Technics SL-P1300
COMPACT DISC PLAYER ¥200,000
1988年に,テクニクス(パナソニック)が発売したCDプレーヤー。1986年に発売され,業務用機のような
思い切ったデザインと高機能が人気となったSL-P1200の上級機,あるいは後継機として登場したのが
SL-P1300でした。各部により高い技術が投入され,性能が高められていました。

従来のカセットデッキかチューナーのようなCDプレーヤーのデザインから脱し,アナログプレーヤーのよう
に最上段に設置することを要求する精密間溢れるデザインは継承され,筐体の構造も継承されていました。
キャビネットのベース部には,金属メタルシャーシ,特殊制振シート,TNRC(テクニクス・ノンレゾナンズ・コ
ンパウンド)の異なる3種類の素材からなる多層構造重量ベースを採用し,高い強度と十分な重量を確保し,
振動エネルギーを熱エネルギーに変換するTNRCの働きにより,優れた制振効果も持たせていました。キャ
ビネット全体も強固な精密亜鉛ダイキャストの一体成形構造を採用し多層構造ベースと一体化して高い防
振性能を発揮させていました。脚部は,4つの大型インシュレーターから成り,そのうえで,光学デッキ部を
本体からフロ-ティングするダブルインシュレーション構成としていました。また,振動源となりやすい電源ト
ランスもインシュレーターでフローティングさせた構造になっていました。

D/Aコンバーター部は,L・R両チャンネルの正信号専用,負信号専用に,18ビットDACをそれぞれ搭載し
た4DAC構成になっていました。個別信号成分のリニアリティの良い部分のみを差動アンプで合成すること
によって,微小信号再生を妨げるゼロクロス歪みを原理的に排除していました。 さらに,D/Aコンバーター
のビット切換時に生じるグリッチノイズを除去するデグリッチ回路(サンプルホールド回路)を,微少信号時
(-12dB以下)にはサンプルモードに固定することにより,微少信号再生の妨げとなる,デグリッチ回路自
体から生じるスイッチングノイズの問題を解消し,高SN比を実現していました。デジタルフィルターは,266
次の8倍オーバーサンプリング・デジタルフィルターが採用されていました。これにより,後段のフィルターの
負担が軽くなり,3次のパッシブ・ローパスフィルタの使用によって高域スプリアス成分の低減と群遅延特性
の改善を実現していました。

オーディオ回路系には,テクニクス自慢の「classAA方式」を,サンプルホールド回路,バッファアンプ回路
に採用していました。「classAA方式」は,アメリカのスレッショルドが開発した「STASIS方式」によく似た方
式で,電圧制御と電流供給を2つの異なるアンプが分担し,電圧制御アンプは事実上無負荷の状態で動作
し,変化する接続負荷に対してもアンプ全体として強力なドライブ能力と正確な波形伝送が得られるという方
式で,強力なドライブ能力と正確な波形伝送を実現していました。

電源部は,デジタル回路系からオーディオ回路系へのノイズ混入を防ぐために,各々に専用の電源トランス
を搭載した2トランス構成としていました。さらに,「ローノイズアクティブサーボ電源」が搭載されていました。
これは,電流変動の大きなサーボ回路やデジタル回路と,電源電圧の変動に対してデリケートなDACを含
むアナログ回路との電源における独立化と双方の安定化を図ったもので,オーディオ電源の低雑音化,低
インピーダンス化,高リップルリジェクションを実現し,電源電圧の微少変動も忠実にフィードバックすること
で,DACの動作による電源電圧の変動を極小に抑えていました。こうした構成により,DACには非常に安
定した電源を供給することが可能となり,DACやオーディオ回路の性能を十分に発揮させる電源部となって
いました。

出力は,アナログ出力が,アンバランス出力(RCAピン端子)固定1系統およびフェーダー経由の可変出力
1系統の2系統が装備され,バランス出力(キャノン端子・固定/可変切換)1系統と合わせて,計3系統が装
備されていました。デジタル出力は,角形光コネクタと75Ω同軸の2系統が装備されていました。デジタル
出力は,アナログ再生時にはデジタル出力の影響を遮断できるデジタル出力ON/OFFスイッチが装備され
ていました。プロユースにも耐える豊富な5系統の出力端子を搭載した設計となっていました。

