SP-10の写真
Technics SP-10
DIRECT DRIVE PHONO MOTOR ¥82,000(1970年発売時)
                           ¥98,000(1974年頃)

1970年にテクニクスが発売したターンテーブル。テクニクスが世界に先駆けて開発・商品化したダイレクト
ドライブのターンテーブルで,1969年の開発発表は世界中のフォノモーターメーカーにショックを与え,その
後アナログプレーヤーのダイレクトドライブ機が増えていきました。

従来からのリムドライブ,ベルトドライブ方式に対して,モーターを低速回転させ,その回転軸がそのままター
ンテーブルに直結したダイレクトドライブ方式は,モーターが低速回転するためにモーター自体の振動が少な
く,リムドライブにおけるリムの変形,摩耗や,ベルトドライブにおけるベルトの伸び,スリップ,変形などの要
素がなく,経年変化がない夢の方式とされていました。
テクニクスは,苦心の末ダイレクトドライブ実現のために多極超低速ブラシレスDCモーターを開発し搭載して
いました。このモーターはダイレクトドライブのために必要不可欠のもので,モーターの回転子(ローター)が直
接ターンテーブルを33・1/3回転,45回転という超低速で回転させる画期的なものでした。

SP-10のモーターSP-10の内部

33・1/3回転,45回転の速度切換はツマミひとつの操作で電気的に行われ,切換機構による機械的ロス等
も全くないという当時としては画期的なものでした。また,33・1/3回転,45回転それぞれ独立で微調整ツマ
ミがついていました。
ターンテーブルは,2.8kgの重量級で,慣性質量380kg・cmを誇り,一品一品ダイナミックバランス調整が
なされた精密なものでした。ターンテーブル下面には高精度ストロボ円盤が取り付けられ,これを高輝度ネオ
ン管で照らし,特殊指定のミラーを使用して見やすい前方上部表の表示窓に表示し,確認・調整できるように
なっていました。

SP-10のターンテーブル部

SP-10は,20極60スロットのDCモーターによるダイレクトドライブを実現し,その結果,当時世界トップレベル
の高SN比,低ワウ・フラッター等のデータ的な優位性はもとより,強力な起動トルクによりわずか1/2回転で
定速回転に達する起動特性,低消費電力などの高度な性能と機能性を発揮しました。

SP-10が登場した当時,世界中のプレーヤーメーカーがその存在に脅威を抱き,何らかの形で意識をしていた
といわれています。実際,世界各国のメーカーがSP-10を超えるというのが1つの目標になっていたというほど
で,自社製ベルトドライブ機とSP-10の比較試聴などというイベントも行われていたほどでした。それほどエポッ
クメーキングな1台だったといえるでしょう。

SL-1000の写真
Technics SL-1000
DIRECT DRIVE PLAYER SYSTEM ¥178,000

SP-10に,スタティックバランス形のトーンアームEPA-99を組み合わせ,粘弾性材料とスプリングを組み合わせ
てハウリングを抑えたウッドケースを使用した,プレーヤーシステムSL-1000が発売されていました。

EPA-99の写真
Technics EPA-99
UNIVERSAL TONEARM ¥23,000

EPA-99は,スタティックバランス形のオーソドックスなユニバーサル形トーンアームで,ヘッドシェルも国内外のカ
ートリッジに広く対応する欧州規格のユニバーサル形プラグイン式でした。SL-1000では,カートリッジの交換使
用も考慮してヘッドシェルが2個付属し,カートリッジに広く対応するために4個のサブウェイトが付属していました。

SL-100Wの写真
Technics SL-100W
DIRECT DRIVE TURNTABLE SYSTEM ¥168,000

実際には,SP-10をターンテーブル単体として買い求め,いろいろなキャビネット,アームを組み合わせ,シス
テムとして組み上げるユーザーがかなりいたようです。
後に,アームレスのターンテーブルシステムとして,SL-100Wなども発売されました。これは,2本のアームが
取り付けられる仕様で,アームパネルも4本のツマミ操作だけで簡単に取付取り外しができるようになっていまし
た。また,左側には,カートリッジやクリーナーを入れるアクセサリーボックスが付いていました。

以上のように,SP-10は,世界初のダイレクトドライブターンテーブルとして画期的な1台で,DDの原器として
世界中で高い評価を得た1台でした。その後SP-10MkUSP-10MkVとモデルチェンジを受け,DDの王者と
して君臨し続けたまさに名機でした。
 
 

以下に,当時のカタログの一部をご紹介します。
 
 


自信を持って断言します
これからの最高級プレーヤーは・・・・
「ダイレクトドライブ方式」
■ワウ・フラッタ・ランブルを完全追放した
  超低速ブラシレス直流モータ。
プロ,マニアを問わず・・・これほど発表を待ち焦がれられた
製品はありません
◎モーターはレコードと同じ33・1/3,45回転
 減速機構を全くなくした直接駆動形
◎驚異の高性能・・・ワウ0.03%以下(WRMS)
 フラッタ0.02%以下(WRMS) S/N60dB以上!
◎回転速度の切換えは電気的に行います
 微調整は33・1/3,45回転独立に±2%
◎30cmアルミダイカストターンテーブル
 ダイナミックバランスは一品ずつ精密調整
◎超低速ブラシレス直流モータの登場で
 プレヤーの世界が変わりました
 ●50Hz,60Hzの切換えは不必要
 ●電源電圧及び電源周波数変動の影響は皆無
 ●抜群のSN比
 ●摺動部分のない無接点モーター
 ●起動トルクが大きい
 ●トルク変動を検出,自動的に定速制御


●SP-10定格●


ターンテーブル アルミ合金ダイカスト 直径300mm
慣性質量 330kg・cm2
自重 2.8kg
モーター 20極60スロット 超低速電子整流子フォノモーター
(DC15V 85mA)
ターンテーブル駆動方式 直接駆動形
電源 100V (50/60Hz)
消費電力 5W
回転数 33・1/3&45rpm
回転数切換の方式 電気スイッチ
回転数微調整の方法 可変抵抗器による各回転数単独調整
(調整範囲 ±2%)
ワウ 0.03%以下(W.R.M.S)
フラッター 0.02%以下(W.R.M.S)
ランブル(S/N) 60dB以上
起動 1/2回転で正常動作(33・1/3rpm)
寸法 350W×350D×90Hmm
重量 9kg

 

●SL-1000主な定格●


ターンテーブル部 SP-10
トーンアーム EPA-99
消費電力 5.0W
外形寸法 540W×170H×405Dmm
重量 14.5kg
その他 ヘッドシェル2個,ダストカバー付
カートリッジは別

 

●SL-100W主な定格●


ターンテーブル部 SP-10
消費電力 5.0W
外形寸法 627W×200H×512Dmm
重量 18.5kg
その他 ダストカバー付
アーム,カートリッジは別

 

●EPA-99主な定格●


トーンアーム ユニバーサルS字形パイプアーム針圧直読式スタチックバランス形
インサイドフォースキャンセラーつき,アームエレベーション機構つき
実効長 235mm
オーバーハング 14mm
オフセット角 21°
針圧調整範囲 0〜3g
適用カートリッジ重量 4〜35g
※本ページに掲載したSP−10,SL-1000,SL-100W,EPA-99の写真・
仕様表等は1970年,1974年8月のTechnicsのカタログより抜粋したもので,
松下電器産業株式会社に著作権があります。したがって,これらの写真等を無
断で転載,引用等をすることは法律で禁じられていますので,ご注意ください。
 
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