SL-1200の写真
Technics SL-1200
DIRECT DRIVE PLAYER SYSTEM ¥65,800

テクニクスが,1972年に発売したプレーヤーシステム。現在まで続くSL-1200シリーズのスタートがこの
初代SL-1200でした。1970年に世界初のD.D.(ダイレクト・ドライブ)方式のターンテーブルSP-10を開
発したテクニクスは,このころ数多くのD.D.プレーヤーを作り,高い評価を得ていました。SL-1200は,D.D
.による安定した高性能を,コンパクトな筐体に納めたことを特徴とするコンパクト・プレーヤーという位置づけ
でした。

モーターは,当時テクニクスがD.D.方式のために開発した「超低速電子整流子モーター」と称するDCモータ
ーを搭載していました。「電源電圧,電源周波数の影響は皆無・・・・。SN比60dB,ワウ・フラッター0.03%
の性能を半永久的に持続する。」と,当時のカタログで,テクニクスはその性能の安定性の高さを誇っていま
した。また,D.D.方式により,2/1回転で定速回転に達する,優れた起動特性も特徴でした。
速度切換は電子式で,33・1/3,45rpmそれぞれで10%の範囲で速度の微調整ができるようになっていま
した。

ターンテーブルは,直径33cm,重量1.75kgの大形のもので,精密に重量バランスがとられ,310kg・cm
の慣性質量により,トルク変動の影響を抑え,滑らかな回転を実現していました。ターンテーブルのエッジに
は傾斜角がつけられ,傾斜面にストロボを刻んだそのデザインは,テクニクスのプレーヤーの一つの特徴とな
っていました。このターンテーブル脇のストロボイルミネーターにより,回転数の微調整が正確に行えるように
なっていました。また,このエッジ部の傾斜角により,レコードの着脱が容易になるという利点もありました。

アームはユニークな形状のダイカスト製で,針圧調整が容易にできる機構を搭載していました。アームのゼロ
バランスをとった後,アームについた針圧調整ツマミを引くと,針圧目盛が0になり,針圧の印加もツマミ一つ
で容易にできるラックピニオン方式の独創的なものでした。インサイドフォースキャンセラーもダイヤルツマミ一
つで行えるようになっていました。また,マニュアルプレーヤーであるため,オイルダンプ式のアームリフタを装
備していました。ヘッドシェルは堅牢で軽量化されたダイカストシェルで,金メッキ仕上げの端子を備えていま
した。

コンパクトながらアルミダイカスト製のキャビネットは堅牢で,内部やインシュレーターに施された振動対策によ
り,高い耐振性を備えていました。ダストカバーは着脱自在で,どの角度でも止まるフリーストップ式になって
いました。

SL-1200はプレーヤーシステムでしたが,アームを自分で選んでつける人向けのアームレスモデルSL-120,
自作派のためのターンテーブル単売モデル。SP-12もあり,これらのためのアームベースなど周辺パーツも充
実していました。

SL-120の写真
SP-12の写真
 
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。

◎超低速電子コントロールのD.Dモーター採用
◎速度切換えは電子式
 33・1/3,45rpm単独に10%の範囲で微調整
 が可能・・・それぞれ正確無比の速度が得られます
◎直径33cm,重量1.75kgの大形ターンテーブルを採用
◎1/2回転で定速に達する大きな起動トルク
◎ストロボイルミネーター装備
 回転数の正確なチェック・微調整が可能
◎外部振動をシャットアウト・・・インシュレーター内蔵の脚部
 もちろん高さ調整も可能
◎ユニークなダイカスト製のトーンアーム
◎ゼロバランス・針圧調整ワンタッチの
 ラックピニオン式針圧印加機構
◎インサイドフォース打消量もダイアルツマミの目盛を
 針圧に合わせるだけ
◎快適演奏を実現するオイルダンプ式アームリフタ装備
◎堅牢でしかも軽量化されたダイカストシェルを採用
 端子はもちろん接触不良を防止する金メッキ仕上げ
◎低容量コード装備・・・CD-4対策も万全です
◎着脱自在,フリーストップのダストカバー
 
