ONKYO SCEPTER200
6WAY 7SPEAKER ・SPEAKER SYSTEM ¥198,000
1982年に,オンキョーが発売したスピーカーシステム。オンキョーはオーディオブランドとしては1945年に
スタートし,1948年にはスピーカーを発売し始め,スピーカーブランドとして名を知られるようになっていった
だけに,歴代様々なタイプのスピーカーを作っています。そうした中,1981年に,国内では珍しい音場型ス
ピーカーシステムとしてセプター300を発売し,その弟機として発売されたのがセプター200でした。

セプター200の最大の特徴は,上述のように音場型スピーカーシステムであることでした。このタイプのス
ピーカーでは,アメリカのボーズ社が有名ですが,音場型の考え方は,実際の生演奏では,楽器からの直
接音だけでなく壁や天井で反射された間接音が多く含まれており,それも含めて再生することで,より豊か
な再生を可能にするというものでした。しかし,普通のタイプのスピーカーを普通の部屋で再生した場合,間
接音成分がスピーカーユニットの指向特性に支配されるために,均一な音場再生が行われず,音響エネル
ギーが周波数によってアンバランスになり,臨場感が得られにくいということでした。そこで,セプター200で
は,不足する帯域の間接音成分をカバーするためのリアラジエータ(=背面に設置れたスピーカーユニット)
を配し,臨場感を高めようとする設計となっていました。実際にセプター200は,フロントバッフルに3つのユ
ニットを配した3ウェイ+リアに3ウェイ・4つのユニットを配した6ウェイ・7スピーカーシステムとなっていまし
た。

ウーファーは,38cmという大口径のコーン型で,セプター300が回転抄造のパルプコーンであったのに対
して,デルタオレフィン・リファインド・コーンが採用されていました。オレフィンの名の通りオレフィン系樹脂の
ポリプロピレン樹脂をベースにした振動板で,素材的に丈夫なわりに内部損失も大きく固有の響きが少なく,
その固有の響きが消えるのも早いという特徴があり,振動板素材として一歩前進を見せたものでした。デル
タオレフィンのデルタは,内部損失を表す値であるタンデルタからとられた呼称でした。さらに,リファインドの
名の通り,添加化合物のコントロールにより,デルタオレフィンの特徴である理想的な内部ロスを保ちながら
ヤング率(曲げ剛性,たわみ剛性)が4倍に高められていました。駆動系は,磁気回路にマグネット寸法が
160φ×85φ×20tmmの大型マグネット及び口径76mmの4層巻きボイスコイルを採用して充分な駆動力
を確保していました。ダンパーには,リニアリティにすぐれたガラス強化ポリイミド樹脂製蝶ダンパーを採用し
大入力にも対処していました。

スコーカーは,セプター300と共通で,直径65mm厚さ100μのマグネシウム合金振動板と10cmコーンの
複合振動板を採用し
従来の同社の同じ口径のコーン型振動板に比べ,厚さで2倍半,剛性で7倍近くに強
化されながらも軽量化されていました。駆動系の
磁気回路は,マグネット寸法140φ×75φ×17tmm,磁
束密度12,000ガウ
ス,総磁束127,000Maxwellの強力磁気回路を搭載し,ボイスコイルには大口径
65φmmのものを採
用していました。また,マグネシウム合金振動板とコーンそれぞれを支持する2重支持
構造のエッジを採
用し,大入力時にも安定した動作を実現していました。さらに,容量0.71,最低共振周波
240Hzのバックキャビティが設けられていました。

トゥイーターもセプター300と共通で,2.5cm口径のドーム型が搭載されていました。新しく開発された樹脂
蒸着法を採用して6μという極薄で均一なコーティングを施した新
開発25mm径,厚さ40μのマグネシウム
合金振動板を採用することによって,従来ドーム内面に貼布し
ていた制動用の発泡ゴムを取り払い,4~5dB
の能率アップと45,000Hzに及ぶ広帯域特性
を実現していました。磁気回路は,強力なマグネットの使用に
加え,プレートを磁束が集中しやすい形状とし,さらに,ギャップ内に磁性流体を注入してボイスコイル
にすべ
ての磁束が集中する構造とし,ボイスコイルの温度上昇を抑え耐入力特性,歪み特性の向上を
図っていまし
た。そして,コンピューター解析によるイコライザが前面に設けられ,10kHz~15kHzのエネルギー特性,
指向特性の改善が図られていました。


