ONKYO Scepter3001
4WAY SPEAKER SYSTEM ¥280,000
1989年に,オンキョーが発売したスピーカーシステム。オンキョーはもともとスピーカーから始まった
メーカーで,様々なタイプのスピーカーシステムを発売してきました。このセプター3001は,一見普通
の3ウェイのトールボーイ型システムに見えますが,一種のバックロードホーンを内蔵した個性的な1台
でした。
セプター3001は,音場感の再現性を高めることをめざした設計が特徴で,全体のフォルムをトール
ボーイ型にまとめて前面バッフルの面積を抑え,かつ,トゥイーターをバッフル面ではなくトップマウントと
することで,バッフル効果をできるだけ避け,自然な音場の広がりを実現しようとしていました。このあた
りは,現在B&Wなど,多くの海外製高級機などでも見られる設計ではないでしょうか。
全体の構成は,外観から見えているウーファー,スコーカー,トゥイーターという3ウェイ構成に,スーパー
ウーファーがついているというもので,実際には4ウェイ構成となっていました。
ウーファーは,20cm口径のコーン型で,オンキョー自慢のピュア・クロスカーボン振動板を軽量化して
レスポンスを高めたものを搭載していました。当時,オンキョーは,ボーカルの帯域100Hz〜1.5kHz
あたりをひとつのユニットで再生しようとする「MID4・コンセプト」を称していましたが,セプター3001で
も人の声を自然に再生するために,軽量化した振動板を使用した新開発のこのウーファーで,80Hz〜
1,500Hzという広い帯域を再生するように設計されていました。フレームには,制振効果の高いADM
フレームが採用されていました。
スコーカーは,5cm口径のドーム型ユニットが搭載されていました。当時,同様のハードドームユニットの
振動板の材質として軽量で非常に硬く剛性の高いチタンが多く用いられていましたが,セプター3001で
は,軽量で内部ロスも適度に得られバランスの取れた材質としてAl-Mg(アルミニウム・マグネシウム)合
金が用いられていました。しかし,アルミニウムは,加工性の面でボイスコイルまで一体成型することは難
しく,当時アルミニウムを用いた一体成型のドーム型ユニットは存在していませんでした。そのために,オ
ンキョーは独自にプレス機を開発して一体成型のAl-Mg合金振動板を製造し搭載したということでした。ド
ームの形状も,中心部が楕円形で外周部になるにしたがって円形となるオーバルダイアフラムにして高域
共振を分散し,制振材を用いない構造を実現していました。
トゥイーターは,2.5cm口径で,スコーカーと同様の材質と構造を持つAl-Mg合金オーバルダイアフラム
ドーム型ユニットが搭載されていました。トゥイーターは,バッフルレスに限りなく近い球体状の専用キャビ
ネットに収められ,エンクロージャーの上部に付けられたトップマウントトゥイーターとされ,前方だけに強い
指向性をもつことを避けて,自然な音場感を実現していました。
80Hz以下を受け持つスーパーウーファーは,25cm口径のコーン型で,内部損失が大きく取れ音の癖の
少ない高分子樹脂系のデルタオレフィン振動板が採用されていました。内部構造が複雑なバックロードホー
ンに近いエンクロージャーの内部にユニットを下向きに設置し,ユニットの直接音と特殊な構造の複雑な音
道を通って出てくる背圧が合成され,エンクロージャー下部のダクトから豊かな低音が響くようになった「スー
パーラビリンス・バスシステム」を採用し,50Hz以下もしっかりとした再生を可能にしていました。
以上のように,セプター3001は,ユニット,エンクロージャーともに高い技術を持つオンキョーならではの
スピーカーシステムで,様々なタイプのスピーカーシステムを開発・発売してきたオンキョーらしい1台ともい
えました。豊かに音場が広がる素直な音が,音楽を気持ちよく聴かせてくれるスピーカーでした。