 

●SL-1200主な定格●


ターンテーブル部 SP-12
プレーヤーケース ダイカスト製オーディオインシュレーター内蔵
トーンアーム 針圧直読式,ユニバーサルS字型パイプアーム
スタチックバランス形,アンチスケーティングフォースコントロール装置つき
針圧調整範囲 0〜4g
適用カートリッジ重量 2〜9.5g
外形寸法 453W×180H×353Dmm
重量 10kg

●SP-12主な定格●


ターンテーブル 33cmアルミダイカスト,自重1.75kg,慣性質量310kg・cm
モーター 超低速電子整流子モーター
回転数 33・1/3および45rpm
回転数切換 電子コントロール方式
回転数微調整範囲 10%
起動 1/2回転で正常動作(33・1/3rpm)
ワウ・フラッター 0.03%(WRMS)
SN比 60dB(IEC-B)
消費電力 4W
外形寸法 339W×135H×364Dmm



 
SL-1200mkUの写真
Technics SL-1200MK2
QUARTZ SYNTHESIZER D.D.PLAYER ¥75,000

1979年,SL-1200は2世代目へのモデルチェンジを行いました。ニューモデルといってもいいほどの強化が
行われ,より強力なプレーヤーシステムとなりました。そして,現在のSL-1200MK4の原型はこのモデルと
いってもいいのではないかと思います。

ターンテーブルは,D.D.方式に加え,新たに高精度な回転制御を求めて,クォーツロック方式が採用され,水晶
精度の高い精度で,回転の制御が行われるようになりました。また,クォーツロックをかけたままで±8%の範
囲でピッチを連続で変化できるようになっていました。スライドレバーでピッチコントロールができ,レバーの表示
板で1%刻みでピッチの変化を読みとれるため,ピッチの調整が簡単に行えるようになっていました。
一体構造D.Dモーターは,起動トルク1.5kg・cmを誇り,ターンテーブルが,0.7秒で定速に達する性能を持
っていました。
ターンテーブル周囲に設けられたストロボを照らすイルミネーターは,電源ON/OFFスイッチと一体になった構
造になりました。また,新たに,不要なときにはキャビネットに収納できるポップアップ式のスタイラスイルミネータ
ーも装備されました。

SL-1200MK2のアーム

アームには,新たにジンバルサスペンション方式が採用されました。精密研磨ボールベアリングによる4個の軸
受けを組み合わせ,アームの水平回転軸と垂直回転軸の中心を1点に一致させた構造により,全ての方向に
7mg以下という高い初動感度を確保していました。また,ロック機構の付いたアーム高さ調整機構を装備し,
リコイド仕上げの高さ調整リングにより,6mmの範囲でアー
ムの高さ微調整が可能になっていました。

SL-1200MK2の断面

キャビネットは,上部がアルミダイカスト製,下部が振動減衰率が大きく防振特性に優れた重量級特殊ゴムの一
体成形で,キャビネット全体がインシュレーターとなった強力な防振構造になっていました。また,モーターとトーン
アーム,ダストカバーの取り付け部を,この特殊ゴムに接続し,各部を別々にアイソレートするという徹底した防振
対策をとっていました。ターンテーブルは,ゴムシートと裏面にはられた防振ゴムにより,耐振性が高められ,4つ
の大型インシュレーター,さらに,コンパクトに作られたキャビネット構造と相まって,外部振動に強い構造になって
いました。
 
 
 

●SL-1200MK2の主な定格●
 
 

