marantz SD-74
DIGITAL MONITORING CASSTTE DECK ¥84,800
1985年に,マランツが発売したカセットデッキ。マランツは,カセットデッキの分野ではあまりメジャー
とはいえないブランドでしたが,倍速録音再生デッキやアジマス自動調整機能装備のデッキなど,実は
かなり個性的なカセットデッキを出していました。そんなマランツが,オートリバースに3ヘッドを搭載し
たカセットデッキとしてSD-74を発売していました。

SD-74の最大の特徴は,録音用と再生用にそれぞれ専用のヘッドを配した3ヘッド方式で録再オート
リバースを実現していたことでした。録再ヘッドは,磁気特性にすぐれたハードパーマロイによるコンビ
ネーションヘッドで,MOL特性の改善を図っていました。



そして,この3ヘッドで録再オートリバースを実現するために,録再ヘッドをヘッドマウントごと回転させ
るロータリー方式が採用されていました。オートリバースを実現する方法として,4chヘッドを使うインラ
イン方式,個別のヘッドを配置するセパレート方式,ヘッドを上下に移動させるスライド方式など様々な
方式がありますが,マランツは,両方向に同一ヘッドを使えること,アジマスも両方向で調整でき,特性
の均一化が図りやすいことなど,実際面で有利と判断したロータリー方式を採用したということでした。
また,ロータリー方式で正確なヘッドの回転に必要な機構部の加工精度,耐久性等にも配慮が行われ
ていました。

消去ヘッドは,ロータリー方式のコンビネーション録再ヘッドの両脇に設けられたダブル消去ヘッド方式
がとられ,テープの走行方向による走行環境や音質のバラツキを抑えていました。
オートリバース時に問題となるリーダーテープ(透明テープ部分)の時間のブランクに対しては,赤外線
フォトセンサーを使用して,リーダーテープ部に突入した瞬間,反転する赤外線フォトセンサー機構を搭
載していました。

走行系は,シングルキャプスタンで,キャプスタン駆動,リール駆動,メカニズム駆動の3モーター構成で
ダブルフライホイール方式となっていました。メカニズムの金属部品の成形技術から見直すことで,成形
時の歪みを徹底的に排除し,トータルの精度を大きく向上させていました。フライホイールにも,精密か
つ重量級(同社比1.7倍)を採用し,走行精度を高めていました。



そして,適度なバックテンションをテープにかけるために,新開発のバックテンション機構を搭載してい
ました。新素材のルーロン(ゴムに近い質感を持つ樹脂素材。軸受けやシールなど幅広く使われる。)を
駆使して,動的に安定したテンションを加えようというもので,「ダイナミック・スタビリティ・テンション・シス
テム」と称していました。



オーディオ回路は,カップリングコンデンサーをわずか2個としたDC構成で,入力から出力まで直結化
を進め,録音・再生ともヘッド直結となっていました。また,録音アンプに,最新の定電流駆動ICを導入
し,一定の電流でドライブすることにより,録音時の高域飽和レベルを改善していました。カセットデッキ
はメカニズムとエレクトロニクスが高密度に搭載されており,オーディオ回路は,ロジック系,電源系など
他の回路とは,信号への影響を抑えるために,分離し,独立させていました。

テープセレクターは,メタル,クローム,ノーマルの3ポジションで,オートセレクターになっていました。ノ
イズリダクションとしては,ドルビーBタイプ,Cタイプに加え,dbxも搭載され,ダイナミックレンジの広い
デジタルソースにも対応を図っていました。
テープ走行系の機能もQMS(クィック・ミュージック・センサー)に代表される多機能化が図られていまし
た。(1)再生中に10秒以上のブランクが生じると自動的に早送りになり,次の曲の頭から新たに再生
に入る「ブランク・スキップ機能」,(2)曲の頭の部分を10秒間ずつ再生して進む「インデックス・スキャ
ン機能」,(3)メモリースイッチでストップ(プレイ開始)位置を記憶する「メモリーストップ(プレイ)機能」
(4)同じ曲を反復させることができ,再生ボタンを2回押すと1曲リピートが可能な「リピート機能」,(5)
録音済みテープから弥勒音部分を探し出す「ブランク・サーチ機能」,(6)録音を中止してREWボタン
を押すと,録音スタート地点まで戻り再生スタンバイになる「クイック・リワインド機能」,(7)ワンタッチで
4秒間の無録音部分を作る「オート・レック・ミュート機能」,(8)タイマースタンバイ機能等が搭載されて
いました。

