SC-R88の写真
DENON  SC-R88
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥59,800

1986年に,デンオン(現デノン)が発売したスピーカーシステム。1980年代半ばに始まった,いわゆる
「598戦争」の中にデンオンが投入したモデルで,他社に負けじと物量を投入した高いコストパフォーマン
スをもっていました。

SC-R88の最大の特徴は,高剛性と無共振をめざした強固なエンクロージャーにありました。このエンク
ロージャーをデンオンは「D.A.S.(Dynamic Acoustic Scatter)構造エンクロージャー」と称していまし
た。基本構造は,フロントバッフルに厚さ30mmの高密度・針葉樹系パーティクルボード,その他の面には
20mm厚のパーティクルボードを使用し,背面にポートを配置した強固な作りのバスレフ形エンクロージャー
で,これに,内部天面に新音響素材「ポーラスセラミックス」を装着していました。ポーラスセラミックスは,
圧縮強度500kg/cm2以上という多孔質のコンクリート状の高 剛性で重い材質で,このポーラスセラミック
スの6面のうち4面を天板,両側・側板,裏板に強力に結合し,その重量をエンクロージャー全体に加えな
がら板どうしの結合を強固にし,全体の板振動を抑制するはたらきをしていました。さらに,ポーラスセラ
ミックスの形状はテーパー状をしており,上下の平行面をなくして反射波の分散を図るとともに,特有の多
孔質により,音波の一部を,熱変換によって吸収するはたらきをするようになっていました。これにより,エ
ンクロージャー内部の定在波を大きく抑えることができ,特にウーファーの周波数特性のうねりを低減して
いました。加えて,フロントバッフルは半径30mmのラウンドバッフルを採用し,バッフルのコーナーでの回
析現象を抑え,音像定位の改善を図っていました。

D.A.S.構造のエンクロージャー内部  SC-R88のウーファーユニット

ウーファーは,32cm口径のコーン型で,クロス織りした長繊維のカーボンを特殊樹脂で結合した,高弾性・
高剛性のクロスカーボン振動板を採用していました。さらに,このクロスカーボン振動板は,裏面に極軽量
カーボン抄紙を合着することで,軽量を確保しながらさらに剛性を向上させていました。(厚さは2倍にすると
剛性は8倍になるそうです。)また,物性の異なる素材どうしを合着することで,硬い振動板特有の鳴きを抑
え,適度な内部損失を確保するという効果も得ていました。フレームも頑丈なアルミダイカストフレームが採
用されていました。
この強力なユニットを駆動する磁気回路には,直径145mm,厚さ18mmの強力なフェライトマグネットを使
用した同クラスではトップランクの強力なものが搭載されていました。

スコーカーは,12cm口径のコーン型で,ウーファー同様に軽量で高剛性のクロスカーボン振動板が使用さ
れていました。そして,レジンを配合したエッジを採用し,エッジからの不要輻射が排除されていました。フレ
ームもアルミダイカストフレームが採用されていました。
ユニットを駆動する磁気回路には,直径85mm,厚さ15mmのフェライトマグネットが使用されていました。
ボイスコイルには高耐熱のCCWA(銅クラッドアルミワイヤー)を使用し,アルミのコイルボビンとあいまって
軽量化と高耐入力を実現していました。ダンパーには通気孔を設け,過渡応答性,直線性を高めていまし
た。スコーカーには,ユニークな焼結セラミックスのバックキャビティが背面からバッフル板にはめ込まれて
おり,ウーファーからの背圧の影響を抑えていました。

SC-R88のスコーカー    SC-R88のトゥイーター

トゥイーターは,2.5cm口径のハードドーム型で,振動板には硬質ジュラルミン箔表面にボロン加工物とチタン
酸化物をプラズマジェット法で熔着した「ニューαボロン」が採用されていました。非常に軽量でありながら,剛
性はチタンの3倍,内部損失は従来の金属振動板に比べやく10倍といったすぐれた特性をもつ「αボロン」を
さらに改良したもので,より高剛性・高弾性化(チタンの4倍)するとともに,適度な内部損失も確保されていま
した。フレームはウーファー,スコーカーと同様にアルミダイカストフレームが採用されていました。
トゥイーターを駆動する磁気回路には,直径80mm,厚さ15mmのフェライトマグネットが使用され,より高精度
化と磁束密度のアップが図られていました。
トゥイーターのマウントは,デンオン独自の「R.M.M.(Rigid Monocoque Mount)構造」が採用されていまし
た。これは,バッフルボードにザグりを入れて,バッフルボードの中にトゥイーターを埋め込んだマウント方法で
振動板を駆動する際の反作用による,磁気回路,フレームの振動を低減する効果を得ていました。

ネットワークは,基板が低音域用と中・高音域用に分割配置され,双方のコイル間の干渉が抑えられていまし
た。パーツの面でも厳選され,コンデンサーも電極振動を抑えたオーディオ専用のものが使用されていました。

以上のように,SC-R88は,スピーカーにおける「598戦争」に投入されたデンオンの力作でした。しっかりし
た振動対策がとられた強靱なキャビネットと強力なユニットが,低音域から高音域までスムーズにレンジが伸
びた癖のない音を実現していました。デザイン的には他社との区別がつきにくいものとなり,音の面でも個性
が明確とはいえなかったためか,力作ながらヒット作とはなりませんでしたが,実力派の1台でした。
また,SC-R88は,当時デンオンと提携関係にあった日立(ローディ−)からもOEMで,HS-9000Dの名称
で発売されていました。

