SL-M1の写真
Technics SL-M1
QUARTZ DIRECT DRIVE TURNTABLE SYSTEM
                            ¥64,800

テクニクスが1983年に発売したプレーヤーシステム。SP-10以来DDプレーヤーでは定評のあるテクニクスが
出した恐ろしくオーソドックスなプレーヤーシステムでした。その外観も作りも価格を超えた高級感がありました。

ターンテーブルは,直径325mm,重量2.5kgというクラスを超えた重量級のものを搭載し,425kg・cmという
大きな慣性モーメントを持っていました。ターンテーブルを駆動するモーターは,テクニクス伝統のブラシレスDCモ
ーターを搭載し,1.5kg・cmという強大なトルクを持ち,2.5kgの重量級ターンターブルをわずか0.9秒,1/4
回転で定速回転させました。モーターのローターマグネットはターンテーブルと一体化した構造で,メカニカルな精
度を追究し,ケース,モーター,ターンテーブルの積み重ねによって生じる誤差や経年変化を最小限に抑え,ロン
グライフを実現していました。
回転数の制御には,全周検出FG方式と高精度なクォーツ発振器を備えたクォーツロック方式を採用し,ワウ・フラ
ッター0.008%(FG法)の高精度な回転と,SN比82dBの静粛性を実現していました。
停止機構には,純電子式ブレーキを採用し,逆回転の駆動回路を瞬間的に作動させ,重量級ターンターブルをわ
ずか0.75秒で停止させるようになっていました。

SL-M1のアーム

トーンアームには,SL-1200シリーズでも定評のあるテクニクス自慢のジンバルサスペンションアームを搭載し
ていました。水平・垂直計4カ所のピボット部を,すべて精密研磨ピボットと高精度ボールベアリングで構成し,精
度の高い4点支持方式で,垂直回転軸と水平回転軸が正確に一点で交差する構造により,全ての方向にわずか
0.7mg以下という高い初動感度を確保していました。
また,高性能アームとして定評のあったEPA-100でも採用されたダイナミックダンピング機構を搭載していました。
ダンピングウェイトをスプリングで分割し,ピックアップ系の共振をシリコンオイルとダンピングシリンダで制動する機
構で,低域共振を抑え,混変調歪みを低減していました。
また,演奏終了時に自動的にトーンアームが上がる,オートリフトアップ機構が搭載されていました。針先に側圧を
与えない光センサーによる光学式無接触検出方式で,検出回路は,自動的にレコードの偏芯等もキャンセルする
ようになっており,高精度で安全な動作を実現していました。
ヘッドシェルに,通常のカートリッジ用とT4P規格のプラグインコネクタ用の2種類が付属しているところは,テクニク
スらしいところでした。

ジンバルサスペンション構造図ダイナミックダンピング機構

これまで,ダイカスト製のキャビネットが多かったテクニクスでしたが,SL-M1では,高密度パーチクルボード製の積
層キャビネットを採用していました。ターンテーブルの軸受けの支持部はさらに強度アップを図り,キャビネット底部に
固定し頑強な構造としていました。

SL-M1のキャビネット構造図

SL-M1は,SL-1200シリーズの陰に隠れがちで目立つ存在ではありませんでしたが,M1という型番が示すとおり
テクニクスが正統派のアプローチで物量と技術を投入したしっかりした作りで極めてまじめに作られたオーソドックスな
プレーヤシステムでした。¥64,800という価格が信じられないほど中身の充実したモデルだったように思います。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 


プレーヤ基本型。
テクニクスから,SL-M1誕生。
生真面目と言えば,これほど生真面目なプレーヤもないでしょう。
テクニクスSL-M1。
レコード盤に刻まれた音楽のすべてを引き出すことだけを目指し,
あくまで基本に忠実に作り上げました。
ターンテーブル,トーンアーム,そしてキャビネット
パーツのひとつひとつに卓越したクオリティが,
トータルなフォルムには長い年月に培われてきた完成度の高さが。
小手先だけのテクニックでは及びもつかない,
テクニクスの確かな技術力がそこに息づいているのです。
幾多のレコードを聴きこなしてきた本物のオーディオファイルへ。
D.D.創始者が磨き抜いた性能と,重厚なフォルムを捧げます。
◎慣性モーメント425kg・cm
 2.5kgの重量級ターンテーブル
◎起動トルク1.5kg・cm
 瞬時起動0.9秒のD.D.モータ
◎ワウ・フラッタ0.008%,SN比82dB
 回転精度を極めるクォーツD.D.
◎初動感度7mg以下。全方向に同一感度
 ジンバルサスペンショントーンアーム
◎ピックアップの低域特性を大きく改善
 ダイナミックダンピング機構
◎アームやカートリッジに負担をかけない
 光学式無接触オートリフトアップ機構
◎あらゆるカートリッジの使用が楽しめる
 2タイプのヘッドシェル付属
◎無共振思想と美しい仕上がりを両立
 高密度ウッドキャビネット
●SL-M1の定格●
 

●ターンテーブル部●


駆動方式 ダイレクトドライブ
駆動モーター ブラシレスDCモーター
制御方式 クォーツフェイズロックドコントロール
ターンテーブル アルミダイカスト製,直径32.5cm,
ターンテーブル重量 2.5kg(ゴムシート含む)
慣性モーメント 425kg・cm(ゴムシート含む)
回転数 33・1/3および45rpm
回転数微調範囲 ±8%(連続可変)
起動トルク 1.5kg・cm
起動特性 0.9秒(33・1/3rpm時)
停止時間 0.75秒(33・1/3rpm時)
負荷変動 1.0kg・cm以内0%
回転数偏差 ±0.002%以内
ワウ・フラッター 0.008%(WRMS・FG直読),0.022%(WRMS・JIS C5521)
SN比 82dB DIN-B(IEC98A weighted)
70dB DIN-A(IEC98A unweighted)

 

●トーンアーム部●


型式 S字型ユニバーサルトーンアームスタチックバランス
軸受部 ジンバルサスペンション軸受構造
アーム実効長 230mm
オーバーハング 15mm
トラッキングエラー角 +0°32’(30cmレコード内周)
+2°32’(30cmレコード外周)
回転軸感度 7mg以下(水平・垂直初動感度)
アーム実効質量 18g(カートリッジ含まず)
針圧調整範囲 0〜3.0g
シェル重量 7.5g
適用カートリッジ重量 5〜9.5g

 

●総合●


電源 AC100V・50/60Hz
消費電力 15W
外形寸法 453W×170H×406Dmm
重量 10.2kg
本ページに掲載したSL-M1の写真・仕様表等は1983年6月のTechnicsの
カタログより抜粋したもので,松下電器産業株式会社に著作権があります。
したがって,これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律で禁じられ
ていますので,ご注意ください。
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