブランド
で,カセットデッキの分野では,メジャーとはいえませんでしたが,正立透視型のカセットデッキが主流になる時
代に入ると,カセットテープを直接装着する「ダイレクトマチック」と称するメカニズムを採用したカセットデッキの
シリーズ,SC-7,SC-5,SC-1を発売しました。そして,このシリーズの最上級機として発売された高級デッキ
がSC-9でした。



SC-9の外見上でも分かる最大の特徴は,,「ダイレクトマチック方式」と称する,カセット装着方式がありました。
いわゆるカセットホルダー(カセットテープを入れるポケットのような部分)がなく,カセットテープを直接メカニズム
部に装着する方式で,同じような方式は,当時パイオニア,ヤマハなどいくつかのブランドのカセットデッキに見ら
れるようになっていました。サンスイは最も早い時期からこの方式を採用していたブランドでした。この「ダイレクト
マチック方式」では,カセットハーフをクランパーによりガッチリとホールドし,カセットハーフの振動やズレを防いで
ヘッドタッチの正確さを確保しようとしたものでした。さらに,メカニズム部のプロテクターを外せば,ヘッド,キャプ
スタン,ピンチローラー周辺が手に取るように大きく見渡せるため,ヘッドの掃除等のメインテナンスがしやすいと
いうメリットもありました。しかし,この方式は,メカニズムにほこりが入りそうなことと,カセットを入れるところにフタ
がないことへの抵抗感があったためか,それ以降主流にはなりませんでした。



SC-9では,「ダイレクトマチック方式」をさらに生かすために,キャプスタン固定用のメカベースと振動の発生源
であるモーター固定用のサブシャーシから成る2分割構造がとられていました。シャーシ板も厚板を使用し,両
シャーシの4面をしぼることによりシャーシ自体の剛性を高め,共振を防ぎ,振動を吸収するようになっており,
ヘッドに有害な振動が伝わりにくい構造になっていました。また,キャプスタンをシャーシに固定するキャプスタン
メタルも3点ビス留めによりメインシャーシとの一体感をもたせ,音質向上を図っていました。

SC-9は,オーソドックスなワンウェイ・2ヘッドデッキで,走行系は,シングルキャプスタンですが,プレイ,録音時
のキャプスタン駆動用にFGサーボモーターを,また,早送り,巻き戻し専用にDCモーターをそれぞれ搭載した信
頼性の高い2モーター構成が採用されていました。キャプスタンは,真円度0.1μ以下の超精密仕上げが施され
FGサーボモーターから平ベルトを介して独立駆動され,なめらかな定速回転により安定した走行を達成し,ワウ・
フラッター0.05%以下(WRMS),S/N57dB(DOLBY OFF,Fe-Cr・High)という基本性能を実現していまし
た。



操作系には,12個ものICによるICロジック回路が採用されていました。メモリー回路とコントロール回路からな
る大規模なICロジック回路により,早送りからプレイへ,プレイから巻き戻しへと,すべての操作がストップを経
由せずにワンタッチで敏速に,確実に行えるようになっており,軽く触れるだけのフェザータッチ・コントロールを
実現していました。
また,ICロジック回路により,(1)巻き戻しが終わると自動的にプレイを開始するオートプレイ機能,(2)巻き戻
しとプレイを何回でも自動的に繰り返すオートリピート機能,(3)カウンターと併用してテープの途中の位置を指
定できるメモリー機能,(4)タイマーを使用してのタイマー録音/再生機能が搭載されていました。
そして,テープリードインボタンを押すと,自動的に早巻きモードに入り,定速走行にして約10秒分送ることで,
リーダーテープ部分とそれに続く巻きぐせのついたテープ部分を一気に飛び越し,最適録音開始位置でストッ
プするテープリードイン機構も搭載されていました。

録再ヘッドには,音質・耐久性にすぐれたフェライトヘッドが搭載されていました。また,サンスイ得意のアンプ技
術を生かし,アンプ部に多くの最新のノウハウを導入して強化していました。位相特性の改善と供給電圧を高く
とることでのダイナミックレンジの拡大を図っていました。消去ヘッドにもフェライトヘッドが搭載されていました。