●ターンテーブル部●

駆動方式 ダイレクトドライブ
駆動モーター ブラシレスDCモーター
制御方式 クォーツフェイズドコントロール
ターンテーブル アルミダイカスト製,直径33.2cm,重量2kg(ゴムシート含)
回転数 33・1/3および45rpm
回転数微調範囲 ±8%(連続可変)
起動トルク 1.5kg・cm
起動特性 0.7秒で定速回転(33・1/3rpm時)
ブレーキ機構 電子ブレーキ
ワウ・フラッター 0.01%(WRMS・FG直読),0.025%(WRMS・JIS C5521)
SN比 78dB(IEC98A weighted)

 

●トーンアーム部●

型式 ユニバーサルS字型スタチックバランス,ジンバルサスペンション方式
回転軸感度 7mg以下(水平・垂直初動感度)
アーム高さ調整範囲 6mm
針圧調整範囲 0〜2.5g
シェル重量 7.5g
適用カートリッジ重量 6〜10g(9.5〜13g,補助ウェイト使用時)
3.5〜6.5g(シェルウェイト使用時)

 

●総合●

電源 AC100V・50/60Hz
消費電力 13.5W
外形寸法 453W×162H×360Dmm
重量 12.5kg



 
SL-1200MK3の写真
Technics SL-1200MK3
QUARTZ SYNTHESIZER D.D.PLAYER ¥69,800

1989年,SL-1200MK3が登場しました。キャビネットがシルバーからブラックに変わり,SL-1200MK2の基本
構造を受け継ぎ,キャビネット内部の改良・強化が行われていました。キャビネット上部はアルミダイカスト製,下部は
特殊重量級ゴムという構造に加え,新たに内部に重量級のT.N.R.C(Technics Non Resonance Compound)
を充填した3層構造のキャビネットになっていました。また,新たにアームの内部配線及び外部出力用フォノケーブル
に無酸素銅線を採用していました。

SL-1200MK3内部

SL-1200シリーズも第3世代に入り,そのタフネスを買われ,世界中のディスコなどで使用されるようになり,通常の
オーディオ用としてだけでなく,DJ用としても有名になりました。そのため,スクラッチプレー用に,「Technics」のロゴ
入りのディスクスリップシートも付属されるようになりました。オプションとして,DJ用のミキサーなどが発売されるよう
にもなりました。
 
 
 
 

●SL-1200MK3の主な定格●


駆動方式 ダイレクトドライブ
制御方式 クォーツ制御
回転数 33・1/3および45rpm
回転数微調範囲 ±8%(連続可変)
起動トルク 1.5kg・cm
ワウ・フラッター 0.01%(WRMS・FG直読),0.025%(WRMS・JIS C5521)
SN比 78dB(IEC98A weighted)
電源 AC100V・50/60Hz
消費電力 13.5W
外形寸法 453W×162H×360Dmm
重量 12.5kg



 
SL-1200LTD
Technics SL-1200LTD
QUARTZ SYNTHESIZER D.D.PLAYER ¥100,000

1995年,ゴールドバージョンの限定モデルSL-1200LTDが登場しました。ターンテーブル,トーンアーム,アーム
ベースに金メッキが施され,生産台数が5千台でした。品番プレートに通しナンバーが刻印されており,5千台のうち
の何台目かが分かるようになっていました。
機能的には,ピッチコントロールにリセットボタンが装備され,レバーはそのままに,ワンタッチでピッチを標準に戻す
ことができるようになっていました。
 
 
 

●SL-1200LTDの主な定格●


駆動方式 ダイレクトドライブ
制御方式 クォーツ制御
回転数 33・1/3および45rpm
回転数微調範囲 ±8%(連続可変)
起動トルク 1.5kg・cm
ワウ・フラッター 0.01%(WRMS・FG直読),0.025%(WRMS・JIS C5521)
SN比 78dB(IEC98A weighted)
トーンアーム ユニバーサルS字型スタチックバランス,ジンバルサスペンション方式
回転軸感度 7mg以下(水平・垂直初動感度)
アーム高さ調整範囲 6mm
針圧調整範囲 0〜2.5g
シェル重量 7.5g
適用カートリッジ重量 6〜10g(9.5〜13g,補助ウェイト使用時)
3.5〜6.5g(シェルウェイト使用時)
電源 AC100V・50/60Hz
消費電力 13.5W
外形寸法 453W×162H×360Dmm
重量 12.5kg


