Technics SL-1100
DIRECT DRIVE PLAYER SYSTEM ¥72,000
1971年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプレーヤーシステム。1970年に世界初のD.D.(ダイレクト・
ドライブ)方式のターンテーブルSP-10を開発したテクニクスは,SP-10に,キャビネット,アームといった各パー
ツを組み合わせてD.D.プレーヤーシステムとして発売していました。そんなテクニクスが,当時の単体プレーヤー
システムに多く見られた,各パーツの組み合わせといったイメージを大きく変える新しいデザインのプレーヤーシス
テムとして発売したのがSL-1100でした。そして,はじめから1つのプレーヤーシステムとして開発されたD.D.プレ
ーヤーシステムの第1号がSL-1100でした。
従来からのリムドライブ,ベルトドライブ方式に対して,モーターを低速回転させ,その回転軸がそのままターンテー
ブルに直結したダイレクトドライブ方式は,モーターが低速回転するためにモーター自体の振動が少なく,リムドライ
ブにおけるリムの変形,摩耗や,ベルトドライブにおけるベルトの伸び,スリップ,変形などの要素がなく,経年変化
がない夢の方式とされていました。それだけに,テクニクスの世界に先駆けてのダイレクトドライブ方式のターンテー
ブルの開発・発表は世界中のプレーヤーメーカーにショックを与えた出来事でした。
テクニクスは,苦心の末ダイレクトドライブ実現のために「超低速電子整流子モーター」と称するDCモーターを開発
搭載していました。このモーターは,位置検出コイルと位置検出鉄芯,それにトランジスター,ダイオードからなる電
子整流子回路で回転を制御する無接点モーターで,SN比60dB,ワウ・フラッター0.03%の性能を半永久的に持
続できると,テクニクスはその性能の安定性の高さを誇っていました。しかも,起動力が大きく,消費電力も極めて
少ないなどの特徴がありました。
ターンテーブルは,直径35cm,重量2.0kgのアルミダイカスト製で,一品ごとに厳密なダイナミックバランス調整
がなされており,320kg・cm2という慣性質量が確保された重量級でした。周囲にはストロボが刻まれ,速度調整
も簡単に行えるようになっていました。しかも,ターンテーブルには,テーパーがつけられており,レコードの脱着が
容易にできるように配慮がなされていました。SL-1100のD.D.モーターは,この重量級ターンテーブルが,わずか
1/2回転で正規の定速回転に達するクィックスタートを可能とするトルク,起動特性を実現していました。
D.D.モーター,大型のターンテーブルなどを収めるプレーヤーケースには,アルミダイカスト製のものが採用され,
プレーヤーシステム全体としての重量は13.5kgに達していました。高精度で重量級のケースが,しっかりとメカニ
ズムを支える構造となり,重厚でメカニカルな新しいデザインを演出するものとなっていました。
トーンアームは,スタティックバランス形のユニバーサルS字型パイプアームのもので,SL-1100のために開発さ
れたものが搭載されていました。バランス調整はラックピニオン式で,バランスをとった後つまみを引くと目盛が0
になり,その時点から針圧を目盛を直読しながら正確にかけられるようになっていました。インサイドフォースキャン
セラーは,針圧に応じて上部のツマミを回すだけで調整できるようになっていました。
金属板のアームベースは,ネジ止めで,簡単に着脱でき,アームベースの下部はメカニズムやアンプを組み込むな
どのグレードアップの余地としても使えるようになっていました。また,オプションのアームベース(金属,ウッド)を使
うことで,別のアームを搭載することも可能となっていました。
堅牢なプレーヤー全体を支える4本の脚部は,インシュレーターが内蔵され,回すことで高さ調整が行えるようになっ
ていました。出力端子は,背面からピンジャックで取り出すようになっており,接続ケーブルを自由に交換が可能でし
た。また,ACアウトレットも背面に設けられていました。
そして,SL-1100には,ウッドベース,アームパネル,ストロボ照明などのオプションパーツが用意され,グレードアッ
プができるようになっていました。
Technics SL-110
DIRECT DRIVE PLAYER SYSTEM ¥62,000
以上のように,SL-1100は,テクニクスが自慢のダイレクトドライブ方式を生かして設計した初のプレーヤーシステ
ムながら,各パーツ,システムのまとまりなど,すでに高い完成度をもっていました。その作りは,総合メーカー松下
電器をバックに持つだけに,価格を超えるものでした。また,アームレスタイプのSL-110も発売されました。これ以
降,テクニクスのプレーヤーシステムは,SL-1200をはじめとして,コンパクト化の方向に向かい,コンパクトな筐体
にバランスのとれた設計の,凝縮した形のものが主流となっていきました。それだけに,ロングアームを含め様々な
アームの搭載が可能な大型のキャビネットを持つ貴重なプレーヤーシステムであったともいえると思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
◎超低速電子整流子モータ採用
◎SN比60dB以上,ワウ・フラッタ0.03%以内
◎直径35cm,重量2kg,超大形ターンテーブル
◎高性能フルに生かすダイカストベース
◎新設計トーンアーム
◎着脱自在のアームベース
◎インシュレータ内蔵の脚部
◎出力端子はピンジャック式
◎使い勝手を考慮した操作つまみ
◎ダストカバーつき
●SL-1100/SL-110定格●
形式 | ダイレクトドライブ形(直接駆動形) |
ターンテーブル部 | |
ターンテーブル | アルミダイカスト直径35cm 慣性質量320kg・cm2,自重2.0kg |
モータ | 超低速電子整流子モータ |
プレーヤーケース | アルミダイカスト製 オーディオインシュレータ内蔵 |
回転数 | 33・1/3r.p.m.および45r.p.m. |
回転数切換方式 | 電子コントロール方式 |
回転数微調方式 | 電子コントロール方式による 各回転数単独調整 調整範囲±5% |
ワウ・フラッタ | 0.03%以下(W.R.M.S.) |
SN比 | 60dB以上 |
起動 | 1/2回転で正常動作(33・1/3r.p.m.) |
トーンアーム部(SL-1100のみ) | |
トーンアーム | 針圧直読式 ユニバーサルS字形パイプアーム スタティックバランス形 アンチスケーティングフォースコントロール装置つき |
アーム実効長 | 235mm |
オーバーハング | 14mm |
オフセット角 | 21° |
トラッキングエラー | ±1.75° |
針圧調整範囲 | 0~5g,0.5g単位で直読可能 |
適用カートリッジ重量 | 2~9.5g 8.5~16g(補助ウェイト使用の場合) |
総合 | |
電源 | AC100V 50/60Hz |
消費電力 | 4.0W |
外形寸法 | 510W×195H×390Dmm |
重量 | 13.5kg |
※ 本ページに掲載したSL-1100,SL-110の写真・仕様表等は1979年
10月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社
に著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等
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