Technics SL-P500
COMPACT DISC PLAYER ¥89,800
1985年に,テクニクス(現パナソニック)が発売したCDプレーヤー。テクニクスは,CD元年の1982年
第1号機SL-P10を発売し,翌年の1983年には,第2世代機としてSL-P8(¥150,000),SL-P7
(¥110,000)を発売しました。1984年には,SL-P8の後継機としてSL-P3(¥129,800)を発売
し,その後継機として発売されたのが第4世代機ともいえるSL-P500でした。

ピックアップ部には,新開発の1ビーム方式のFF-1(ファイン・フォーカス・1ビーム)レーザーピックアップ
が搭載されていました。従来一般的であった3ビーム方式に比べ,レーザー光の利用率が高く,再生信
号のSN比が大幅に改善される1ビーム方式が採用された独自のレーザーピックアップで,プレートタイプ
のハーフミラーによって発生する非点収差を利用してフォーカシングする仕組みになっていました。同時
に,ピットによる振幅変調の位相成分を検出してトラッキングを行う構成で,さらに,集積度を高めて1個
のLSI集約された信号再生能力の高いデジタル・アキュサーボ,誤り訂正回路テクニクス・スーパーデコー
ディング・アルゴリズムとの組みあわせにより,ディスク表面のキズや指紋に対する再生能力を高めてい
ました。



ピックアップを移動させるトラバースメカニズムには,高精度リニアモーターを採用していました。新開発の
マイクロコンピュータとCP抵抗体によるポテンショメータが高度にサーボコントロールすることで,プログラ
ム曲間のピックアップ移動を平均0.8秒に短縮し,高速アクセスを実現していました。スピンドルモーター
にはBSL(ブラシ&スロットレス)モーターによるDD(ダイレクト・ドライブ)となっていました。



前モデルのSL-P3では,アナログローパスフィルターのみでしたが,SL-P500では,自社製の2倍オー
バーサンプリング・デジタルフィルタMN6618が搭載され,オーディオ帯域での位相特性,周波数特性,
歪率などが改善され,スーパークリーン・デジタルフィルターと称していました。
D/Aコンバーターは,当時最新のバーブラウン製16bit・DACのPCM-54HPが搭載されていました。
初期のCDプレーヤーに多く採用されていた積分型DACに比べ,変換精度や安定度にすぐれたラダー
抵抗型のDACで,クリアな音をもっていました。さらに,非磁性リードフレームの使用により、ローレベル
でのリニアリティを改善していました。
また,DACが左右独立ではなく,1個の構成であるため,SRC(遅延時間補償)回路を搭載し,左右チャ
ンネルのわずかなサンプリング時間差によるチャンネル間位相差も解消し,正確な音像定位を確保して
いました。

機能的には,前後へのスキップ選曲の他,本体にも10キーが装備され,ダイレクト選曲で素早い選曲が
可能となっていました。プログラム選曲は20曲ランダムプログラムが搭載されその他,収録曲の頭部分
を次々と再生するプログラマブルミュージックスキャン,3倍速と30倍速の2スピードマニュアルサーチな
どが搭載されていました。リピートは,1曲,全曲,A-B間のリピートが可能となっていました。
表示部はFLディスプレイで,トラックナンバー,インデックスナンバー,時間表示の8桁デジタルディスプレ
イの他,1~20のプログラムインジケーターが装備されていました。
その他,実音声開始部を自動検出し,平均0.3秒で瞬時スタート可能にするオートキュー,自動的に4秒
間の曲間を設定するオートスペース,音量をリモコンで2dBごとにデジタル段階で減衰させてコントロール
できる0dB~-12dBのデジタルアッテネーター機能も装備されていました。

以上のように,SL-P500は,テクニクスの第4世代機のトップモデルとして,当時の最新の技術を投入し
てまとめ上げられたCDプレーヤーで,内部の集積度も上がり,機能面でも,音質向上のための技術の
面でも大きく進歩していました。内容的に,次の世代のSL-P1200SL-P1000にもつながっていく実
力派の機種でもあったといえます。音質的にも,重低音や厚みという点では,後の重量級の機種には及
ばないものの,透明感や繊細さがよく出たクリアな音は,テクニクスらしい音の良さをもったものでした。


以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。



デジタルフィルタ,FF-1搭載。
高音質に磨きをかけた
実力派モデル

◎優れたオーディオ特性を実現
 スーパークリーンデジタルフィルタ
◎信号再生能力の高い1ビーム方式
 FF-1レーザーピックアップ
◎プログラム曲間を平均0.8秒で高速アクセス
 ハイスピード・リニアアクセスシステム
◎高品質パーツを厳選使用
 音質重視設計のアナログ回路
◎デジタルアッテネータ機能装備
 10キー付ワイヤレスリモコン
◎先進のコンピュータによる多彩な機能

●20曲ランダムプログラム
●8桁FLマルチディスプレイ
●オートキュー
●プログラマブルミュージックスキャン
●1曲,全曲,A-B間のリピート演奏が可能
●プログラマブルリピート
●2スピードマニュアルサーチ
●オートスペース




●SPECIFICATION●



●オーディオ●

チャンネル数 2チャンネル(ステレオ)
出力電圧 2V(0dB,EIAJ)
周波数特性 4Hz~20,000Hz±0.2dB(EIAJ)
ダイナミックレンジ 96dB以上(EIAJ)
SN比 102dB以上(EIAJ)
全高調波歪率 0.0025%以下(1kHz,0dB,EIAJ)
高調波歪率 0.0012%以下(1kHz,0dB)
チャンネルセパレーション 110dB以上(1kHz,EIAJ)
ワウ・フラッタ 測定限界以下(EIAJ)
ローパス・フィルタ スーパークリーン・デジタルフィルタ



●信号フォーマット●

標本化周波数 44.1kHz
誤り訂正方式 テクニクス・スーパー・デコーディング・アルゴリズム
復号化 16ビット直線



●ピックアップ他●

ピックアップ方式 FF-1(ファイン・フォーカス・1ビーム)
光源 半導体レーザー
波長 780nm
トラバース ハイスピード・リニアアクセスシステム
スピンドル ブラシレスD.D.



●総合●

電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 15W
ヘッドホン出力レベル 最大100mW/32Ω(可変)
外形寸法 幅430×奥行262×高さ87mm
重量 4.6kg


※本ページに掲載したSL-P500の写真・仕様表等は
 1986年7月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,
 パナソニック株式会社に著作権があります。したがって
 これらの写真等を無断で転載,引用等をすることは法律
 で禁じられていますので,ご注意ください。

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