DENON SC-907
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥65,000

1984年に,デンオン(現デノン)が発売したスピーカーシステム。デンオンはアナログプレーヤーやアンプなど
のイメージが強く,スピーカーではブランドイメージがどちらかというと弱く,オーソドックスながらいいスピーカー
を作っていましたが,人気があるとはいえませんでした。そんな中,1982年に,SC-A7をはじめとする「SC-A
シリーズ」を発売し,従来の紙や布,アルミといったオーソドックスな素材中心の振動板を搭載したものから,新
素材を積極的に採用したスピーカーシステムへと進出していきました。そして,そんなSC-A7の後継機として発
売されたのがSC-907でした。

SC-907の最大の特徴は,新開発の振動板を採用したウーファーの搭載でした。新しい振動板は「PCM振動
板」というもので,当時の同社のデジタルオーディオの呼称「PCM=パルス・コード・モジュレーション」になぞら
えたかのような名称ですが,SC-A7のウーファーに採用されていたポリプロピレン(P)をベースに,カーボング
ラファイト(C)とマイカ(M)を特殊混合した振動板でした。SC-A7のウーファー用ポリプロピレン振動板に比べ,
ほぼ2.5倍,紙のコーンの約9倍の剛性が確保され,腰の強いしっかりした低音再生が可能となっていました。
駆動系は,高耐入力,高リニアリティにものが搭載され,ダンパーは瞬時の立ち上がりに対して非常に空気抵
抗が少ない「ハイスピードダンパー」が採用されていました。以上のような技術を採用したコルゲーション入りコー
ン型の32cm口径ウーファーは,デジタル音源に威力を発揮し,アナログソースも表情豊かに再生する低音再生
を実現していました。

スコーカーは,6cm口径のドーム型で,SC-A7以来のα-Boronダイヤフラムを採用していました。α-Boron
ダイアフラムは,アルミニウムの基材に,プラズマジェット法によりボロン化合物とアルミナの粒子が振動板表面
にポーラス(多孔性)状に融着したもので,従来の金属振動板に比べ約10倍の内部損失を有するとともに,基
材にクサビ状に強固に融着することから,その剛性はチタンの約3倍にも達するというものでした。このように,
アルミ材に比べて内部損失と剛性を大きく高めたことにより,ハイスピードな応答性と鋭いピークの少ないスムー
ズな特性を実現していました。
さらに,SC-907では,このα-Boronダイアフラムの音の放射構造を改善し,中音域の充実が図られていまし
た。フレーム開口部の精密な調整により,エッジ部の有害な共振を抑えることで,ダイアフラムの前のディフュー
ザーの必要性がなくなり直接放射する構造とすることで,前面への放射を阻害する要素が排除されていました。
また,エッジとダンパーをプッシュプル構造とした「プッシュプル・ダブルサスペンション」を採用することで,リニアリ
ティの改善と高耐入力化が実現されていました。

トゥイーターは,2.5cm口径のドーム型で,スコーカーと同じくα-Boronダイアフラムが採用されていました。
また,スコーカーと同じく音の直接放射をねらったディフューザーを用いない構造が採用されていました。これ
により,50kHzという超高域までのフラットで色づけの少ない再生が可能となっていました。

キャビネットには,新たに針葉樹系硬質パーティクルボードを使用し,振動解析を活用した防振構造をとることで
より剛性を高めたキャビネットとしていました。強度不足による箱鳴りなどが起きにくく,音質への悪影響が抑え
られていました。そして,キャビネット外観は,前作のSC-Aシリーズとは異なり,落ち着いた雰囲気のトラディショ
ナルなデザインが採用されていました。また,音質への影響が大きいネットワークには,新しいオーディオ専用の
大型電解コンデンサーが採用されていました。

以上のように,SC-907は,前モデルSC-A7をベースに,新らしい振動板を投入するなど,より強化した内容を
持ち,広く人気を得るモデルとはなりませんでしたが,しっかりした音をもつ中級機として使いやすいスピーカーで
した。


DENON SC-905
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥49,800

SC-907には,やや小型で外観もそっくりな弟機SC-905が発売されました。トゥイーター,スコーカーはSC-907
と同じユニットで,ウーファーが,PCM振動板の26cmコーン型で,キャビネットもやや小型化されたモデルで,コス
トパフォーマンスのすぐれた1台となっていました。



以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。




心に刻む表現力。
新素材による新シリーズ,
SC-907・SC-905

◎低音楽器の豊かな表情を,心ゆくまで
 聴かせる。新開発,軽質量・高剛性振動板
 ”PCM”誕生。
◎振動板の高純度な音を直接放射。
 めざめる楽音,6cmα-Boronスコーカー。
◎50kHzの超高域までキラリ鮮やか。
 長寛を越える感動の
 2.5cmα-Boronツイーター。
◎高性能ユニットの能力を
 フルに引き出す
 クラスを超えたシステム設計。




●主な仕様●

 
SC-907
SC-905
形式 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ形 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ形
使用スピーカー構成 ウーハー:32cmコーン形 ×1
スコーカー:6cmハードドーム形 ×1
ツイーター:2.5cmハードドーム形×1
ウーハー:26cmコーン形 ×1
スコーカー:6cmハードドーム形 ×1
ツイーター:2.5cmハードドーム形×1
入力インピーダンス 6Ω 6Ω
最大許容入力 150W(プログラムソース) 140W(プログラムソース)
再生周波数帯域 30Hz〜50kHz 35Hz〜50kHz
平均出力音圧レベル 92dB(1m・1W) 92dB(1m・1W)
クロスオーバー周波数 800Hz,5kHz 800Hz,5kHz
レベルコントロール 中音域・高音域連続可変(前面) 中音域・高音域連続可変(前面)
キャビネット 木目調仕上げ硬質針葉樹系パーチクルボード 木目調仕上げ硬質針葉樹系パーチクルボード
外形寸法 W370×H680×D327mm W324×H589×D327mm
重量 23kg 17kg
※本ページに掲載したSC-907,SC-905の写真,仕様表等は
 1985年10月のDENONのカタログより抜粋したもので,D&M
 ホールディングスに著作権があります。したがって,これらの写真
 等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますの
 でご注意ください。

                        
 

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