Ｔｅｃｈｎｉｃｓ　ＳＥ-９２００
ＳＴＥＲＥＯ　ＰＯＷＥＲ　ＡＭＰＬＩＦＩＥＲ　￥１２０，０００

１９７５年に，テクニクス（現パナソニック）が発売したパワーアンプ。テクニクスは，１９７２年に超弩級のパ
ワーアンプＳＥ-１００００を発売し，当時世界最高水準のすぐれた特性を実現していました。そこでの技術を
継承し，より一般的な価格帯（といっても高価ですが・・・）に「９０００番シリーズ」を発売しました。１９７４年に
第１弾として，コントロールアンプＳＵ-９６００，パワーアンプＳＥ-９６００を発売しました。そして，その翌年に
ＳＥ-９６００の弟機として発売されたパワーアンプがＳＥ-９２００でした。

メインアンプの基本回路は，差動増幅全段直結ＯＣＬ完全コンプリメンタリー構成となっていました。ペアトラ
ンジスター構成の差動増幅器の次段にエミッタフォロワ回路を挿入し，初段増幅度を上げＳＮ比を向上させ
るとともに，プリドライブ段までのインピーダンス整合を適正化して，歪の発生を抑えていました。

プリドライブ段は，負荷としてトランジスターによる定電流回路を設けて定電流動作を行い，クロスオーバー歪
の発生を抑え，低歪みを実現していました。また，プリドライブ段では，ブートストラップコンデンサーを取り除
き，低域の安定度を高めるとともに，出力段の高い安定度も確保されていました。
以上のような基本回路構成と蓄積された技術を生かし，両ｃｈ出力８２Ｗ＋８２（８Ω）という大出力時にも，高
調波歪率０．０８％以下という，すぐれた特性を実現していました。

電源部は，電圧増幅段に±４２Ｖの定電圧電源，出力段に大容量トランスと１０，０００μＦのコンデンサーを
登載し，瞬間的な大入力時のトランジェントクロストークの発生を防ぎ，すぐれた特性を実現していました。

パネル面に設けられたパワーメーターは，新開発のピーク出力検出型メーターが搭載されていました。この
メーターは高精度なもので，メーターレンジは×０．０１，×０．１，×１の３段切換となっており，小レベルから
フルパワーまで，高い精度で出力が直読できるようになっていました。
特徴的な機能として，出力インピーダンス切換えが登載されていました。これは，出力インピーダンスを０．０８
Ω（ｎｏｒｍａｌ），０．８Ω，２．７Ω，８Ωの４段階に切換えられ，回路はゲイン変化のないブリッジ方式となってい
ました。出力インピーダンスを切換えるとダンピングファクターが変わることになります。ダンピングファクター
は密閉型やバスレフ型などスピーカーのタイプにより最適値が異なり，その最適値に近づけることで音質の調
整が可能となります。つまり，この出力インピーダンス切換はダンピングファクターを１００，１０，３，１（８Ωの
スピーカーの場合）に変えることができる機能ともいえるものでした。

保護回路は，スピーカー端子の直流電圧を検知して電源をリレーで切り離すスピーカー保護回路が登載され，
これは，信号系にリレーの接触抵抗が入らず，長年の使用にも音質劣化の心配がないテクニクス独自の方
式でした。
さらに，差動増幅の共通エミッタ電源のツェナーダイオードとダイオード，コンデンサー，抵抗で構成したタイミ
ング回路によるショック音防止回路も装備され，電源ＯＮ時に発生するショックノイズを防いでいました。

以上のように，ＳＥ-９２００は，超高級機最上級機ＳＵ-１００００，同じ「９０００番シリーズ」の上級機ＳＥ-９６００
の技術を継承し，正攻法で性能を追求したパワーアンプでした。ハードな業務用アンプのような外観ながら，ナ
チュラルで耳障りの良さをもつしなやかな音を聴かせてくれる１台でした。

以下に，当時のカタログの一部をご紹介します。

スピーカとの相性を問わないパワーアンプ
・・・出力インピーダンス４段切換え

◎スピーカとの相性を問わない
　出力インピーダンス４段切換え
◎８２Ｗ＋８２Ｗ（８Ω・１ｋＨｚ）・・・
　低歪率・高安定度に徹したメインアンプ
●適切なインピーダンスマッチングで低歪化
●定電流動作のプリドライブ段
●トランジェント歪を極少に抑える電源回路
◎出力直読ピーク検出型パワーメータ装備
●メータレンジは３段切換え
◎独自の保護回路を備えた高信頼度設計
◎電源ＯＮ時のショック音防止回路装備
◎２組のスピーカを接続可能

●ＳＥ-９２００定格●

※本ページに掲載したＳＥ-９２００の写真，仕様表等は１９７５年２月
　のＴｅｃｈｎｉｃｓのカタログより抜粋したもので，パナソニック株式会社に
　著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載，引用
　等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。
 

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