FL表示のディスプレイ部は,ピークホールド付のバーグラフ表示のレベルメーターと4桁のデジタル・カ
ウンターなどから構成されていました。デジタル・カウンターは,(1)通常の4桁テープカウンター,(2)
テープの残量表示,(3)経過時間(ラップタイム)表示,(4)選曲動作時の曲数表示の4通りの表示機
能を備えていました。

以上のように,SD-74は,録再オートリバースを3ヘッド構成で実現する高度なメカニズムを持ち,多彩
な選曲機能,dbxも装備するノイズリダクションシステムをもつなど,マランツのカセットデッキにかける
熱意が感じられるような,盛りだくさんな内容のカセットデッキで,しっかりした性能と機能を両立した1台
でした。カセットデッキにおけるマランツのブランドイメージの弱さもあり,人気モデルとはいえませんでし
たが,隠れた高機能・高性能デッキでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



デッキの理想に迫る,
3ヘッド・オートリバース。



精度を極めた
メカニズムに先進の
回路技術を搭載


◎オートリバース機の本命,3ヘッド・
 デッキの登場
◎リバースデッキのHiFi化を支える,
 ロータリーヘッド機構
◎走行特性を根本
 的に見直した,
 高精度メカニズム
◎新テンション機構
 「ダイナミック・スタビリティ・テンション
 システム」による走行安定化の追求
◎走行特性の均一化に威力を発揮する
 ダブル消去ヘッド
◎リバース時のブランクを追放する
 赤外線フォトセンサー機構
◎メカトロニクスを分担する
 電子回路の充実度
◎位相特性の改善,臨場感を再現する
 DC構成オーディオ回路


先端テクノロジーを
結集した充実の
録音再生機能


◎デジタル・ソースのDレンジを
 カバーする,フルNRシステム
◎動作の視覚モニターを演出する
 多機能ディスプレイ

●動作状態を視覚に訴える大型ディスプレイ
◎CDに対向する自由自在の
 アクセス機能
◎連係プレイに備える先取り機能

●シンクロ・レコーディング機能
●アウトプット・レベル・コントロール
●マランツ・バス・システム対応




●SPECIFICATIONS SD-74●


トラック型式 4トラック2チャンネルステレオ
ヘッド 録音ヘッド×1
再生ヘッド×1
消去ヘッド×1
モーター キャプスタンモーター×1
リールモーター×1
メカニズム駆動モーター×1
ワウ・フラッター 0.028%W・RMS,±0.05%W・peak
周波数特性 メタル   20Hz~20kHz
クローム 20Hz~19kHz
ノーマル 20Hz~18kHz
SN比 54dB(EIAJ/ピーク録音レベル聴感補正)
ドルビーB NR ON時:5kHz以上 10dB改善
ドルビーC NR ON時:1kHz~10kHz 20dB改善
dbx NR ON時:1kHz 30dB改善
入力感度 ライン:70mV(50kΩ)
出力レベル ライン:0.7V(2kΩ)
ヘッドホン:0.7mV(8Ω)
電源 100V AC 50/60Hz 
消費電力 30W(電気用品取締法)
最大外形寸法 416W×118H×334Dmm
重量 6.5kg
※本ページに掲載したSD-74の写真,仕様表等は1985年2月の
 marantzのカタログ
より抜粋したもので,日本マランツ株式会社に
 著作権があります。したがって,これらの
写真等を無断で転載・引
 用等することは法律で禁じられていますのでご注意ください。

    

 
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