Technics SL-1015
QUARTZ SYNTHESIZER DIRECT DRIVE
TURNTABLE SYSTEM ¥220,0001979年にテクニクスが発売したプレーヤーシステム。アームまで装備した完成した形のプレー ヤーシス
テムとしては当時のテクニクスの最上級機にあたり,同社のシンボル的存在であるターンテーブルSP- 10
Uに準ずる性能を持つ高性能なプレーヤーシステムでした。SL-1015は,「ターンテーブルシステム」と称するように,単品で売られていたターンテーブ ルSP-15,ター
ンテーブルベースSH-15B1,システムトーンアームEPA-500を組み合わせてシステムアップし たもので,
テクニクス自慢の高性能ユニットを組み合わせたともいえる1台でした。
SP-15
QUARTZ SYNTHESIZER
DIRECT DRIVE TURNTABBLE
¥100, 000SP-15は,SP-10Uの弟機ともいえ る存在で,徹底した防振構造やピッチコントロールを備えた1台でした。
モーターは高トルクヘテロポールDDモーターを搭載し,起動トルク3.0kg・cmを実現してい ました。また,この
DDモーターは回転部とターンテーブルを一体化した独自の一体構造DDモーターとしていました。
ターンテーブルは直径33.9cm,重量2.7kgの大型・重量級で,安定した回転を確保するととも に,強力なモ
ーターにより,わずか0.4秒で定速回転に達するというものでした。また,DC電源回路 には,高効率のパルス
電源回路が搭載されていました。ターンテーブルの振動解析に基づいて,ターンテーブルの裏面には特殊粘弾性材でデッドニングが施されてい
ました。デッドニングは裏面と外周部に施され,さらにターンテーブル上面のゴムシートをターンテーブル内に入
り込ませた3重のデッドニングとなっていて,ターンテーブルの共振を抑えるともに外部振動を遮断・吸収して,
徹底的にハウリングが抑えられていました。回転数は,331/3・45・78.26回転が備えられ,ピッチコントロールは3スピードとも0.1%刻みで±9.9%
まで,597通りものピッチコントロールが可能となっていました。シンセサイザピッチコントロールにはCMOS
LSI(MN6042),I2L,ECL使用の分周用ICにDN860,位相速度制御用ICにAN660,駆動用ICにAN640
というように,合計3000素子を超える複雑な電子回路に高集積度ICを採用し,高度で複雑な制御回路をコンパ
クトに収めながら,高度で高性能な制御を可能としていました。
モーターの回転数検出には全周検出FG(周波数発電機)を採用し,クォーツロックと相まって,ワウ・フラッター
0.025%(WRMS)を実現していました。キャビネットには,加工精度が高く外部の環境変化に強いアルミダイカストが使用され,底ベースには防振特性
減衰特性にすぐれたT.N.R.C(Technics Non Resonance Compound)を採用した2重防振構造がとられ
ていました。
SH-15B1
TURNTABLE BASE ¥55,000SH-B1は,単売されていたSP-15及びSP-25(¥60,000)用に作られたターンテーブルベースで,徹底し
た防振構造が特徴でした。キャビネットは,振動減衰率が大きく,防振特性にすぐれた粘弾性材(特殊ゴム)で一体成型されたもので,キ
ャビネット全体が大きなインシュレーターともいえる構造となっていました。ターンテーブル,アームパネルをはじ
めダストカバーまで特殊粘弾性材に直結され,防振対策が徹底されていました。
これらの結果,キャビネット全体の共振周波数,共振Qをきわめて低い値に抑えることができていました。
SH-15B1には,弟機SH-B2,SH-B3もあり,SH-B1がシリーズのトップモデルとなっていました。
EPA-500
SYSTEM TONE ARM ¥60,000EPA-500は,アームベースEPA-B500と,アームユニットEPA-A501H,針圧計SH-50P1をセットにしたもの
で「システムトーンアーム」と称していました。アームベースEPA-B500は,アーム部と分割された構造ながら,通常の他のテクニクスのトーンアーム同様に,
精度の高いピボットとボールベアリングによる高感度ジンバルサスペンション軸受け構造を採用し,水平・垂直両
回転軸の軸心が一点で交差する構造で,水平,垂直両方向ともに初動感度7mgを実現していました。軸受け部
は,精密亜鉛ダイカストベースで支持され,外部振動を抑えていました。
高さ調整には,12条ヘリコイドのアーム高さ調整機構を搭載し,精度の高い高さ調整を可能にしていました。
アームベース付属の出力コードには,直流抵抗が39.5mΩ/mと低く,低容量(41.5pF/m)のコードを採用し
音質の劣化を抑えていましたSH-50P1は,応力(針圧)を加えると電気抵抗が変化するピエゾ抵抗効果を利用した,高感度電子式針圧計で
半導体応力素子(Semi-condductor Stain Gauge)2個とトランジスタ2個を利用した電子コントロールによる
高精度を実現していました。EPA-500は,カートリッジのコンプライアンスに合わせて最適のアームを選択できるアームユニット交換式にな
っているのが特徴で,「システムトーンアーム」の呼称もそこから来ていました。
EPA-500には,ハイコンプライアンスカートリッジ用アームユニットEPA-A501Hが組み込まれていました。別
売アームユニットとして,EPA-A501M(ミディアムコンプライアンスカートリッジ用),EPA-A501L(ローコンプ
ライアンスカートリッジ用)がありました。EPA-500のアームは,名機EPA-100の機能を受け継ぎ,メインウェイトは片方をスプリングで分割支持し,も
