Technics SL-1350
DIRECT DRIVE AUTOMATIC PLAYER SYSTEM ¥90,000
1975年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したプレーヤーシステム。テクニクスは,DDプレーヤーのオリ
ジネーターとして,より使いやすくコンパクトなプレーヤーとして,1972年にSL-1200を発売し,バランスのと
れた設計は高い評価を受けました。1974年には,このSL-1200の基本レイアウトをベースに,よりコンパクト
化(薄型化)を図り,日本で初めてDDプレーヤーにフルオート機構を搭載したSL-1300を開発しました。この
SL-1300で追求された使い勝手の良さをより高め,同社が長年取り組んできた海外向けオートチェンジャー
の技術をふまえて開発された,.オートチェンジャーD.D.プレーヤーがSL-1350でした。
複数のディスクを連続して演奏できるオートチェンジャー機能は,CDプレーヤーでは,各社から発売されるほ
ど多くの存在していましたが,アナログレコードの分野でも,早くから存在していました。特に,欧米では,かなり
広く愛用されており,多くの製品がありました。しかし,日本ではあまり人気がなく,商品数も少なかったようです。
そうした中,テクニクスは,比較的熱心に取り組んでいたブランドで,上述のように,世界初のD.D.プレーヤーを
発売したテクニクスが,持ち前のD.D.プレーヤーにオートチェンジャー機能を搭載した,世界初の.オートチェン
ジャーD.D.プレーヤーでした。
GARRARD 80MKⅡ(イギリス) DUAL 1219(西ドイツ)
フルオートプレーヤーとして高い機能性を持っていたSL-1300にオートチェンジャー機能を組み合わせている
だけに,操作性,機能性においてすぐれた完成度を示していました。
オートチェンジャー用とマニュアル用のセンタースピンドルを装備しており,2種類のスピンドルを使い分ければ
連続6枚までのレコードの連続演奏ができるほか,通常のD.D.フルオートプレーヤーとして使うこともできるよう
になっていました。
マニュアルスピンドルを用いた状態では,SL-1300と同様のフルオートプレーヤーとなり,回転数,レコードサ
イズを指定位置にセットすれば,あとはスタート,ストップレバーの操作だけで,オートスタート,オートリターン,
1~6回までのメモリーリピートプレイ,途中カット(レバーを押すと,アームがレストに戻り電源OFF)が可能とな
っていました。また,マニュアル操作優先設計になっており,トーンアームをレコードに近づけるだけでターンテー
ブルが回転,オイルダンプ式のキューイングレバーで,どの位置からも演奏スタートでき,オート動作中にアーム
を手で止めても問題なくマニュアル操作に移れるようになっていました。そして,マニュアルでスタートしても,演
奏終了時には,オートリターンがはたらくようになっていました。
オートチェンジャースピンドルを用いた状態では,メモグラムツマミをレコードの枚数に合わせてセットすれば,レ
コード演奏が連続ででき,演奏終了と同時に電源が切れるマルチプレイが可能となっていました。スピンドルは
LPレコード用とEPレコード(ドーナツ盤)の両方が付属しており,どちらのタイプのレコードでもマルチプレイが可
能でした。
SL-1300をベースに開発されただけに,プレーヤーとしての基本構成,基本性能は,ほぼ同一のものとなって
いました。「超低速電子整流子モーター」と称するDCモーターを搭載したD.D.方式の採用でSN比58dB,ワウ・
フラッター0.03%の性能と安定性の高さを誇っていました。モーターの回転部をターンテーブルと一体構造と
し,固定部をキャビネットと一体構造として,キャビネット,モーター,ターンテーブルの積み重ね構造を不要とし,
薄型化,信頼性,性能の向上が実現された構造も継承されていました。オートチェンジャとしては初のアルミダ
イカストキャビネット一体構造でした。そして,33・1/3,45rpmそれぞれで10%の範囲で速度の微調整ができ
る電子式速度切換も搭載されていました。搭載されたDCモーターの起動トルクは,1kg・cmで,レコードを6枚
のせた状態でも,33・1/3回転時に,1/2回転で定速に達することができるようになっていました。
ターンテーブルは,直径33cmの大型のもので,精密に重量バランスがとられ,滑らかな回転を実現していまし
た。ターンテーブルのエッジには傾斜角がつけられ,傾斜面にストロボを刻んだそのデザインは,当時のテクニ
クスのプレーヤーに共通する一つの特徴となっており,このターンテーブル脇のストロボイルミネーターにより,
