Technics SE-9021A
STEREO POWER AMPLIFIER ¥59,800
1978年に,テクニクス(松下電器=現パナソニック)が発売したパワーアンプ。当時いくつかのメーカーが
エントリークラスでも,機能のセパレート化を図った手ごろな価格のシンプルな機能のセパレートアンプを
発売していました。テクニクスもセパレートアンプのエントリーモデルを発売し,このシリーズのパワーアン
プがSE-9021Aでした。

SE-9021Aの特徴は,アンプの一つの理想といわれる「ゲインのある電線」をめざしてシンプルな回路
構成のDCアンプとして作られていたことでした。入出力のカップリングコンデンサ,段間のコンデンサを
取り去り,DCアンプとして,直流域までフラットなゲインと位相特性を実現していました。

初段は,通常のDCアンプで用いられるFETをあえて使わずに,デュアルトランジスタで初段増幅器を構
成し,カレントミラー負荷で動作させ,次段以下をフローティング状態とし,ここでのドリフトがあっても,DC
ドリフトには影響しないという設計となっていました。デュアルトランジスタのよく揃ったペア特性により,定
電圧電源を供給していることと合わせ,高い直流安定度を実現していました。

出力段は,直線性がよく,出力インピーダンスが低くできる3段ダーリントン構成で,さらに1段目の歪を
少なくし,次段を十分に低インピーダンスで動作させて,出力トランジスタを駆動し,余裕のある電力増
幅を可能にしていました。また,出力トランジスタには,高域周波数特性にすぐれたものを使用し,より
高い直線性を実現していました。



こうした出力段を支える電源部は,片chに6,800μF×2,計27,000μFの電解コンデンサを搭載
し,電源トランスには,熱伝導率にすぐれた樹脂を含ませた新開発の大容量EIコアトランスを搭載した
余裕のある電源回路を構成していました。

こうした回路構成,電源部等により,薄型の筐体ながら,8Ω負荷時に,60W+60Wの出力を,20Hz
~20kHzのオーディオ帯域において0.01%の低歪率で実現していました。さらに,1/2実効出力時
には,0.005%という低歪率を実現していました。また,20Hz~20kHz,+0,-0.1dBという平坦
な周波数特性と,115dBという高SN比を実現していました。



フロントパネルに設けられたレベルメーターは,高精度のピークメーターで,高性能オペアンプICを使用し
た直線検波器,対数圧縮回路の採用により,100μsec以下という速い応答を実現し,切換なしにワン
レンジで,0.001W~120Wをカバーし,10kHz,1波という入力信号に対しても,0dBを指示する精
度を実現していました。
その他,機能として,DCとローカットの切換スイッチ,2系統のスピーカー出力の切換スイッチ,ヘッドホ
ン端子が装備されていました。そして,スピーカー切換には,接点数を最少限に抑え,スイッチの切換抵
抗の影響を抑えるために,リレーを採用し,このリレーは,電源ON/OFF時のミューティング及び,DC成
分からスピーカーを保護する電子式保護回路,負荷ショート時の出力トランジスタの保護回路も兼ねてい
ました。

以上のように,SE-9011Aは,薄型の筐体のパワーアンプで,エントリーモデルながら,しっかりした内
容をもち,機能的にも過不足内ものをもったコストパフォーマンスにすぐれた1台でした。クリアでフレッ
シュなイメージの音は,外観のイメージにつながるものでした。



当時のテクニクスのカタログにある,ラックにマウントされたシステム例でも,すっきりとしたデザインと
コストパフォーマンスの高さが感じられました。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



オーディオには
独立させて追求したい命題がある
ザ・クオリティ・セパレーツ

求めるものは・・・・・音楽の感動をストレートに伝える
      ダイナミクスの純度

60W+60W(20Hz~20kHz 両ch同時駆動・8Ω)DCパワー
T.H.D.0.01%/P.B.W.5Hz~60kHz
◎デュアルトランジスタによる初段が
 きわめて高い直流安定度を実現
◎3段ダーリントン構成で余裕のある出力段
10kHz・1波・0dB指示の高精度ピークメータ
◎新開発の大容量EIコアトランスを採用
◎スピーカ切換にリレーをしよう
◎SN比115dBの静かさに加え,平坦な
 周波数特性
◎DC-ローカット切換えスイッチ装備




●定格●


<パワーアンプ部>

実効出力(両ch・8Ω)  20Hz~20kHz:60W+60W
1kHz:65W+65W 
全高調波歪率  0.01%(20Hz~20kHz) 
混変調歪率  0.01% 
周波数特性  0Hz~150kHz,+0,-3dB
20Hz~20kHz,+0,-0.1dB 
SN比(IHF-A)  115dB 
残留雑音  100μV 
入力感度/入力インピーダンス  1V/47kΩ 
ダンピングファクタ  100(8Ω) 
負荷インピーダンス  MAIN or REMOTE:4~16Ω
MAIN+REMOTE:8~16Ω
出力帯域幅(両ch・8Ω)  5Hz~60kHz,-3dB 


<メータ部>

アタックタイム  100μsec 
リカバリータイム  750msec(0→-20dB) 
メータレンジ  +3dB~-50dB 



<総合>

電源  AC100V(50/60Hz) 
消費電力  140W 
外形寸法  430W×98H×331Dmm 
重量 9.7kg 
※本ページに掲載したSE-9021Aの写真,仕様表等は1978年1月
 のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社に
 著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用
 等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

 
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