う一方はウェイト後部とダンピングセレクタに対向して付けた2つの磁石の吸引力でフロートした構造で,このウェ
イトの共振が粘性シリコンオイルとダンピングシリンダによって制動され,ピックアップ全体の共振を効果的に制
動するようになった「ダイナミックダンピング機構」が採用されていました。アームユニットの低域共振鋭度を通常
のアームに比べ,6dB以上改善しクリアな再生を実現していました。
アームパイプは,軽量で機械的強度の大きなチタンを窒素により硬化処理したチタニウムナイトライド(TiN)を採
用し曲げやねじれに対する強度を高め,不要な共振を抑えていました。以上のように,SL-1015は各部に高性能なユニットを用いてシステム化されたともいえるプレーヤーシステムで
した。テクニクスらしい徹底的に共振やハウリングを抑えた防振構造が特徴的で,正確な再生をめざした高性能
な1台でした。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
(SP-15)
D.D.10年の
歴史とオリジナリティ蓄積の結晶
テクニクス自信のクォーツシンセサイザ
D.D.ターンテーブル
(EPA-500)
カートリッジの持ち味を引き出し
音楽を演出する
真の立役者はシステムトーンアームです
●SL-1015 主な定格●
(総合)
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 9.5W |
外形寸法 | 566W×170H×465Dmm |
重量 | 23.5kg |
(SP-15 主な定格)
駆動方式 | ダイレクトドライブ |
駆動モーター | ブラシレスDCモーター |
制御方式 | クォーツフェイズロックドコントロール |
ターンテーブル | アルミダイカスト製
直径33.9cm,重量2.7kg(ゴムシート含む) |
回転数 | 331/3・45・78.26rpm |
回転数微調整範囲 | ±9.9%(0.1%ステップ) |
起動トルク | 3kg・cm |
起動特性 | 0.4秒で定速回転(331/3rpm時) |
ブレーキ機構 | 電子ブレーキ,機械ブレーキ |
負荷変動 | 2.5kg・cm以内0% |
回転数偏差 | ±0.002%以内 |
ワウフラッタ | 0.025%W.R.M.S.(JIS C5521) |
SN比 | 78dB(IEC98A weighted) |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 9.5W |
外形寸法 | 349W×93H×372Dmm |
重量 | 6.2kg |
(SH-15B1 主な定格)
外形寸法 | 566W×170H×465Dmm |
重量 | 16.0kg(ダストカバー含む) |
アーム有効長 | 206〜235mm |
トーンアーム後部 | 120mm以内(アーム有効長が206mmの時)
110mm以内(アーム有効長が235mmの時) |
(EPA-500 主な定格)
(EPA501H/EPA-501M/EPA-501L 主な定 格)
形式 | ダイナミックダンピング方式アームユニット交換可能タイプ |
アームパイプ | チタニウムナイトライド(TiN) |
アーム実効長 | 250mm |
アーム後部長範囲 | 68〜85.5mm(アーム支点より) |
オーバーハング | 15mm |
水平トラッキングエラー角 | +1°6’(30cmレコード内周)
+2°6’(30cmレコード外周) |
アーム実効質量
(カートリッジなし) |
8g(EPA-501H)
10g(EPA-501M) 18g(EPA-501L) |
適合カートリッジ重量 | 5〜7g |
適合カートリッジコンプライアンス
(ダイナミック100Hz) (※注) |
10〜14×10-6cm/dyne(EPA-501H)
7〜10×10-6cm/dyne(EPA-501M) 7〜10×10-6cm/dyne(EPA-501L) |
カートリッジ取り付け方法 | JIS規格12.7mm(1/2インチ)取付間隔 |
シェル端子プラグ | φ1.2,4ピン |
(※注)テクニクスのカートリッジコンプライアンスはダイナミックコンプライアンス表示です。
他社で25×10-6cm/dyne以上の値を示している場合がありますが,これは,スタ
チックコンプライアンス表示です。スタチックコンプライアンスはダイナミックコンプライ
アンスの約2倍ですから,約1/2の値がダイナミックコンプライアンスと同値です。
(EPA-B500 主な定格)
形式 | アームユニット交換形アームベース |
軸受構造 | ジンバルサスペンション方式 |
高さ調整範囲 | 42〜62mm(ベース取付面よりパイプセンターまで)
(ヘリコイド部20mm) |
初動感度 | 7mg以下(水平,垂直方向) |
出力コード直流抵抗 | 39.5mΩ/m |
出力コード容量 | 41.5pF/m |
アームベース取付穴 | φ62mm |
(SH-50P1 主な定格)
形式 | 半導体応力による電子コントロール針圧計
ゼロ点調整,ゲイン調整機構内蔵 |
針圧測定範囲 | 0.5〜3g |
電源 | DC3V酸化銀電池(JIS G-13型)2個 |
外形寸法 | 147W×24H×52Dmm |
重量 | 125g |
※本ページに掲載したSL-1015,SP-15,EPA-500,SH-50P1の写真・
仕様表等は1979年10月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,松下
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