SL-1の写真
ONKYO SL-1
SUPER WOOFER SYSTEM ¥150,000

1978年に,オンキョーが発売したスーパーウーファーシステム。スーパーウーファーは当時すでに一部マニア
の間で使われてはいましたが,メーカーが製品化しているものは少ない状態でした。(今では,AV用途に多く出
ていますが・・・。)そんな中,メーカー製スーパーウーファーの走りといえるのが,このSL-1でした。

SL-1の大きな特徴は,20Hzという超低域までの再生を可能にしつつ,実用に耐えうるできるだけの小型化を
図った設計にありました。50Hz以下の超低域再生となると,どうしても大型ユニット+大型キャビネットというこ
とになり,一般のユーザーには難しくなるということから,実用的に使用できるスーパーウーファーとして発売され
たのがSL-1で,このあたりの考え方は,現在のAV用途のスーパーウーファーにもそのまま通じるものがあると
思います。

基本的な構成は,38cm口径の平板型パッシブラジエータと20cm口径のコーン型ドライバーからなり,これを
内容積約80リットルの密閉型エンクロージャーに納めたものとなっていました。そして,この20cm口径のドライ
バーを駆動するドライブアンプが内蔵されており,既存のシステムと接続しやすいものとなっていました。

SL-1の内部

オンキョーは,このSL-1を「38cm平板型パッシブラジエータと20cmドライバーをを利用した音響変成器」と
称していました。内部は,パッシブラジエータとドライバーがフロントキャビティ(=空間のこと)を挟んで相対し
た構造となっており,ドライバーの後部はバックキャビティに覆われた構造となっていました。このバックキャビ
ティは,通常のエンクロージャーと同様に,逆相分の音が空間に放射されないようにする役割を持ち,その容
積は,フロントキャビティや振動系質量と関連して低域再生限界に影響するため,計算とシミュレーションによっ
てシビアに値が定められていました。こうした構造により,ドライバーとバックキャビティがハイパスフィルターの
はたらきをし,フロントキャビティとラジエータがローパスフィルターのはたらきをするという巧妙な仕組みとなっ
ていました。
ドライバーを音声電流により駆動すると,低域ではドライバーの振動はフロントキャビティを伝播してパッシブラ
ジエータを動かして外部に音を放射するようになっています。このとき,ドライバーとパッシブラジエータは面積
が異なり,この面積比の2乗即ち変成比の割合で見かけ上の実効質量が大きくなり,あまり大きな容積のキャ
ビネットでなくとも,極めて低い周波数から再生できることになります。しかも,フロントキャビティの空気を介して
駆動されるため,駆動力はパッシブラジエータ全面にはたらき,しかも,パッシブラジエータがジュラルミン板とゴ
ムシートでできているため,全面がピストン運動をするようになっています。これらの結果,余分な音は放射され
ず,歪の少ないしっかりした低音再生が可能となっていました。さらに,駆動周波数が高くなると,フロントキャビ
ティがドライバーの音を吸収して,パッシブラジエータは動かないため,このとき分割振動や非直線性で,ドライ
バーから高い成分の信号が出ても,パッシブラジエータからは放射されず,完全に近いバンドパス特性が得ら
れ,低歪の再生が可能となっていました。

SL-1は,アクティブ型のスーパーウーファーだあるため,定格出力60Wの内蔵アンプが搭載されていますが
構造的に,この大出力アンプを密閉箱に内蔵することになるため,内部の温度上昇に配慮が必要となり,他の
方式のアンプに比べて同じ出力でもパワーロスが少なく発熱も少ないPWM方式のアンプが採用されていまし
た。こ れは,PWM変調によるデジタル増幅方式で,入力信号(アナログ)で搬送波である方形波パルスを変調
し て,入力信号に比例してパルス幅が変わるようにし,増幅された信号をローパスフィルターを通すことでオーディ
オ 信号のみを取り出すというものでした。前述のようにローパスフィルターを必要とするため,全帯域型よりも,
SL -1内蔵のアンプのように,ある帯域専用のアンプに向いた方式ともいえました。

前 面パネルには,レベルコントロール,60,70,80Hzのカットオフ周波数3段切換スイッチが備えられ,背面パ
ネ ルには,ハイレベル5.5V,ローレベル0.3Vの2種類の入力感度の端子と位相切換スイッチが備えられ,多
様 なシステムとの組み合わせができるようになっていました。

以 上のように,SL-1は,スーパーウーファーとしてユニークな構造と仕組みを持ち,幅広いシステムと組み合わ
せ て使えるように,オーディオ総合メーカー製らしく完成度の高いものとなっていました。非常に低い周波数まで
再 生能力を持ち,実際,重低音ともいえる音の再現性を持ったスーパーウーファーでした。そして,その後ロング
セ ラーモデルとなりました。


以 下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



衝撃のスーパーウーファ,新登場。
音楽観を根底からくつがえすほどの,
圧倒的かつ肉感的な超低音の響き。
38cm平板型パッシブラジエータ/
20cmドライバー採用音響変成器。
大出力PWM方式ドライブアンプ内蔵。



●SL-1 主要定格●

型式
アンプ内蔵音響変成器/パッシブラジエータ型
用途
超低域再生専用
出力音圧レベル
91dB/V/m(ハイレベル入力),95dB/0.1V/m(ローレベル入力)
(PWMアンプによる参考値)
再生周波数範囲
20〜90Hz
カットオフ周波数
60,70,80Hz/3段切換
入力インピーダンス
10kΩ(ハイレベル端子),100kΩ(ローレベル端子)
入力感度
5.5V(ハイレベル端子),0.3V(ローレベル端子)
使用スピーカ
ドライバー20cmコーン型,パッシプラジエータ38cm平板型
ドライブアンプ
PWM方式 定格出力60W
外形寸法
620W×483H×411Dmm
重量
38.5kg
消費電力
75W(電気用品取締法規格)
備考
前面パネル操作機能
 電源スイッチ,レベルコントロール,カットオフ周波数切換
裏面パネル操作機能
 入力感度切換,位相切換

※本ページに掲載したSL-1の写真,仕様表等は1979年1月
 のONKYOのカタログより抜粋したもので,オンキョー株式会社
 に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,
 引用等をすることは法律で禁じられていますのでご注意ください。

                        
 

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