レベルメーターは,針式のVUメーターが装備され,さらにLEDのピークレベルインジケーターが中央に装備され
ていました。テープセレクターは,バイアス,イコライザー独立式で,normal,high,Fe-Crに対応し,ノイズリダ
クションはドルビー(Bタイプ)が搭載されるていました。録音入力は,当時のテープデッキらしく,LINE入力に加
え,前面にMIC入力も装備され,独立して録音レベル調整ができ,ミキシングも可能でした。背面のDIN入力を
使うと,ライン/ラインのミキシングも可能でした。L・Rのマイク入力のうちL側がモノラル機能を持ち,モノラル録
音に対応していました。各録音ボリュームにはマーカーがついており,フェードアウトやフェードインなどのときに
使いやすくなっていました。その他,瞬間的な過大入力を抑え,歪みや音割れを防ぐリミッタースイッチが装備さ
れていました。

以上のように,SC-9は,当時のサンスイのカセットデッキの最高級機として,オーソドックスな構成ながら,各部
にしっかりと物量を投入したカセットデッキでした。サンスイらしいブラックパネルの精かんなデザインが特徴で,
そのイメージ同様にしっかりした操作感,性能を持っていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



極めつきのメカニズムと
最新電子回路から生まれる
理想のテープ走行。
サンスイカセットデッキの最高級機です。

◎カセットデッキの理想を追い求めて生まれた
 ダイレクトマチック方式と独自のメカブロック
◎ICロジック回路から生まれるフェザータッチ・
 コントロール,オートプレイ/オートリピート機能
◎2モーター,キャプスタン独立駆動で
 ワウ・フラッター0.05%以下(WRMS)
◎サンスイだけのテープリードイン機構
◎高信頼のフェライトヘッドと
 最新アンプ回路が音質をバックアップ
◎見やすい照明付テープカウンター

●瞬間的な大入力を抑え,歪や音割れを防ぐリミッター
 回路を内蔵。手軽にベストレコーディングを保証。生録
 時などには最適です。
●LRのマイク入力のうちL側がモノラル機能。マイクロ
 ホン1本だけのモノ録音の際に便利な機能です。
●MIC(DIN),LINE,OUT PUTの各ボリュームには
 レベルマーカーがついています。フェードアウトやフェード
 インなどに使用すると効果的な録音を楽しめます。
●FMステレオ放送のドルビーエアチェックに効果を上
 げるMPXフィルタースイッチ
●マイク・ラインミキシング可能。DINコードの使用により
 ライン・ラインのミキシングも可能。
●バイアス/イコライザー独立3段のテープセレクター
●高精度で見やすい自照式大型VUメーターとLED
 使用のピークレベルインジケーターで最適レベル
 録音を実現。
●ドルビーNRを装備。
●留守録音もできるタイマースタート機構。 




●Specifications●

型式
4トラック(2チャンネル)録音/再生
テープスピード 4.8cm/sec 
ヘッド
録音/再生ヘッド(フェライト)
消去ヘッド(フェライト)
モーター
FGサーボDCモーター
ワウ・フラッター
0.05%以下(WRMS)
早巻き速度
約60秒(C-60)
周波数特性(録音/再生)
LH
 20Hz~15kHz(30~13kHz±3dB)
Fe-Cr,high
 20Hz~17kHz(30~14kHz±3dB)
SN比(録音/再生)
Fe-Cr,high:57dB以上
Fe-Cr,high+ドルビー:67dB以上
消去効果
60dB以上(1kHz)
入力感度/インピーダンス
(0VU,1kHz)
MIC(LEFT,RIGHT):0.2mV(200Ω~10kΩ)
LINE:70mV(100kΩ)
DIN:0.2mV(4.7kΩ)
出力レベル
(0VU,1kHz=160pwb/mm)
LINE:400mV(出力コントロール最大,47kΩ)
DIN:400mV(出力コントロール最大,47kΩ)
PHONES:0.4mW(8Ω)
バイアス周波数
85kHz
消費電力
45W
寸法
480W×198H×317Dmm
重量
12.5kg
※本ページに掲載したSC-9の写真,仕様表等は1978年6月
 のSANSUIのカタログより抜粋したもので,山水電気株式会社
 に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で 転載
 引用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

   
 
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