機能的には,SL-P1200を継承してプロ感覚をもつ多機能なものとなっていました。特に特徴的な1回転30
秒と1秒の2スピードで頭出しができる2スピード・サーチダイヤルは,SLOW側では1/25秒単位の精密な頭
出しが可能になっていたほか,ピックアップの位置を1トラック単位(約0.13秒)でロックできるロッキング機能
が装備されていました。大型フェーダーボリュームは,フェーダースタートとの連動で複数のオーディオ機器と
組んでフェードイン,フェードアウトが可能となっていました。メモリーした頭出し位置を正確にメモリーするキュー
ポイント・スタンバイ機能は,サーチダイヤル,フェードスタートを組み合わせて使用すると,頭出し位置の決定
→確認→スタンバイ→フェーダースタートと一連の動作が容易にできるようになっていました。その他,音楽が
始まる位置をデジタル的に検出してスタンバイし,0.3秒以内に音楽をスタートさせるオートキュー機能,0.1
秒 単位の時間指定での頭出し機能,A-Bリピート機能も装備されていました。
10キーリモコンも装備され,基本的な操作の他,曲のイントロ部分のみを順番に再生し,実際に聴きながら好
きな曲だけをプログラムできるプログラマブル・ミュージックスキャンも可能となっていました。

ディスプレイには9桁FLマルチディスプレイを搭載していました。このディスプレイでは演奏中の経過時間と残り
時間,全曲(プログラム曲)の経過時間と残り時間の4モード(0.1秒単位)を選択して表示できるようになって
いました。さらに,20曲のマトリックス表示で,デジタルアッテネーターの減衰量dB表示など,充実した表示機
能を搭載していました。

以上のように,SL-P1300は,SL-P1200をベースにより強化された内容を持ち,当時の他のCDプレーヤー
を圧倒する多機能を搭載し,プロ機を思わせるデザインと安定した性能を実現していました。しっかりした筐体
に支えられた音質も,歪み感の少ないテクニクスらしいものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



トップオペレーションの
心たかぶる操作感「CDマスター」

①高分解能を実現した4DAC・18bit変換システム。
②多層構造ベースなど,徹底した無共振・無振動設計。
③光/同軸2系統デジタル出力はじめ,全5系統の出力端子。
◎8倍オーバーサンプリングによる
 4DAC・18bit変換システム
◎多層構造重量ベースをはじめとする
 徹底した無共振・無振動設計
◎デジタル出力,バランス出力など
 5系統の豊富な出力端子
◎D/A独立2トランス方式採用の
 完全独立電源回路
◎プロ感覚のサーチダイヤル,フェーダ
 ボリウムなど,充実の多機能

●2スピード・サーチダイヤル。
●キューポイント・スタンバイ機能。
●大型フェーダボリウム。
●ロッキング機能
●オートキュー。
●A-Bリピート。
●時間指定頭出し機能。
●大型9桁FLマルチディスプレイ。
●4モード時間表示。
●10キー・ワイヤレスリモコン。




●SPECIFICATION●

チャンネル数
2チャンネル(ステレオ)
出力電圧
2.5Vrms(0dB,EIAJ)
周波数特性
2Hz~20,000Hz±0.2dB(EIAJ)
ダイナミックレンジ
100dB以上(EIAJ)
SN比
115dB以上(EIAJ)
全高調波歪率
0.0015%以下(1kHz,EIAJ)
高調波歪率
0.0009%以下(1kHz,0dB)
チャンネルセパレーション
115dB以上(EIAJ)
ワウ・フラッタ
測定限界以下(EIAJ)
デジタルフィルタ
8fs18ビットデジタルフィルタ
誤り訂正方式
テクニクス・スーパー・デコーディング・アルゴリズム
トラバース
ハイスピードリニアアクセスシステム
電源
AC100V 50/60Hz
消費電力
23W
ヘッドホン出力レベル
60mW/32Ω(可変)
外形寸法
430W×380D×168Hmm
重量
16kg
※本ページに掲載したSL-P1300の写真・仕様表等は
 1988年11月のTechnicsのカタログより抜粋したもの
 で,パナソニック株式会社に著作権があります。したがっ
 てこれらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法
 律で禁じられていますので,ご注意ください。

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