SL-1200MK3Dの写真

Technics SL-1200MK3D
QUARTZ SYNTHESIZER D.D.PLAYER オープン価格

SL-1200MK3には,1998年,ついにDJ仕様のSL-1200MK3Dが登場しました。キャビネットもシルバー
とブラックがあり,DJ用にピッチリセットスイッチ,予備のヘッドシェルを立てる穴などが装備されていました。
コンパクトな筐体ながら,その性能の安定性,タフネスさが世界中のDJからも業務用として認められた結果と
いえました。
 
 

●SL-1200MK3Dの主な定格●


駆動方式 ダイレクトドライブ
制御方式 クォーツ制御
回転数 33・1/3および45rpm
回転数微調範囲 ±8%(連続可変)
起動トルク 1.5kg・cm
ワウ・フラッター 0.01%(WRMS・FG直読),0.025%(WRMS・JIS C5521)
SN比 78dB(IEC98A weighted)
トーンアーム ユニバーサルS字型スタチックバランス,ジンバルサスペンション方式
回転軸感度 7mg以下(水平・垂直初動感度)
アーム高さ調整範囲 6mm
針圧調整範囲 0〜4.0g
シェル重量 7.5g
適用カートリッジ重量 6〜10g(9.5〜13g,補助ウェイト使用時)
3.5〜6.5g(シェルウェイト使用時)
電源 AC100V・50/60Hz
消費電力 13.5W
外形寸法 453W×162H×360Dmm
重量 12.0kg



SL-1200MK4の写真
Technics SL-1200MK4
QUARTZ SYNTHESIZER D.D.PLAYER ¥85,000

1998年,SL-1200MK4が登場しました。基本構造等は変更はありませんでしたが,細かな点で改良が
施されていました。
SP盤の再生にも対応して,ターンテーブルの回転数も78回転が新たに装備されました。また,出力コードが
着脱できる仕様になり,下部にピン端子とアース端子が付いた構造になりました。

以上のように見てくると,SL-1200は,すでに30年近くの歴史を持ち,いまだ現役という驚異のモデルです。
とにかく,振動,不要輻射,不要電波などの外乱に強く,高い耐久性を誇るその性能の安定性が世界に認めら
れたまさに名機といえるでしょう。
 

●SL-1200MK4の主な定格●


駆動方式 ダイレクトドライブ
制御方式 クォーツ制御
回転数 33・1/3,45,78rpm
回転数微調範囲 ±8%(連続可変)
起動トルク 1.5kg・cm
ワウ・フラッター 0.01%(WRMS・FG直読),0.025%(WRMS・JIS C5521)
SN比 78dB(IEC98A weighted)
トーンアーム ユニバーサルS字型スタチックバランス,ジンバルサスペンション方式
回転軸感度 7mg以下(水平・垂直初動感度)
アーム高さ調整範囲 6mm
針圧調整範囲 0〜4.0g
シェル重量 7.5g
適用カートリッジ重量 6〜10g(9.5〜13g,補助ウェイト使用時)
3.5〜6.5g(シェルウェイト使用時)
電源 AC100V・50/60Hz
消費電力 14.5W
外形寸法 453W×162H×360Dmm
重量 12.0kg
※本ページに掲載したSL-1200,SL-1200MK2,SL-1200MK3,SL-1200LTD
SL-1200MK3D,SL-1200MK4の写真・仕様表等は1974年8月,1980年6月
1997年4月,1998年12月,のTechnicsのカタログより抜粋したもので,松下電器産
業に著作権があります。したがってこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法
律で禁じられていますので,ご注意ください。
 

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