回転数の微調整が正確に行えるようになっていました。また,このエッジ部の傾斜角により,レコードの着脱が
容易になるという利点も同様でした。
トーンアームはスタティックバランス方式のユニバーサルS字型トーンアームで,トーンアーム軸受部には精密ピ
ボットベアリングを用いた高感度ジンバルサスペンション方式が採用されていました。適切な実効質量の設定や
オート機構の精密・軽量化により,高いトレーシング性能が確保されていました。オイルダンプ式キューイングレ
バーでマニュアルでもスムーズな針先降下を実現し,針圧に応じ目盛りを合わせるだけの安置スケーティング
フォースコントロールも装備されていました。ヘッドシェルには,ダイカスト製ヘッドシェルを搭載し,端子は金メッ
キ処理が施されていました。このトーンアームもSL-1300と同一でした。
以上のように,SL-1350は,世界で初めてオートチェンジャー機能を備えたD.D.プレーヤーとして,アナログプ
レーヤーとして安定した再生性能と高い機能性を両立させた完成度の高い1台でした。D.D.プレーヤーのテクニ
クスらしいプレーヤーだったと思います。
以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
世界で初めてオートチェンジャー機能を
備えたD.D.プレーヤ・・・レコード6枚連続演奏可能
◎シングルプレイ,マルチプレイは
センタースピンドルの交換だけで可能
●マニュアルスピンドルを用いて
1.マニュアルプレイ
2.オートプレイ
3.レコード6枚までのマルチプレイ
自動・手動切換え不要・・・マニュアル
プレーヤとしても実力派のD.D.
◎一体構造のDD方式とオートチェンジャーの豊富
なノウハウの結合から生まれたオートメカニズム
●自動・手動切換え不要の併用式
操作性にすぐれたフルオート機構
●速度調整,レコードの着脱が容易にできる
ストロボつきテーパードエッジ
●オートチェンジャーでは初めての
アルミダイカストのキャビネット
●脚部にはオーディオインシュレータ内蔵
●幅453mm・高さ199mm・奥行き366mmの
コンパクトサイズ
◎究極のD.D.とも言える一体構造
ターンテーブルがモータロータ
●SN比58dB(IEC-B)70dB(DIN-B)
ワウ・フラッタ0.04%(W.R.M.S.)の高性能
●1/2回転(33・1/3r.p.m.)で正常回転
●演奏中の消費電力はわずか4W
◎軽針圧ハイコンプライアンスカートリッジが
安心して使える高感度トーンアーム
●実効長230mmのS字型パイプアーム
●端子には金メッキを施したダイカストシェル
●オイルダンプ式キューイングレバー
アンチスケーティングフォースコントロールつき
●低容量コード装備・・・CD-4も対策済みです
●SL-1350定格●
●ターンテーブル部●
型式 | ダイレクトドライブオートチェンジャー(レコード6枚連続演奏可能 |
駆動方式 | ダイレクトドライブ(直接駆動型) |
モータ | 超低速電子整流子モータ |
ターンテーブル | アルミダイカスト製,直径33 |
回転数 | 33・1/3および45rpm |
回転数微調範囲 | 各回転数単独調整可能 調整範囲10% |
ワウ・フラッタ | 0.04%(W.R.M.S.) |
SN比 | 58dB(IEC-B),70dB(DIN-B) |
●トーンアーム部●
トーンアーム | ユニバーサルS字型パイプアーム,針圧直読式,スタチックバランス型 ジンバルサスペンション方式,アンチスケーティングフォースコントロール装置つき キューイングつき |
アーム実効長 | 230mm |
オーバーハング | 15mm |
トラッキングエラー | +3°(30cmレコード外周),+1°(30cmレコード内周) |
オフセット角 | 21.5° |
針圧調整範囲 | 0~3g連続可変(0.1g目盛間隔) |
シェル重量 | 9.5g |
適用カートリッジ重量 | 5~11g |
●総合●
電源 | AC100V・50/60Hz |
消費電力 | 4W(6.5W・・・オート動作時) |
外形寸法 | 453W×199H×366Dmm |
重量 | 10.5kg |
※ 本ページに掲載したSL-1350の写真・仕様表等は1975年5月の
Technicsのカタログより抜粋したもので,パナソニック株式会社に
著作権があります。したがって,これらの写真等を無断で転載,引用
等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
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