HS-9000D


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



デンオン・テクノロジーは,
デジタルクオリティ時代に
パワフルに対応します。

理想の超剛性・無共振構造をめざし,
デジタルサウンドの極致を再現する
SC-R88の画期的なエンクロージャー。

◎スピーカーは新しい時代のレベルに
 応えなければならない!
◎デジタル時代のピュアオーディオを実現した
 新開発D.A.S.構造エンクロージャー(特許出願中)

●”ポーラスセラミックス”の優れた効果@
 エンクロージャーの板共振を排除
●”ポーラスセラミックス”の優れた効果A
 エンクロージャー内部の定在波を一挙に抑える

◎鮮明な音像定位”ラウンドバッフル”採用
◎クロスカーボン振動板採用32cm大口径ウーハー

●低音域のエネルギーを表現しつくすクロスカーボン振動板
◎クロスカーボン振動板採用12cmスコーカー
●中音域の繊細なサウンドを高忠実に再生するクロスカーボン振動板
◎極限のデジタル・クオリティへ。
 α(アルファ)ボロン・ツィーター

●新開発R.M.M.構造(特許出願中)の採用
◎2分割した高品質ネットワーク



●SC-R88の主な仕様●

形式 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ形
スピーカー構成 ウーハー  32cmコーン形×1 
スコーカー 12cmコーン形×1 
ツイーター 2.5cmハードドーム型×1
入力インピーダンス 6Ω
最大入力(EIAJ) 200W
再生周波数帯域 28Hz〜45kHz
平均出力音圧レベル 91dB(1m・1W)
クロスオーバー周波数 500Hz,4kHz
キャビネット 黒色木目調硬質パーチクルボード 
D.A.S構造
外形寸法 W383×H667×D360mm
重量 33.5kg


SC-R88Zの写真
DENON  SC-R88Z
3WAY SPEAKER SYSTEM ¥59,800

1987年に,SC-R88はSC-R88へとモデルチェンジされました。SC-R88をベースにさらに各部に
改良が加えられ,内容の強化が行われていました。同年発売された上級機SC-R99での技術も取り
入れられており,当時の「598戦争」の熾烈さを物語っていたのかもしれません。

エンクロージャーには新たに「スーパー・バスマウント構造」が採用されていました。これは,ウーファー
本体,特に磁気回路の部分をリアパネルから伸びる太いスチールボルトでガッチリ固定するもので,こ
れにより,ウーファーユニットとエンクロージャーが一体化され,振動板の振動支点が明確になるなどの
効果を得ていました。さらに,「D.A.S.構造」にも改良が加えられ,天板に設置されたポーラスセラミック
スのテーパーを前後両側につけ,定在波の拡散能力をさらにアップしていました。

ニューDAS構造SC-R88Zの内部

ウーファーユニットは,クロスカーボンのバインダー及び成形法に改良が加えられ,より高剛性化が図られ
るとともに,磁気回路はクラス最大級のバリウムフェライトマグネット使用のものに強化されていました。
スコーカーユニットは,カーボン繊維のフィラメント数が一挙に3倍の3000本のものとなり,振動板の剛性が
アップしていました。さらに,スコーカーユニットの固定のネジが4本から2倍の8本に増やされ,より強固な
固定が行われていました。
トゥイーターユニットは,剛性を高めるために裏面にセラミック層を電解コートしたジュラルミン箔にボロン化合
物とチタン酸化物をプラズマジェット法により熔着した3層構造の「セラミックコーティッドαボロン振動板」へと
改良されていました。
ネットワークには,分割配置に加え,各回路を理想的な位置に配置するだけでなく,集中アース方式が採用さ
れ,不要なノイズ発生を低減していました。

以上のように,SC-R88Zは,より中身の強化が行われ,コストパフォーマンスの高い1台となっていました。
音の方もクリアさがアップしていました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



進化のZ。
音楽美の感動はクライマックスへ。


◎ウーハーがシャープになる。
 スーパーバスマウント構造
◎独自のNEW D.A.S.構造など,
 卓抜のシステム技術
◎ニュークロスカーボン振動板採用,
 32cm大口径強力ウーハー
◎クロスカーボン振動板採用
 12cmスコーカー
◎新開発セラミックコーテッドαボロンツイーター
◎集中アース,分割配置の高品位ネットワーク
◎新開発測定法を駆使し,
 優れたエネルギーバランスを実証




●SC-R88Zの主な仕様●

形式 3ウェイ・3スピーカー・バスレフ形
スピーカー構成 ウーハー  32cmコーン形×1 
スコーカー 12cmコーン形×1 
ツイーター 2.5cmハードドーム型×1
入力インピーダンス 6Ω
最大入力(EIAJ) 200W
再生周波数帯域 28Hz〜45kHz
平均出力音圧レベル 91dB(1m・1W)
クロスオーバー周波数 500Hz,4kHz
キャビネット ブラッキーウォール木目調仕上げ針葉樹系
高密度パーチクルボード 
ニューD.A.S構造
外形寸法 W380×H672×D357mm
重量 34.5kg

※ 本ページに掲載したSC-R88,SC-R88Zの写真・仕様表等
 は,1987年1月,1987年10月のDENONのカタログより抜粋
 したもので,デノン株式会社に著作権があります。したがって,こ
 れらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
 ていますのでご注意ください。

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