上述のように,直接音と間接音との比を全周波数帯域にわたって一定に保つ役目をするリアラジエータがセ
プター200の最大の特徴でした。通常の3ウェイシステムでは,軸上の音圧周波数特性がフラットであっても
ユニットの指向特性に起因するエネルギーのアンバランスによって,エネルギーレスポンスはクロスオーバー
周波数付近で大きく波打ち,特に高域になるほど減少するという特性を示します。これらの特性をふまえ,リ
アラジエータは,フロントの高域のエネルギーを補正するため,3ウェイで構成されており,フロントスピーカー
の特性に直接音として影響を与えないよう,エンクロージャーの背面部に切り込んで取り付けられていました。



Low-Midラジエータは,1基搭載され,ウーファーの音響エネルギーを補正するもので,デルタオレフィン振
動板の10cmコーン型ユニットが使われていました。
Mid-Highラジエータは,2基搭載され,バッフル面に対して30°の角度をもったフレームに取り付けられ,
7cmコーン型スピーカーが使われていました。
Super-Highラジエータは,口径35mmのボイスコイルで駆動されるリング状振動板を90°の立体回転角
をもつコニカルホーンと組み合わせたものが使われていました。

エンクロージャーは,フロントバッフルにポートが設けられたバスレフ型で,充分な板厚のソリッドボードで構
成された強固なものとなっていました。フロントバッフル上には,トゥイーター,スコーカー,リアラジエータそ
れぞれに独立してレベルコントロール(つまり合計5つのレベルコントロール)が設けられ,各ユニットのレベ
ルの細かな調整が可能となっていました。

以上のように,セプター200は,多様なスピーカーシステム,ユニットを作っていたオンキョーらしい個性的
なスピーカーシステムでした。7つものスピーカーユニットを搭載し,リアラジエータを含め5つものレベルコ
ントロールをもつなど,使いこなしがいのあるスピーカーシステムで,調整がきちんとできたときのリアルな
音場感の再現性など,魅力ある1台だったと思います。


以下に,当時のカタログの一部を御所介します。



音響エネルギーの均一化によって
リアルな音場を再現。
クリアーな音像定位を同時に満足させる
新しい音場型システムです。
しかも,ダイナミックレンジの拡大と
ハイパワー化を一段と強化,
デジタルオーディオ・ソースも
高忠実度に再現します。

◎デルタオレフィン・リファインド・コーン38cmウーファ
◎マグネシウム合金振動板と10cmコーンの複合型スコーカ
◎マグネシウム合金振動板使用のトゥイータ
◎音響エネルギーの均一化を実現した3ウェイ・リア・ラジエータ




●SCEPTER200 主要定格●

形式 音場型6ウェイ7スピーカ・バスレフ型 
インピーダンス 6Ω
最大入力 150W
瞬間最大入力 1,500W 
出力音圧レベル 91dB/W/m
再生周波数範囲 23Hz2~45,000Hz
クロスオーバー周波数 450Hz,3500Hz
キャビネット内容積 120リットル
使用ユニット ウーファ:38cmデルタオレフィン・リファインド・コーン型
スコーカ:10cm複合型(マグネシウム合金振動板)
トゥイータ:2.5cmドーム型(マグネシウム合金振動板)
(リアラジエータ)
Low-Mid:10cmデルタオレフィン・リファインド・コーン型
Mid-High:7cmコーン型×2本
Super High:リング型
外形寸法 486W×790H×430Dmm(サランネットを含む)
重量 42kg
備考 スコーカ・トゥイータ及び各リア・ラジエータ独立レベルコントローラ付 
※本ページに掲載したSCEPTER200の写真,仕様表等は
 1982年9月
のONKYOのカタログより抜粋したもので,オン
 キョー株式
会社に著作権があります。したがってこれらの写
 真等を無断で
転載,引用等をする ことは法律で禁じられてい
 ますのでご注意
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